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第三章 結婚してから乙女ゲームのヒロインである妻が愛してると言ってくれない

3.お洒落してみる

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 その晩、食事を終えると、ブレイデンは急いでお風呂に入り、念入りに体を洗った。アロマオイル入りのシャンプーで匂いも良いはずだ。

 歯もしっかり磨いたし、下着もパジャマもヨレていない! 完璧だ!

 意気揚々と自室を出発し、妻の部屋の戸を叩く。

 ...返事がない。


 メイドが通りかかる。

メイド
「アンジェリカ様は、もう、お休みになられましたよ?」

ブレイデン
「もう? ですか? まだ、早い時間なのに!」

メイド
「はい」

 まさか...夫婦の営みが嫌で早く寝たのか!?

 去って行くメイドを見送り、ブレイデンは呆然とした。


_________


 翌日、ブレイデンは朝早くから起き、朝からシャワーを浴びて、完璧に身支度を整えた。

 今日はデートだ!!!


 一緒に朝食を食べようと、ブレイデンはダイニングでソワソワして待っていたが、なかなかアンジェリカは現れない。

 ま、まさか...忘れられている!?

 ブレイデンはアンジェリカの部屋に向かった。部屋の扉を叩くと、扉が開き、メイドが顔を出した。

メイド
「おはようございます。ただ今、アンジェリカ様は、お着替え中でございます」

ブレイデン
「あ、あぁ、そうか」

メイド
「まだ、少しお時間がかかりますので、他の場所でお待ち頂けますでしょうか?」

 なるほど! デートだから、張り切ってオシャレしてくれてるのかな? 化粧をしたり、コルセットを締め上げるのには時間がかかるらしいからな。

ブレイデン
「もちろんだよ!」

 ブレイデンはご機嫌でダイニングに戻り、食前の珈琲を飲んで待った。

 しばらくするとアンジェリカが現れた。

 化粧はしていない。髪は梳かしただけで結っていない。ドレスはいつもよりはましだが、ウエストを締めていないエンパイアスタイルのラフなドレスである。

 ま、まぁ、ちょっと残念な気もするが、綺麗に着飾り過ぎて、男の視線を集めるよりは良いだろう...

ブレイデン
「おはようございます!」

アンジェリカ
「ほわぁ~、おはよ」

 アクビしながらアンジェリカは席に着くと、ブレイデンの着席を待たずに、パンに蜂蜜を塗り始めた。

 ブレイデンは慌てて着席したが、気持ちは沈んでいた。

 一口も食べずに、私はずっと待っていたのに!

 確かに、私は平民出身の成り上がり子爵で、アンジェリカは生まれながらにして伯爵の爵位を継承することが決まっていた貴婦人だ。だが、夫に対して、こんな扱いは酷い! 転生前は、同じ身分だったし! もっと、尊重されても良いはずだ!

 ブレイデンが眉間にシワを寄せていると、アンジェリカがパンをブレイデンに差し出した。

アンジェリカ
「ブレイデン君、ホラ、美味しいよ? 食べよ?」

 可愛い過ぎる! ズルイ! こっちは怒っていたのに! こんなの、許すしかないじゃないですか!?

 ブレイデンは頬を緩め甘いパンを頬張った。
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