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13 (2日目)

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 翌日。クリスチナは侍女に叩き起こされた。

「クリスチナ様! 大変です! 起きて下さい!」

 クリスチナは目を開けた。眠ったというのに相も変わらず頭が痛い。そして体が鉛のように重たく感じた。

「何事ですか?」

「それが、その...殿下が...花を...とにかく急いで下さい!」

 殿下が花を!? 早速、女王陛下に説得されて謝罪にでも来てくれたのだろうか?

「半刻ほどお待たせするとお伝えし、食事をお出しして。ワタクシは寝起きで身支度が出来ていないと。そして、急いで入浴と着替えの準備を!」

 そう命じたものの、体が重くて動かない。

 何とか体を起こしてベルを鳴らし、別の侍女を呼ぶと、浴室に運んでもらった。

 侍女に体を洗ってもらいながら、ぼんやりと殿下の事を考える。

 そうか...謝りに来てくれたんだ。あの気の利かない殿下が花を持って?

 どんな花だろう? 花言葉など殿下が知っているはずもないし、きっと庭の花をむしって来たのだろう。後で庭師に怒られるに違いない。

 ふふっ。

 きっと謝罪の言葉も気が利かないに違いない。差し詰め『婚約破棄は言い過ぎた』とか『私も悪かったが、お前も悪かった』...もしくは、無言で花を突き出してくるかもしれない。

 お風呂から上がり、ホットレモンに蜂蜜と塩を入れたドリンクを飲むと、幾分か体が動くようになった。

「今日はどのようなお召し物を?」

 侍女の問いかけに、クリスチナは「ピンクの花柄のドレスを」と指示した。

 侍女はニヤつき、「かしこまりました」といって、準備に取り掛かった。

 普段のクリスチナは仕事がしやすいグレーやブラウンのドレスばかり着ている。クリスチナの意図を察した侍女達は、お化粧品やジュエリーを用意し、クリスチナを飾った。

 殿下が歩み寄ってくれたならば、ワタクシも歩み寄らなくては! 着飾って美しくすれば、もしかしたら、婚約破棄するとは言わないかもしれない。

 しかし、鏡に映った自分の姿を見てガッカリする。

 どう考えても、エミリア嬢よりも美しいとは思えなかった。


 クリスチナは準備を終え、殿下の待つダイニングへと足を踏み入れた。

「お待たせして申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ、突然押しかけて申し訳ありません」

 しかし、ダイニングで待っていたのはヴィルヘルム殿下ではなく、第二王子のフリードリヒ殿下だった。

 クリスチナは、自分でもビックリするくらいに落胆した。

 ヴィルヘルム殿下が謝りに来たのではなかったのね...

 フリードリヒは平均的な身長のヴィルヘルムよりも少しだけ背が高く、少しだけ目が大きく、少しだけ痩せていて、人当たりの良さそうな顔の王子様だ。

 フリードリヒは大きな赤い薔薇の花束をクリスチナに渡す。

「クリスチナ様、ご卒業おめでとうございます」

「綺麗な花束を有難うございます」

「今日のクリスチナ様は、この花束よりも美しいですね」

 あら? フリードリヒ殿下って、こんな方でした?

「お褒めの言葉、有難うございます。フリードリヒ殿下にそう言って頂けて光栄でございます」

 2人で着席し朝食を頂く。

 なんと、フリードリヒ殿下は食事をせずに待っていたという。ヴィルヘルム殿下では考えられないことだ。

「それで...本日はどのような御用件でしょうか?」
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