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第一章
01.どうやら転生したらしい ★
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※2021/08/08に書き直しと言ってもいいほどの加筆修正しました(内容ガラリと変わりました)
とんでもない奴のとんでもない発言で前世を思い出してから、二週間が経った。
「う、うぇぇぇ~っ」
ベッドから身体を起こしてみたのは良いものの、急激に込み上げてきた吐き気に思わず嘔吐いてしまう。この吐きたくても吐けない感じが余計苦しい。
「洗面器必要ですか、王子」
「い、いや……大丈夫、だよ」
異変に気付いた執事見習いのフィンに大丈夫だと断る。すればフィンは「そうですか……」と何となく面白くなさそうな顔をして、持っていた洗面器を元に戻した。何でそんな残念がるのか。
しかもその残念そうな顔をするのはフィンだけではなく、アルフレッド付きの従者の殆どがするのだ。解せぬ。
「……あのさ」
「はい、なんでしょう?」
「何で、そんな残念そうな顔すんの?」
「……あぁ、皆王子の世話をしたいんですよ」
「えぇ……なんで?」
「『あの王子が優しく「ありがとう」って言ってくれる』って」
「……僕、今までお礼言ってなかったっけ?」
「聞いた事はありませんね」
ハッキリと言われてしまった。なんという事だ。
俺は吐き気とは別の意味で頭を抱えたくなった。
体調が悪く、自由に動けないながらも自然と周囲から普段の俺の素行を知る事が出来る反面、こうして毎度の如くダメージを受けている。というのも、アルフレッドの普段の行動があまりにも我が儘王子なのだ。聞けば聞くほどアルフレッドの周囲からの評価が低くて泣けてくるレベルだった。
「その……ありがとう、フィン」
「感謝はありがたく受け取りますが、今はまずゆっくり休んで下さい」
「はぃ……」
さっきの表情とは打って変わり、今度は構ってもらえて喜ぶ犬のようにルンルンとしている。尻尾が付いていたらブンブン振っていそうだ。
そんなフィンが下がるのを見届けてから、俺も言われた通り休むために、再び頭からベッドに潜り込んだ。
(うぅ……あの悪夢から半月も経ったのに、未だに身体が回復しない)
ジュード家で倒れてから今まで、俺は体調不良で部屋どころかベッドからろくに出られずにいた。
見舞いに訪れた両親――この国の国王と王妃からの説明によると、倒れた日から三日はこんこんと眠り続け、その後四日間高熱で寝込み続けたらしい。その後から今に至るまでは俺自身意識があるので覚えてはいるが、目眩からくる吐き気と戦っている状態が続いている。最悪だ。前世でだってこんなに絶不調になったことはなかった。
(しかし……これが前世でいう転生か)
俺は今、きっと遠い目をしているだろう。そうなっても可笑しくは無いと思う。
まさか前世流行ったライトノベルの“転生”を自ら体験するとは微塵も思っていなかったのだから。
(こんなの、夢物語だと思ってたのに……せめて生まれながらに前世を覚えている系が良かった)
二十三年分の記憶を思い出すのは、いくらゲームのヒーローキャラでも負担が掛かりすぎたらしい。しかも今は十才という少年になったばかりの年齢だ。幼い身体には流石に重すぎた。キャパオーバーだ。だったら生まれた時から覚えている方が身体的にも精神的にも優しいと思う……想像でしかないけれど。
(いまだに処理しきれなくて頭がグワングワンする……毎日少しずつ良くなってるけど、考えすぎると気持ち悪い)
胃の問題ではないが吐き気はあるので食欲もない。そのせいで体力が物凄く落ちてしまった。吐き気が治まっても、きっと暫くは部屋から出られないだろう。時間がないのに、本当に最悪だとしか言い様がない。
(とりあえず、今の俺――アルフレッド・ノーブルの状況から整理していこう。自分の状況を知らないと、動くに動けない)
ベッドに潜ったままの体勢で、俺はアルフレッドの記憶を遡ってみる事にした。
