19 / 106
2.奇妙な仲間と喋る花
隠された謎
しおりを挟む
仕事場兼住処の屋敷に戻る頃には、空は既に藍色に浸食されていた。燈達が屋敷に入ると、既に仕事が終わったらしく、ラビィが玄関でそわそわとせわしなく動いていたが、燈の姿を見た瞬間ぱぁと顔を輝かせた。
「燈お帰り! 待っていたよー!」
そう言って燈に飛びつく。
「わっ」
燈は慌てて抱き止める。ラビィは驚くほど軽く、力の無い燈でも楽々と受け止める事が出来た。
「今日は燈の家に行くんだよー! 超楽しみ!」
「あ…そうだった」
初仕事とウィルの件ですっかりと忘れていた。それに気付いたラビィが白い頬を膨らませた。
「もしかして忘れてたのぉ?」
「ま、まさか」
そんなわけないじゃん、と言うとラビィはしばらく怪しむようにジロジロと見つめていたが、やがてニコリと微笑んだ。
「じゃあ早速行こうよ! 私もう待ちきれないー!」
そう言うと、ラビィは燈の手を引っ張った。燈より小さいのに、力が強い。兎なのに随分力がある…
「ラビィ、ライジルとリックは?」
「ライジルはまだ帰って来てないよ。リックはさっき帰った!」
ウィルの問いに答えながら、燈と一緒に階段を駆け上がる。
「じゃあウィル、また明日ねー!」
そう弾んだ声を言うと、ラビィは軽やかに廊下を走る。
「あ…」
一瞬だけ見えたウィル。彼はこちらを見上げ、やはり微笑んでいた。その微笑みに、燈は複雑な気持ちになった。ウィルの姿はすぐに見えなくなる。
「さあ、燈! 部屋に入れて入れて!」
燈の様子に気付かないラビィは明るい声でそう言った。
「わあ…! ここが燈の家?」
ドアを開けると、ラビィはキョロキョロと物珍しげに辺りを見渡した。玄関にあるガラスの置物を覗き込んだり、下駄箱を開けてみたり。
「やっぱり私の部屋とは違うなぁ! ね、中に入っていい?」
「うん。散らかっているけど…」
どうぞ、と言う前にラビィは嬉々とした様子で中に入っていった。
「…もう」
まるで妹が出来たようだ。クスリと微笑みながらラビィの後に続く。ラビィはリビングを見て「ふああ!」と間の抜けた声を漏らして驚いていた。
「何これ! 見た事の無いものばっかり!」
テレビの画面を軽く叩いたり、電話の子機を恐る恐る指でつついたりする。
「ね、燈! これ何?」
「それはテレビだよ」
「テレビ?」
テレビについて簡単な説明をすると、ラビィは目を輝かせた。
「今はつくの!?」
「うーん、どうだろう」
試しにリモコンのスイッチを押してみる。しかしテレビは映らず、砂嵐が流れるだけだった。耳触りな音が響く。電話は繋がるのに、テレビは映らないんだ。少々期待していたのだが、砂嵐にがっくりと肩を落とす。
「何これー!」
真っ暗な画面が突然砂嵐になったので、ラビィは興味津津にテレビにへばりつく。どうやらラビィは砂嵐がお気に召したらしい。画面をじぃと至近距離で見つめていた。
「そんなに近付いて見ると目を悪くするよ」
そう言ってリモコンのスイッチを切る。砂嵐が消えて元の黒い画面に戻り、そこに残念そうなラビィの顔が映った。
「ねぇ、じゃあこれは?」
好奇心旺盛なラビィは気になったものを見ては指を差して尋ねる。燈は説明に苦労しながらも何とかラビィに伝える事が出来た。
「本当に面白いなー! 別世界の物って!」
一通り説明を聞くと、ラビィは満足げに椅子に腰掛けた。
「見ていて飽きないもん!」
「私もだよ。ミレジカは不思議が多くて飽きない」
「そう? 燈にしたらミレジカは不思議に見えるんだねー! 何か変な感じ。ねぇ、ミレジカの何処が不思議なの?」
「そうだなぁ…。まず建物かな。私の住む街はビルっていう高い建物ばかりなの」
「何階建てくらい?」
「結構高いよ。50階以上のビルもあるし」
「50階!?」
ラビィは大きな目を見開かせた。
「そう。だから空はミレジカより狭く感じるんだ。…で、後は……ラビィみたいに動物が混じっている人がいる事かな…。私の世界には人間と動物しかいないよ」
「私みたい…。獣人の事かな? そうなんだぁ! ミレジカはいっぱい種族がいるんだよ! 私みたいな獣人や動物の姿をしたのもいるし!」
「へぇ…」
「ミレジカは獣人の方が多いかな。ウィルみたいな魔法使いは結構珍しいんだよ!」
