庵の中の壊れ人

秋雨薫

文字の大きさ
上 下
15 / 21
篠崎空

欲望-愛-

しおりを挟む


……まだ分からないのかい?あの男は人の気持ちすら弄ぶんだ。全ては…自分の為に。
小さな男の子にだって容赦はない。
もう一つ、話してやろう。


愛に飢えた男の子の話を―


―――



2月10日 はれ

今日は ぼくの友だちの あきら君といっしょに あそびました。
こうえんで すなのお山を つくって あそびました。
たのしくて ついついおそくなったら お母さんに しかられました。
こんなに よごして 空はいけない子だね と言われました。
今日も ぶたれてしまいました。
これは 空のためなんだよと言われながら ぶたれました。
ぼくは いたいけど がまんしました。
きっと いまごろ あきら君もお母さんにぶたれています。
だから ぼくは がまんしました。
きょうは ばつとして ゆうごはんが なしになりました。
お母さんは スーパーの おべんとうを たべていました。
とても おいしそうでした。



2月11日 くもり

きょうは がっこうで どうぶつのえを書きました。
ぼくは 犬がすきなので 犬を書きました。
いっしょうけんめい 書きました。
先生にも「空君はじょうずだね」とほめられました。
家にもってかえって お母さんに見せました。
先生にほめられたことも言いました。
でもお母さんは こんなのいらないよ と言って ぐしゃぐしゃにして ゴミばこに すてました。
ぼくは お母さんが いないときに えをゴミばこから だしました。
ぼくのえが ぐしゃぐしゃでした。



2月18日 はれときどきくもり

きょうは となりに すんでる りくと君と あそびました。
りくと君は ぼくよりも年上です。
高校生です。
りくと君は とてもやさしくて いつも ぼくのことを 心ぱいしてくれます。
ぼくの うでにある あざを見て「これはどうしたの」と聞かれました。
ぼくは「ころんじゃったんだよ」と うそをつきました。
あざのことは お母さんに「ほかの人に言っちゃだめだよ」と言われているので 言えませんでした。
お母さんのやくそくを まもらないと ばつとして ぶたれます。
だから ぼくは りくと君に うそをつきました。
りくと君、ごめんなさい。



2月24日 雨

きょうは 男の人が 家にきました。
お母さんが あそんできなさい と言ったので こうえんで あそびました。
きょうは りくと君がいなかったので 一人でブランコで あそびました。
夕方に なったので かえったら かぎが かかっていて はいれませんでした。
でもピンポンを ならすと お母さんが おこるので、ぼくは かぎがあくまで まっていました。
家にはいれたのは よるの一時でした。
男の人が かえるときに ドアがあきました。
お母さんは ぼくをみて「なんだ、いたの?」と言いました。
ぼくは、いなくてもいいの?

なんだか さむいです。
かぜをひいたかもしれないので はやく ねようと おもいます。



2月27日 雨のちくもり

あきら君の お母さんは あきら君をぶたないそうです。
お母さんは まえに「空をあいしているから ぶつのよ」と言っていました。
だから ぼくは「お母さんにぶたれない あきら君は あいされていないの?」とききました。
そうしたら あきら君は「お母さんは ぼくを ぶたないし ぼくをあいしてくれてるよ」と言いました。
「それはおかしいよ」とぼくが いうと、「空君のほうがおかしいよ」と言われました。

ぼくは、おかしいんですか?
お母さんは ぼくを あいしていますよね?



3月2日 くもり

あの男の人が まいにち きます。
そうしたら ぼくは いつも そとで あそばないと いけません。
そして ずっと そとで またないといけません。
ぼくは お母さんに「もう そとで あそびたくない」と言いました。
そうしたら ほっぺたを ぶたれました。
そのあと ぼくは たくさん ぶたれました。

「空は わるい子わるい子」

そう言いながら お母さんはぼくをぶちました。


いたい  いたい 
いたい いたい いたい


ぼくは ばつとして おしいれに いれられました。




あれから どれくらい たったか わかりません。
ぼくは まだ おしいれにいます。
お母さんに たくさん あやまったのに、お母さんは だしてくれません。

お母さん ごめんなさい ごめんなさい 
いくら いっても だしてくれません。

ごめんなさい ごめんなさい

ないて おしいれを たたいても だしてくれません。


くらくて せまくて こわいです。

お母さん たすけて


ねえ ぼくって あいされているの?
あいって    なに?


だれか おしえ



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

ルッキズムデスゲーム

はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』 とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。 知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。

長野県……の■■■■村について

白鳥ましろ
ホラー
この作品はモキュメンタリーです。 ■■■の物語です。 滝沢凪の物語です。 黒宮みさきの物語です。 とある友人の物語です。 私の物語です。 貴方の物語でもあります。 貴方は誰が『悪人』だと思いますか?

熾ーおこりー

ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】  幕末一の剣客集団、新撰組。  疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。  組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。  志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー ※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です 【登場人物】(ネタバレを含みます) 原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派) 芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。 沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派) 山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派) 土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派) 近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。 井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。 新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある 平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派) 平間(水戸派) 野口(水戸派) (画像・速水御舟「炎舞」部分)

朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】

その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。 幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話…… 日常に潜む、胸をざわめかせる怪異── 作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...