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第三幕 学生期
118.クラスメイトの攻撃魔法1
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授業開始時間になり、指定された席に座ると、ディーデリックは先生とほぼ同時に教室に入ってきた。
アントニオの席は三列ある席の1番後ろで窓際の席だ。
座席は一列目が3席、二列目が4席、三列目が3席で、アントニオの隣にラドミール、さらに隣がディーデリック、アントニオの右斜め前の席にルーカスが座っている。左斜め前は知らない女子生徒だ。
教師
「皆さんご入学おめでとうございます。私はスラッカリー・グルーバー、攻撃魔法の授業を担当する教師です。今日はこの市松クラスにガイダンスに来ましたが、このクラスの担任教師というわけではありません。王立学校には子供学校のようにクラス担任の先生はいません。
必須授業は馬術、マナー、ダンスです。その他の授業以外は、取っても取らなくてもいい選択授業ですので、よく考えて授業を取って下さい。
しかし! バトル(魔法と武術を組み合わせた戦闘)や騎乗バトル(騎獣を伴うバトル)の試験はもちろんのこと、算術や語学などの教養科目についても、授業を選択しなくても、基礎教養として試験がありますので注意してくださいね。勉強せずに試験を受けて合格点に達しないと留年となります。
まぁ、皆さんは魔法戦士科ですし、当然、私の攻撃魔法の授業や剣術の授業は取られると思いますけど。
選択した授業に出席しなくても、試験が良ければ単位をとることが出来ます。逆に、どんなに出席していても、試験が悪ければ単位は取れません。
授業をサボるのはまったく構いませんが、必須単位である基礎教養や、バトル、騎乗バトル、馬術、マナー、ダンスに関しては、単位を取らなければ留年ですので、気を付けて下さい。
さて、ここまでで、質問のある人は?」
アントニオが手をあげると、スラッカリー先生はビクッとした。
スラッカリー
「な、なんでしょうか? 何か分からないことでも?」
アントニオ
「攻撃魔法や防御魔法、回復魔法が使えなくても、授業は選択出来ますか?」
ブフっと吹き出し笑いをするクラスメイト達。王立学校に入学して攻撃魔法や防御魔法を使えない学生など魔法戦士科には存在しない。そんな学生は戦士科の学生だけだからである。
スラッカリー
「は? え? 攻撃魔法...は、ともかく、回復魔法を使えない生徒でも、回復魔法の授業を選択することは出来ます。大きな魔力を込めて放てばいい攻撃魔法や、ちょっとしたコツで出来る防御魔法と違って、効果魔法、回復魔法は繊細な魔力コントロールが必要となりますからね。現時点で使えなくても、使えるようになることを期待して授業をとることは可能ですよ。」
アントニオは、自分の質問が恥ずかしい質問だったことに気が付き赤面した。
アントニオ
「質問に答えてくださって有難うございます。」
アントニオは静かに着席した。ディーデリックが、どう思ったか気になって横を向いたが、ディーデリックは前を向いていて目が合わなかった。
やはり、攻撃魔法や防御魔法の授業は取れないか...でも、回復魔法なら可能性があるかも?
スラッカリー
「他に質問は? ...ないなら、私からのガイダンスは以上です。能力測定に移りますので、荷物を置いてついてきて下さい。」
スラッカリー先生が教室を出て行くので、学生達は慌てて後に続く。アントニオが教室を出ると、護衛騎士の2人はアントニオの後についてきた。
学生達が憧れる、青い軍服を着たジーンシャンの魔導騎士と、黒い軍服を着た王立魔導騎士の護衛である。2人がアントニオに付き従うのを見て、クラスメイト達は無言になった。
護衛を学校に連れてきて、教室前に待機させるなんて、聞いたことがない。王子や王女でもしていないのでは? アントニオ・ジーンシャンは、やはり、凄い権力者なのだ...さっき、笑ったのは不味かっただろうか?