(えっと……今の俺、アルフレッドは王国・グランディオーソの王子で、いつも一緒にいるウィルとは遊び仲間であり主従関係)
倒れる時一緒にいた、今世での友人の姿を思い出す。
ウィルことウィリアム・ジュードとは、物心ついた時から一緒にいる。幼なじみと言っても過言ではないだろう。主従関係ではあるが、言いたいことを言い合える貴重な関係だ。
(俺……っていうかアルフレッドがアホやると躊躇わず注意してくるところを見ると、ゲームのウィルと同じように、芯の通った真面目で誠実な人間なんだろうな。そんな友人がいてくれて良かったな、アルフレッド)
他にもよく一緒に遊ぶ仲の者はいるが、ウィリアムのように接してくる者はいない。決して仲が悪い訳では無いし、彼らも幼なじみと言っても可笑しくは無い関係を築いてはいるが、ウィルほどアルフレッドを思って注意してくるまでではない。だからこそ、ウィルの存在はとても貴重で有り難いものだった。
(ウィルとは別に一緒にいるのは執事見習いのフィンか。ウィルとはまた違う主従関係であり兄みたいな感じだなぁ……あくまでアルフレッドの認識だけど)
執事見習いのフィンは、古くから王家に仕える家系の嫡男で、彼の父は国王の執事として、母は侍女長として王家の人間を支えてくれている。フィンも俺が無事立太子して王位を継げば次期国王専属の執事になる。そのために日々学んでいる。人柄も気さくで面倒見の良い兄貴タイプだ。そんなところがアルフレッドには余計兄に思えたのだろう。フィンの方が年上と言えど、十四と言えば前世でいうところの中学生だ。それなのに目標を持って既に働いているのが凄すぎる。ショウとして振り返ると本当に凄い人だと思う。
(ウィル含め、周囲にこんなに努力家で真面目な人間がいるのに、どうしてアルフレッドはそれを見習わなかったのか……)
二人の事を振り返るのと一緒にアルフレッドの日常も否応なく突き付けられ、元々少ない俺のライフはあと少しでゼロだ。恥ずかしいやら情けないやらで頭を抱えてしまう。
(アルフレッド……典型的な流されタイプじゃないかっ。俺の知ってる王子とは大分違う……むしろちょっと金持ちの子どもと同じ生活で逆にビックリしたわ!)
俺の中で王子は、次期国王として厳しい教育を受け、見識を広めるために色々なものに触れているイメージでいた。いや実際はもっと厳しいのだろう。それこそ一日勉学に励んでいても可笑しくは無いくらい。
だがアルフレッドは違った。勉強も運動もそこそこ。公務という程の仕事はまだなく、貴族街にちょろっと顔を出しては挨拶をするだけの仕事を熟し、後はお茶や遊びと大分腑抜けていた。
一体何をしているんだアルフレッドよ。お前は誰よりも勉学に励み仕事をせねばならない人間だろう?
(そんな生活を良しとする人間がわんさかいたんだろうなぁ……まんまと駒になりつつあったのか)
記憶を遡れば出てくる出てく……ニコニコと笑みを浮かべるオヤジたちの顔が。
(思い出すと、王弟と一緒にいるシーンばっかりだな。というと、そっちの派閥の面々か……アルフレッドが王弟を慕ってたから、権力争いの道具に丁度良かったのか)
どの国にも大きな組織には派閥が存在する。この国の王家も例外ではなく、現国王と王弟の派閥が今も火花を散らしている。勿論、表向きには良好な関係をみせてはいるが……。
(アルフレッドはそこら辺わからなかったか、純粋に叔父が好きだったんだろうな。まさか大好きな叔父に利用されているとも思わなかっただろう。だって、何だかんだ言ってまだ十才だし)
愚かなんだと言えど、今のアルフレッドはまだまだ子どもだ。前世の世界では勉強よりも泥だらけになって外で遊ぶ時間の方が多い年齢だ。いくら王子とはいえ、そんな子どもに大人の事情や悪意を把握しろという方が難しい。
(何で俺が転生したのかはわからないけど……俺がこれ以上、悪い方に向かわせないからな)
夢物語と思っていた転生をした意味はサッパリわからない。だがこうして生まれて来てアルフレッドの意識を占領してしまった以上、それが今俺に出来る唯一の事だと思う。
(まずはこの体調不良をどうにかしなきゃな……うぷ、気持ち悪い~)
他にも確認したい事や今後の事も考えておきたいが、これ以上頭を使うと本当に吐きそうなので、俺は目を瞑って再び眠る事にした。
とんでもない奴のとんでもない発言で前世を思い出してから、二週間が経った。
「う、うぇぇぇ~っ」
ベッドから身体を起こしてみたのは良いものの、急激に込み上げてきた吐き気に思わず嘔吐いてしまう。この吐きたくても吐けない感じが余計苦しい。
「洗面器必要ですか、王子」
「い、いや……大丈夫、だよ」
異変に気付いた執事見習いのフィンに大丈夫だと断る。すればフィンは「そうですか……」と何となく面白くなさそうな顔をして、持っていた洗面器を元に戻した。何でそんな残念がるのか。
しかもその残念そうな顔をするのはフィンだけではなく、アルフレッド付きの従者の殆どがするのだ。解せぬ。
「……あのさ」
「はい、なんでしょう?」
「何で、そんな残念そうな顔すんの?」
「……あぁ、皆王子の世話をしたいんですよ」
「えぇ……なんで?」
「『あの王子が優しく「ありがとう」って言ってくれる』って」
「……僕、今までお礼言ってなかったっけ?」
「聞いた事はありませんね」
ハッキリと言われてしまった。なんという事だ。
俺は吐き気とは別の意味で頭を抱えたくなった。
体調が悪く、自由に動けないながらも自然と周囲から普段の俺の素行を知る事が出来る反面、こうして毎度の如くダメージを受けている。というのも、アルフレッドの普段の行動があまりにも我が儘王子なのだ。聞けば聞くほどアルフレッドの周囲からの評価が低くて泣けてくるレベルだった。
「その……ありがとう、フィン」
「感謝はありがたく受け取りますが、今はまずゆっくり休んで下さい」
「はぃ……」
さっきの表情とは打って変わり、今度は構ってもらえて喜ぶ犬のようにルンルンとしている。尻尾が付いていたらブンブン振っていそうだ。
そんなフィンが下がるのを見届けてから、俺も言われた通り休むために、再び頭からベッドに潜り込んだ。
(うぅ……あの悪夢から半月も経ったのに、未だに身体が回復しない)
ジュード家で倒れてから今まで、俺は体調不良で部屋どころかベッドからろくに出られずにいた。
見舞いに訪れた両親――この国の国王と王妃からの説明によると、倒れた日から三日はこんこんと眠り続け、その後四日間高熱で寝込み続けたらしい。その後から今に至るまでは俺自身意識があるので覚えてはいるが、目眩からくる吐き気と戦っている状態が続いている。最悪だ。前世でだってこんなに絶不調になったことはなかった。
(しかし……これが前世でいう転生か)
俺は今、きっと遠い目をしているだろう。そうなっても可笑しくは無いと思う。
まさか前世流行ったライトノベルの“転生”を自ら体験するとは微塵も思っていなかったのだから。
(こんなの、夢物語だと思ってたのに……せめて生まれながらに前世を覚えている系が良かった)
二十三年分の記憶を思い出すのは、いくらゲームのヒーローキャラでも負担が掛かりすぎたらしい。しかも今は十才という少年になったばかりの年齢だ。幼い身体には流石に重すぎた。キャパオーバーだ。だったら生まれた時から覚えている方が身体的にも精神的にも優しいと思う……想像でしかないけれど。
(いまだに処理しきれなくて頭がグワングワンする……毎日少しずつ良くなってるけど、考えすぎると気持ち悪い)
胃の問題ではないが吐き気はあるので食欲もない。そのせいで体力が物凄く落ちてしまった。吐き気が治まっても、きっと暫くは部屋から出られないだろう。時間がないのに、本当に最悪だとしか言い様がない。
(とりあえず、今の俺――アルフレッド・ノーブルの状況から整理していこう。自分の状況を知らないと、動くに動けない)
ベッドに潜ったままの体勢で、俺はアルフレッドの記憶を遡ってみる事にした。
(えっと……今の俺、アルフレッドは王国・グランディオーソの王子で、いつも一緒にいるウィルとは遊び仲間であり主従関係)
倒れる時一緒にいた、今世での友人の姿を思い出す。
