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22. 猛獣を捕獲する方法
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ドリス
「えぇ、体長2メールを超えるオオトカゲですわ。体重1トンのバッファローでも、その猛毒で倒し、ヤギ以下のサイズの動物なら丸呑みにするという生き物ですの! 1キロ先まで見える視覚を持ち、4キロ以上先の匂いも嗅ぎ分け、時速20キロ近いスピードで走り、3時間以上獲物を追い続ける持久力まであるそうよ。時々、人間ですら捕食する事があるんですって! ...でも、コモドドラゴン以上の猛獣って何かしら? 生息地では生態系の頂点だと聞いたし...」
「そ、そんな化け物を捕まえて何になるっていうのですか!?」
ドリス
「ビジネスになりますわ? ...また新たな動物園を作って収益を上げて下されば良いのです」
シルバー公爵
「5億イェニの使い道が決まったようだね。すぐに契約書を作らせよう」
「ま、待って下さい! そんな契約横暴だ!」
ドリス
「どうして? ニコラス様は契約書がなくても、結婚の約束をしなくても、ワタクシのために、もっと沢山の事をしてくれましたわ。アナタは、そんなニコラス様よりも『誰よりも幸せにする』『命をかけて』と言ってくれたのでしょう? ワタクシは感動したのです。本来ならば、5億イェニなどという大金は、素晴らしい実績と事業計画を持つ者にしか貸付けられないところ。ですが、今回限りは特別にアナタの命を担保に資金を貸し付けますわ? アナタにとって、大変に有利な契約でしょう?」
男はひらめいた。
そうだ! 金を持って逃げればいい! それだけのお金があれば、一生豪遊して暮らせる!
「そ、そうですね...あぁ、では...」
男は証書とペンをシルバー公爵の従者から受け取る。
シルバー公爵
「安心するといい。大金を手にした君が、何者かに襲われないように、24時間365日、君を守る護衛をつけよう」
お金を持って逃げられないように監視するという意味である。
男は顔面蒼白で、脂汗を流し、ブルブルと震えた。
ドリス
「どうしてサインしないのです? ワタクシを愛しているのでしょう?」
「ひ、ひぃい~! お、お許しを! 私には無理です!」
ドリス
「ワタクシに嘘を吐いたのですか?」
「い、いえ! 違います! 愛しております! き、気持ちはあるのですが、私には、そこまでの能力がないといいますか...」
ドリス
「気持ちがあれば能力は必要ありませんわ! だって、事業に失敗したら命を捧げて下さればいいのですもの」
ドリスは美し過ぎる顔で笑った。
その場にいた誰もが、こう思った。
魔女だ!
ドリス・シルバーは本物の魔女だ!
「う、うわぁ~!!!! 助けてくれぇ~!!」
男は証書とペンを放り投げ、人混みをかき分け、必死の形相で逃げ出した。
ドリス
「あらら...やはり、愛のために命をかけるなんて嘘だったわね」
ドリスは皮肉たっぷりに笑い、男のフィアンセだった令嬢に歩み寄った。
ドリス
「お約束通り、魔法は解きましたわ。これで満足かしら?」
令嬢は驚きと恐怖のあまり涙も声も出ず、コクコクと頷いた。
投げ捨てられた貸付証書とペンをニコラスが拾う。
スラスラとサインしてドリスに手渡す。
ニコラス
「猛獣を捕まえる!」
ドリスは慌てた。
ニコラスが目を真っ赤にして泣いていたからだ。
ドリス
「ちょ、ちょっと、ニコ! ニコがそんな事をする必要はないのよ!?」
ニコラス
「アイツがサインしたらどうするつもりだったんだ!?」
ニコラスは今まで聞いたことがないような大きな声で怒鳴った。
ドリス
「サインしなかったじゃない」
ニコラス
「アイツが本気でドリちゃんを愛していて、サインして、命のかわりに返せない借金を背負ったら、ドリちゃんはアイツを捨てられたのか!? アイツがビジネスに長けていて事業に成功出来たら!?」
ドリス
「そ、それは...その...何とかしたわよ?」
ニコラス
「だったら何とかするといい! 命でドリちゃんが手に入るなら安いものだ! オレはサインした! お金を借りて、新しく新設する動物園には、この世で最も凶暴で残酷な猛獣を入れてやる! ドリスという名の猛獣を!」
会場からは笑いと拍手が巻き起こる。
ドリスはハバネロ(唐辛子)のように真っ赤になってニコラスを捕まえた。
頭から湯気が立ち上り、荒い息で深呼吸する。
ドリス
「そ、それはつまり...屋敷を買って一緒に住もうってこと?」
ニコラス
「...うん」
ニコラスは泣きながら小さく呟く。
ドリス
「ニコの命を全部ワタクシに下さるってこと?」
ニコラス
「うん」
ニコの気持ちは本物だった! 収益のあがる施設ではなく、屋敷を買ってしまえば、お金は返せない。そうなれば、ニコの命はワタクシのものになる。
ドリス
「キャベツ畑の腐葉土さん...」
ニコラス
「うん?」
ドリス
「ワタクシも一緒の土に還えるわ」
ニコラスは目をパチクリした。
ニコラス
「それは...どういう意味?」
ドリス
「はぁ!? 馬鹿じゃないの!? 同じお墓に入るって意味よ! 何で分からないの!?」
ニコラス
「一緒に死のうってこと?」
ドリス
「馬鹿ぁ~! 結婚して同じ家名になるという意味! 死んでも一緒ってこと! そんなにお望みならば、息の根を止めてやるわ!」
ニコラス
「ドリちゃ...ん!?」
ドリスはニコラスの襟を掴んで、無理矢理屈(かが)ませると、ニコラスに口付けした。息も出来ないほど熱いキスで。
今度は悲鳴と拍手が巻き起こる。
ニコラスはドリスの背中に手を回して抱き締めた。そして、そのまま抱き上げる。
ニコラス
「皆様! 猛獣ゲットした! 猛獣動物園が出来たら皆で遊びに来てね!」
_________
狸田真より
朗読ライブのお知らせ
web小説家・地辻夜行先生のTwitterアカウントにて朗読ライブが開催決定!
地辻夜行 先生 @wFVo74avdmKEJn1
12/7(月)20:30~
約25分間程
(時間に間に合わなくても録音を聴くことができるそうです)
狸田作品の
「そんなプロポーズでは結婚出来ません!」
冒頭部分を朗読して頂く予定です!
皆様、是非遊びに来てね!
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「そ、そんな化け物を捕まえて何になるっていうのですか!?」
ドリス
「ビジネスになりますわ? ...また新たな動物園を作って収益を上げて下されば良いのです」
シルバー公爵
「5億イェニの使い道が決まったようだね。すぐに契約書を作らせよう」
「ま、待って下さい! そんな契約横暴だ!」
ドリス
「どうして? ニコラス様は契約書がなくても、結婚の約束をしなくても、ワタクシのために、もっと沢山の事をしてくれましたわ。アナタは、そんなニコラス様よりも『誰よりも幸せにする』『命をかけて』と言ってくれたのでしょう? ワタクシは感動したのです。本来ならば、5億イェニなどという大金は、素晴らしい実績と事業計画を持つ者にしか貸付けられないところ。ですが、今回限りは特別にアナタの命を担保に資金を貸し付けますわ? アナタにとって、大変に有利な契約でしょう?」
男はひらめいた。
そうだ! 金を持って逃げればいい! それだけのお金があれば、一生豪遊して暮らせる!
「そ、そうですね...あぁ、では...」
男は証書とペンをシルバー公爵の従者から受け取る。
シルバー公爵
「安心するといい。大金を手にした君が、何者かに襲われないように、24時間365日、君を守る護衛をつけよう」
お金を持って逃げられないように監視するという意味である。
男は顔面蒼白で、脂汗を流し、ブルブルと震えた。
ドリス
「どうしてサインしないのです? ワタクシを愛しているのでしょう?」
「ひ、ひぃい~! お、お許しを! 私には無理です!」
ドリス
「ワタクシに嘘を吐いたのですか?」
「い、いえ! 違います! 愛しております! き、気持ちはあるのですが、私には、そこまでの能力がないといいますか...」
ドリス
「気持ちがあれば能力は必要ありませんわ! だって、事業に失敗したら命を捧げて下さればいいのですもの」
ドリスは美し過ぎる顔で笑った。
その場にいた誰もが、こう思った。
魔女だ!
ドリス・シルバーは本物の魔女だ!
「う、うわぁ~!!!! 助けてくれぇ~!!」
男は証書とペンを放り投げ、人混みをかき分け、必死の形相で逃げ出した。
ドリス
「あらら...やはり、愛のために命をかけるなんて嘘だったわね」
ドリスは皮肉たっぷりに笑い、男のフィアンセだった令嬢に歩み寄った。
ドリス
「お約束通り、魔法は解きましたわ。これで満足かしら?」
令嬢は驚きと恐怖のあまり涙も声も出ず、コクコクと頷いた。
投げ捨てられた貸付証書とペンをニコラスが拾う。
スラスラとサインしてドリスに手渡す。
ニコラス
「猛獣を捕まえる!」
ドリスは慌てた。
ニコラスが目を真っ赤にして泣いていたからだ。
ドリス
「ちょ、ちょっと、ニコ! ニコがそんな事をする必要はないのよ!?」
ニコラス
「アイツがサインしたらどうするつもりだったんだ!?」
ニコラスは今まで聞いたことがないような大きな声で怒鳴った。
ドリス
「サインしなかったじゃない」
ニコラス
「アイツが本気でドリちゃんを愛していて、サインして、命のかわりに返せない借金を背負ったら、ドリちゃんはアイツを捨てられたのか!? アイツがビジネスに長けていて事業に成功出来たら!?」
ドリス
「そ、それは...その...何とかしたわよ?」
ニコラス
「だったら何とかするといい! 命でドリちゃんが手に入るなら安いものだ! オレはサインした! お金を借りて、新しく新設する動物園には、この世で最も凶暴で残酷な猛獣を入れてやる! ドリスという名の猛獣を!」
会場からは笑いと拍手が巻き起こる。
ドリスはハバネロ(唐辛子)のように真っ赤になってニコラスを捕まえた。
頭から湯気が立ち上り、荒い息で深呼吸する。
ドリス
「そ、それはつまり...屋敷を買って一緒に住もうってこと?」
ニコラス
「...うん」
ニコラスは泣きながら小さく呟く。
ドリス
「ニコの命を全部ワタクシに下さるってこと?」
ニコラス
「うん」
ニコの気持ちは本物だった! 収益のあがる施設ではなく、屋敷を買ってしまえば、お金は返せない。そうなれば、ニコの命はワタクシのものになる。
ドリス
「キャベツ畑の腐葉土さん...」
ニコラス
「うん?」
ドリス
「ワタクシも一緒の土に還えるわ」
ニコラスは目をパチクリした。
ニコラス
「それは...どういう意味?」
ドリス
「はぁ!? 馬鹿じゃないの!? 同じお墓に入るって意味よ! 何で分からないの!?」
ニコラス
「一緒に死のうってこと?」
ドリス
「馬鹿ぁ~! 結婚して同じ家名になるという意味! 死んでも一緒ってこと! そんなにお望みならば、息の根を止めてやるわ!」
ニコラス
「ドリちゃ...ん!?」
ドリスはニコラスの襟を掴んで、無理矢理屈(かが)ませると、ニコラスに口付けした。息も出来ないほど熱いキスで。
今度は悲鳴と拍手が巻き起こる。
ニコラスはドリスの背中に手を回して抱き締めた。そして、そのまま抱き上げる。
ニコラス
「皆様! 猛獣ゲットした! 猛獣動物園が出来たら皆で遊びに来てね!」
_________
狸田真より
朗読ライブのお知らせ
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地辻夜行 先生 @wFVo74avdmKEJn1
12/7(月)20:30~
約25分間程
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「そんなプロポーズでは結婚出来ません!」
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