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第二章
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「あ! 閃いた!」
「何をです?」
「すっごく良いアイディアだわ! 私ってば天才!」
「どんなアイディアなんだ?」
「もうすぐ、フリッツは卒業でしょ?」
「そうですが?」
「同じ事をするのよ!」
「同じ事?」
「フリッツは婚約してないから婚約破棄は出来ないけど、婚約を発表すればいいの!」
「どういう事ですか?」
「ヴィルの時と同じで、私がフリードリヒの隣に立って、フリードリヒは『婚約を宣言する!』って言えばいいのよ! すると、皆はまた勘違いするわけ!『平民の女と結婚しようとしている』と。そしたら、フリッツに密かに思いを寄せている、フリッツにとってのクリスチナ様みたいな人が『ちょっと待ったぁ~!』って、苦言を呈しに来るはず!」
学園の卒業パーティーのパートナーは、同学年の卒業生を選ぶ学生が多いが、すでに卒業している先輩や、まだ卒業していない後輩でもよいのだ。
「エミリア天才かよ!」
ヴィルヘルムはエミリアの案に感動した。
「そうでしょう!」
「そんなに上手くいきませんよ!」
「そんな事ないわ! クリスチナ様にヴィルと仲直りするための案を教えた時も、クリスチナ様は『そんなに簡単にいくかしら?』って仰ったけど、結局、上手くいったんだから!」
確かにエミリーは、馬鹿で突拍子もない事を言い出すが、今日の企画でも、令嬢達の本性を明かすという、調査的な意味では素晴らしい成果をあげている。
この案に乗るべきか?
いや、しかし、とんでもない事だと信用を失ったりしないか?
「議会に、また罰金を支払うことになっても良いのですか?」
「嫌に決まってるでしょ! だったら、先に議会のオッサン達に話しておけばいいじゃない!」
「それもそうですね...先に話しておけば、問題だったら却下されるはず...いいでしょう! その案に乗りました!」
フリードリヒとエミリアは手を取って固く握手した。
________
翌日、議会を招集し、3人で計画を提案しようとしていた。だが、そんな時に、クリスチナの陣痛が始まったという報せが届く。
「悪いな! 俺はクリスチナにつきそうから、計画はお前達2人で進めてくれ!」
仕方なく、フリードリヒとエミリアだけで議会に出席する。
しかし、クリスチナ様の陣痛の知らせで、議会のメンバー達は、どこかソワソワした様子である。
「して、かような時にどの様な御用件でしょうか?」
宰相のマイヤー侯爵は、いつもよりも、せかせかと喋る。
「はい、実は今度の卒業パーティーで婚約発表をしようと思っております」
「何ですと!? お相手はどなたで!?」
「ここにいるエミリア嬢とです」
「まさか!? 平民の女と!? しかも、よりによってエミリア嬢とは! 絶対に認められん!」
「マイヤー殿、落ち着きなさい。過敏に反対するのは良くない」
「妃試験をすれば良いのでは?」
「それはいい案だ!」
白熱する議会のメンバーに、フリードリヒは慌てた。
「あ、いえ、これは計画で...」
「すまないが、私はクリスチナのところに行って来ても良いだろうか?」
空気を読むことを忘れたガルボ公爵がフリードリヒの発言をかき消し、大きな声で問いかけた。
女王陛下は頷いた。
「良いだろう。そんな様子ではガルボからは良い案は出ないだろう。行きなさい」
「陛下! 有難うございます!」
ガルボ公爵は雷(いかずち)の様な速さと荒々しさで、立ち去って行った。
「何をです?」
「すっごく良いアイディアだわ! 私ってば天才!」
「どんなアイディアなんだ?」
「もうすぐ、フリッツは卒業でしょ?」
「そうですが?」
「同じ事をするのよ!」
「同じ事?」
「フリッツは婚約してないから婚約破棄は出来ないけど、婚約を発表すればいいの!」
「どういう事ですか?」
「ヴィルの時と同じで、私がフリードリヒの隣に立って、フリードリヒは『婚約を宣言する!』って言えばいいのよ! すると、皆はまた勘違いするわけ!『平民の女と結婚しようとしている』と。そしたら、フリッツに密かに思いを寄せている、フリッツにとってのクリスチナ様みたいな人が『ちょっと待ったぁ~!』って、苦言を呈しに来るはず!」
学園の卒業パーティーのパートナーは、同学年の卒業生を選ぶ学生が多いが、すでに卒業している先輩や、まだ卒業していない後輩でもよいのだ。
「エミリア天才かよ!」
ヴィルヘルムはエミリアの案に感動した。
「そうでしょう!」
「そんなに上手くいきませんよ!」
「そんな事ないわ! クリスチナ様にヴィルと仲直りするための案を教えた時も、クリスチナ様は『そんなに簡単にいくかしら?』って仰ったけど、結局、上手くいったんだから!」
確かにエミリーは、馬鹿で突拍子もない事を言い出すが、今日の企画でも、令嬢達の本性を明かすという、調査的な意味では素晴らしい成果をあげている。
この案に乗るべきか?
いや、しかし、とんでもない事だと信用を失ったりしないか?
「議会に、また罰金を支払うことになっても良いのですか?」
「嫌に決まってるでしょ! だったら、先に議会のオッサン達に話しておけばいいじゃない!」
「それもそうですね...先に話しておけば、問題だったら却下されるはず...いいでしょう! その案に乗りました!」
フリードリヒとエミリアは手を取って固く握手した。
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翌日、議会を招集し、3人で計画を提案しようとしていた。だが、そんな時に、クリスチナの陣痛が始まったという報せが届く。
「悪いな! 俺はクリスチナにつきそうから、計画はお前達2人で進めてくれ!」
仕方なく、フリードリヒとエミリアだけで議会に出席する。
しかし、クリスチナ様の陣痛の知らせで、議会のメンバー達は、どこかソワソワした様子である。
「して、かような時にどの様な御用件でしょうか?」
宰相のマイヤー侯爵は、いつもよりも、せかせかと喋る。
「はい、実は今度の卒業パーティーで婚約発表をしようと思っております」
「何ですと!? お相手はどなたで!?」
「ここにいるエミリア嬢とです」
「まさか!? 平民の女と!? しかも、よりによってエミリア嬢とは! 絶対に認められん!」
「マイヤー殿、落ち着きなさい。過敏に反対するのは良くない」
「妃試験をすれば良いのでは?」
「それはいい案だ!」
白熱する議会のメンバーに、フリードリヒは慌てた。
「あ、いえ、これは計画で...」
「すまないが、私はクリスチナのところに行って来ても良いだろうか?」
空気を読むことを忘れたガルボ公爵がフリードリヒの発言をかき消し、大きな声で問いかけた。
女王陛下は頷いた。
「良いだろう。そんな様子ではガルボからは良い案は出ないだろう。行きなさい」
「陛下! 有難うございます!」
ガルボ公爵は雷(いかずち)の様な速さと荒々しさで、立ち去って行った。
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