ウィルことウィリアム・ジュードとは、物心ついた時から一緒にいる。幼なじみと言っても過言ではないだろう。主従関係ではあるが、言いたいことを言い合える貴重な関係だ。
(俺……っていうかアルフレッドがアホやると躊躇わず注意してくるところを見ると、ゲームのウィルと同じように、芯の通った真面目で誠実な人間なんだろうな。そんな友人がいてくれて良かったな、アルフレッド)
他にもよく一緒に遊ぶ仲の者はいるが、ウィリアムのように接してくる者はいない。決して仲が悪い訳では無いし、彼らも幼なじみと言っても可笑しくは無い関係を築いてはいるが、ウィルほどアルフレッドを思って注意してくるまでではない。だからこそ、ウィルの存在はとても貴重で有り難いものだった。
(ウィルとは別に一緒にいるのは執事見習いのフィンか。ウィルとはまた違う主従関係であり兄みたいな感じだなぁ……あくまでアルフレッドの認識だけど)
執事見習いのフィンは、古くから王家に仕える家系の嫡男で、彼の父は国王の執事として、母は侍女長として王家の人間を支えてくれている。フィンも俺が無事立太子して王位を継げば次期国王専属の執事になる。そのために日々学んでいる。人柄も気さくで面倒見の良い兄貴タイプだ。そんなところがアルフレッドには余計兄に思えたのだろう。フィンの方が年上と言えど、十四と言えば前世でいうところの中学生だ。それなのに目標を持って既に働いているのが凄すぎる。ショウとして振り返ると本当に凄い人だと思う。
(ウィル含め、周囲にこんなに努力家で真面目な人間がいるのに、どうしてアルフレッドはそれを見習わなかったのか……)
二人の事を振り返るのと一緒にアルフレッドの日常も否応なく突き付けられ、元々少ない俺のライフはあと少しでゼロだ。恥ずかしいやら情けないやらで頭を抱えてしまう。
(アルフレッド……典型的な流されタイプじゃないかっ。俺の知ってる王子とは大分違う……むしろちょっと金持ちの子どもと同じ生活で逆にビックリしたわ!)
俺の中で王子は、次期国王として厳しい教育を受け、見識を広めるために色々なものに触れているイメージでいた。いや実際はもっと厳しいのだろう。それこそ一日勉学に励んでいても可笑しくは無いくらい。
だがアルフレッドは違った。勉強も運動もそこそこ。公務という程の仕事はまだなく、貴族街にちょろっと顔を出しては挨拶をするだけの仕事を熟し、後はお茶や遊びと大分腑抜けていた。
一体何をしているんだアルフレッドよ。お前は誰よりも勉学に励み仕事をせねばならない人間だろう?
(そんな生活を良しとする人間がわんさかいたんだろうなぁ……まんまと駒になりつつあったのか)
記憶を遡れば出てくる出てく……ニコニコと笑みを浮かべるオヤジたちの顔が。
(思い出すと、王弟と一緒にいるシーンばっかりだな。というと、そっちの派閥の面々か……アルフレッドが王弟を慕ってたから、権力争いの道具に丁度良かったのか)
どの国にも大きな組織には派閥が存在する。この国の王家も例外ではなく、現国王と王弟の派閥が今も火花を散らしている。勿論、表向きには良好な関係をみせてはいるが……。
(アルフレッドはそこら辺わからなかったか、純粋に叔父が好きだったんだろうな。まさか大好きな叔父に利用されているとも思わなかっただろう。だって、何だかんだ言ってまだ十才だし)
愚かなんだと言えど、今のアルフレッドはまだまだ子どもだ。前世の世界では勉強よりも泥だらけになって外で遊ぶ時間の方が多い年齢だ。いくら王子とはいえ、そんな子どもに大人の事情や悪意を把握しろという方が難しい。
(何で俺が転生したのかはわからないけど……俺がこれ以上、悪い方に向かわせないからな)
夢物語と思っていた転生をした意味はサッパリわからない。だがこうして生まれて来てアルフレッドの意識を占領してしまった以上、それが今俺に出来る唯一の事だと思う。
(まずはこの体調不良をどうにかしなきゃな……うぷ、気持ち悪い~)
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