誰も喋らないので、アントニオもディーデリックに話し掛けられなかった。
それに何故か、登校時はご機嫌だったジーンシャン魔導騎士のリッカルドまでが不機嫌な様子である。
校庭の一角にある大きな岩の前に到着すると、スラッカリー先生は足をとめた。
スラッカリー
「攻撃魔法の威力やコントロールを見ますので、名前を呼ばれたら1人ずつ、岩に投影されている的に向かって最大の力で攻撃魔法を放って下さい。」
1人ずつ攻撃魔法を放つと聞いて、クラスメイト達は、また、笑いが込み上げそうになった。
つい先程、アントニオ様は攻撃魔法が使えないと言ったばかりである。
当のアントニオは混乱した。歌魔法を使っていいということだろうか? でも、精神属性の攻撃とは? やっぱり、精神攻撃じゃないのだろうか? もしかしたら、聴いた相手の精神を攻撃出来るかもしれないが、クラスメイトは無事では済まないだろう。それに、岩相手に何が出来るんだ?
スラッカリー
「まずは、リアナ・ジャニエスから。」
リアナ
「はーい!」
甘ったるい声で返事をするリアナは、ウェーブのかかったミドルヘアだ。髪の一部を編み込んでハーフアップにしており、ピンクのリボンを付けている。145cmで小柄で華奢な可愛い系の女の子である。王立学校のほとんどが金髪で水色の瞳の学生だが、リアナも同じく金髪で水色の瞳だ。
女子生徒の制服は男子生徒と同じく襟と袖だけ黒く、全体的にはエンジ色の詰襟ジャケットだ。ボトムはAラインミモレ丈のフレアスカートで、黒に裾の部分だけエンジ色が入っている。
だが、リアナのスカートは明らかに他の女子生徒よりも短くなっている。
リッカルドが手帳片手にアントニオに近づいてきて耳打ちする。
リッカルド
「男爵家の息女です。ジャニエス家は領地を持たない男爵で、王都に屋敷があります。」
アントニオ
「そうなんですね。リッカルド、有難うございます。」
リッカルドはアントニオに御礼を言われ笑顔になるとヴィクトーの方を振り返り、フン! どんなもんだ!と鼻を鳴らした。
ヴィクトーはチッと舌打ちをしてそっぽを向いた。
そのやりとりを見たアントニオは、『あれ?この2人...仲悪い?』と心配になった。
リアナ
「えい!」
リアナは最大限に魔力を込めて魔法を放った。可愛いポーズで放った魔法だが、バスケットボールくらいの大きな火の球が飛んでいく。岩に投影された的のど真ん中ではなく、その少し下に当たった。
岩は非常に頑丈な鉱物で出来ているらしく、あれだけの火の球が当たっても傷も焦げ目もつかなかった。
息を切らしながら、どう? っと自慢気に振り返ったリアナだったが、スラッカリー先生のコメントは厳しかった。
スラッカリー
「威力成績は可ですね。コントロールは不可。因みに、後期試験で不可をとった場合は単位が取れません。」
リアナ
「えぇ~!? うそぉ~!?」
スラッカリー
「次! ユーリ・ブラウエル!」
ユーリ
「はい!」
ユーリは150cmと一般的には平均的な12歳の身長だ。男子生徒だが貴族の子供らしく長髪を黒いリボンで結んでいるスタイルだ。やはり金髪で水色瞳である。
リッカルド
「男爵家子息です。ブラウエルも領地を持っておりません。王都に屋敷を持つ男爵家です。」
ユーリが魔力を込めると5cmくらいの氷の棘のようなものが3本出現する。
ユーリ
「おぉぉおー!」
氷の棘は的のど真ん中へ飛んでいった。
だが、やはり傷は少しもつかなかった。
スラッカリー
「威力は不可で、コントロールは可です。」
ユーリ
「何だと! 俺の魔法が可や不可だというなら、良や優はどんななんだよ!」
スラッカリー
