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結婚式翌日、ごく親しい仲間だけが集まる昼食会が王宮の庭園で行われた。
そこには、平民のエミリアも招待されていた。
「結婚おめでとうですぅ~! 無事に結婚出来て良かったですね! 私のお陰なんだから感謝して下さいね!」
「有難う。感謝しております」
クリスチナは最近、エミリアの良さが分かるようになっていた。
欲望に忠実でエミリア嬢は分かりやすい。変な駆け引きをしなくていいし、気を遣わないで接する事が出来る。明るくて、自由。利己的な動きには注意しなくてはならないが、意外と物事を客観的に見る力があり、良い相談相手になる。
殿下がエミリア様を気に入ったことも今なら頷ける。そう、エミリア様は殿下に似ているのだ。
そう思ったら、クリスチナもエミリアのことが好きになってしまったのである。
「だったら! 独身男性を紹介して下さい~! 今日は上流貴族の方がいっぱい来ているのでしょ?」
エミリアは結局、あの日の舞踏会ではパートナーをゲット出来ず、就職も出来なかった。そこで、クリスチナにお金を借りて結婚・恋愛相談所を開いたのだが、これが中々評判が良く。女性実業家として活躍している。
沢山の良縁を結んだが、エミリア自身は結婚出来ていない。
「閣下が何人か紹介したと申しておりましたが、合わない方でした?」
「そうなんです~! アイツら平民の女をはなから見下してて嫌な感じだったんです!」
「まぁ、そうでしたか...申し訳ない事をしてしまいましたね」
「別にクリスチナ様の所為じゃないですけど、私はこんなに美人で、有能なのに、どうして結婚出来ないの!? おかしくない!?」
「強欲な所為だろ?」
ヴィルヘルムが突っ込みを入れる。
「ヴィルだって強欲じゃない! なのに結婚出来たんだから、私だって出来るわよ! 政略結婚させて下さい~! 王家の権力でぇ~!」
「エミリア様、また言葉が乱れておりますよ? 貴族と結婚されたいのでしたら、言葉から直された方が良いかと」
「言葉を直せば宜しいですかぁ~?」
「そもそも、私とクリスチナは政略結婚じゃない! れ、恋愛結婚だ!」
「はいはい、左様でございますねぇ~。じゃあ、私にも恋愛結婚させて下さい~! イケメンで金持ちで若くて権力があって気の利く優しい男性となら恋愛結婚が出来る気がします! 紹介して下さい!」
「結婚相談にくる男性と結婚すればいいだろ?」
「嫌よ! 気の利かない男ばっかりなのよ!? クリスチナ様みたいに苦労したくないわぁ~」
「何だと!?」
ヴィルヘルムは一瞬ムッとしたが、クリスチナが声を漏らして笑うので、ヴィルヘルムはクリスチナの笑う姿に釘付けになった。
「はぁ~、やんなっちゃうわぁ~。クリスチナ様が笑っただけで、そんなにメロメロになるなら、最初っから好きだの愛してるだの言えばいいのよ。それを愚痴愚痴卑屈な事ばっかり言うから、私は巻き込まれていい迷惑だったわ。お陰様で貴重な青春時代を無駄にしちゃったじゃない」
「エミリア様の意見には全く同感です」
第二王子のフリードリヒが話しかけてきた。
「わぁ! フリードリヒ王子! 気が合いますねぇ~! だったら、私となんてどうですかぁ?」
エミリアは体をくねくねさせてアピールする。
「お申し出は嬉しいのですが、私も賢くて権力があり財力があり色々なことに寛容な美人の伴侶がよいのです」
「何よ!? 我儘ね! そんな我儘なことを言ってたら結婚出来ませんよ!?」
「お前ら、実は似た者同士だな」
「兄上に言われたくありません! クリスチナ様と結婚して、1番強欲なのは兄上ですからね!」
ヴィルヘルムは、フリードリヒの言葉にヒヤッとした。以前、フリードリヒにクリスチナを愛しているかと尋ねた時、迷いなく即答した言葉を思い出す。
『もちろんです!』
まさか...あの言葉は嘘偽りのない真実...?
