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14. ドレスを探せ!
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ドリスの言葉を聞いた侍女達はガタガタと震え出した。
ドリス
「リハーサルしたドレスはどうなったの!?」
侍女
「あ、あのドレスは、ある事はあるのですが、『ドリス様が着られないのであれば自分が着たい』とセレス様が仰って、その...セレス様のサイズにお直しされまして...」
セレスはアリアンナの姉で、すでに社交界デビューが済んでいる公爵令嬢である。
ドリス
「どうしてワタクシがあのドレスを着ない事になってるの!?」
侍女
「ホワイト様とパートナーを組まれたのですから、当然、ホワイト領にあるギルドアカデミーの超一流デザイナーが最高級のドレスを仕立て直すのだと、セレス様が仰って、私達も、そうだとばかり...」
ドリス
「つまり...ワタクシのドレスがないと?」
侍女
「ひっ! お、お許しを!」
侍女達は跪(ひざまず)き、床に頭を擦(す)り付けた。
ドリス
「おやめなさい。汚れてしまうわ。そんな事をしてもドレスは用意出来ない! すぐに代わりのドレスを探して頂戴」
ドリスが静かに命令を下すと、侍女達は駆け足で退室して行った。
ドリスはフラフラと席に座る。
アリアンナ
「大変ですわ...」
ドリスは落ち着こうと、お茶のカップに口をつけるが、喉を通らず、むせて吹き出した。
一生に一度の大切な日なのに! ニコが迎えに来た時に、ドレスを着ていないワタクシを見たらニコは、どう、思うだろう?
じわっと涙が滲む。
アリアンナ
「お姉様に、ドレスを返してくれるように言いましょうか?」
ドリス
「ドレスのサイズが合わないわ」
アリアンナ
「まだ、午前中だし、ブティックに素晴らしいドレスがあるかも!」
ドリス
「プレタポルテ(高級だが既製服)を着るくらいなら、以前着たドレスを着るわ。デビュタントですし、オートクチュール(完全一点物の仕立て服)でないと」
だが、何かと話題の中心になるドリスのファッションは、いつだって注目の的である。ドレスが新品でない事は、すぐに皆にバレてしまうだろう。
そうなれば、王宮の舞踏会を軽んじていると噂されたり、エスコート役のホワイト伯爵家に対して無礼であると言われかねない。
何よりも、懸命にプロポーズをしてくれるニコにガッカリされたくない。
アリアンナ
「希望を捨ててはダメですわ! デメトラが今度、お茶会で着るために仕立てたドレスは?」
デメトラはドリスとアリアンナの従姉妹である。バックスの弟でデボラの兄であるリーベル男爵の娘で、11歳だが背が高く、ドリスと似た体型をしている。
ドリスはアリアンナを見上げた。
ドリス
「それだわ!」
ドリスは勢いよく立ち上がり、デメトラの部屋へ向かった。
_________
ドリス
「そういう訳で緊急事態なの! ドレスを譲って頂けないかしら?」
デメトラ
「お断りしますわ」
ドリス
「どうして!? まだ、お茶会までは少し日にちがあるでしょう? 仕立て直すことも出来るはず!」
デメトラ
「事情は分かりましたが、ワタクシはあのデザインが気に入っておりますの。別のデザインではなく! それに、ワタクシのドレスはワタクシにしか似合いませんもの」
アリアンナ
「そうかもしれませんが、ここはワタクシに免じて譲って頂けませんか? シルバー家の名誉にも関わる事ですし」
デメトラ
「アンナ様にそう言われても、ご命令に従いたくありませんわ!」
ドリス
「デメトラのお茶会のドレスは、ニコに頼んでホワイト領のギルドアカデミーに依頼してあげるわ」
デメトラ
「本当に!?」
ドリス
「えぇ」
デメトラ
「絶対の絶対に絶対ですか!?」
ドリス
「もちろん」
デメトラ
「なら、お譲りしますわ!」
ドリス
「デメトラ有難う」
デメトラが侍女に申し付けて、ドレスを持って来させた。
だが、それはフリルとレースたっぷりのブリッブリのロリータドレスだった。胸もペタンコのデザインで11歳のデメトラが着るには可愛いが、14歳の夜会デビューには子供っぽ過ぎるデザインだった。
アリアンナ
「こ、これは...」
デメトラ
「可愛いでしょ! こんなに素敵なドレスを譲って差し上げるのですから、お約束は守って下さいね!」
ドリス
「え、えぇ...で、でも...ワタクシに入るかしら...ホホホ」
デメトラ
「大丈夫ですわよ! ほら! 試着してみて!」
究極の選択だわ...この胸のないロリータドレス(でも新品のクチュールドレス)を着るか、持っている自分のドレス(新品じゃないドレス)を着るか...
