【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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「いえ、出来れば婚約破棄しない方法を探したいと思います」

「やはり、女王になりたいか?」

「はい。殿下の選ばれた女性、エミリア嬢と先程お話しさせて頂いたのですが、色々なことがかなり足りないご様子でした。正妃どころか、側妃も...しばらく、教育してみようとは思いますが、愛人止まりに終わる可能性が高い人物であるとワタクシは判断させて頂きました」

「エミリアとは、どのような人物なのだ?」

「平民ですが特待生で学園に入学し、大変見目麗しい方です。しかし、他者を下に見て攻撃する傾向がございます。権力を手にすれば、虐げられる者が多数出て来る可能性があります。

もし、エミリア嬢を王宮に迎え入れるのであれば、抑止力として、エミリア嬢に負けない強い性格と社交性を持つ人物をヴィルヘルム殿下の正妃として据える必要があるでしょう。それでいて利己的な発想をしない者でなければ、第二のエミリア嬢が誕生することになります。しかしながら、善良な女性ほど、伴侶の愛人を許さない傾向があります。ヴィルヘルム殿下が正妃に冷たく接する可能性も考慮しなくてはなりません。

それならば、ワタクシが適任ではないかと思われます」

「なるほど、それで女王になりたいと...分かった。では、議会は、婚約破棄を認めず、ヴィルヘルムを説得するという方針ですすめる。異議のある者は?」

「異議なし」

「異議なし」

「具体的にどうやって説得する?」

「下手に反対すれば、恋の炎は余計に盛り上がってしまうのではないでしょうか?」

「でしたら先延ばしにするのはどうか?」

「それはいい! 時間が経てば恋が冷める可能性もある」

 宰相のヘルムート・マイヤーが口を開く。

「表向きは賛成し、妃の資格を試す試験を受けさせてはどうか? マナーやダンス、乗馬、外国語、交渉術に輸入品の目利き、あらゆる分野で審査し、そして、すべての試験で不合格の判定を出すのだ。合格するまで何度でも再試は受けられることにするが、実は永遠に受からない」

「途中で嫌がらせだと気が付かれるのでは?」

「その分野に秀でた10~14歳の少女も一緒に試験を受けさせ、真のレディとの実力差を見せつける。その姿をヴィルヘルム殿下にも見て頂くのだ。無能な同世代の女性と、有能な若い女性を見比べれば、恋など一瞬にして冷めるだろう」

「流石、宰相殿!」

「国の黒幕!」

「腹黒タヌキ!」

 それはワタクシと結婚する気も失せるのではないか? いや、弱気はいけない!

「では、初回の試験にはワタクシも参加致します。すべての試験に一回で受かってみせます」

「よくぞ言って下さった!」

「クリスチナ公女万歳!」

 これでまた、地獄の勉強が始まるが、国を背負って立つためには必要なことなのだろう。


 そういうことで、ようやくワタクシは今日の仕事から解放されて、公爵家へと帰宅した。

 頭痛がする。

 帰宅後、クリスチナは疲労のあまりお風呂にも入れず、ベッドに身を投げて泥のように眠った。
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