「名前は魔力順に呼んでいますので、黙っていても、そのうち見れますよ。次! マーク・ホワイトリー!」
マーク
「はい!」
身長は147cmでベリーショート。やはり金髪で水色の瞳。
リッカルド
「ホワイトリー商会の子息です。ホワイトリーは平民ですが、あちこちの領に商店を構える大富豪ですよ。」
マークが魔力を込めると、火で出来た矢が現れて的めがけて一直線に飛んでいった。
火の矢は的の中心に当たったが、傷はつかなかった。
スラッカリー
「威力とコントロール、ともに可ですね。」
マーク
「はぁ、はぁ...これでも可なんですか!? 厳しい。」
スラッカリー
「そうです。ですが、今から可なら1年間必死で勉強すれば良くらいは取れるかもしれませんね。」
マーク
「そうですか...」
マークはがっくり肩を落とした。
王立学校に来るような学生は、本当にエリートである。天才だ! 秀才だ! と言われ、子供学校の先生や家庭教師から褒められて育ち、常に1番をとっていたような子供達ばかりだ。
この能力測定こそ、世間の広さを知るための最初の授業なのである。
アントニオは、もっと凄い魔法を見慣れていたのだが、自分に出来ないことが出来る皆の事を純粋に凄いと思った。そして、自分の番が来たらどうしようかと、必死に考えていた。
歌で、的を攻撃出来るのだろうか? どうすればいいんだ!? 魔力を込めて、歌うなとジュン様に言われているけど、今はそれどころじゃない!
全然思いつかない!
スラッカリー
「次! クリスタ・ヒューゲル!」
クリスタは女子生徒なのに162cmあり、ショートヘアーだ。
リッカルド
「グレーザー伯爵領出身の騎士の息女です。」
アントニオ
「では、ハンス・グレーザー先輩と同じ出身なのですね! ハンス先輩にとりなしてもらえば、友達になれるかも?」
ヴィクトー
「ご友人になられたいのでしたら、王太子殿下に報告の上、詳細をお調べしておきます。調べ終わるまでは、あまり親しくし過ぎないで下さいね。問題がないことが分かりましたら、王太子殿下がとりなしの手紙を書いて下さいます。」
アントニオ
「有難うございます。」
アントニオは安心して笑顔になる。
今度は、ヴィクトーが鼻を鳴らす番である。
経験の浅い若造には、人間関係の細かいフォローをして、社会的に護衛対象を護るという芸当は出来まい!
リッカルドは、地団駄を踏んで悔しがった。
クリスタは剣を抜いて風魔法でジャンプ距離を伸ばし、的に接近して風の魔法剣で攻撃した。
クリスタ
「はっ!」
すると、岩に小さな傷が入った。
スラッカリー
「威力は可で、コントロールは良ですね。それに戦略がいい! 実践向きの魔法戦士ですね!」
クリスタはふぅっと大きく息を吐く。
クリスタ
「有難うございます!」
クリスタは恥ずかしそうに照れながらも、満面の笑みで喜んだ。
スラッカリー先生は魔道具で投影している的の位置をずらして、傷のないところに指定し直した。
スラッカリー
「次! エーリク・ハッキネン!」
エーリクは161cmで癖のある巻き毛のショートヘアだ。
リッカルド
「ハッキネン男爵領の子息で次期男爵です。寮生でもありますので、寮でお会いすることもあるかもしれませんね。」
エーリクは、風魔法のカマイタチを無数に繰り出して一点に集中攻撃した。
エーリク
「ぐっ、まだまだ......もう少し!」
初めは傷が付かなかったが、少しずつ削れ小さな傷が出来た。
スラッカリー
「エーリクも威力は可で、コントロールは良ですね。」
エーリクはふぅ~っと息を吐いて、胸を撫で下ろしている。
スラッカリーは、また、的の位置をずらした。
スラッカリー
「次! ルーカス・ミラー!」
ルーカス
「やっと私の番ですね!」
アントニオの席は三列ある席の1番後ろで窓際の席だ。
座席は一列目が3席、二列目が4席、三列目が3席で、アントニオの隣にラドミール、さらに隣がディーデリック、アントニオの右斜め前の席にルーカスが座っている。左斜め前は知らない女子生徒だ。
教師
「皆さんご入学おめでとうございます。私はスラッカリー・グルーバー、攻撃魔法の授業を担当する教師です。今日はこの市松クラスにガイダンスに来ましたが、このクラスの担任教師というわけではありません。王立学校には子供学校のようにクラス担任の先生はいません。
必須授業は馬術、マナー、ダンスです。その他の授業以外は、取っても取らなくてもいい選択授業ですので、よく考えて授業を取って下さい。
しかし! バトル(魔法と武術を組み合わせた戦闘)や騎乗バトル(騎獣を伴うバトル)の試験はもちろんのこと、算術や語学などの教養科目についても、授業を選択しなくても、基礎教養として試験がありますので注意してくださいね。勉強せずに試験を受けて合格点に達しないと留年となります。
まぁ、皆さんは魔法戦士科ですし、当然、私の攻撃魔法の授業や剣術の授業は取られると思いますけど。
選択した授業に出席しなくても、試験が良ければ単位をとることが出来ます。逆に、どんなに出席していても、試験が悪ければ単位は取れません。
授業をサボるのはまったく構いませんが、必須単位である基礎教養や、バトル、騎乗バトル、馬術、マナー、ダンスに関しては、単位を取らなければ留年ですので、気を付けて下さい。
さて、ここまでで、質問のある人は?」
アントニオが手をあげると、スラッカリー先生はビクッとした。
スラッカリー
「な、なんでしょうか? 何か分からないことでも?」
アントニオ
「攻撃魔法や防御魔法、回復魔法が使えなくても、授業は選択出来ますか?」
ブフっと吹き出し笑いをするクラスメイト達。王立学校に入学して攻撃魔法や防御魔法を使えない学生など魔法戦士科には存在しない。そんな学生は戦士科の学生だけだからである。
スラッカリー
「は? え? 攻撃魔法...は、ともかく、回復魔法を使えない生徒でも、回復魔法の授業を選択することは出来ます。大きな魔力を込めて放てばいい攻撃魔法や、ちょっとしたコツで出来る防御魔法と違って、効果魔法、回復魔法は繊細な魔力コントロールが必要となりますからね。現時点で使えなくても、使えるようになることを期待して授業をとることは可能ですよ。」
アントニオは、自分の質問が恥ずかしい質問だったことに気が付き赤面した。
アントニオ
「質問に答えてくださって有難うございます。」
アントニオは静かに着席した。ディーデリックが、どう思ったか気になって横を向いたが、ディーデリックは前を向いていて目が合わなかった。
やはり、攻撃魔法や防御魔法の授業は取れないか...でも、回復魔法なら可能性があるかも?
スラッカリー
「他に質問は? ...ないなら、私からのガイダンスは以上です。能力測定に移りますので、荷物を置いてついてきて下さい。」
スラッカリー先生が教室を出て行くので、学生達は慌てて後に続く。アントニオが教室を出ると、護衛騎士の2人はアントニオの後についてきた。
学生達が憧れる、青い軍服を着たジーンシャンの魔導騎士と、黒い軍服を着た王立魔導騎士の護衛である。2人がアントニオに付き従うのを見て、クラスメイト達は無言になった。
護衛を学校に連れてきて、教室前に待機させるなんて、聞いたことがない。王子や王女でもしていないのでは? アントニオ・ジーンシャンは、やはり、凄い権力者なのだ...さっき、笑ったのは不味かっただろうか?
