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第二章
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「それは王子がワタクシのことを何が何でも手に入れたいと思って下さらないと! 誰だって自分を大切にしてくれる人と結婚したいものでしょう?」
「そうですね」
「そういう貴方は? どの令嬢の付き添いですの?」
フリードリヒはエミリアに視線を向けた。エミリアは男性に囲まれて、絶好調で話している。
「え!? あの令嬢!? 知らない子ですわ。田舎の伯爵令嬢かしら?」
「まぁ、そのようなものです」
「そう、ワタクシはゆっくりしたいから、貴方は別の方とお話しして下さいね」
エリーゼは、フリッツの身分が低いと思うなり、フリードリヒを追い払ったのである。
なるほど、エミリアの案は悪くなさそうだ。令嬢の本心が容易く聞ける。
エリーゼ嬢は実際に若いが、精神も幼い感じがする。
フリードリヒは次に、辺境伯令嬢グロリアに声をかけた。
「フリッツです。お話ししても?」
「私でよろしければ... リアと申します」
「沢山召し上がっておられますね。料理は口に合いましたか?」
「えぇ、とっても美味しいです」
「王子とは話されないのですか?」
「私なんかに王子の妃は無理ですよ!」
「何故ですか?」
「何故って...見れば分かるでしょう?」
グロリアは、少し大柄で少しふくよかな体型をしている。
「優れた体格の女性は素晴らしいですよ」
「お世辞は結構です。私は自分が不細工だって知っているんです。今日がマスケラ着用で本当に良かった」
フリードリヒはグロリアの容姿は知っているが、不細工だとは思った事がない。どちらかといえば、華奢でブリブリしている女性の方が嫌いであった。
「選ばれる気がないのに、何故こちらへ?」
「王室からの招待だから、断れなかっただけです」
「ですが、釣書の絵姿を見てダメだったら、この会には呼ばれないはずです」
「釣書の絵姿は美化されているのです」
「来た以上は王子に見染められる可能性はゼロではないはず、選ばれて王子と結婚することになるかもしれませんよ?」
「絶対にあり得ないですけど、選ばれても断ります」
「何故ですか? 王子が嫌いですか?」
「いえ、王子様は良い方そうですし、嫌いではありませんが、結婚すれば妃はいつも注目を浴びますから、それが嫌なのです。絶対、皆から珍獣の癖に、身の程知らずだって言われます」
「気にしなければ良いのでは?」
「フリッツ様は、人気者そうだから分からないかもしれませんが、他人から悪意を向けられて平気でいられる人間なんていないのですよ。私はひっそりと暮らしたいのです」
「そんなに卑屈にならなくてもリア嬢は魅力的ですよ」
「では、貴方は私と結婚出来るっていうのですか?」
「少なくとも、見た目は問題ありません」
「本当に!? ...フリッツ様がエスコートされてきた御令嬢はどなたですか?」
フリードリヒはエミリアを手で指し示す。
「やっぱり! 凄い美人じゃないですか! マスケラをしていたって分かります! ほっそりした手足に、小さなあご! 見事なブロンドで、胸も大きくて、男の人達が群がっているわ!」
「いえ、むしろエミリーが男性に取り付いているのですが...」
「美人だから自信があるのでしょう!? 同じことです! やっぱり、貴方も本当は美人がいいのよ!」
「美人がいいということに否定はしません。ですが、自信も美しさを決める要素だと思います」
「綺麗ごとだわ!」
「そうですか...これ以上は、お邪魔になるでしょうから失礼致します」
フリードリヒはグロリアのもとから離れた。
被害妄想のある女性では妃は務まらない。辺境伯は国境線を守る強力な騎士団を保有しているし、見た目も好みのタイプで悪くない相手だったが、残念だ。
「そうですね」
「そういう貴方は? どの令嬢の付き添いですの?」
フリードリヒはエミリアに視線を向けた。エミリアは男性に囲まれて、絶好調で話している。
「え!? あの令嬢!? 知らない子ですわ。田舎の伯爵令嬢かしら?」
「まぁ、そのようなものです」
「そう、ワタクシはゆっくりしたいから、貴方は別の方とお話しして下さいね」
エリーゼは、フリッツの身分が低いと思うなり、フリードリヒを追い払ったのである。
なるほど、エミリアの案は悪くなさそうだ。令嬢の本心が容易く聞ける。
エリーゼ嬢は実際に若いが、精神も幼い感じがする。
フリードリヒは次に、辺境伯令嬢グロリアに声をかけた。
「フリッツです。お話ししても?」
「私でよろしければ... リアと申します」
「沢山召し上がっておられますね。料理は口に合いましたか?」
「えぇ、とっても美味しいです」
「王子とは話されないのですか?」
「私なんかに王子の妃は無理ですよ!」
「何故ですか?」
「何故って...見れば分かるでしょう?」
グロリアは、少し大柄で少しふくよかな体型をしている。
「優れた体格の女性は素晴らしいですよ」
「お世辞は結構です。私は自分が不細工だって知っているんです。今日がマスケラ着用で本当に良かった」
フリードリヒはグロリアの容姿は知っているが、不細工だとは思った事がない。どちらかといえば、華奢でブリブリしている女性の方が嫌いであった。
「選ばれる気がないのに、何故こちらへ?」
「王室からの招待だから、断れなかっただけです」
「ですが、釣書の絵姿を見てダメだったら、この会には呼ばれないはずです」
「釣書の絵姿は美化されているのです」
「来た以上は王子に見染められる可能性はゼロではないはず、選ばれて王子と結婚することになるかもしれませんよ?」
「絶対にあり得ないですけど、選ばれても断ります」
「何故ですか? 王子が嫌いですか?」
「いえ、王子様は良い方そうですし、嫌いではありませんが、結婚すれば妃はいつも注目を浴びますから、それが嫌なのです。絶対、皆から珍獣の癖に、身の程知らずだって言われます」
「気にしなければ良いのでは?」
「フリッツ様は、人気者そうだから分からないかもしれませんが、他人から悪意を向けられて平気でいられる人間なんていないのですよ。私はひっそりと暮らしたいのです」
「そんなに卑屈にならなくてもリア嬢は魅力的ですよ」
「では、貴方は私と結婚出来るっていうのですか?」
「少なくとも、見た目は問題ありません」
「本当に!? ...フリッツ様がエスコートされてきた御令嬢はどなたですか?」
フリードリヒはエミリアを手で指し示す。
「やっぱり! 凄い美人じゃないですか! マスケラをしていたって分かります! ほっそりした手足に、小さなあご! 見事なブロンドで、胸も大きくて、男の人達が群がっているわ!」
「いえ、むしろエミリーが男性に取り付いているのですが...」
「美人だから自信があるのでしょう!? 同じことです! やっぱり、貴方も本当は美人がいいのよ!」
「美人がいいということに否定はしません。ですが、自信も美しさを決める要素だと思います」
「綺麗ごとだわ!」
「そうですか...これ以上は、お邪魔になるでしょうから失礼致します」
フリードリヒはグロリアのもとから離れた。
被害妄想のある女性では妃は務まらない。辺境伯は国境線を守る強力な騎士団を保有しているし、見た目も好みのタイプで悪くない相手だったが、残念だ。
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