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騎士団員たちの悩み
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「廉さん、今日もありがとうね」
「お大事になさってください。またいつでも来てくださいね」
廉は午前最後のお客を見送ると、昼食の為に自宅のキッチンへと向かう。
最近ではこの世界での生活にも慣れ、食事を楽しむ余裕も生まれてきた。
「今日は昨日買ったパンと、スープと…」
廉が昼食を準備していると、店の呼び鈴が鳴った。
「はいはーい」
「こんにちは」
「アッシュさん!」
店の前には、私服姿のアッシュの姿があった。
「お仕事は?」
「今はお昼休憩です。もしよければ、ご一緒に、と思ったのですが…いかがでしょうか?」
アッシュはそう言うと、街の店でテイクアウトしてきたであろう袋を廉に見せた。
「あ!近所の人がこの店は美味しいって言ってました」
「美味しいですよ。廉さんの分も買ってきたので、よければ食べませんか」
「ぜひ!嬉しいなぁ」
廉はるんるんとリビングへ向かい、どうぞ、とアッシュを部屋へ招いた。
「最近よく僕に会いに来てくれますよね」
廉が不意にそう言うと、アッシュは一瞬焦ったが持ち前のポーカーフェイスで乗り切る。
「この辺りも私たち騎士団の見回りの範囲ですから。そのついでに、廉さんにもご挨拶をと思いまして」
「ついでですかー。ちょっと寂しいなぁ」
廉はわざとらしくため息をついてみせると、アッシュは再び焦ってしまう。
「ついでというのは嘘で…っ!」
「なに焦ってるんですかー?でも、実際アッシュさんが会いに来てくれるのは本当にすごく嬉しいですよ」
廉はそう言って笑いかけると、アッシュは恥ずかしそうに照れ笑いした。
「そういえば、その後ブーストのスキルは上手く使いこなせていますか?」
「そのことなのですが…。実は使いこなせてないんです」
廉は、最近の出来事をアッシュに話すことにした。
「僕、今もアッシュさんの故郷で流行った流行病の薬の調合を時々頼まれるので作っているのですが、その薬を作る時はうまくスキルを使えるんです。でも、他の薬にスキルを使おうとすると、急に使えなくなっちゃうんです」
「そうだったのですか?スキルが発動すれば、条件なく基本的には何にでも使えるはずなのですが」
アッシュは不思議そうに廉を見る。
「いろんな薬で試してみましたが、無理だったんです。チート能力とは言っても、いろいろと条件があるんですかね…」
”簡単に能力を使えるのはつまらない”
以前出会った神様がそう言っていたのを思い出す。
これもそんな神様のちょっとしたいたずらなのだろうか。
「でも、もし仮にどんなものにでもブーストスキルを使えたとしたら、廉さんは薬屋として大忙しの日々を送ることになっていたかもしれませんよ」
「たしかに…それはそうかも」
「ですから、やはり制約があるくらいがいいんじゃないでしょうか?廉さんの希望は、平和な日常なのでしょう?」
アッシュはそう言うと、床に置かれた麻袋から小包を取り出した。
「平和な日常、と言っておきながら申し訳ないのですが…一つ、お仕事をお願いしてもよろしいでしょうか」
そう言ってアッシュは小包を開けると、そこには小さな錠剤が3つ入っていた。
「睡眠薬ですか?」
「さすがは廉さん。その通り、こちらは同僚が飲んでいる睡眠薬です」
「それで、仕事というのは?」
「こちらの薬、廉さんのお力をお借りしてもう少し効き目のあるものに調整していただくことは可能でしょうか」
廉の心に、モヤモヤとした気持ちが広がった。
睡眠薬にはあまり良い思い出がない。
仕事が忙しく、ストレスによりうまく眠ることが出来なくなり、そうして睡眠薬に頼っていた時期が廉にはあったからだ。
「あのぅ…事情は分かりませんが、薬に頼らないと眠れないほど騎士団は大変なお仕事なのでしょうか…」
廉はおずおずとアッシュに聞くと、アッシュは慌てて話した。
「ごめんなさい、そういう事ではないんです!確かに忙しいのは事実ですが、そういったストレスで不眠になってしまった訳ではないんです」