誰も喋らないので、アントニオもディーデリックに話し掛けられなかった。
それに何故か、登校時はご機嫌だったジーンシャン魔導騎士のリッカルドまでが不機嫌な様子である。
校庭の一角にある大きな岩の前に到着すると、スラッカリー先生は足をとめた。
スラッカリー
「攻撃魔法の威力やコントロールを見ますので、名前を呼ばれたら1人ずつ、岩に投影されている的に向かって最大の力で攻撃魔法を放って下さい。」
1人ずつ攻撃魔法を放つと聞いて、クラスメイト達は、また、笑いが込み上げそうになった。
つい先程、アントニオ様は攻撃魔法が使えないと言ったばかりである。
当のアントニオは混乱した。歌魔法を使っていいということだろうか? でも、精神属性の攻撃とは? やっぱり、精神攻撃じゃないのだろうか? もしかしたら、聴いた相手の精神を攻撃出来るかもしれないが、クラスメイトは無事では済まないだろう。それに、岩相手に何が出来るんだ?
スラッカリー
「まずは、リアナ・ジャニエスから。」
リアナ
「はーい!」
甘ったるい声で返事をするリアナは、ウェーブのかかったミドルヘアだ。髪の一部を編み込んでハーフアップにしており、ピンクのリボンを付けている。145cmで小柄で華奢な可愛い系の女の子である。王立学校のほとんどが金髪で水色の瞳の学生だが、リアナも同じく金髪で水色の瞳だ。
女子生徒の制服は男子生徒と同じく襟と袖だけ黒く、全体的にはエンジ色の詰襟ジャケットだ。ボトムはAラインミモレ丈のフレアスカートで、黒に裾の部分だけエンジ色が入っている。
だが、リアナのスカートは明らかに他の女子生徒よりも短くなっている。
リッカルドが手帳片手にアントニオに近づいてきて耳打ちする。
リッカルド
「男爵家の息女です。ジャニエス家は領地を持たない男爵で、王都に屋敷があります。」
アントニオ
「そうなんですね。リッカルド、有難うございます。」
リッカルドはアントニオに御礼を言われ笑顔になるとヴィクトーの方を振り返り、フン! どんなもんだ!と鼻を鳴らした。
ヴィクトーはチッと舌打ちをしてそっぽを向いた。
そのやりとりを見たアントニオは、『あれ?この2人...仲悪い?』と心配になった。
リアナ
「えい!」
リアナは最大限に魔力を込めて魔法を放った。可愛いポーズで放った魔法だが、バスケットボールくらいの大きな火の球が飛んでいく。岩に投影された的のど真ん中ではなく、その少し下に当たった。
岩は非常に頑丈な鉱物で出来ているらしく、あれだけの火の球が当たっても傷も焦げ目もつかなかった。
息を切らしながら、どう? っと自慢気に振り返ったリアナだったが、スラッカリー先生のコメントは厳しかった。
スラッカリー
「威力成績は可ですね。コントロールは不可。因みに、後期試験で不可をとった場合は単位が取れません。」
リアナ
「えぇ~!? うそぉ~!?」
スラッカリー
「次! ユーリ・ブラウエル!」
ユーリ
「はい!」
ユーリは150cmと一般的には平均的な12歳の身長だ。男子生徒だが貴族の子供らしく長髪を黒いリボンで結んでいるスタイルだ。やはり金髪で水色瞳である。
リッカルド
「男爵家子息です。ブラウエルも領地を持っておりません。王都に屋敷を持つ男爵家です。」
ユーリが魔力を込めると5cmくらいの氷の棘のようなものが3本出現する。
ユーリ
「おぉぉおー!」
氷の棘は的のど真ん中へ飛んでいった。
だが、やはり傷は少しもつかなかった。
スラッカリー
「威力は不可で、コントロールは可です。」
ユーリ
「何だと! 俺の魔法が可や不可だというなら、良や優はどんななんだよ!」
スラッカリー
「名前は魔力順に呼んでいますので、黙っていても、そのうち見れますよ。次! マーク・ホワイトリー!」
