あやかし猫の花嫁様

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1巻

1-3

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 そんな充が、こんな強引なことをしてくるなんて、信じられなかった。そうするほど私のことを手放したくない……という可能性もなくはないけど、この行動はあまりにも普段の彼とかけ離れている。
 まるで、別人になってしまったかのような、何かよくないものに取りかれてしまったかのような、そんな印象を受けた。

「……絶対に逃がさないからな」

 至近距離からギラギラした目で見つめられ、私は彼に対して初めて恐怖を抱いた。相変わらず手首はがっしりとつかまれていて、身動きが取れない上に、震えて声も出ない。
 ――何これ。誰か。誰か、助けてっ!
 無意識に、私が助けを求めた時だった。

「人の妻をたぶらかそうとするとは。大層無礼な男だね」

 聞こえてきたのは、のほほんとした常盤の声だった。家の奥からやってきた常盤は、私と充のかたわらに腕組みをしながら立つ。

「なんだ、お前は」

 突然現れた、充にとっては正体不明な男。充はドスの利いた声を上げて常盤をにらむ。

「それはこっちのセリフだねえ。茜に触らないでくれるかな」

 相変わらず間延びした声で言うと、常盤は私から充の手をあっさり振り払ってくれた。そんなに力を入れた様子はなかったというのに。
 そして常盤は私の肩を抱いて、自分の方へと引き寄せる。温かな常盤の体温が伝わってきて、少し前まで恐怖におびえていた私は、不覚にも安堵を覚えてしまった。
 しかし私たちのその様子に、充は激高げっこうしたようだった。

「妻⁉ おい茜! どういうことだ! お前も浮気してたのかよ!」

 憤怒ふんぬに駆られた面持ちで叫ぶ充。すさまじいその形相ぎょうそうに、やはり様子がおかしいと改めて思った。

「浮気? 違うな。どちらかというと、本命は僕で君に浮気してたってところか。僕と茜は結婚のちぎりを交わしているからね。……茜、君は僕とのことを忘れていたみたいだから、彼との浮気については特別許してあげるよ」
「何訳のわからないことを……! 殺すぞ!」

 常盤の泰然たいぜんとした態度に、充は我を失ってしまったようだった。地を蹴り、常盤に飛び掛かってくる。
 危ない。やられる!
 反射的に目を閉じた直後、大きな衝撃音が響いた。一瞬、常盤が充に殴られてしまったのかと思ったけれど、常盤に肩を抱かれている私は何も衝撃を感じていない。それに、音はもう少し離れたところから聞こえた。
 恐る恐るまぶたを開くと――

「え……どういうこと⁉」

 目を閉じる前まで眼前にいたはずの充が、そこにはなかった。一体彼はどこに行ったのだろうと辺りを見回して、私は驚愕きょうがくする。
 充は玄関と門を通り越して、家の前の歩道に備え付けらえたガードレールに、背中をもたれかけていた。つまり私が目を閉じた一瞬の間に、十メートルくらい移動したことになる。

「あまり人間相手に化け猫の力は使いたくないんだがね。緊急事態だったから、やむを得なかった」

 驚く私の頭上で、のんびりと常盤が言う。
 え、ってことは、常盤が化け猫の力で、充をあそこまで吹っ飛ばしたっていうこと⁉

「う……」

 充はうめき声を上げながら、なんとか立ち上がる。かなりの衝撃だったのだろう、背中を丸めて顔をゆがめている様は、とても痛々しい。

「まだ向かってくるかい? 次は容赦しないけれど」

 そんな充に追い打ちをかけるように常盤が言う。口調こそ変わらず穏やかだったが、有無うむを言わせない強さを感じた。
 充は口惜しそうに私たちをにらむと、背中を手で押さえながら、逃げるように去っていった。

「いやあ、我が妻はやはり魅力的なんだな。あんな風に男に求愛されるとはね。だけど、次からは気をつけるんだよ」

 私の肩を抱き寄せながら、常盤が満足げに言った。怒涛どとうの展開についていけず、されるままになっていた私だったが、その一言に慌てて彼の腕の中から脱出する。

「た、助けてくれたことにはお礼を言うよ。ありがとう」

 妻だのなんだのということには、もちろん納得していなかったけれど、常軌じょうきいっした様子の充から、ひとりで逃げることはできなかったと思う。常盤の存在は、素直にありがたかった。

「茜は愛する妻だからね。当然のことをしたまでだよ」
「…………」

 本当に当然のように常盤が言う。助けてもらった手前、さっきまでのように全力で彼を否定することは気が引けた。
 それに、昔この場所で一緒に過ごした猫のみーくんが、私にとって心のりどころであり、家族であり、特別な存在だったのは事実だ。
 ある意味、あの時交わした「家族になろう」という約束を、常盤は忠実に守ってくれているだけなのだろう。
 でも、だからといって、このまま常盤との結婚やら同棲やらを受け入れることは、もちろんできない。

「あのね、常盤」
「なんだい? かわいい茜」
「いろいろあって疲れちゃったから、今日はひとりにしてくれないかな。これから大学に行かなきゃいけないし。だから一度帰ってもらってもいい?」

 断固拒否の姿勢を取っても、のらりくらりとかわされるだけなので、もっともらしいことを言って、とりあえずお引き取りいただく作戦に出た。
 すると常盤は、緩く笑ったまま答えた。

「なんだ、そうだったのかい。それなら仕方がないね」

 あっさりと私の言葉を受け入れてくれた彼に、内心ガッツポーズを取る。
 ――だが。

「それなら、別室でおとなしく待つことにするよ。僕が使っていい部屋はどこかな?」
「は……?」
「だから言っただろう。僕たちはひとつ屋根の下で暮らさなければいけないって。だから帰ることはできない。でも茜がひとりになりたいと言うなら、僕は別の部屋にいるからね」

 彼なりの譲歩だったのかもしれない。本当はもっと側にいなければならないけれど、そういう事情なら特別に別室にいよう、とでも言いたげな、いかにも理解のある優しそうな顔をして言う。
 ――やっぱり全然わかってない。

「あんたの使う部屋なんてないわー!」
「え? この家は、昔見た時は茜ひとりでは使いきれないくらいの部屋数があったと思うけど」
「部屋は余ってるけど、あんたに使わせる部屋なんてないって言ってんの! 一旦帰れって言ってんでしょうが!」

 声を荒らげて言うと、常盤は楽しそうに笑った。

「新婚早々激しいね。初の夫婦喧嘩記念日と思えば悪くないな。じゃあ茜が落ち着くまで、蔵の方にいることにしよう」

 いろいろな前提が間違っている上に、結局帰らないらしい。だが、もう反論する気力がなかった。
 同じ敷地内とはいえ、別の建物にいるというのなら良しとしようか……。あまりに話が通じなさすぎて、常盤に対するハードルが下がってきている気がする。
 我ながらまずいとわかってはいるが、精神の疲労がいちじるしくて、頑張る気になれなかった。

「それじゃあ大学から帰ってくるのを待っているよ、茜」

 ご機嫌な様子でそう言うと、私の返事も待たずに常盤は玄関に背を向けて歩き出した。蔵の方へと向かったのだろう。
 ――私に、こいつを納得させて家から追い出すことなんてできるのかな。
 手強てごわすぎる常盤に、気力をがれた私は、残った力を振り絞って身支度を整え、現実逃避をするように大学へ向かったのだった。


