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しおりを挟む「残ってくれるのは嬉しいけど、本当に良かったの?」
「はい。父が大切にしていた物を継いで行きたいので」
「うふふ、プリュフォールは本当に良い子ねぇ。うちの嫁に欲しいわぁ」
「あら、うちのホーネストの嫁でも良いのよ?」
「もう、伯母様にお母様! プリュフォールが困ってしまいますわよ!」
王妃陛下が所持する薔薇園。その一角に、気心知れた穏やかな雰囲気が漂う。
私は一人場違いな居心地を感じながらも、冗談を交ぜて和ませてくれる三人のやり取りに微笑んだ。
あれから三ヶ月が経った。
事件が発覚して母の手の内の者たちが捕まり、そこからバタバタとしていたらあっという間に時が過ぎてしまった。
そして今日は、王妃陛下のお茶会に招かれて、ブライト公爵夫人であるルイーゼ様と、その娘であるミーシャ様と一緒に王宮に来ていた。
本来なら招待されるような立場ではないのだけれど、王妃陛下にとってプロスペレ国は友好国であり、更に友人の姪という立場から招いて下さった。
「貴女が決めたのなら、もう何も言わないわ。その代わり、相談したい事があればちゃんと云ってちょうだい。一人で無理しちゃ駄目よ?」
「痛み入ります」
ただの伯爵に対してこの好待遇は良いのだろうか、という心配はあるけれど、ルイーゼ様が「うちが後ろ盾と知っていちゃもんを付けてくる者も早々居ないから大丈夫よ~」と云い、ミーシャ様が「プリュフォールが本格的に織物業に着手してから、この国の織物界隈は大いに賑わい始めて、皆助かっているのよ? 喜ばれこそしても文句を言う者はいないから大丈夫!」と仰って下さった。
それに、ホーネスト殿下からは「母上は、そうやって誰かと表裏なく関わりたいのだろう。度が過ぎなければ問題ないから、時間が合った時にでも構ってあげてほしい」と云われてしまっている。
まぁ、グレイ伯父様たちも「良い関係が築けるなら関わっておけ」と云っていたから大丈夫なのだろう。大丈夫だと思いたい。
皆、私に良くして下さっている。けれどそれは私だけではなく、王妃陛下への気遣いでもあるのを理解していた。
皆が王妃陛下を気にかけるのは、今の彼女はホーネスト殿下が即位するまでの中継ぎという立場になったからだろう。
国王は、病と称して表舞台を去り、罪を犯した王族が投獄される【北の棟】に送られた。実際は、王妃陛下を裏切っただけでなく私欲に働いたとして、全ての地位を剥奪されたのだ。
本来、不倫や一貴族当主への不遇だけでは、国王という立場まで揺らいだりしない。絶対的な権力者なのが国王だからだ。精々内々で穏便に済ませるか、力で黙らせるかである。被害者としては納得しかねるけど。
今回それで済まそうとしなかったのが、王妃陛下を筆頭に、ホーネスト殿下とブライト公爵。そしてプリーズィング家とプロスペレの王に、モーヴの王族だった。大分多い。
そもそも、王妃陛下が輿入れの際に契約した内容を完全に破っている。この国より上の国との約束を反故して只で済む訳がない。
そして同時に、父の件と合わせてプロスペレにも嘘を吐いている。しかも何回も。責任の所在を問われるのは当然だった。
そういう経緯から、王妃陛下はホーネスト殿下が即位するまでの中継ぎとして、王の代行を務めている。
元々仕事の出来る人で、その腕を買われて嫁ぎに来たくらいには、彼女は王としても有能だった。
大丈夫だろうと思っていても、心労というのは積もり溜まっていくもの。私と話す事で気分転換になるのであれば、喜んで引き受けようと思う。
これからの事に、不安がない訳じゃない。きっと何回も膝を付きそうになる時が来るのだろう。
それでも、私は一人じゃない。プリーズィング家の皆や、遠い場所からずっと守ってくれていたお父様。そして王妃陛下やホーネスト殿下に、父の友人だったブライド公爵家という、色々強い人たちがいる。
頼る事を前提にはしていないけれど、頼れる人や見守ってくれている人が居るというだけで強くなれる。あのまともな思考回路が出来ていなかった時も、お父様とスーリール伯母様の言葉があったから戻って来られた。だから私は、これからもきっと大丈夫。
(皆様……私、頑張りますね)
だから、これからの私を、遠くから見守っていて下さいね。
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まだ第1話ですが面白いです( o´ェ`o)✨
ありがとうございます✨
短いですが楽しんでもらえたら幸いです。