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しおりを挟む「すみません。もしかして・・・私、お待たせしてしまったでしょうか?」
私は服部さんに謝罪した。
「いえ、そんな事ありません。実は車で来たので、早めに来ていたのですよ。」
服部さんはにこやかに言う。
「そうだったのですか?それではいつも姉の所へ来るときは車だったのですか?」
「いえ、普段は電車で来るのですけど・・・今日は初めて車で来たのです。取り合えず、どこかお店に入ってお話しませんか?」
「ええ、そうですね。」
そして私と服部さんは駅の並びのカフェに入ることにした。
カランカラン
ドアを押して中へ入るとお洒落な真鋳のドアベルが鳴った。
「加藤さん、真ん中よりも奥の席へ座りませんか?その方が落ち着いて話が出来ると思うので。」
先を行く服部さんが振り返ると話しかけてきた。
「ええ、そうですね。」
服部さんの意見に頷いた。
「それではあの席にしましょう。」
示した場所は窓際の一番奥のボックス席だった。2人で向かい合わせに座ると、服部さんがメニューを広げてきた。
「どうぞ、加藤さん。」
「ありがとうございます。」
お辞儀をし、メニューを受け取るとパラリとめくった。うん・・・やっぱり無難なところでアイス・コーヒーにしよう。パタンとメニューを閉じると私は言った。
「あの、私はアイス・コーヒーにしようかと思います。」
「それでは私も同じものにします。」
すると、そこへタイミング良く、若い男性ウェイターが水の入ったグラスを2つ運んできた。
「失礼致します。」
コトンコトン
私達の目の前にグラスを置くと、ウェイターは言った。
「ご注文の品はお決まりでしょうか?」
「アイスコーヒー2つお願いします。」
「はい、かしこまりました。アイス・コーヒーを2つですね?少々お待ち下さい。」
ウェイターは頭を下げると去って行った。そして服部さんが口を開いた。
「今更ですが、改めてご挨拶させて頂きます。この度、加藤忍さんの担当になりました服部と申します。」
「加藤鈴音です。こちらこそよろしくお願い致します。」
私も頭を下げると、服部さんが言った。
「ところで加藤さん。体調は・・いかがですか?交通事故の後の後遺症等で苦しんでいませんか?何かあれば私どもにご相談下さいね?」
「後遺症・・・ですか?」
少し考えた後、私は尋ねてみる事にした。
「あの・・・後遺症と言っていいのかどうかは分りませんが・・しょっちゅう、急激な眠気に襲われて・・一度眠ってしまうと何時間も眠ってしまう症状が合って少し困ってるんです。」
「急激な眠気・・・ですか?う~ん・・・・。」
服部さんは腕組みをして暫く考え込んでいたが、やがて頭を下げてきた。
「申し訳ありません・・・今まで聞いたことが無い症例なので・・・。」
「い、いえ。いいんですよ。来週、退院後初めて病院を受診するので、その時にお医者さんに相談するつもりなので。」
「ですが・・・。」
服部さんはショボンとしている。何だか、かえって悪い事をしてしまったような気分になってしまった。その時・・・。
「お待たせいたしました。」
タイミングよくアイスコーヒーが運ばれてきた。ウェイターは私達の前に細長いグラスに注がれたアイスコーヒーを置き、マドラーとコーヒーミルク、ガムシロップを置くと一礼した。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイターが去ると、早速私は言った。
「服部さんはブラック派ですか?それとも甘い方がお好きですか?」
「は?あ、そうですね。私はブラック派です。」
「気が合いますね。私もブラック派なんです。」
そして私は一口ストローでアイスコーヒーを飲んだ。うん、苦みの聞いたコーヒーの味が頭をシャキンとさせてくれた気がする。
「服部さん。早速ですが、姉の今の病状を教えて頂けますか・・・?」
私はじっと服部さんを見つめた―。
私は服部さんに謝罪した。
「いえ、そんな事ありません。実は車で来たので、早めに来ていたのですよ。」
服部さんはにこやかに言う。
「そうだったのですか?それではいつも姉の所へ来るときは車だったのですか?」
「いえ、普段は電車で来るのですけど・・・今日は初めて車で来たのです。取り合えず、どこかお店に入ってお話しませんか?」
「ええ、そうですね。」
そして私と服部さんは駅の並びのカフェに入ることにした。
カランカラン
ドアを押して中へ入るとお洒落な真鋳のドアベルが鳴った。
「加藤さん、真ん中よりも奥の席へ座りませんか?その方が落ち着いて話が出来ると思うので。」
先を行く服部さんが振り返ると話しかけてきた。
「ええ、そうですね。」
服部さんの意見に頷いた。
「それではあの席にしましょう。」
示した場所は窓際の一番奥のボックス席だった。2人で向かい合わせに座ると、服部さんがメニューを広げてきた。
「どうぞ、加藤さん。」
「ありがとうございます。」
お辞儀をし、メニューを受け取るとパラリとめくった。うん・・・やっぱり無難なところでアイス・コーヒーにしよう。パタンとメニューを閉じると私は言った。
「あの、私はアイス・コーヒーにしようかと思います。」
「それでは私も同じものにします。」
すると、そこへタイミング良く、若い男性ウェイターが水の入ったグラスを2つ運んできた。
「失礼致します。」
コトンコトン
私達の目の前にグラスを置くと、ウェイターは言った。
「ご注文の品はお決まりでしょうか?」
「アイスコーヒー2つお願いします。」
「はい、かしこまりました。アイス・コーヒーを2つですね?少々お待ち下さい。」
ウェイターは頭を下げると去って行った。そして服部さんが口を開いた。
「今更ですが、改めてご挨拶させて頂きます。この度、加藤忍さんの担当になりました服部と申します。」
「加藤鈴音です。こちらこそよろしくお願い致します。」
私も頭を下げると、服部さんが言った。
「ところで加藤さん。体調は・・いかがですか?交通事故の後の後遺症等で苦しんでいませんか?何かあれば私どもにご相談下さいね?」
「後遺症・・・ですか?」
少し考えた後、私は尋ねてみる事にした。
「あの・・・後遺症と言っていいのかどうかは分りませんが・・しょっちゅう、急激な眠気に襲われて・・一度眠ってしまうと何時間も眠ってしまう症状が合って少し困ってるんです。」
「急激な眠気・・・ですか?う~ん・・・・。」
服部さんは腕組みをして暫く考え込んでいたが、やがて頭を下げてきた。
「申し訳ありません・・・今まで聞いたことが無い症例なので・・・。」
「い、いえ。いいんですよ。来週、退院後初めて病院を受診するので、その時にお医者さんに相談するつもりなので。」
「ですが・・・。」
服部さんはショボンとしている。何だか、かえって悪い事をしてしまったような気分になってしまった。その時・・・。
「お待たせいたしました。」
タイミングよくアイスコーヒーが運ばれてきた。ウェイターは私達の前に細長いグラスに注がれたアイスコーヒーを置き、マドラーとコーヒーミルク、ガムシロップを置くと一礼した。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイターが去ると、早速私は言った。
「服部さんはブラック派ですか?それとも甘い方がお好きですか?」
「は?あ、そうですね。私はブラック派です。」
「気が合いますね。私もブラック派なんです。」
そして私は一口ストローでアイスコーヒーを飲んだ。うん、苦みの聞いたコーヒーの味が頭をシャキンとさせてくれた気がする。
「服部さん。早速ですが、姉の今の病状を教えて頂けますか・・・?」
私はじっと服部さんを見つめた―。
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