マーク
「はい!」
身長は147cmでベリーショート。やはり金髪で水色の瞳。
リッカルド
「ホワイトリー商会の子息です。ホワイトリーは平民ですが、あちこちの領に商店を構える大富豪ですよ。」
マークが魔力を込めると、火で出来た矢が現れて的めがけて一直線に飛んでいった。
火の矢は的の中心に当たったが、傷はつかなかった。
スラッカリー
「威力とコントロール、ともに可ですね。」
マーク
「はぁ、はぁ...これでも可なんですか!? 厳しい。」
スラッカリー
「そうです。ですが、今から可なら1年間必死で勉強すれば良くらいは取れるかもしれませんね。」
マーク
「そうですか...」
マークはがっくり肩を落とした。
王立学校に来るような学生は、本当にエリートである。天才だ! 秀才だ! と言われ、子供学校の先生や家庭教師から褒められて育ち、常に1番をとっていたような子供達ばかりだ。
この能力測定こそ、世間の広さを知るための最初の授業なのである。
アントニオは、もっと凄い魔法を見慣れていたのだが、自分に出来ないことが出来る皆の事を純粋に凄いと思った。そして、自分の番が来たらどうしようかと、必死に考えていた。
歌で、的を攻撃出来るのだろうか? どうすればいいんだ!? 魔力を込めて、歌うなとジュン様に言われているけど、今はそれどころじゃない!
全然思いつかない!
スラッカリー
「次! クリスタ・ヒューゲル!」
クリスタは女子生徒なのに162cmあり、ショートヘアーだ。
リッカルド
「グレーザー伯爵領出身の騎士の息女です。」
アントニオ
「では、ハンス・グレーザー先輩と同じ出身なのですね! ハンス先輩にとりなしてもらえば、友達になれるかも?」
ヴィクトー
「ご友人になられたいのでしたら、王太子殿下に報告の上、詳細をお調べしておきます。調べ終わるまでは、あまり親しくし過ぎないで下さいね。問題がないことが分かりましたら、王太子殿下がとりなしの手紙を書いて下さいます。」
アントニオ
「有難うございます。」
アントニオは安心して笑顔になる。
今度は、ヴィクトーが鼻を鳴らす番である。
経験の浅い若造には、人間関係の細かいフォローをして、社会的に護衛対象を護るという芸当は出来まい!
リッカルドは、地団駄を踏んで悔しがった。
クリスタは剣を抜いて風魔法でジャンプ距離を伸ばし、的に接近して風の魔法剣で攻撃した。
クリスタ
「はっ!」
すると、岩に小さな傷が入った。
スラッカリー
「威力は可で、コントロールは良ですね。それに戦略がいい! 実践向きの魔法戦士ですね!」
クリスタはふぅっと大きく息を吐く。
クリスタ
「有難うございます!」
クリスタは恥ずかしそうに照れながらも、満面の笑みで喜んだ。
スラッカリー先生は魔道具で投影している的の位置をずらして、傷のないところに指定し直した。
スラッカリー
「次! エーリク・ハッキネン!」
エーリクは161cmで癖のある巻き毛のショートヘアだ。
リッカルド
「ハッキネン男爵領の子息で次期男爵です。寮生でもありますので、寮でお会いすることもあるかもしれませんね。」
エーリクは、風魔法のカマイタチを無数に繰り出して一点に集中攻撃した。
エーリク
「ぐっ、まだまだ......もう少し!」
初めは傷が付かなかったが、少しずつ削れ小さな傷が出来た。
スラッカリー
「エーリクも威力は可で、コントロールは良ですね。」
エーリクはふぅ~っと息を吐いて、胸を撫で下ろしている。
スラッカリーは、また、的の位置をずらした。
スラッカリー
「次! ルーカス・ミラー!」
ルーカス
「やっと私の番ですね!」
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