     * * *


 大学の授業を終えた昼下がり。いつも通り路線バスに乗った私は、その振動に身を任せていた。
 いつもならば、のどかな景色を眺めながらの帰り道は、安らぎを覚えるものだったけれど、今日は大層気が重かった。
 帰ったらあいつがいるんだよなあ……
 人の意見を全く聞かない猫のあやかしと、また不毛な言い争いをしなきゃいけないと思うと、憂鬱ゆううつでしかない。
 しかし、大学の授業中に冷静に考えてみたのだが、あやかしということをひとまず脇に置いておくと、常盤の主張はあながち見当違いでもないのだ。
 確かに私は、十歳の時みーくんと家族になろうと約束した。心から懇願して、手作りの指輪を渡した。
 その誓いを常盤は忠実に守っているだけなのだ。それも、わざわざ私が結婚できる年齢になるまで、待って。
 そう考えると、一方的に約束を反故ほごにしようとしているのは私の方である。
 常盤の立場になって考えると、自分の方が悪いことをしている気持ちになった。
 ――いや、だからって、いきなり結婚だなんて。そもそもあやかしと人間って結婚できるの? 戸籍とかどうなるわけ?
 あやかしなんて、にわかには信じられない存在だ。正直私にとっても、あやかしは漫画や小説といったフィクションの中の登場人物でしかなかった。
 そんな存在と、いきなり結婚だのひとつ屋根の下で暮らすだの、受け入れられるわけがないではないか。
 バスから降りて、少しだけ歩き、自宅の前に辿たどり着く。恐る恐る木製の古びた門を開けた。いきなり常盤が「お帰り、愛する妻よ」なんて言って出迎えてくるんじゃないかと覚悟していたが、母屋おもやや蔵、庭を一通り見回しても彼の姿は見当たらない。
 ――もしかして、帰ってくれたとか⁉
 いや、こっちの話を全然聞き入れてくれてなかったし、期待しない方がいいかもしれない。
 暗澹あんたんたる気持ちでそんなことを考えながら、母屋おもやの引き戸を開けて中に入ったら――

「――⁉」

 いきなり誰かに羽交い締めにされて、口を塞がれた。そして耳元で「金目の物はどこだ」と、低くささやかれる。
 な、何⁉ まさか強盗⁉
 この近辺では、数十年間、犯罪のたぐいはないって町会長さんが言っていたのに!
 今朝の充の来襲といい、なんで今日はこんな物騒な目に遭ってばっかりなの⁉
 私は強盗の拘束から逃れようと思い切り身をよじったが、やはり女の力ではびくともしなかった。悲鳴を上げようにも、口を強く塞がれていて「んー! んー!」というくぐもった声しか出てこない。

「大声を出すんじゃねえ。金のりかだけ言え。暴れたら刺すぞ」

 いつの間に取り出したのか、強盗が私の鼻先に小型のナイフをちらつかせる。
 いや、ドラマとかでよくあるけど、お金を渡しても、証拠隠滅のために殺されるとか、定番だよね?
 そう考えると、この状況はもう詰んでいるのでは。
 ――誰か。誰か助けて! と、常盤っ!
 と、私が強く願った時だった。
 急に私を押さえつける強盗の力が弱まった。かと思ったら、どすんという音が聞こえてくる。恐る恐る振り返ると、ナイフを手にした目出し帽姿の男が、床に倒れていた。それも、規則正しくお腹を上下させて。
 ――え、眠っているの? なんでいきなり?
 とりあえずは危機を脱したらしいことに安心しつつも、訳のわからない状況に困惑していると、静かな声が聞こえてきた。

「常盤様がおっしゃっていた通りだ。あなたの帰りを待っていてよかったです」

 そう言いながら母屋おもやの奥から出てきたのは、見知らぬ成人男性と、彼と手を繋いだ小学校低学年くらいの女の子だった。
 目の細い淡白な顔立ちだが、全体のバランスはよく、いわゆる塩顔イケメンと称される顔だろう。漆黒の浴衣ゆかたをさらりとまとい、髪の色は驚くことに白だ。けれど、不自然な印象はなく、色素の薄い彼にはよく似合っていた。
 女の子の方は、大きな黒目がちの瞳と、小さな鼻と口をした、お人形みたいな掛け値なしの美少女だった。腰まで伸ばした細く柔らかそうな髪は、ストンと地に引っ張られるようにまっすぐ落ちている。茶色がかかった髪と、赤い着物のコントラストが鮮やかだ。
 和服姿の、どこか神秘的な美形のふたり組。
 私は一瞬で、彼らが人間ではないと察する。