だが、試着するとすぐに選択肢は狭まった。
ドレスは入るが、胸は窮屈で息苦しく、ウエストはブカブカで、ジャストサイズでない事が分かった。
これならプレタポルテ(既製服)と変わらないわ。
デザインも可愛くない訳ではないが、まるで人形のコスプレみたいである。
デメトラ
「あらら、ドレスに着させられちゃっていますわ。やっぱり、そのドレスはワタクシにしか着こなせないようですわね」
アリアンナ
「デビュタントは女性が大人になった事をアピールするイベントですわ! このドレスではシルバー家がTPO(時と場所と場面)が分からない家だと思われてしまいます」
ドリス
「そうね。デメトラ...有難う。やっぱり、こちらは遠慮しておきますわ」
デメトラ
「いいですけど...協力したのですから、約束は守って下さいね!」
ドリス
「えぇ」
アリアンナ
「でも、デメトラのドレスが着られないとなると、どうすれば良いのかしら?」
デメトラ
「アンナ様のドレスで、仕立てたのに着なかった服はありませんの? 今はアンナ様の方がドリスよりも大きいですが、昔の服ならサイズがあうのではないかしら?」
はっ! と、ドリスとアリアンナは目を見合わせた。
アリアンナ
「探してみましょう!」
ドリス、アリアンナ、デメトラの3人は、アリアンナの衣装部屋へと移動した。
ドリス
「リハーサルしたドレスはどうなったの!?」
侍女
「あ、あのドレスは、ある事はあるのですが、『ドリス様が着られないのであれば自分が着たい』とセレス様が仰って、その...セレス様のサイズにお直しされまして...」
セレスはアリアンナの姉で、すでに社交界デビューが済んでいる公爵令嬢である。
ドリス
「どうしてワタクシがあのドレスを着ない事になってるの!?」
侍女
「ホワイト様とパートナーを組まれたのですから、当然、ホワイト領にあるギルドアカデミーの超一流デザイナーが最高級のドレスを仕立て直すのだと、セレス様が仰って、私達も、そうだとばかり...」
ドリス
「つまり...ワタクシのドレスがないと?」
侍女
「ひっ! お、お許しを!」
侍女達は跪(ひざまず)き、床に頭を擦(す)り付けた。
ドリス
「おやめなさい。汚れてしまうわ。そんな事をしてもドレスは用意出来ない! すぐに代わりのドレスを探して頂戴」
ドリスが静かに命令を下すと、侍女達は駆け足で退室して行った。
ドリスはフラフラと席に座る。
アリアンナ
「大変ですわ...」
ドリスは落ち着こうと、お茶のカップに口をつけるが、喉を通らず、むせて吹き出した。
一生に一度の大切な日なのに! ニコが迎えに来た時に、ドレスを着ていないワタクシを見たらニコは、どう、思うだろう?
じわっと涙が滲む。
アリアンナ
「お姉様に、ドレスを返してくれるように言いましょうか?」
ドリス
「ドレスのサイズが合わないわ」
アリアンナ
「まだ、午前中だし、ブティックに素晴らしいドレスがあるかも!」
ドリス
「プレタポルテ(高級だが既製服)を着るくらいなら、以前着たドレスを着るわ。デビュタントですし、オートクチュール(完全一点物の仕立て服)でないと」
だが、何かと話題の中心になるドリスのファッションは、いつだって注目の的である。ドレスが新品でない事は、すぐに皆にバレてしまうだろう。
そうなれば、王宮の舞踏会を軽んじていると噂されたり、エスコート役のホワイト伯爵家に対して無礼であると言われかねない。
何よりも、懸命にプロポーズをしてくれるニコにガッカリされたくない。
アリアンナ
「希望を捨ててはダメですわ! デメトラが今度、お茶会で着るために仕立てたドレスは?」
デメトラはドリスとアリアンナの従姉妹である。バックスの弟でデボラの兄であるリーベル男爵の娘で、11歳だが背が高く、ドリスと似た体型をしている。
ドリスはアリアンナを見上げた。
ドリス
「それだわ!」
ドリスは勢いよく立ち上がり、デメトラの部屋へ向かった。
_________
ドリス
「そういう訳で緊急事態なの! ドレスを譲って頂けないかしら?」
デメトラ
「お断りしますわ」
ドリス
「どうして!? まだ、お茶会までは少し日にちがあるでしょう? 仕立て直すことも出来るはず!」
デメトラ
「事情は分かりましたが、ワタクシはあのデザインが気に入っておりますの。別のデザインではなく! それに、ワタクシのドレスはワタクシにしか似合いませんもの」
アリアンナ
「そうかもしれませんが、ここはワタクシに免じて譲って頂けませんか? シルバー家の名誉にも関わる事ですし」
デメトラ
「アンナ様にそう言われても、ご命令に従いたくありませんわ!」
ドリス
「デメトラのお茶会のドレスは、ニコに頼んでホワイト領のギルドアカデミーに依頼してあげるわ」
デメトラ
「本当に!?」
ドリス
「えぇ」
デメトラ
「絶対の絶対に絶対ですか!?」
ドリス
「もちろん」
デメトラ
「なら、お譲りしますわ!」
ドリス
「デメトラ有難う」
デメトラが侍女に申し付けて、ドレスを持って来させた。
だが、それはフリルとレースたっぷりのブリッブリのロリータドレスだった。胸もペタンコのデザインで11歳のデメトラが着るには可愛いが、14歳の夜会デビューには子供っぽ過ぎるデザインだった。
アリアンナ
「こ、これは...」
デメトラ
「可愛いでしょ! こんなに素敵なドレスを譲って差し上げるのですから、お約束は守って下さいね!」
ドリス
「え、えぇ...で、でも...ワタクシに入るかしら...ホホホ」
デメトラ
「大丈夫ですわよ! ほら! 試着してみて!」
究極の選択だわ...この胸のないロリータドレス(でも新品のクチュールドレス)を着るか、持っている自分のドレス(新品じゃないドレス)を着るか...
だが、試着するとすぐに選択肢は狭まった。
ドレスは入るが、胸は窮屈で息苦しく、ウエストはブカブカで、ジャストサイズでない事が分かった。
これならプレタポルテ(既製服)と変わらないわ。
デザインも可愛くない訳ではないが、まるで人形のコスプレみたいである。
デメトラ
「あらら、ドレスに着させられちゃっていますわ。やっぱり、そのドレスはワタクシにしか着こなせないようですわね」
アリアンナ
「デビュタントは女性が大人になった事をアピールするイベントですわ! このドレスではシルバー家がTPO(時と場所と場面)が分からない家だと思われてしまいます」
ドリス
「そうね。デメトラ...有難う。やっぱり、こちらは遠慮しておきますわ」
デメトラ
「いいですけど...協力したのですから、約束は守って下さいね!」
ドリス
「えぇ」
アリアンナ
「でも、デメトラのドレスが着られないとなると、どうすれば良いのかしら?」
デメトラ
「アンナ様のドレスで、仕立てたのに着なかった服はありませんの? 今はアンナ様の方がドリスよりも大きいですが、昔の服ならサイズがあうのではないかしら?」
はっ! と、ドリスとアリアンナは目を見合わせた。
アリアンナ
「探してみましょう!」
ドリス、アリアンナ、デメトラの3人は、アリアンナの衣装部屋へと移動した。
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