ウィル。その名前に、燈は少しだけ表情を曇らせた。もしかしたら…ラビィはウィルの事を知っているかもしれない。彼の側で働く彼女なら……
「……ねぇ、ラビィ」
「んー?」
ラビィは周りを見回しながら返事をする。燈は少し躊躇してから、ゆっくりと口を開いた。
「ウィルって昔何かあったの?」
その瞬間、ラビィの動きが止まった。頬がヒクリと痙攣したのを、燈は見逃さなかった。
「……それ、誰に聞いたの?」
いつもより真剣味を帯びた声に、燈はやや身を引く。赤い瞳は、燈を真っ直ぐに見据える。まるで逃さまいとするかのように。あんなに明るい空気だったのに、あの一言で一気に空気の色が変わってしまった。
「も、モウっていう牛から…」
「モウ? ……あの牛…本当にお喋りなんだから」
ラビィは白髪の髪を邪魔そうにかき上げた。
「あの……ウィルって何で皆に避けられているの? 魔女に何かされたの?」
「魔女の事も聞いちゃったんだね。あの牛…今度ライジルに食べてもらおうかな」
「え」
物騒な言葉が聞こえ、燈は顔を強ばらせる。自分の発言に気付いたラビィは慌ててニコーっと満面の笑みを取り繕った。
「冗談だよ冗談! ライジルだってさすがにあんなに食べられないよー!」
「そ…そう? それならいいんだけど…っていうか、食べきれるかっていう問題じゃないような気がするんだけど…」
「もう! 燈は冗談が通じない真面目ちゃんなんだから!」
ラビィはそう言って燈の肩を叩いた。何だか上手く誤魔化されたような気がしたが、燈は彼女の言葉を信じる事にした。
「…とりあえず本題に戻ろっか。燈…ウィルの事は……私の口からは言えないの。というか、この街の人々は言いたがらないだろうねー。……言ったらウィルに殺されるかもしれないから」
「…………え」
サラリと言われ、燈は固まる。
(殺す……? ウィルが……? あんな穏やかに笑う人が人を殺そうとするわけ……)
『これ以上言うと……豚にして踏み潰すよ?』
「……っ!」
冷たい声を思い出し、燈は身震いをした。あの冷酷な瞳だったら、誰かを殺す事に何も躊躇しなさそうに思えた。穏やかに笑う彼と冷酷に見下す彼。一体本当の彼はどちらなのだろう。分からない。でも…自分に向けてくれた笑顔を嘘だなんて思いたくない。あの優しさは偽りではない。
「ねぇラビィ…ウィルは……優しい人だよね?」
縋るような瞳で白髪の少女を見つめる。赤い瞳は動揺で僅かに揺れたが、やがて柔らかく微笑んだ。
「うん。ウィルは優しい人だよ。……昔からずっと」
ラビィの両手が燈の手を包む。温かい体温に、燈は酷く安堵した。
「燈がウィルの隣にいれば、あいつはずっと優しくいられるよ」
「……私が隣に?」
何故自分がいたらウィルが優しくなるのか。ラビィの言っている意味が分からなかった。戸惑う燈に構わず、ラビィは続ける。
「燈がいれば……ウィルはきっと救われる」
「……どういう事……?」
聞き返すが、ラビィは微笑んだまま何も言わなかった。
意味が分からない。別の世界から来たばかりの自分が、ウィルを救えるというのは…どういう事だろうか。ラビィに質問したら少しは分かるかと思ったが、更に分からなくなってしまった。
「何だかお腹が減っちゃったよ! 燈何か作ってー!」
そしてラビィはこれ以上何も言うつもりはない。子供のように足をばたつかせるラビィを見て、深く溜息を吐いた。
「…分かったよ。適当に作るから、ちょっと待っていて」
「はーい!」
ラビィは無邪気に手を挙げた。冷蔵庫の中身を確認しながら、燈は考える。
この出張もまだ始まったばかりだ。ウィルの謎も、皆が隠している事も、いつか分かるはずだ。出来れば、ウィル本人から聞きたい。いつか、ウィルが自分から話してくれる日を待とう。燈はフ、と微笑むと野菜室からキャベツを取り出した。
「野菜メインにするね」
「ありがとう燈-!」
ラビィは歯を見せて嬉しそうに笑った。
「燈お帰り! 待っていたよー!」
そう言って燈に飛びつく。
「わっ」
燈は慌てて抱き止める。ラビィは驚くほど軽く、力の無い燈でも楽々と受け止める事が出来た。
「今日は燈の家に行くんだよー! 超楽しみ!」
「あ…そうだった」
初仕事とウィルの件ですっかりと忘れていた。それに気付いたラビィが白い頬を膨らませた。
「もしかして忘れてたのぉ?」
「ま、まさか」
そんなわけないじゃん、と言うとラビィはしばらく怪しむようにジロジロと見つめていたが、やがてニコリと微笑んだ。
「じゃあ早速行こうよ! 私もう待ちきれないー!」
そう言うと、ラビィは燈の手を引っ張った。燈より小さいのに、力が強い。兎なのに随分力がある…
「ラビィ、ライジルとリックは?」
「ライジルはまだ帰って来てないよ。リックはさっき帰った!」
ウィルの問いに答えながら、燈と一緒に階段を駆け上がる。
「じゃあウィル、また明日ねー!」
そう弾んだ声を言うと、ラビィは軽やかに廊下を走る。
「あ…」
一瞬だけ見えたウィル。彼はこちらを見上げ、やはり微笑んでいた。その微笑みに、燈は複雑な気持ちになった。ウィルの姿はすぐに見えなくなる。
「さあ、燈! 部屋に入れて入れて!」
燈の様子に気付かないラビィは明るい声でそう言った。
「わあ…! ここが燈の家?」
ドアを開けると、ラビィはキョロキョロと物珍しげに辺りを見渡した。玄関にあるガラスの置物を覗き込んだり、下駄箱を開けてみたり。
「やっぱり私の部屋とは違うなぁ! ね、中に入っていい?」
「うん。散らかっているけど…」
どうぞ、と言う前にラビィは嬉々とした様子で中に入っていった。
「…もう」
まるで妹が出来たようだ。クスリと微笑みながらラビィの後に続く。ラビィはリビングを見て「ふああ!」と間の抜けた声を漏らして驚いていた。
「何これ! 見た事の無いものばっかり!」
テレビの画面を軽く叩いたり、電話の子機を恐る恐る指でつついたりする。
「ね、燈! これ何?」
「それはテレビだよ」
「テレビ?」
テレビについて簡単な説明をすると、ラビィは目を輝かせた。
「今はつくの!?」
「うーん、どうだろう」
試しにリモコンのスイッチを押してみる。しかしテレビは映らず、砂嵐が流れるだけだった。耳触りな音が響く。電話は繋がるのに、テレビは映らないんだ。少々期待していたのだが、砂嵐にがっくりと肩を落とす。
「何これー!」
真っ暗な画面が突然砂嵐になったので、ラビィは興味津津にテレビにへばりつく。どうやらラビィは砂嵐がお気に召したらしい。画面をじぃと至近距離で見つめていた。
「そんなに近付いて見ると目を悪くするよ」
そう言ってリモコンのスイッチを切る。砂嵐が消えて元の黒い画面に戻り、そこに残念そうなラビィの顔が映った。
「ねぇ、じゃあこれは?」
好奇心旺盛なラビィは気になったものを見ては指を差して尋ねる。燈は説明に苦労しながらも何とかラビィに伝える事が出来た。
「本当に面白いなー! 別世界の物って!」
一通り説明を聞くと、ラビィは満足げに椅子に腰掛けた。
「見ていて飽きないもん!」
「私もだよ。ミレジカは不思議が多くて飽きない」
「そう? 燈にしたらミレジカは不思議に見えるんだねー! 何か変な感じ。ねぇ、ミレジカの何処が不思議なの?」
「そうだなぁ…。まず建物かな。私の住む街はビルっていう高い建物ばかりなの」
「何階建てくらい?」
「結構高いよ。50階以上のビルもあるし」
「50階!?」
ラビィは大きな目を見開かせた。
「そう。だから空はミレジカより狭く感じるんだ。…で、後は……ラビィみたいに動物が混じっている人がいる事かな…。私の世界には人間と動物しかいないよ」
「私みたい…。獣人の事かな? そうなんだぁ! ミレジカはいっぱい種族がいるんだよ! 私みたいな獣人や動物の姿をしたのもいるし!」
「へぇ…」
「ミレジカは獣人の方が多いかな。ウィルみたいな魔法使いは結構珍しいんだよ!」
ウィル。その名前に、燈は少しだけ表情を曇らせた。もしかしたら…ラビィはウィルの事を知っているかもしれない。彼の側で働く彼女なら……
「……ねぇ、ラビィ」
「んー?」
ラビィは周りを見回しながら返事をする。燈は少し躊躇してから、ゆっくりと口を開いた。
「ウィルって昔何かあったの?」
その瞬間、ラビィの動きが止まった。頬がヒクリと痙攣したのを、燈は見逃さなかった。
「……それ、誰に聞いたの?」
いつもより真剣味を帯びた声に、燈はやや身を引く。赤い瞳は、燈を真っ直ぐに見据える。まるで逃さまいとするかのように。あんなに明るい空気だったのに、あの一言で一気に空気の色が変わってしまった。
「も、モウっていう牛から…」
「モウ? ……あの牛…本当にお喋りなんだから」
