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「はぁ!? じゃあ、何で婚約することになったのよ?」

「そんなの決まってるだろ...」

「女王様のお気に入りとか?」

「違う...」

「じゃあ、なによ?」

「そんなの...私が結婚したいって言ったからに決まってる」

「は!? どうして!?」

「どしてって...どうだって良いだろ!」

「だってブスじゃない!?」

「お前...また不敬罪で捕まるぞ?」

「い、今のは冗談よ! でも、私の方が美人でしょ?」

「エミリアは見た目は美人だが、心は綺麗じゃないだろ?」

「ちょっと! 馬鹿にしてるの!?」

「事実を言っただけだ。自己中心的だし、怒りっぽいし、言葉は雑だし、女王とか無理だろ?」

「ヴィルだってそうじゃない!」

「私は第一王子に生まれてしまったから、仕方がないんだ」

「あっそ...でも...それで? どうして、クリスチナ様を選んだの? 心が綺麗だぁ~とか言うつもり?」

 ヴィルヘルムは庭を眺めた。

「アイツは俺が初めて任命した家臣なんだ」

「そうなんだ?」

「でも、公女で才女だから、他国の王子に嫁ぐ話があったんだよ。その王子は30歳も歳の離れたオッサンだったんだぞ!?」

「いいじゃない? クリスチナ様なら喜んで政略結婚しそうだし」

「いい訳あるか! その時、クリスチナはたったの10歳だったんだぞ!? その国は、この国とは敵対関係にある国で、女性蔑視も凄いんだ。議会は、クリスチナをそんな国の妃にして、内部から国を侵略するつもりだったんだ」

「クリスチナ様なら上手くやりそうじゃない」

「クリスチナは私の家臣なんだから、一生私の側にいないとダメだろ!?」

「別に? スパイのエージェントだって家臣は家臣じゃない?」

「とにかく! 私は、クリスチナは私の家臣だからダメだって言ったんだ! そしたら、議会の奴らは何て言ったと思う?」

「さぁ?」

「クリスチナ公女は国内にいても他の有力貴族と結婚しなければならないので、殿下の側仕えは出来ませんって言ったんだ! おかしな話だろ? 私の家臣なのに!」

「ふ、ふーん...」

「だが、一つだけ方法があると陛下があると教えくれた」

「それで婚約?」

「そうだ。ずっと一緒にいたいなら結婚するしかないと。だから、私は議会を説得して婚約を申し入れたんだ」

「やってらんない...」

「何が?」

「これ以上、馬鹿やってられないって言ったのよ! 結局、最初っから私にチャンスなんてなかったってことでしょ!? 婚約者が大好きだったら、他の女に悪口なんて言うんじゃいわよ! 別れたいって誤解するでしょ!? 好きなら、好きって言って、キスして、押し倒せばいいじゃない! 馬鹿なの!?」

「馬鹿で悪かったな! でも、そうか...そうすれば良かったのか...」

「そんなことは、もう、どうでもいいから、お金貸してよ! 金貨100枚なんてヴィルには、なんて事ないお金でしょ?」

「私のお金は個人的な財産でも監査が入いるから無理だ。小銭ならともかく、金貨100枚も必要ならクリスチナに相談しないと」

 平均的な庶民の月収は金貨3~5枚である。

「こんな時にもクリスチナ様の許可がいる訳!? じゃあ、クリスチナ様に頼んでよ! ヴィルのお願いなら聞いてくれるんでしょ?」

「まぁ、それなら出来るが、私は今、接触禁止命令が出ているから、舞踏会がある日まで会う事が出来ない」

「舞踏会!? 王宮で舞踏会があるの?」
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