12 / 73
12
しおりを挟む
「いえ、出来れば婚約破棄しない方法を探したいと思います」
「やはり、女王になりたいか?」
「はい。殿下の選ばれた女性、エミリア嬢と先程お話しさせて頂いたのですが、色々なことがかなり足りないご様子でした。正妃どころか、側妃も...しばらく、教育してみようとは思いますが、愛人止まりに終わる可能性が高い人物であるとワタクシは判断させて頂きました」
「エミリアとは、どのような人物なのだ?」
「平民ですが特待生で学園に入学し、大変見目麗しい方です。しかし、他者を下に見て攻撃する傾向がございます。権力を手にすれば、虐げられる者が多数出て来る可能性があります。
もし、エミリア嬢を王宮に迎え入れるのであれば、抑止力として、エミリア嬢に負けない強い性格と社交性を持つ人物をヴィルヘルム殿下の正妃として据える必要があるでしょう。それでいて利己的な発想をしない者でなければ、第二のエミリア嬢が誕生することになります。しかしながら、善良な女性ほど、伴侶の愛人を許さない傾向があります。ヴィルヘルム殿下が正妃に冷たく接する可能性も考慮しなくてはなりません。
それならば、ワタクシが適任ではないかと思われます」
「なるほど、それで女王になりたいと...分かった。では、議会は、婚約破棄を認めず、ヴィルヘルムを説得するという方針ですすめる。異議のある者は?」
「異議なし」
「異議なし」
「具体的にどうやって説得する?」
「下手に反対すれば、恋の炎は余計に盛り上がってしまうのではないでしょうか?」
「でしたら先延ばしにするのはどうか?」
「それはいい! 時間が経てば恋が冷める可能性もある」
宰相のヘルムート・マイヤーが口を開く。
「表向きは賛成し、妃の資格を試す試験を受けさせてはどうか? マナーやダンス、乗馬、外国語、交渉術に輸入品の目利き、あらゆる分野で審査し、そして、すべての試験で不合格の判定を出すのだ。合格するまで何度でも再試は受けられることにするが、実は永遠に受からない」
「途中で嫌がらせだと気が付かれるのでは?」
「その分野に秀でた10~14歳の少女も一緒に試験を受けさせ、真のレディとの実力差を見せつける。その姿をヴィルヘルム殿下にも見て頂くのだ。無能な同世代の女性と、有能な若い女性を見比べれば、恋など一瞬にして冷めるだろう」
「流石、宰相殿!」
「国の黒幕!」
「腹黒タヌキ!」
それはワタクシと結婚する気も失せるのではないか? いや、弱気はいけない!
「では、初回の試験にはワタクシも参加致します。すべての試験に一回で受かってみせます」
「よくぞ言って下さった!」
「クリスチナ公女万歳!」
これでまた、地獄の勉強が始まるが、国を背負って立つためには必要なことなのだろう。
そういうことで、ようやくワタクシは今日の仕事から解放されて、公爵家へと帰宅した。
頭痛がする。
帰宅後、クリスチナは疲労のあまりお風呂にも入れず、ベッドに身を投げて泥のように眠った。
「やはり、女王になりたいか?」
「はい。殿下の選ばれた女性、エミリア嬢と先程お話しさせて頂いたのですが、色々なことがかなり足りないご様子でした。正妃どころか、側妃も...しばらく、教育してみようとは思いますが、愛人止まりに終わる可能性が高い人物であるとワタクシは判断させて頂きました」
「エミリアとは、どのような人物なのだ?」
「平民ですが特待生で学園に入学し、大変見目麗しい方です。しかし、他者を下に見て攻撃する傾向がございます。権力を手にすれば、虐げられる者が多数出て来る可能性があります。
もし、エミリア嬢を王宮に迎え入れるのであれば、抑止力として、エミリア嬢に負けない強い性格と社交性を持つ人物をヴィルヘルム殿下の正妃として据える必要があるでしょう。それでいて利己的な発想をしない者でなければ、第二のエミリア嬢が誕生することになります。しかしながら、善良な女性ほど、伴侶の愛人を許さない傾向があります。ヴィルヘルム殿下が正妃に冷たく接する可能性も考慮しなくてはなりません。
それならば、ワタクシが適任ではないかと思われます」
「なるほど、それで女王になりたいと...分かった。では、議会は、婚約破棄を認めず、ヴィルヘルムを説得するという方針ですすめる。異議のある者は?」
「異議なし」
「異議なし」
「具体的にどうやって説得する?」
「下手に反対すれば、恋の炎は余計に盛り上がってしまうのではないでしょうか?」
「でしたら先延ばしにするのはどうか?」
「それはいい! 時間が経てば恋が冷める可能性もある」
宰相のヘルムート・マイヤーが口を開く。
「表向きは賛成し、妃の資格を試す試験を受けさせてはどうか? マナーやダンス、乗馬、外国語、交渉術に輸入品の目利き、あらゆる分野で審査し、そして、すべての試験で不合格の判定を出すのだ。合格するまで何度でも再試は受けられることにするが、実は永遠に受からない」
「途中で嫌がらせだと気が付かれるのでは?」
「その分野に秀でた10~14歳の少女も一緒に試験を受けさせ、真のレディとの実力差を見せつける。その姿をヴィルヘルム殿下にも見て頂くのだ。無能な同世代の女性と、有能な若い女性を見比べれば、恋など一瞬にして冷めるだろう」
「流石、宰相殿!」
「国の黒幕!」
「腹黒タヌキ!」
それはワタクシと結婚する気も失せるのではないか? いや、弱気はいけない!
「では、初回の試験にはワタクシも参加致します。すべての試験に一回で受かってみせます」
「よくぞ言って下さった!」
「クリスチナ公女万歳!」
これでまた、地獄の勉強が始まるが、国を背負って立つためには必要なことなのだろう。
そういうことで、ようやくワタクシは今日の仕事から解放されて、公爵家へと帰宅した。
頭痛がする。
帰宅後、クリスチナは疲労のあまりお風呂にも入れず、ベッドに身を投げて泥のように眠った。
0
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様
日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。
春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。
夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。
真実とは。老医師の決断とは。
愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。
全十二話。完結しています。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる