170 / 249
第三幕 学生期
168.教室の落書き
しおりを挟む
翌朝、回復したリッカルドとヴィクトー、ヤン、ディーデリックが集められ、前日にあった行動を検証することになった。
メアリー
「貴方がディックね。以前、寮のお部屋の前でも会いましたね。」
ディーデリック
「はい。」
ディーデリックの顔を除き込んだ聖女メアリーの顔は青白くなっており、目の下には、クマが出来ている。以前に見かけた柔らかい微笑みは失われ、やつれた顔は、嘆きの妖精バンシーのようである。
メアリー
「貴方のことはトニーから聞いているのよ。生まれて初めて、親戚でもない、家臣でもない、人間のお友達が出来たって、とっても喜んでいたの。」
ディーデリック
「初めての? 友達!?」
メアリー
「そうよ。 あんなに喜んでいたのに...こんなことになるなんて! うぅぅ...どうして、トニーばかりがこんなに酷い目に合わないといけないの!?」
涙ぐむ聖女の背中をさする勇者の顔も、憔悴しきっている。
初めての友達!? 喜んでいた!? トニーが私の事をそんな風に? なのに、私はトニーを裏切って...
ディーデリックは、自分の心が串刺しになって、その傷口から大量の血が流れるような、そんな苦痛を感じた。
集まった一行は、寮のアントニオの部屋から、順に、足取りを追っていく。
ヤン
「昨日は、いつものように朝御飯をアントニオ様のお部屋で食べました。それから、午前中に授業のあるアントニオ様とお別れしました。」
リッカルド
「ルナールさんといつものようにトニー様のお迎え上がり、一緒に登校しました。」
音楽室へと移動する。
ヴィクトー
「音楽の授業をエーリク・ハッキネンと2人で仲良く受けられたのですが、他の学生達はトニー様の魅了魔法を恐れ、授業を受けませんでした。」
こんな事をして何の意味があるのだろうか?
それは、誰にも分からなかった。だが、何もせずに待っていることなんて、誰にも出来なかった。
食堂まで来て、リッカルドが、クラスメイト達の話しをアントニオが聞いていた話しを始めると、ディーデリックは泣き崩れた。
ディーデリック
「御免なさい! 御免なさい! 私が、私が...あんな事を言わなければ!」
メアリーが、うずくまるディーデリックの背中を優しくさする。
メアリー
「どうしたの? 落ち着いて。」
リッカルド
「ディーデリックは、あの時、クラスメイト達から、授業への配慮をトニー様にお願いして欲しいと言われていました。友達なんだから、お願いくらい出来るだろうと。」
ディーデリック
「出来ないって言ったんです。...友達じゃないから出来ないって...う、ヒック。」
メアリー
「え...!?そんな...だって...」
メアリーは狼狽えた。ディーデリックをさすっていた手を離し、ディーデリックを困惑する瞳で見つめた。
ディーデリックは、メアリーから向けられた冷たい視線に恐怖した。
ディーデリック
「うっく...だって、トニーが私の事を友達だって思ってるなんて、知らなかったから...今まで、生きて来て、私のことを友達だと思ってくれる人なんて、誰もいなかったから...ぅう。」
グリエルモは2人に近付き膝をつくと、ディーデリックとメアリーを一緒に抱きしめた。
グリエルモ
「トニーもディックも、初めてのお友達で、どうしたらいいのか分からなかったんだね。大丈夫だよ。トニーが帰ってきたら、一緒に仲直りしようね。」
メアリーはディーデリックの手を両手で握り、頭を下げた。
メアリー
「お願い! 仲直りしてあげて、この通りよ!」
ディーデリックは何度も何度も頷いた。
食堂でお茶をもらい。皆の気持ちが落ち着くのを待ってから、一行は、市松クラスへと向かった。
昨日、王太子が市松クラスで見た光景は悲惨なものであった。他人がみても胸糞が悪くなるような悪口の数々が、アントニオに向けて書かれており、きっと、母親であるメアリーや、父親であるグリエルモには、辛い光景になるだろうと想像出来た。
ジュン王太子
「メアリー様、グリエルモ様、いいですか、何を目にしても、気持ちをしっかりと持って、冷静でいて下さい。」
グリエルモ
「分かりました。」
メアリー
「えぇ。」
市松クラスの前には、警備兵が4人ほど立って人が近付かないように警備をしている。
立ち入り禁止の看板を避け、扉が開かれた。
一行は、市松クラスに足を踏み入れる。
ジュン王太子
「これは一体!?」
グリエルモ
「落書きは何処に?」
市松クラスの壁には、リンドウの花を咥えた龍が踊っている絵が描いてある。その横には、人参の畑が描かれ、高貴な身分の人が書いたような美しい文字で『大地の色は神様からの贈り物。世界の生きとし生ける者への恵み。』と書かれていた。
ヤン
「この絵! 湯呑みの絵に似てる!」
メアリー
「湯呑みの絵?」
リッカルド
「確かに、トニー様がご友人に貰ったと言っていた、龍人の湯呑みの柄に似ています。作家は違う気がしますけど...」
グリエルモ
「トニーの友人!? そういえば、この綺麗な字にも見覚えがある。」
メアリー
「ルド様とリン様だわ!」
メアリーの顔が輝くような笑みに変わる。
ジュン王太子
「トニー様の友人? 先程、友人はディーデリックだけだと言っていなかったか?」
メアリー
「人間の友人はディックだけだと思います。」
ジュン王太子
「人間の友人は?」
グリエルモ
「ルド様とリン様は、その...白き人なのです。」
ジュン王太子
「神だと、そう名乗ったのか?」
メアリー
「いいえ、ですが、伝承の通りなのです。真っ白な髪に、真っ白な肌。私達よりも魔力が高くて、空間移動魔法を使われます。」
ディーデリック
「空間移動魔法を? では、やっぱり、アントニオ様を連れ去った騎士は、悪い人ではなかったのですね?」
メアリー
「どうして、そう思うの?」
ディーデリック
「え? ...だって、空間移動魔法を使える人は、そんなにいないでしょう?」
グリエルモ
「そうだね。特別な人にしか使えない。」
ディーデリック
「その白き人の友人は、グリエルモ様よりも大きな男の人ではないのですか?」
グリエルモ
「あ、あぁ、そうだね。ルド様は、私よりも大きい。髪や目の色は見たのかい?」
ディーデリック
「黒い騎士は、全身鎧だったので髪や目の色は分かりませんが、悪口の落書きを見て怒っていましたし、護衛騎士が剣を向けるまでは、戦意を感じませんでした。それに、私がアントニオ様を連れて行かないでって頼んだら、ここにはコイツを傷付ける奴がいるから置いてはおけないって話したんです。だから...その、あの人はアントニオ様のご友人だったんじゃないかと思って...」
メアリー、グリエルモ
「「え!?」」
ジュン王太子
「すまない...上手く理解出来なかった。もう一度言ってくれるか?」
ディーデリック
「えっと、はい。ですから、黒い騎士は、アントニオ様のご友人の白き人なのではないですか?」
メアリー
「え!?...でも、だったら何故? トニーは何処に?」
ジュン王太子
「で、では、何故身代金要求の手紙が?」
ディーデリック
「その手紙は、黒い騎士から送られたものなのですか?」
ジュン王太子
「...いや、確かに...それは分からない。」
グリエルモ
「そういえば、以前、ルド様とリン様は、トニーに危害を加える奴がいたら、トニーを連れて行くと仰っていた...だが、もし、本当にルド様だったとしたら、どうして、魔王の装備と魔法を?」
ディーデリック
「魔王?」
リッカルド
「魔王は14年前にグリエルモ様とメアリー様が倒されたはずでは?」
グリエルモ
「えぇ~っと、そうだね...」
ジュン王太子
「そうだ。だが、倒したはずの魔王に特徴が似ている黒い騎士が現れたのだ。だが、それは魔王ではない可能性が!?...もう、頭がこんがらがって訳がわからん!」
グリエルモ
「では、では、何故レオナルドも狙われたんだ!? アントニオを襲った真犯人は!?」
ジュン王太子
「それは、女子生徒で...レオナルドの件は、トニー様の件とは関係ないと思われる。」
グリエルモ
「だが、お菓子に毒が盛られたんだろう?」
ジュン王太子
「それは、惚れ薬で...」
メアリー
「惚れ薬!? トニーの悪口を書いたのは同じ犯人ではないの?」
ジュン王太子
「悪口を書いたのは別の女子生徒達だ。」
メアリー
「犯人が分かっているのね! 誰なの!? 永遠に光が見えない体にしてやる!」
メアリーに闇の帝王が降臨すると、ディーデリックも護衛騎士2人も、口を開けたまま硬直し、我が目を疑った。
そこには、慈悲深い聖女の姿も、哀れな母親の姿も、もはや存在しなかった。
紫色に目が光り、闇のオーラがメアリーの白銀の髪をメデューサのようにくねらせた。
グリエルモ
「メアリー落ち着いて! それで、その落書きの犯人が、トニーを襲った真犯人なのか?」
ジュン王太子
「いや、それが、どうも、そうではない。彼女達は自分のイタズラがバレていないと思っていた。トニー様と鉢合わせになっていたら、イタズラがバレていないなんて思わないはずだ。」
メアリー
「じゃあ、一体どうして、トニーが倒れたの!?黒い騎士でも、落書きの女子生徒でもないなら、何なのよ! トニーを返してよ! 私にトニーを返して!!!」
一気に闇が吹き出して、教室中を覆い尽くした。黒い光りなのか闇なのか分からないようなものが、悍(おぞ)ましいほどのうねりを見せている。
暴走するメアリーの魔力をグリエルモが氷の防御魔法で必死に抑える。
グリエルモ
「リッカルド! アルベルト邸へ走れ! アウロラを呼んできてくれ! ヤンはディックを連れて退避しろ! 殿下は力を貸してください! 私1人じゃ、メアリーの力は抑えられない!」
まるで魔王が復活したような、悪夢のような光景から、ディーデリックはヤンに手を引かれて抜け出した。
『愚かだな』
また、あの黒い騎士の声が聞こえたような気がした。
メアリー
「貴方がディックね。以前、寮のお部屋の前でも会いましたね。」
ディーデリック
「はい。」
ディーデリックの顔を除き込んだ聖女メアリーの顔は青白くなっており、目の下には、クマが出来ている。以前に見かけた柔らかい微笑みは失われ、やつれた顔は、嘆きの妖精バンシーのようである。
メアリー
「貴方のことはトニーから聞いているのよ。生まれて初めて、親戚でもない、家臣でもない、人間のお友達が出来たって、とっても喜んでいたの。」
ディーデリック
「初めての? 友達!?」
メアリー
「そうよ。 あんなに喜んでいたのに...こんなことになるなんて! うぅぅ...どうして、トニーばかりがこんなに酷い目に合わないといけないの!?」
涙ぐむ聖女の背中をさする勇者の顔も、憔悴しきっている。
初めての友達!? 喜んでいた!? トニーが私の事をそんな風に? なのに、私はトニーを裏切って...
ディーデリックは、自分の心が串刺しになって、その傷口から大量の血が流れるような、そんな苦痛を感じた。
集まった一行は、寮のアントニオの部屋から、順に、足取りを追っていく。
ヤン
「昨日は、いつものように朝御飯をアントニオ様のお部屋で食べました。それから、午前中に授業のあるアントニオ様とお別れしました。」
リッカルド
「ルナールさんといつものようにトニー様のお迎え上がり、一緒に登校しました。」
音楽室へと移動する。
ヴィクトー
「音楽の授業をエーリク・ハッキネンと2人で仲良く受けられたのですが、他の学生達はトニー様の魅了魔法を恐れ、授業を受けませんでした。」
こんな事をして何の意味があるのだろうか?
それは、誰にも分からなかった。だが、何もせずに待っていることなんて、誰にも出来なかった。
食堂まで来て、リッカルドが、クラスメイト達の話しをアントニオが聞いていた話しを始めると、ディーデリックは泣き崩れた。
ディーデリック
「御免なさい! 御免なさい! 私が、私が...あんな事を言わなければ!」
メアリーが、うずくまるディーデリックの背中を優しくさする。
メアリー
「どうしたの? 落ち着いて。」
リッカルド
「ディーデリックは、あの時、クラスメイト達から、授業への配慮をトニー様にお願いして欲しいと言われていました。友達なんだから、お願いくらい出来るだろうと。」
ディーデリック
「出来ないって言ったんです。...友達じゃないから出来ないって...う、ヒック。」
メアリー
「え...!?そんな...だって...」
メアリーは狼狽えた。ディーデリックをさすっていた手を離し、ディーデリックを困惑する瞳で見つめた。
ディーデリックは、メアリーから向けられた冷たい視線に恐怖した。
ディーデリック
「うっく...だって、トニーが私の事を友達だって思ってるなんて、知らなかったから...今まで、生きて来て、私のことを友達だと思ってくれる人なんて、誰もいなかったから...ぅう。」
グリエルモは2人に近付き膝をつくと、ディーデリックとメアリーを一緒に抱きしめた。
グリエルモ
「トニーもディックも、初めてのお友達で、どうしたらいいのか分からなかったんだね。大丈夫だよ。トニーが帰ってきたら、一緒に仲直りしようね。」
メアリーはディーデリックの手を両手で握り、頭を下げた。
メアリー
「お願い! 仲直りしてあげて、この通りよ!」
ディーデリックは何度も何度も頷いた。
食堂でお茶をもらい。皆の気持ちが落ち着くのを待ってから、一行は、市松クラスへと向かった。
昨日、王太子が市松クラスで見た光景は悲惨なものであった。他人がみても胸糞が悪くなるような悪口の数々が、アントニオに向けて書かれており、きっと、母親であるメアリーや、父親であるグリエルモには、辛い光景になるだろうと想像出来た。
ジュン王太子
「メアリー様、グリエルモ様、いいですか、何を目にしても、気持ちをしっかりと持って、冷静でいて下さい。」
グリエルモ
「分かりました。」
メアリー
「えぇ。」
市松クラスの前には、警備兵が4人ほど立って人が近付かないように警備をしている。
立ち入り禁止の看板を避け、扉が開かれた。
一行は、市松クラスに足を踏み入れる。
ジュン王太子
「これは一体!?」
グリエルモ
「落書きは何処に?」
市松クラスの壁には、リンドウの花を咥えた龍が踊っている絵が描いてある。その横には、人参の畑が描かれ、高貴な身分の人が書いたような美しい文字で『大地の色は神様からの贈り物。世界の生きとし生ける者への恵み。』と書かれていた。
ヤン
「この絵! 湯呑みの絵に似てる!」
メアリー
「湯呑みの絵?」
リッカルド
「確かに、トニー様がご友人に貰ったと言っていた、龍人の湯呑みの柄に似ています。作家は違う気がしますけど...」
グリエルモ
「トニーの友人!? そういえば、この綺麗な字にも見覚えがある。」
メアリー
「ルド様とリン様だわ!」
メアリーの顔が輝くような笑みに変わる。
ジュン王太子
「トニー様の友人? 先程、友人はディーデリックだけだと言っていなかったか?」
メアリー
「人間の友人はディックだけだと思います。」
ジュン王太子
「人間の友人は?」
グリエルモ
「ルド様とリン様は、その...白き人なのです。」
ジュン王太子
「神だと、そう名乗ったのか?」
メアリー
「いいえ、ですが、伝承の通りなのです。真っ白な髪に、真っ白な肌。私達よりも魔力が高くて、空間移動魔法を使われます。」
ディーデリック
「空間移動魔法を? では、やっぱり、アントニオ様を連れ去った騎士は、悪い人ではなかったのですね?」
メアリー
「どうして、そう思うの?」
ディーデリック
「え? ...だって、空間移動魔法を使える人は、そんなにいないでしょう?」
グリエルモ
「そうだね。特別な人にしか使えない。」
ディーデリック
「その白き人の友人は、グリエルモ様よりも大きな男の人ではないのですか?」
グリエルモ
「あ、あぁ、そうだね。ルド様は、私よりも大きい。髪や目の色は見たのかい?」
ディーデリック
「黒い騎士は、全身鎧だったので髪や目の色は分かりませんが、悪口の落書きを見て怒っていましたし、護衛騎士が剣を向けるまでは、戦意を感じませんでした。それに、私がアントニオ様を連れて行かないでって頼んだら、ここにはコイツを傷付ける奴がいるから置いてはおけないって話したんです。だから...その、あの人はアントニオ様のご友人だったんじゃないかと思って...」
メアリー、グリエルモ
「「え!?」」
ジュン王太子
「すまない...上手く理解出来なかった。もう一度言ってくれるか?」
ディーデリック
「えっと、はい。ですから、黒い騎士は、アントニオ様のご友人の白き人なのではないですか?」
メアリー
「え!?...でも、だったら何故? トニーは何処に?」
ジュン王太子
「で、では、何故身代金要求の手紙が?」
ディーデリック
「その手紙は、黒い騎士から送られたものなのですか?」
ジュン王太子
「...いや、確かに...それは分からない。」
グリエルモ