ラビィは白髪の髪を邪魔そうにかき上げた。
「あの……ウィルって何で皆に避けられているの? 魔女に何かされたの?」
「魔女の事も聞いちゃったんだね。あの牛…今度ライジルに食べてもらおうかな」
「え」
物騒な言葉が聞こえ、燈は顔を強ばらせる。自分の発言に気付いたラビィは慌ててニコーっと満面の笑みを取り繕った。
「冗談だよ冗談! ライジルだってさすがにあんなに食べられないよー!」
「そ…そう? それならいいんだけど…っていうか、食べきれるかっていう問題じゃないような気がするんだけど…」
「もう! 燈は冗談が通じない真面目ちゃんなんだから!」
ラビィはそう言って燈の肩を叩いた。何だか上手く誤魔化されたような気がしたが、燈は彼女の言葉を信じる事にした。
「…とりあえず本題に戻ろっか。燈…ウィルの事は……私の口からは言えないの。というか、この街の人々は言いたがらないだろうねー。……言ったらウィルに殺されるかもしれないから」
「…………え」
サラリと言われ、燈は固まる。
(殺す……? ウィルが……? あんな穏やかに笑う人が人を殺そうとするわけ……)
『これ以上言うと……豚にして踏み潰すよ?』
「……っ!」
冷たい声を思い出し、燈は身震いをした。あの冷酷な瞳だったら、誰かを殺す事に何も躊躇しなさそうに思えた。穏やかに笑う彼と冷酷に見下す彼。一体本当の彼はどちらなのだろう。分からない。でも…自分に向けてくれた笑顔を嘘だなんて思いたくない。あの優しさは偽りではない。
「ねぇラビィ…ウィルは……優しい人だよね?」
縋るような瞳で白髪の少女を見つめる。赤い瞳は動揺で僅かに揺れたが、やがて柔らかく微笑んだ。
「うん。ウィルは優しい人だよ。……昔からずっと」
ラビィの両手が燈の手を包む。温かい体温に、燈は酷く安堵した。
「燈がウィルの隣にいれば、あいつはずっと優しくいられるよ」
「……私が隣に?」
何故自分がいたらウィルが優しくなるのか。ラビィの言っている意味が分からなかった。戸惑う燈に構わず、ラビィは続ける。
「燈がいれば……ウィルはきっと救われる」
「……どういう事……?」
聞き返すが、ラビィは微笑んだまま何も言わなかった。
意味が分からない。別の世界から来たばかりの自分が、ウィルを救えるというのは…どういう事だろうか。ラビィに質問したら少しは分かるかと思ったが、更に分からなくなってしまった。
「何だかお腹が減っちゃったよ! 燈何か作ってー!」
そしてラビィはこれ以上何も言うつもりはない。子供のように足をばたつかせるラビィを見て、深く溜息を吐いた。
「…分かったよ。適当に作るから、ちょっと待っていて」
「はーい!」
ラビィは無邪気に手を挙げた。冷蔵庫の中身を確認しながら、燈は考える。
この出張もまだ始まったばかりだ。ウィルの謎も、皆が隠している事も、いつか分かるはずだ。出来れば、ウィル本人から聞きたい。いつか、ウィルが自分から話してくれる日を待とう。燈はフ、と微笑むと野菜室からキャベツを取り出した。
「野菜メインにするね」
「ありがとう燈-!」
ラビィは歯を見せて嬉しそうに笑った。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
金眼のサクセサー[完結]
秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。
遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。
――しかし、五百年後。
魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった――
最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!!
リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。
マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー
※流血や残酷なシーンがあります※
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる