コンビニごと異世界転生したフリーター、魔法学園で今日もみんなに溺愛されます

はるはう

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ゆで卵を増やせ!

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「とは言っても…実はあの肉まんはさっき二人が食べたので最後だ」

渚の口から告げられた衝撃の事実に、二人は膝から崩れ落ちた。
「もう…あの味を楽しめない…」

「コンビニを経営するっていうのはいいんだけどさ、商品をどうするかって話なんだよ」
渚は一番気になっていた疑問を口にした。
「今食べちゃった肉まんもそうだし、ここにあるほとんどの商品は食品だ。中には日用品もあるが、結局それも消耗品。使えば消える」

そう、在庫の問題である。
在庫の補充が出来なければ営業も出来ない。
普段ならば業者に発注すればいいだけだが、ここは異世界。そういう問題ではないのである。

「でも、そんなの学園長だってわかってたはずなのに…なんで店の経営なんて」
レオンはそう言いながらも、店をウロウロしながら食べ物を物色して回る。
レオンの興味は完全に食に向いているようだ。

その時、渚は昨日の奇妙な出来事をふと思い出した。

「そういえば、昨日、まだ俺がここに来る前なんだけど…」
「?」
「そこの唐揚げ弁当あるだろ。7個くらいあるやつ」
「へぇ、これを唐揚げ弁当って言うのか」
ノクタールが手に取る。それは、昨日奇妙に個数が増えたあの唐揚げ弁当だった。
「それ、実は、俺が目を離した隙に増えたんだ」
「…なる、ほど…?」
ノクターンは渚の言うことが分からず、曖昧に返事をする。
しかしレオンは何か引っかかるものがあるようで、渚に近づくと渚の手を恋人繋ぎのように繋いだ。

「うぉっ…な、なんだよ…?」
「ごめん、ちょっとじっとしてて」
レオンは目を閉じる。
廉の手がじんわりと暖かくなるのを感じた。

「おそらく渚には、固有の魔法が発現してる。限定された場所で限定的に物を増やす魔法みたい」

「…物を増やす?」
「これは僕の推測だけど、その弁当が増えたのは渚の固有魔法によるものだと思う」
レオンはそう言うと、唐揚げ弁当の隣にあったゆで卵を手に取った。
「これ、ちょっと持ってみて」
「おう…」
渚がそれを手に取る。と、そのわずか一秒後、渚の目の前に2つのゆで卵が転がり落ちてきた。
「っ!?」
「やっぱり…魔法の詳細は分からないけど、渚はこの世界に来た時に、眠っていた魔力も解放されたみたい」

俺が魔法を?
渚の頭は混乱した。
しかし、ゆで卵が増えたのは事実である。実際、その目で確かに見たのだから。

「ちなみにその限定された場所ってなんなんだ?」
ノクタールは、商品棚に並ぶ菓子パンを一つ一つ手に取りながら質問した。
「おそらくは、このコンビニの中だけで使える魔法なんじゃないかなって僕は思ってる」
レオンはそう言うと、ちょっと来て、と渚に手招きし、外へ連れ出す。
そして手に持っていたゆで卵を差し出すと、増やしたいって気持ちに集中してみて、と言った。

渚は集中する。
ゆで卵を増やしたい、と。

しかし、待てど暮らせどゆで卵は現れない。
「ね。やっぱりコンビニの中じゃないとダメなんだよ」
そう言うと再びレオンはコンビニへ入り、渚にもう一度コンビニ内でゆで卵を増やしてみるよう指示した。

「ゆで卵…ゆで卵…」

渚は念じる。
しかし、ゆで卵は増えない。

「増えてねぇぞ」
ノクタールは渚が手に持つゆで卵をつつく。
レオンも、あれ?と首を捻って不思議そうにゆで卵を見た。
「僕の思い違いかなぁ…」
するとノクタールは、あっ、と何かに気が付いたかのように声を出す。

「限定された場所って、お前、まじでこの場所でしか魔法使えねぇんじゃねぇの?」

ノクタールは、渚がゆで卵を出した場所を指さした。
「唐揚げ弁当が出てきたのもこの辺だったんだろ?ゆで卵もここにいた時に出てきたじゃねぇか」
一理ある。渚はそう思い、ノクタールの指さす場所へ立つ。
そして再びゆで卵を握りしめながら、ゆで卵よ、出てこい、とブツブツと念じた。

ゴロッ…

「あっ」

渚の足元には、ゆで卵が一つ転がる。

「渚から産まれたぞ」
「言い方!」
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