だが、常に笑顔の仮面を被るフリードリヒの本心知ることは、きっと難しいだろう。それに、フリードリヒがどう思っていても、クリスチナの命はすでに私のものだ。
「いえ? 1番強欲なのはワタクシでございます」
「クリスチナが?」
「欲しいものは全部手に入れましたから」
クリスチナは自身の丸みのあるお腹を撫でた。そんなクリスチナの胸元ではネックレスのアイスブルーダイヤが光っている。
季節外れの警備兵(蝶)が、王宮の庭園を優雅に巡回し、今日も平和を守っていた。
本編 END
→後日談へ続く
_________
狸田真より
本編完結まで、お読み下さって本当に有難うございます。
今作は、最近流行りの「捨てる」「壊す」という傾向とは真逆の、「継続する」「守る」をテーマに書いた作品です。
また、人は良いところもあれば悪いところもあるという、多面性を描いています。
かなり思想性が強く、読み辛かった箇所も多々あったと思います。(今回は編集スタッフの力を借りずに単独で書いたので暴走しました)
しかしながら、この作品が、人間関係を見直すきっかけとなり、読者様の今後の人生が豊かになればいいなと願っております。
そこには、平民のエミリアも招待されていた。
「結婚おめでとうですぅ~! 無事に結婚出来て良かったですね! 私のお陰なんだから感謝して下さいね!」
「有難う。感謝しております」
クリスチナは最近、エミリアの良さが分かるようになっていた。
欲望に忠実でエミリア嬢は分かりやすい。変な駆け引きをしなくていいし、気を遣わないで接する事が出来る。明るくて、自由。利己的な動きには注意しなくてはならないが、意外と物事を客観的に見る力があり、良い相談相手になる。
殿下がエミリア様を気に入ったことも今なら頷ける。そう、エミリア様は殿下に似ているのだ。
そう思ったら、クリスチナもエミリアのことが好きになってしまったのである。
「だったら! 独身男性を紹介して下さい~! 今日は上流貴族の方がいっぱい来ているのでしょ?」
エミリアは結局、あの日の舞踏会ではパートナーをゲット出来ず、就職も出来なかった。そこで、クリスチナにお金を借りて結婚・恋愛相談所を開いたのだが、これが中々評判が良く。女性実業家として活躍している。
沢山の良縁を結んだが、エミリア自身は結婚出来ていない。
「閣下が何人か紹介したと申しておりましたが、合わない方でした?」
「そうなんです~! アイツら平民の女をはなから見下してて嫌な感じだったんです!」
「まぁ、そうでしたか...申し訳ない事をしてしまいましたね」
「別にクリスチナ様の所為じゃないですけど、私はこんなに美人で、有能なのに、どうして結婚出来ないの!? おかしくない!?」
「強欲な所為だろ?」
ヴィルヘルムが突っ込みを入れる。
「ヴィルだって強欲じゃない! なのに結婚出来たんだから、私だって出来るわよ! 政略結婚させて下さい~! 王家の権力でぇ~!」
「エミリア様、また言葉が乱れておりますよ? 貴族と結婚されたいのでしたら、言葉から直された方が良いかと」
「言葉を直せば宜しいですかぁ~?」
「そもそも、私とクリスチナは政略結婚じゃない! れ、恋愛結婚だ!」
「はいはい、左様でございますねぇ~。じゃあ、私にも恋愛結婚させて下さい~! イケメンで金持ちで若くて権力があって気の利く優しい男性となら恋愛結婚が出来る気がします! 紹介して下さい!」
「結婚相談にくる男性と結婚すればいいだろ?」
「嫌よ! 気の利かない男ばっかりなのよ!? クリスチナ様みたいに苦労したくないわぁ~」
「何だと!?」
ヴィルヘルムは一瞬ムッとしたが、クリスチナが声を漏らして笑うので、ヴィルヘルムはクリスチナの笑う姿に釘付けになった。
「はぁ~、やんなっちゃうわぁ~。クリスチナ様が笑っただけで、そんなにメロメロになるなら、最初っから好きだの愛してるだの言えばいいのよ。それを愚痴愚痴卑屈な事ばっかり言うから、私は巻き込まれていい迷惑だったわ。お陰様で貴重な青春時代を無駄にしちゃったじゃない」
「エミリア様の意見には全く同感です」
第二王子のフリードリヒが話しかけてきた。
「わぁ! フリードリヒ王子! 気が合いますねぇ~! だったら、私となんてどうですかぁ?」
エミリアは体をくねくねさせてアピールする。
「お申し出は嬉しいのですが、私も賢くて権力があり財力があり色々なことに寛容な美人の伴侶がよいのです」
「何よ!? 我儘ね! そんな我儘なことを言ってたら結婚出来ませんよ!?」
「お前ら、実は似た者同士だな」
「兄上に言われたくありません! クリスチナ様と結婚して、1番強欲なのは兄上ですからね!」
ヴィルヘルムは、フリードリヒの言葉にヒヤッとした。以前、フリードリヒにクリスチナを愛しているかと尋ねた時、迷いなく即答した言葉を思い出す。
『もちろんです!』
まさか...あの言葉は嘘偽りのない真実...?
だが、常に笑顔の仮面を被るフリードリヒの本心知ることは、きっと難しいだろう。それに、フリードリヒがどう思っていても、クリスチナの命はすでに私のものだ。
「いえ? 1番強欲なのはワタクシでございます」
「クリスチナが?」
「欲しいものは全部手に入れましたから」
クリスチナは自身の丸みのあるお腹を撫でた。そんなクリスチナの胸元ではネックレスのアイスブルーダイヤが光っている。
季節外れの警備兵(蝶)が、王宮の庭園を優雅に巡回し、今日も平和を守っていた。
本編 END
→後日談へ続く
_________
狸田真より
本編完結まで、お読み下さって本当に有難うございます。
今作は、最近流行りの「捨てる」「壊す」という傾向とは真逆の、「継続する」「守る」をテーマに書いた作品です。
また、人は良いところもあれば悪いところもあるという、多面性を描いています。
かなり思想性が強く、読み辛かった箇所も多々あったと思います。(今回は編集スタッフの力を借りずに単独で書いたので暴走しました)
しかしながら、この作品が、人間関係を見直すきっかけとなり、読者様の今後の人生が豊かになればいいなと願っております。
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