【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

文字の大きさ
上 下
54 / 73
第二章

54

しおりを挟む
「あ! 閃いた!」

「何をです?」

「すっごく良いアイディアだわ! 私ってば天才!」

「どんなアイディアなんだ?」

「もうすぐ、フリッツは卒業でしょ?」

「そうですが?」

「同じ事をするのよ!」

「同じ事?」

「フリッツは婚約してないから婚約破棄は出来ないけど、婚約を発表すればいいの!」

「どういう事ですか?」

「ヴィルの時と同じで、私がフリードリヒの隣に立って、フリードリヒは『婚約を宣言する!』って言えばいいのよ! すると、皆はまた勘違いするわけ!『平民の女と結婚しようとしている』と。そしたら、フリッツに密かに思いを寄せている、フリッツにとってのクリスチナ様みたいな人が『ちょっと待ったぁ~!』って、苦言を呈しに来るはず!」

 学園の卒業パーティーのパートナーは、同学年の卒業生を選ぶ学生が多いが、すでに卒業している先輩や、まだ卒業していない後輩でもよいのだ。

「エミリア天才かよ!」

 ヴィルヘルムはエミリアの案に感動した。

「そうでしょう!」

「そんなに上手くいきませんよ!」

「そんな事ないわ! クリスチナ様にヴィルと仲直りするための案を教えた時も、クリスチナ様は『そんなに簡単にいくかしら?』って仰ったけど、結局、上手くいったんだから!」

 確かにエミリーは、馬鹿で突拍子もない事を言い出すが、今日の企画でも、令嬢達の本性を明かすという、調査的な意味では素晴らしい成果をあげている。

 この案に乗るべきか?

 いや、しかし、とんでもない事だと信用を失ったりしないか?

「議会に、また罰金を支払うことになっても良いのですか?」

「嫌に決まってるでしょ! だったら、先に議会のオッサン達に話しておけばいいじゃない!」

「それもそうですね...先に話しておけば、問題だったら却下されるはず...いいでしょう! その案に乗りました!」

 フリードリヒとエミリアは手を取って固く握手した。


________

 翌日、議会を招集し、3人で計画を提案しようとしていた。だが、そんな時に、クリスチナの陣痛が始まったという報せが届く。

「悪いな! 俺はクリスチナにつきそうから、計画はお前達2人で進めてくれ!」

 仕方なく、フリードリヒとエミリアだけで議会に出席する。

 しかし、クリスチナ様の陣痛の知らせで、議会のメンバー達は、どこかソワソワした様子である。

「して、かような時にどの様な御用件でしょうか?」

 宰相のマイヤー侯爵は、いつもよりも、せかせかと喋る。

「はい、実は今度の卒業パーティーで婚約発表をしようと思っております」

「何ですと!? お相手はどなたで!?」

「ここにいるエミリア嬢とです」

「まさか!? 平民の女と!? しかも、よりによってエミリア嬢とは! 絶対に認められん!」

「マイヤー殿、落ち着きなさい。過敏に反対するのは良くない」

「妃試験をすれば良いのでは?」

「それはいい案だ!」

 白熱する議会のメンバーに、フリードリヒは慌てた。

「あ、いえ、これは計画で...」

「すまないが、私はクリスチナのところに行って来ても良いだろうか?」

 空気を読むことを忘れたガルボ公爵がフリードリヒの発言をかき消し、大きな声で問いかけた。

 女王陛下は頷いた。

「良いだろう。そんな様子ではガルボからは良い案は出ないだろう。行きなさい」

「陛下! 有難うございます!」

 ガルボ公爵は雷(いかずち)の様な速さと荒々しさで、立ち去って行った。
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います

珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。 最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。 それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様

日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。 春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。 夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。 真実とは。老医師の決断とは。 愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。 全十二話。完結しています。

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

処理中です...