「少しだけ、最近の私たち騎士団員の話を聞いていただけますか?」
「お大事になさってください。またいつでも来てくださいね」
廉は午前最後のお客を見送ると、昼食の為に自宅のキッチンへと向かう。
最近ではこの世界での生活にも慣れ、食事を楽しむ余裕も生まれてきた。
「今日は昨日買ったパンと、スープと…」
廉が昼食を準備していると、店の呼び鈴が鳴った。
「はいはーい」
「こんにちは」
「アッシュさん!」
店の前には、私服姿のアッシュの姿があった。
「お仕事は?」
「今はお昼休憩です。もしよければ、ご一緒に、と思ったのですが…いかがでしょうか?」
アッシュはそう言うと、街の店でテイクアウトしてきたであろう袋を廉に見せた。
「あ!近所の人がこの店は美味しいって言ってました」
「美味しいですよ。廉さんの分も買ってきたので、よければ食べませんか」
「ぜひ!嬉しいなぁ」
廉はるんるんとリビングへ向かい、どうぞ、とアッシュを部屋へ招いた。
「最近よく僕に会いに来てくれますよね」
廉が不意にそう言うと、アッシュは一瞬焦ったが持ち前のポーカーフェイスで乗り切る。
「この辺りも私たち騎士団の見回りの範囲ですから。そのついでに、廉さんにもご挨拶をと思いまして」
「ついでですかー。ちょっと寂しいなぁ」
廉はわざとらしくため息をついてみせると、アッシュは再び焦ってしまう。
「ついでというのは嘘で…っ!」
「なに焦ってるんですかー?でも、実際アッシュさんが会いに来てくれるのは本当にすごく嬉しいですよ」
廉はそう言って笑いかけると、アッシュは恥ずかしそうに照れ笑いした。
「そういえば、その後ブーストのスキルは上手く使いこなせていますか?」
「そのことなのですが…。実は使いこなせてないんです」
廉は、最近の出来事をアッシュに話すことにした。
「僕、今もアッシュさんの故郷で流行った流行病の薬の調合を時々頼まれるので作っているのですが、その薬を作る時はうまくスキルを使えるんです。でも、他の薬にスキルを使おうとすると、急に使えなくなっちゃうんです」
「そうだったのですか?スキルが発動すれば、条件なく基本的には何にでも使えるはずなのですが」
アッシュは不思議そうに廉を見る。
「いろんな薬で試してみましたが、無理だったんです。チート能力とは言っても、いろいろと条件があるんですかね…」
”簡単に能力を使えるのはつまらない”
以前出会った神様がそう言っていたのを思い出す。
これもそんな神様のちょっとしたいたずらなのだろうか。
「でも、もし仮にどんなものにでもブーストスキルを使えたとしたら、廉さんは薬屋として大忙しの日々を送ることになっていたかもしれませんよ」
「たしかに…それはそうかも」
「ですから、やはり制約があるくらいがいいんじゃないでしょうか?廉さんの希望は、平和な日常なのでしょう?」
アッシュはそう言うと、床に置かれた麻袋から小包を取り出した。
「平和な日常、と言っておきながら申し訳ないのですが…一つ、お仕事をお願いしてもよろしいでしょうか」
そう言ってアッシュは小包を開けると、そこには小さな錠剤が3つ入っていた。
「睡眠薬ですか?」
「さすがは廉さん。その通り、こちらは同僚が飲んでいる睡眠薬です」
「それで、仕事というのは?」
「こちらの薬、廉さんのお力をお借りしてもう少し効き目のあるものに調整していただくことは可能でしょうか」
廉の心に、モヤモヤとした気持ちが広がった。
睡眠薬にはあまり良い思い出がない。
仕事が忙しく、ストレスによりうまく眠ることが出来なくなり、そうして睡眠薬に頼っていた時期が廉にはあったからだ。
「あのぅ…事情は分かりませんが、薬に頼らないと眠れないほど騎士団は大変なお仕事なのでしょうか…」
廉はおずおずとアッシュに聞くと、アッシュは慌てて話した。
「ごめんなさい、そういう事ではないんです!確かに忙しいのは事実ですが、そういったストレスで不眠になってしまった訳ではないんです」
「少しだけ、最近の私たち騎士団員の話を聞いていただけますか?」
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