「そういえば、以前、ルド様とリン様は、トニーに危害を加える奴がいたら、トニーを連れて行くと仰っていた...だが、もし、本当にルド様だったとしたら、どうして、魔王の装備と魔法を?」
ディーデリック
「魔王?」
リッカルド
「魔王は14年前にグリエルモ様とメアリー様が倒されたはずでは?」
グリエルモ
「えぇ~っと、そうだね...」
ジュン王太子
「そうだ。だが、倒したはずの魔王に特徴が似ている黒い騎士が現れたのだ。だが、それは魔王ではない可能性が!?...もう、頭がこんがらがって訳がわからん!」
グリエルモ
「では、では、何故レオナルドも狙われたんだ!? アントニオを襲った真犯人は!?」
ジュン王太子
「それは、女子生徒で...レオナルドの件は、トニー様の件とは関係ないと思われる。」
グリエルモ
「だが、お菓子に毒が盛られたんだろう?」
ジュン王太子
「それは、惚れ薬で...」
メアリー
「惚れ薬!? トニーの悪口を書いたのは同じ犯人ではないの?」
ジュン王太子
「悪口を書いたのは別の女子生徒達だ。」
メアリー
「犯人が分かっているのね! 誰なの!? 永遠に光が見えない体にしてやる!」
メアリーに闇の帝王が降臨すると、ディーデリックも護衛騎士2人も、口を開けたまま硬直し、我が目を疑った。
そこには、慈悲深い聖女の姿も、哀れな母親の姿も、もはや存在しなかった。
紫色に目が光り、闇のオーラがメアリーの白銀の髪をメデューサのようにくねらせた。
グリエルモ
「メアリー落ち着いて! それで、その落書きの犯人が、トニーを襲った真犯人なのか?」
ジュン王太子
「いや、それが、どうも、そうではない。彼女達は自分のイタズラがバレていないと思っていた。トニー様と鉢合わせになっていたら、イタズラがバレていないなんて思わないはずだ。」
メアリー
「じゃあ、一体どうして、トニーが倒れたの!?黒い騎士でも、落書きの女子生徒でもないなら、何なのよ! トニーを返してよ! 私にトニーを返して!!!」
一気に闇が吹き出して、教室中を覆い尽くした。黒い光りなのか闇なのか分からないようなものが、悍(おぞ)ましいほどのうねりを見せている。
暴走するメアリーの魔力をグリエルモが氷の防御魔法で必死に抑える。
グリエルモ
「リッカルド! アルベルト邸へ走れ! アウロラを呼んできてくれ! ヤンはディックを連れて退避しろ! 殿下は力を貸してください! 私1人じゃ、メアリーの力は抑えられない!」
まるで魔王が復活したような、悪夢のような光景から、ディーデリックはヤンに手を引かれて抜け出した。
『愚かだな』
また、あの黒い騎士の声が聞こえたような気がした。
0
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
ヘンリエッタの再婚約
桃井すもも
恋愛
ヘンリエッタは学園の卒業を半年後に控えたある日、縁談を打診される。
それは王国の第二王子殿下からの勧めであるらしく、文には王家の金色の封蝋が見えていた。
そんな事ってあるだろうか。ヘンリエッタは第二王子殿下が無理にこの婚約を推し進めるのであれば、一層修道院にでも駆け込んで、決して言うがままにはされるまいと思った。
それもその筈、婚約話しの相手とは元の婚約者であった。
元婚約者のハロルドとは、彼が他に愛を移した事から婚約を解消した過去がある。
あれ以来、ヘンリエッタはひと粒の涙も零す事が無くなった。涙は既に枯れてしまった。
❇短編から長編へ変更致しました。
❇R15短編にてスタートです。R18なるかな?どうかな?
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。史実とは異なっております。
❇外道要素を含みます。苦手な方はお逃げ下さい。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後から激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 11/22ノベル5巻、コミックス1巻刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
危険な森で目指せ快適異世界生活!
ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・
気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました!
2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・
だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・
出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!
♢ ♢ ♢
所謂、異世界転生ものです。
初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。
内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。
「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。
※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる