39 / 57
38.知らないフリして
しおりを挟む
「んー・・・」
朝の6時。起きるには少し早い時間だが、奏人は眠れず起きてしまう。
目をこすりながらシャワールームへ向かう。
少し身体を洗い流せば、目も覚めそうだった。
「わっ・・・あれ、シュビル」
「んぁ、おはよ。早くね?シャワー?」
洗面台にいたのは、上半身が裸でまだ寝ぐせのついたままのシュビル。
必死にジェルのようなもので髪の毛をセットしていた。
「うん・・・眠れなくて」
「ま、あんな話聞いたら眠れないわな」
昨日の夜、自分が襲われるかもしれないという話を聞いた。
一度誘拐されたことのある身としてはその怖さを知っている分
より恐怖が増したのが事実だった。
が、それ以上に、二人がいるなら大丈夫。
そんな安心感でいっぱいなのも事実だった。
「ラオルさんのお店は何時から開いてるの」
「8時。まぁ、言えば開けてくれると思うけどな」
「8時か。まだルリールは寝てるし、ゆっくり待とう」
「シャワー出たら、朝ごはんでも買いに行くか」
「いいね!行きたい!」
髪をセットし終えたシュビルが振り向く。
どう、と聞いてくる。
相変わらず引き締まった身体だ。
それを見て奏人は昨日、シュビルとセックスをしたという事実は急に思い出し、
イケてるよ、とだけ言い残してそそくさとシャワーを浴びに行った。
「イケてるってなんだ・・・?あっちの世界の言葉か?」
シュビルは頭上にはてなマークをつくりながら、部屋へと戻った。
シュビルはルリールを起こさないように静かに部屋に戻る。
そして、鞄に大事に包み込まれたフェロモンの入った瓶を取り出した。
瓶の中のフェロモンは日の光に当たらずとも、虹色に輝いている。
「奏人・・・」
シュビルは小さく呟き、瓶にそっとキスをした。
あまりにも綺麗なそのフェロモンをエルのためだけに使われてしまう。
なぜかそれがシュビルにはとてつもなく嫌で、悲しくて、切なかった。
「・・・」
もぞもぞと動くのは、ベッドで寝ているフリをしていたルリール。
ちらり、とシュビルの方を見ると、大事そうに瓶を見つめるシュビルが見えた。
長い付き合いだから、分かりたくなくても分かってしまう。
シュビルは、奏人に恋をしているのだ。
見ないフリを決め込む。
叶わないと分かっていても奏人に恋したのだろう。
ルリールは、そんなシュビルに何も言うことはできなかった。
寝返りをうつフリをして、シュビルとは反対の方向を見る。
親友のために何もしてやれない。
ルリールにとって、それは辛く悲しいことだった。
朝の6時。起きるには少し早い時間だが、奏人は眠れず起きてしまう。
目をこすりながらシャワールームへ向かう。
少し身体を洗い流せば、目も覚めそうだった。
「わっ・・・あれ、シュビル」
「んぁ、おはよ。早くね?シャワー?」
洗面台にいたのは、上半身が裸でまだ寝ぐせのついたままのシュビル。
必死にジェルのようなもので髪の毛をセットしていた。
「うん・・・眠れなくて」
「ま、あんな話聞いたら眠れないわな」
昨日の夜、自分が襲われるかもしれないという話を聞いた。
一度誘拐されたことのある身としてはその怖さを知っている分
より恐怖が増したのが事実だった。
が、それ以上に、二人がいるなら大丈夫。
そんな安心感でいっぱいなのも事実だった。
「ラオルさんのお店は何時から開いてるの」
「8時。まぁ、言えば開けてくれると思うけどな」
「8時か。まだルリールは寝てるし、ゆっくり待とう」
「シャワー出たら、朝ごはんでも買いに行くか」
「いいね!行きたい!」
髪をセットし終えたシュビルが振り向く。
どう、と聞いてくる。
相変わらず引き締まった身体だ。
それを見て奏人は昨日、シュビルとセックスをしたという事実は急に思い出し、
イケてるよ、とだけ言い残してそそくさとシャワーを浴びに行った。
「イケてるってなんだ・・・?あっちの世界の言葉か?」
シュビルは頭上にはてなマークをつくりながら、部屋へと戻った。
シュビルはルリールを起こさないように静かに部屋に戻る。
そして、鞄に大事に包み込まれたフェロモンの入った瓶を取り出した。
瓶の中のフェロモンは日の光に当たらずとも、虹色に輝いている。
「奏人・・・」
シュビルは小さく呟き、瓶にそっとキスをした。
あまりにも綺麗なそのフェロモンをエルのためだけに使われてしまう。
なぜかそれがシュビルにはとてつもなく嫌で、悲しくて、切なかった。
「・・・」
もぞもぞと動くのは、ベッドで寝ているフリをしていたルリール。
ちらり、とシュビルの方を見ると、大事そうに瓶を見つめるシュビルが見えた。
長い付き合いだから、分かりたくなくても分かってしまう。
シュビルは、奏人に恋をしているのだ。
見ないフリを決め込む。
叶わないと分かっていても奏人に恋したのだろう。
ルリールは、そんなシュビルに何も言うことはできなかった。
寝返りをうつフリをして、シュビルとは反対の方向を見る。
親友のために何もしてやれない。
ルリールにとって、それは辛く悲しいことだった。
1
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
褐色ショタを犯しても宇宙人なら合法だよな?
