34 / 73
34
しおりを挟む
「そうですよ! それなのに、あんまり薄情じゃないですか? 殿下は不安で気を引きたかっただけなのに、本当に婚約破棄して、新たに婚約者を募るなんて!」
「婚約破棄はしていませんが? まして、他に婚約者を募るなどしておりません。彼らは、今日、ワタクシが1人で惨めな思いをしないように協力をお願いした方々です」
「え? パーティーで一緒に過ごす人をお金で雇ったの!? 友達がいないなんて悲惨!」
「いえ、彼らは無償で集まって下さったのです」
「そう? でも、クリスチナ様のお父様が、婚約を白紙にするって言ってたわよ? 他の求婚者と並んで、ヴィル王子が再度求婚して、それでクリスチナ様が選んだら結婚を許すって!」
「そうなのですか!?」
「そうよ」
思えば、協力者の男性達としていた手紙のやり取りで、会話が噛み合わない事が多々あった。
協力へのお礼や謝礼の提案について手紙を出したら、『何の計画ですか?』と尋ねられたり、社交辞令にしては大袈裟なワタクシへの称賛の言葉が書き綴られていたりした。
何度かやり取りをしている内に、甘ったるいキザな文調から、ビジネスライクな言葉へと変化した者もいる。
つまり、協力者の男性達は、当初は本当の求婚者であったのだ!
そして、それは、ワタクシと殿下との婚約破棄が対外的に知られていたということ。
知らなかったのはワタクシだけ? 本当の本当に、婚約破棄が成立してしまっていた!? どうして!? あんなに婚約破棄はしたくないと皆様にお願いしたのに! 閣下がワタクシの意思を無視して勝手に決定した!? それを議会が承認したの!?
クリスチナはフラフラとよろめき、その場にしゃがんだ。
「大丈夫!?」
「え、えぇ...」
クリスチナの顔面は蒼白だった。
殿下はワタクシを愛して下さっていたのに、婚約破棄が成立してしまうなんて...
そして、殿下は求婚せずにいなくなってしまった。
愛が冷めてしまったということだろう。それなのに、ワタクシは嫉妬してもらえたと思い喜んでいたなんて...なんて愚かなの!
「大丈夫だったら落ち込んでないで、罰金の事をなんとかしてよ! クリスチナ様とヴィル王子の所為だって分かったんでしょ!?」
「エミリア嬢の失敗とワタクシの失敗は話が別です。ワタクシが補う義務は生じません」
「そんな! あ! そうだ! だったら、私が仲直りさせてあげれば、ご褒美に罰金をチャラにしてくれたりします?」
「そんなことがエミリア嬢に出来るのですか?」
「私はヴィル王子の友達ですよ!? しかも、めっちゃ仲良しの!」
「ワタクシを助けて下さるの?」
「もちろん! だから、ご褒美を下さい! ね?」
「分かったわ。上手くいったら金貨100枚を差し上げましょう」
(城仕えの女中の月給が金貨10枚程度)
「金貨200枚で!」
「罰金は100枚でしょう?」
「だって、罰金だけ支払ってもらっても、お金が無くて生活出来ないの! それじゃあ、生きていけないから死刑と同じでしょ!? お願い! 150枚でもいいから!」
「では、150枚差し上げます」
「やった! 絶対よ?」
「えぇ、お約束します」
「じゃあ、クリスチナ様だけにお教えするので、ちょっとこちらへ来て下さい!」
エミリアは護衛騎士に聞かれないように耳打ちし、クリスチナに作戦を伝える。
「そんなに簡単にいくかしら?」
「大丈夫! 絶対成功しますから、私を信じて下さい!」
「分かりました。やってみます」
クリスチナはヴィルヘルムを探して庭へと向かった。
「婚約破棄はしていませんが? まして、他に婚約者を募るなどしておりません。彼らは、今日、ワタクシが1人で惨めな思いをしないように協力をお願いした方々です」
「え? パーティーで一緒に過ごす人をお金で雇ったの!? 友達がいないなんて悲惨!」
「いえ、彼らは無償で集まって下さったのです」
「そう? でも、クリスチナ様のお父様が、婚約を白紙にするって言ってたわよ? 他の求婚者と並んで、ヴィル王子が再度求婚して、それでクリスチナ様が選んだら結婚を許すって!」
「そうなのですか!?」
「そうよ」
思えば、協力者の男性達としていた手紙のやり取りで、会話が噛み合わない事が多々あった。
協力へのお礼や謝礼の提案について手紙を出したら、『何の計画ですか?』と尋ねられたり、社交辞令にしては大袈裟なワタクシへの称賛の言葉が書き綴られていたりした。
何度かやり取りをしている内に、甘ったるいキザな文調から、ビジネスライクな言葉へと変化した者もいる。
つまり、協力者の男性達は、当初は本当の求婚者であったのだ!
そして、それは、ワタクシと殿下との婚約破棄が対外的に知られていたということ。
知らなかったのはワタクシだけ? 本当の本当に、婚約破棄が成立してしまっていた!? どうして!? あんなに婚約破棄はしたくないと皆様にお願いしたのに! 閣下がワタクシの意思を無視して勝手に決定した!? それを議会が承認したの!?
クリスチナはフラフラとよろめき、その場にしゃがんだ。
「大丈夫!?」
「え、えぇ...」
クリスチナの顔面は蒼白だった。
殿下はワタクシを愛して下さっていたのに、婚約破棄が成立してしまうなんて...
そして、殿下は求婚せずにいなくなってしまった。
愛が冷めてしまったということだろう。それなのに、ワタクシは嫉妬してもらえたと思い喜んでいたなんて...なんて愚かなの!
「大丈夫だったら落ち込んでないで、罰金の事をなんとかしてよ! クリスチナ様とヴィル王子の所為だって分かったんでしょ!?」
「エミリア嬢の失敗とワタクシの失敗は話が別です。ワタクシが補う義務は生じません」
「そんな! あ! そうだ! だったら、私が仲直りさせてあげれば、ご褒美に罰金をチャラにしてくれたりします?」
「そんなことがエミリア嬢に出来るのですか?」
「私はヴィル王子の友達ですよ!? しかも、めっちゃ仲良しの!」
「ワタクシを助けて下さるの?」
「もちろん! だから、ご褒美を下さい! ね?」
「分かったわ。上手くいったら金貨100枚を差し上げましょう」
(城仕えの女中の月給が金貨10枚程度)
「金貨200枚で!」
「罰金は100枚でしょう?」
「だって、罰金だけ支払ってもらっても、お金が無くて生活出来ないの! それじゃあ、生きていけないから死刑と同じでしょ!? お願い! 150枚でもいいから!」
「では、150枚差し上げます」
「やった! 絶対よ?」
「えぇ、お約束します」
「じゃあ、クリスチナ様だけにお教えするので、ちょっとこちらへ来て下さい!」
エミリアは護衛騎士に聞かれないように耳打ちし、クリスチナに作戦を伝える。
「そんなに簡単にいくかしら?」
「大丈夫! 絶対成功しますから、私を信じて下さい!」
「分かりました。やってみます」
クリスチナはヴィルヘルムを探して庭へと向かった。
0
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。

【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様
日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。
春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。
夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。
真実とは。老医師の決断とは。
愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。
全十二話。完結しています。

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる