【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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「そうですよ! それなのに、あんまり薄情じゃないですか? 殿下は不安で気を引きたかっただけなのに、本当に婚約破棄して、新たに婚約者を募るなんて!」

「婚約破棄はしていませんが? まして、他に婚約者を募るなどしておりません。彼らは、今日、ワタクシが1人で惨めな思いをしないように協力をお願いした方々です」

「え? パーティーで一緒に過ごす人をお金で雇ったの!? 友達がいないなんて悲惨!」

「いえ、彼らは無償で集まって下さったのです」

「そう? でも、クリスチナ様のお父様が、婚約を白紙にするって言ってたわよ? 他の求婚者と並んで、ヴィル王子が再度求婚して、それでクリスチナ様が選んだら結婚を許すって!」

「そうなのですか!?」

「そうよ」

 思えば、協力者の男性達としていた手紙のやり取りで、会話が噛み合わない事が多々あった。

 協力へのお礼や謝礼の提案について手紙を出したら、『何の計画ですか?』と尋ねられたり、社交辞令にしては大袈裟なワタクシへの称賛の言葉が書き綴られていたりした。

 何度かやり取りをしている内に、甘ったるいキザな文調から、ビジネスライクな言葉へと変化した者もいる。

 つまり、協力者の男性達は、当初は本当の求婚者であったのだ!

 そして、それは、ワタクシと殿下との婚約破棄が対外的に知られていたということ。

 知らなかったのはワタクシだけ? 本当の本当に、婚約破棄が成立してしまっていた!? どうして!? あんなに婚約破棄はしたくないと皆様にお願いしたのに! 閣下がワタクシの意思を無視して勝手に決定した!? それを議会が承認したの!?

 クリスチナはフラフラとよろめき、その場にしゃがんだ。

「大丈夫!?」

「え、えぇ...」

 クリスチナの顔面は蒼白だった。

 殿下はワタクシを愛して下さっていたのに、婚約破棄が成立してしまうなんて...

 そして、殿下は求婚せずにいなくなってしまった。

 愛が冷めてしまったということだろう。それなのに、ワタクシは嫉妬してもらえたと思い喜んでいたなんて...なんて愚かなの!

「大丈夫だったら落ち込んでないで、罰金の事をなんとかしてよ! クリスチナ様とヴィル王子の所為だって分かったんでしょ!?」

「エミリア嬢の失敗とワタクシの失敗は話が別です。ワタクシが補う義務は生じません」

「そんな! あ! そうだ! だったら、私が仲直りさせてあげれば、ご褒美に罰金をチャラにしてくれたりします?」

「そんなことがエミリア嬢に出来るのですか?」

「私はヴィル王子の友達ですよ!? しかも、めっちゃ仲良しの!」

「ワタクシを助けて下さるの?」

「もちろん! だから、ご褒美を下さい! ね?」

「分かったわ。上手くいったら金貨100枚を差し上げましょう」

 (城仕えの女中の月給が金貨10枚程度)

「金貨200枚で!」

「罰金は100枚でしょう?」

「だって、罰金だけ支払ってもらっても、お金が無くて生活出来ないの! それじゃあ、生きていけないから死刑と同じでしょ!? お願い! 150枚でもいいから!」

「では、150枚差し上げます」

「やった! 絶対よ?」

「えぇ、お約束します」

「じゃあ、クリスチナ様だけにお教えするので、ちょっとこちらへ来て下さい!」

 エミリアは護衛騎士に聞かれないように耳打ちし、クリスチナに作戦を伝える。

「そんなに簡単にいくかしら?」

「大丈夫! 絶対成功しますから、私を信じて下さい!」

「分かりました。やってみます」

 クリスチナはヴィルヘルムを探して庭へと向かった。
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