「あなた方は、常盤の関係者ですか?」

 とても丁寧な口調の男性に、常盤より話が通じそうな印象を持った私は、敬語で尋ねた。
 彼はこくりと頷く。

「さようでございます、茜様。恐れ入りますが、私どもの説明は後ほどさせていただくとして。危険ですので、まずは彼にお帰り願いましょう」

 男性がそう言うと、床で眠っていた強盗が目を覚まし、ふらふらと起き上がった。とっさに警戒した私だったけれど、目出し帽の隙間から見えた男の瞳は、うつろで焦点が合っていない。どうやらまだ意識はないようだった。
 強盗はそのまま覚束おぼつかない足取りで歩き始め、玄関を抜け門から出て行った。

「ちょっと操らせていただきました。邪気も抜いておいたので、もうここへ来ることはないでしょう」
「へ、へえ……」

 あやかしってそんなこともできるのか。そういえばこの人、「常盤様」って言っていたけど、常盤ってもっとすごいことができるのかな?
 なんて、ぼんやり考えていた。そう、ごく自然に。
 短い間に、あやかしという存在やその摩訶まか不思議な力を、何度も見せつけられたせいだろう。私は段々と、非現実的な彼らに慣れつつあったのだ。


     * * *


 あの後、私は常盤の関係者らしいふたりを、あまり使っていない客間に通した。
 私を強盗から救ってくれたし、物腰もとても丁寧なので、ちゃんと客人として扱わなければと思ったのだ。……誰かとは違って。
 古びた座卓の上に、急須で淹れた緑茶を出すと、「茜様にこのようなお気遣いをしていただき、恐悦至極きょうえつしごくに存じます」と大層にありがたがられた。お姫様に向けられるような言葉遣いに、私の方が恐縮してしまった。
 人形のような少女はお茶には無反応で、男性の着物のすそを握りしめている。男性の方は、私がひと口飲んでから「どうぞ」と告げると、やっとお茶に手をつけてくれた。
 そうして、一口飲んだ湯飲みを座卓に置いた彼は、きりりとした面持ちで私をまっすぐ見つめ、こう言った。

「改めまして、茜様。私は幼い頃から常盤様のお世話をしている、付き人の浅葱あさぎと申します。隣にいるのが、私の妹の伽羅きゃらです」
「常盤の付き人……」

 ちらりと伽羅ちゃんに目を向けると、警戒したような目つきで私を見ていた。目が合ったのでにこりと微笑んでみたが、浅葱さんの背中に隠れてしまう。どうやら人見知りをする子のようだ。

「茜様をお守りするよう言いつかりまして、家の中でお待ちしておりました。本来なら、これは夫である常盤様の役目ですが、茜様に入るなと言われたからと、代わりに私を遣わされたのです。家主の茜様の許可なく家に入るのは気が引けたのですが、危険を回避するためだったのでご容赦いただければ幸いでございます」
「……なるほど」

 常盤は、律義にも「あんたの使う部屋なんてないわ!」って言った私の言葉を守っていたらしい。変なところで真面目な奴である。

「また、常盤様は先ほどまで蔵の方で茜様のお帰りをお待ちしていらっしゃいましたが、所用ができたためお出かけになっています。もうじきお帰りになるはずですが」

 だから蔵の中にも常盤はいなかったというわけか。
 しかし、浅葱さんは常盤よりも話が通じそうだ。浅葱さんと話せば、私の置かれている現状がより客観的に把握できそうな気がした。
 それに、ひょっとしたら結婚や同居を解消する方法を相談できるかもしれない。

「あの、私を守るためって言ってましたけど、どういうことですか? 確かにさっきは助けていただきましたけど、あんなこと、滅多にないと思うんですが……」
「いいえ、茜様」

 間髪かんはつれずにそう返ってきたので、私は言葉に詰まった。

「化け猫の総大将の妻は、その地位のため他のあやかしから狙われやすくなるのです」
「どういうことですか……?」
「……常盤様には、茜様が気にするから言うなと口止めされているのですが。総大将の妻なら、本来知っておくべきことなので、ご説明致します」

 少し遠慮がちに話し出した浅葱さんの説明は、こんな内容だった。
 化け猫の総大将であり続けるためには、さまざまな条件があるそうだが、もっとも重要なのは妻がいること。なんでも、家族を大切にできない者が他の化け猫たちのおさなど務まらないという、わりと理にかなった理由かららしい。
 今までは、私があやかしの法令上妻として認められる年齢ではなかったため、その条件については見逃されていたらしい。しかし私が二十歳はたちとなったことで、正式に常盤の妻として認められたそうだ。
 そして総大将の妻は、化け猫たちと敵対する他のあやかしや、総大将の座を狙う化け猫の手下なんかに、狙われることが多いんだとか。
 つまり私は、昨日二十歳はたちの誕生日を迎えたタイミングで、あやかし界で常盤の正式な妻として認識された。それと同時に、あやかしからも狙われるようになった、ということのようだ。

「先ほどの男にも、妖気を感じました。きっと常盤様をよく思わないあやかしが取りいていたのでしょう」

 浅葱さんの言葉を聞いて、ふと今朝のことを思い出した。ひょっとすると、充にもあやかしが取りいていたのかもしれない。普段とは様子が全然違っていたから。

「常盤様は、元々は総大将の正当な後継者ではありませんでした。しかし努力に努力を重ねて、総大将に相応ふさわしいと化け猫たちから認められるまでになった方なのです。お優しい方ですし、私も総大将は常盤様しかいらっしゃらないと思っています。……茜様には、どうか奥方として常盤様を支えていただきたく……」

 そこまで言うと、浅葱さんは深々と私に頭を下げた。このままでは土下座でもしそうな勢いだったので、「ちょ、ちょっと! 頭を上げてくださいよ!」と慌てて言い、顔を上げてもらう。
 ここまで丁寧に頭を下げられると、自分の方が悪いことをしている気がしてくる。常盤の時みたいに、「無理」とか「出て行け」なんて、言える雰囲気ではなかった。
 ――だけどなぁ。
 やっぱりいきなり会ったばかりの人と、しかもあやかしとの結婚なんて、承諾できるはずなんてない。
 私が何も言えずに困っていた時、客間のふすまを開けて常盤が顔を出した。

「また変なやからに襲われたらしいね? だから同じ屋根の下で暮らさなければならないと言ったのだよ。僕と共にいれば、茜には僕の妖気が移る。それが保護壁となって、邪悪なものから茜が見つかりづらくなるんだ」

 どうやら開けっ放しにしていた玄関から入って来たらしい。すでにさっきの出来事について把握している様子の常盤が、したり顔でそう言ってきた。

「じゃ、じゃあ……。私はあんたの近くにいないと、さっきみたいに襲われ続けるってこと……?」

 恐る恐る尋ねた私に、常盤はにこにこと満面の笑みを浮かべて頷いた。

「使い魔程度でよかったねえ。大学とやらに行っている間は、僕の妖気が茜に残っていたから、守られていたみたいだけど。もっと強いあやかしが狙って来たら、茜なんて瞬殺だよ?」
「しゅ、瞬殺……」

 常盤は、とんでもないことをにこやかに言ってくる。対照的に、私は奈落の底に落とされたような気分になった。
 ちぎりを結んだ事実がある限り、私は常盤の妻として、常に命の危険にさらされている状況らしい。


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