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
多忙で有休が取れないので役所に行けない。そうボヤいたときに、代わりに行くよという褐色少年が現れた。
誰よ? と聞くと宇宙人だと言うが、どう見ても普通の日本人。でも本人は宇宙人と言い張る。
宇宙人なのであれば、犯しても合法という気がしないでもないが……。
おっさん部隊長のマッサージ係になってしまった新米騎士は好奇心でやらかした
きよひ
BL
新米騎士×ベテランのおっさん騎士
ある国の新米騎士フリシェスは、直属の上司である第一部隊長アルターのマッサージ係として毎日部屋に通っている。
どうして毎日おっさんのマッサージなんてしなければならないんだろうとゲンナリしていたある日、男同士の性欲処理の話を聞いたフリシェスはどうしても試したくなってしまい......?
高い声で喘いでいる若い騎士の方が攻め。
カエルが潰れたような声を出して余裕があるおっさんの方が受けです。
※全三話
超絶美形だらけの異世界に普通な俺が送り込まれた訳だが。
篠崎笙
BL
斎藤一は平均的日本人顔、ごく普通の高校生だったが、神の戯れで超絶美形だらけの異世界に送られてしまった。その世界でイチは「カワイイ」存在として扱われてしまう。”夏の国”で保護され、国王から寵愛を受け、想いを通じ合ったが、春、冬、秋の国へと飛ばされ、それぞれの王から寵愛を受けることに……。
※子供は出来ますが、妊娠・出産シーンはありません。自然発生。
※複数の攻めと関係あります。(3Pとかはなく、個別イベント)
※「黒の王とスキーに行く」は最後まではしませんが、ザラーム×アブヤドな話になります。
【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話
匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。
目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。
獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。
年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。
親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!?
言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。
入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。
胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。
本編、完結しました!!
小話番外編を投稿しました!
【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる
くろなが
BL
【第8回BL大賞にて奨励賞頂きました!!投票本当にありがとうございました!】
2022/02/03ユタカ×リスドォルの番外編を追加開始です。全3話17時頃更新予定です。
~内容紹介~
勇者に倒されないと魔界に帰れない魔王様が、異世界転移の高校生勇者に一目惚れされてしまった。しかも黒騎士となって護ると言われ、勝手に護衛を始めてしまう。
新しく投入される勇者を次々に倒して仲間にし、誰も魔王様を倒してくれない。魔王様は無事に魔界に帰ることができるのか!?高校生勇者×苦労人魔王
三章まで健全。四章からR18になります。ほのぼの大団円ハッピーエンドです。【本編完結済】
表紙は(@wrogig8)はゆるふ様から頂きました。
小説家になろう(R15)・ムーンライトノベルズ(R18)に掲載しています。
嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?
猫桜
BL
はた迷惑な先の帝のせいで性別の差なく子が残せるそんな国で成人を前に王家から来栖 淡雪(くるす あわゆき)に縁談が届く。なんと嫁ぎ先は世間から鬼元帥とも青髭公とも言われてる西蓮寺家当主。既に3人の花嫁が行方不明となっており、次は自分が犠牲?誰が犠牲になるもんか!実家から共に西蓮寺家へとやってきた侍従と侍女と力を合わせ、速攻、円満離縁で絶対に生きて帰ってやるっ!!
【完結】うたかたの夢
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
ホストとして生計を立てるサリエルは、女を手玉に取る高嶺の花。どれだけ金を積まれても、美女として名高い女性相手であろうと落ちないことで有名だった。冷たく残酷な男は、ある夜1人の青年と再会を果たす。運命の歯車が軋んだ音で回り始めた。
ホスト×拾われた青年、R-15表現あり、BL、残酷描写・流血あり
※印は性的表現あり
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
全33話、2019/11/27完
転生×召喚
135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。
周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。
これはオマケの子イベント?!
既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。
主人公総受けです、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる