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2 グルト王国にて
センカの託したもの
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どうやらリィはオトギがアメリーへ殺意を放った事を察知し、二階から飛び降りて現れたようだ。オトギは舐めるようにリィを見つめると、大袈裟に肩を竦めてみせた。
「……これはこれは野蛮な男だ。服装は粗末なものだし、とても下品だ。――この男は不法侵入者では?」
今まで隠れていたカリバン国の護衛二人が瞬時に現れ、リィの前に立ちはだかる。どちらとも剣を抜いており、今にも飛び掛かりそうな勢いだ。リィの背後に王女がいる為、グルト王国護衛のマイクルとイムもそれを黙って見ていられるわけもなく、リィの両隣にそれぞれ立つ。
「うわー。リィ何やっているんだよー。俺、接近戦は苦手なんでマイクル殿お願いしますー。あ、援護はしますんで」
「…お前は今弓を持っていないだろう。その手に持っている剣を使いなさい」
緊張感のない物言いだが、しっかりと剣を構えるイムに、マイクルは呆れた様子で返しながらも目は真っ直ぐとカリバン王国の兵士に向けられている。一触即発の雰囲気に、アメリーは慌ててリィの肩を掴んだ。
「ちょ、ちょっと落ち着いて…! 皆、大丈夫だから剣をしまって…! リィ、この人はカリバン王国のオトギ王子だよ!」
「…カリバン?」
敵意剥き出しだったが、アメリーの言葉により、リィは剣の構えを解いた。それと同時にマイクルとイムも剣を仕舞うが、アメリーの前をどこうとはしなかった。カリバン王国の護衛は剣を抜いたままであったが、オトギが「もういい」と一言言えば、すぐに剣を腰へ差し、彼の背後に回る。
そんな中、アリソンが息を切らせてこちらへと駆け寄って来た。自分がいない間に殺伐とした雰囲気となっていた為、アリソンは怪訝そうな表情を見せたが、その中にいるはずのない人物を見つけ、目を見開いた。
「り、リィさん! 部屋にいてって言っていたのに…!」
「おや、お二人の知り合いですか? こんな品の無い男、どうしてこんな所にいるのです?」
アメリーやアリソンの言動により、リィはこの城の者なのだと何と無く察したオトギは鼻で笑う。明らかにリィを貶していると感じたアリソンは思わず言い返しそうになったが、リィが手の平を見せて制した為、口を噤む。当の本人は自分の悪口を気にしていないのだが、自分の慕うリィが悪く言われるのは我慢ならないようで、アリソンは下唇を噛んでいる。リィはそれを知ってか知らずか、アリソンの頭を優しく撫でた。
「アリ―、すまなかった。部屋にいるという約束を破ってしまった」
「いえ、仕方がないです…。何かがあったんですよね?」
部屋にいてくれという約束を破ってまでリィがここへ現れたという事は、余程の事があったのだとアリソンも理解したようで、オトギを一瞥する。リィはこくりと頷くと、オトギを指差して口を開く。
「この男が、アメに殺意を向けた」
「…オトギ王子が?」
穏やかではない発言に、アリソンは怪訝な表情を見せる。姉に殺意を向けられるとは許し難い行為だろう。リィの殺意を感じる力は、以前刺客から命を救われた事により一番理解しているであろうアリソンだが、その言葉だけではオトギに認めさせる事は出来ない。オトギも認めるつもりはないのだろう。慌てた様子も無く、いつもの薄い笑みを浮かべている。
「口の利き方が分からないようですね。貴方は誰と話していると思っているのですか? 随分と躾がなっていない男だ。まるで獣だな」
「獣は…どっちだ。お前は、まるで――」
「リ、リィ! とりあえず黙って! オトギ第二王子、えーと、この度はこちらの従者がとんだ失礼を致しました。長旅でお疲れでしょう? 部屋を用意しているので、そちらでお休みになられてください!」
オトギの行動には不可解な点があったが、これ以上この話を続けると本気で両国間に溝が出来そうなので、アメリーはリィの口を両手で塞いで早口で捲し立てるように言った。オトギは一瞬きょとんとしたが、すぐに口角を上げる。
「ええ、ありがとうございます。それではお言葉に甘えて…。センカ、良いですね?」
「……はい」
カリバン王国の王子の言葉に安堵したアメリーはイムに部屋案内をする従者を呼ぶように頼んだ。面倒くさそうにしながらも、イムはすぐに従者を連れて来た。グルト王国の従者の案内で、オトギとセンカは護衛を従えてこの場を去って行った。アリソンがマイクルとイムに、もう持ち場へ戻って良いと伝えると、二人は一度礼をしていなくなる。
二人の背中が見えなくなってから、アリソンは顔を赤くし、怒りの形相で地団太を踏んだ。
「何なんだよ、あいつ! アメリーに殺意を向けたって本当か!?」
「間違いない。あの殺意はアメに向けられていた」
アメリーも勿論、自分に殺意を向けられた事は分かっていた。凍るような視線、真一文字に結ばれた薄い唇。見た事の無いオトギの姿はとても恐ろしかった。今思い出すだけでも身震いしてしまう。向けられていた手が自分に触れたら、一体どうなっていたのだろうか。オトギがいる前では気丈に振舞っていたが、今更恐怖心で身体が震える。そんな中――リィが突然アメリーの頬を両手で包んだ。
突然の出来事に、アメリーは目を見開く。頬から感じるリィの体温が心地よくて、恐怖心が少しだけ和らぐ。目の前のリィはいつも通り眠そうだが、真っ直ぐとアメリーを見つめている。
「アメ、大丈夫だ。俺がいる限り、お前を危険な目に遭わせない」
その言葉に、体温に、アメリーは安堵した。感じていた恐怖心は消え去り、リィの優しさが身に染みる。先程もアメリーの身の危険を感じ、颯爽と現れてくれた。彼ならきっと、自分を助けてくれる。そう確信したアメリーは大きく頷いた。
そんな二人を見ていたアリソンは顔が赤いままだったが、怒りは落ち着いたようで、一つ咳払いをしてから口を開いた。
「でも、一体何があったの? アメリー」
アリソンの言葉と同時にリィはアメリーから手を離した。リィの体温に名残惜しさを感じながらも、アメリーは弟の問い掛けに答える。
「センカと二人きりで話していたの。元気が無さそうだったから、どうかしたのかって。そうしたら途中でオトギに見つかって……」
――アメリー…! な、ナツメ兄様が――
必死の表情で何かを伝えようとしていたセンカ。カリバン王国で異変があった事は明らかだ。――そして、第一王子ナツメの身に何かがあった事も。その事をアリソンに伝えると、彼は難しそうな表情で自分の顎に手を添えた。
「……他国の事であまり首を突っ込むのは良くないかもしれないけれど…センカの態度は気になるね。もし、ナツメ第一王子に何かがあったというのなら、ただ事では済まないはずだ。…オトギ王子とセンカはここへ三日程滞在する事になっている。僕がそれとなく探ってみるよ」
「あ、じゃあ私も――」
「アメリーはオトギ王子に会いたくないでしょ? ここは僕に任せて、リィさんと一緒にいてくれる? リィさんが一緒なら僕も安心だし」
「う、うん…」
別に大丈夫だ、とアメリーは言いたかったが、アリソンの姉を庇う気持ちが痛いくらいに伝わって来たので、弟に任せようと頷く。本当はセンカに直接聞きたい事があるが、オトギの目が光っている内は難しそうだ。
アメリーは手中のある物をキュッと握り締める。先程――センカがアメリーの手を掴んだ時、悲しげな表情を浮かべる彼女はそっとある物を渡していた。そっと手の平を開けて見てみると、五センチくらいの丸い塊が白い紙で乱雑に包まれている。オトギに隠れて手渡したこの塊に、何かがあるのだろうか。
「アリ―、あのさ…」
「あ、次の仕事が控えているから、僕はそろそろ戻るよ。アメリー、今日は部屋で大人しくしていてね」
「あ、うん…」
この謎の物体の事を伝えようとしたが、アリソンは忙しそうに走って行ってしまった。アメリーとリィだけがその場に留まっている。アメリーがチラリとリィを見れば、彼は紙に包まれた塊が気になっているようで凝視している。一人で抱え込んでいるのが嫌だったので、リィに話してみる事にする。
「あ、これセンカに貰ったの。何なんだろう」
そう言いながら、塊を包んでいる紙を開いてみる。本の頁を破いたもののようで、人の手で裂いた跡があり、文字が並んでいる。しかし、アメリーは見た事の無い文字だ。マカニシア大陸の言語は共通しているので、別の大陸のものだろうか。そしてそれに包まれていた塊は、漆黒の色の石だった。一瞬ただの石のように見えるが、微かに魔力を感じる。
「黒い石? 魔石のようだけど…何か嫌な感じ…。これ、何だろうね?」
「分からない」
リィは首を振った。魔石はその者の持つ魔力によって色を変える。雷だったら金色、氷だったら透明、水だったら青色。――黒色の魔石など聞いた事が無い。
(カリバン王国の加護石的な存在の何か? …それにしてはドス黒いけど)
魔石は国それぞれが保管しており、グルト王国では王が魔力を込めた石を加護石と呼び、国民達の防御壁として効力を発揮する。アメリーのように魔力の足りない者の力を補う事も出来るのだが、加護石がグルト王国にとって本来の使い方だ。
カリバン王国にも恐らく王族が魔力を込めた魔石が存在している。それは回復に特化した魔石だと思っていたが、手中にある漆黒のそれは明らかに人の傷を癒す物ではない。
(…皆忙しそうだし、私で調べてみようかな)
調べ物が得意ではないアメリーだが、友達のセンカの異変を知る手掛かりになるかもしれない。そう思うと、不思議とやる気が湧いて来た。決心して黒い石を握り締めたアメリーを見て、リィは不思議そうに首を傾げたのだった。
「……これはこれは野蛮な男だ。服装は粗末なものだし、とても下品だ。――この男は不法侵入者では?」
今まで隠れていたカリバン国の護衛二人が瞬時に現れ、リィの前に立ちはだかる。どちらとも剣を抜いており、今にも飛び掛かりそうな勢いだ。リィの背後に王女がいる為、グルト王国護衛のマイクルとイムもそれを黙って見ていられるわけもなく、リィの両隣にそれぞれ立つ。
「うわー。リィ何やっているんだよー。俺、接近戦は苦手なんでマイクル殿お願いしますー。あ、援護はしますんで」
「…お前は今弓を持っていないだろう。その手に持っている剣を使いなさい」
緊張感のない物言いだが、しっかりと剣を構えるイムに、マイクルは呆れた様子で返しながらも目は真っ直ぐとカリバン王国の兵士に向けられている。一触即発の雰囲気に、アメリーは慌ててリィの肩を掴んだ。
「ちょ、ちょっと落ち着いて…! 皆、大丈夫だから剣をしまって…! リィ、この人はカリバン王国のオトギ王子だよ!」
「…カリバン?」
敵意剥き出しだったが、アメリーの言葉により、リィは剣の構えを解いた。それと同時にマイクルとイムも剣を仕舞うが、アメリーの前をどこうとはしなかった。カリバン王国の護衛は剣を抜いたままであったが、オトギが「もういい」と一言言えば、すぐに剣を腰へ差し、彼の背後に回る。
そんな中、アリソンが息を切らせてこちらへと駆け寄って来た。自分がいない間に殺伐とした雰囲気となっていた為、アリソンは怪訝そうな表情を見せたが、その中にいるはずのない人物を見つけ、目を見開いた。
「り、リィさん! 部屋にいてって言っていたのに…!」
「おや、お二人の知り合いですか? こんな品の無い男、どうしてこんな所にいるのです?」
アメリーやアリソンの言動により、リィはこの城の者なのだと何と無く察したオトギは鼻で笑う。明らかにリィを貶していると感じたアリソンは思わず言い返しそうになったが、リィが手の平を見せて制した為、口を噤む。当の本人は自分の悪口を気にしていないのだが、自分の慕うリィが悪く言われるのは我慢ならないようで、アリソンは下唇を噛んでいる。リィはそれを知ってか知らずか、アリソンの頭を優しく撫でた。
「アリ―、すまなかった。部屋にいるという約束を破ってしまった」
「いえ、仕方がないです…。何かがあったんですよね?」
部屋にいてくれという約束を破ってまでリィがここへ現れたという事は、余程の事があったのだとアリソンも理解したようで、オトギを一瞥する。リィはこくりと頷くと、オトギを指差して口を開く。
「この男が、アメに殺意を向けた」
「…オトギ王子が?」
穏やかではない発言に、アリソンは怪訝な表情を見せる。姉に殺意を向けられるとは許し難い行為だろう。リィの殺意を感じる力は、以前刺客から命を救われた事により一番理解しているであろうアリソンだが、その言葉だけではオトギに認めさせる事は出来ない。オトギも認めるつもりはないのだろう。慌てた様子も無く、いつもの薄い笑みを浮かべている。
「口の利き方が分からないようですね。貴方は誰と話していると思っているのですか? 随分と躾がなっていない男だ。まるで獣だな」
「獣は…どっちだ。お前は、まるで――」
「リ、リィ! とりあえず黙って! オトギ第二王子、えーと、この度はこちらの従者がとんだ失礼を致しました。長旅でお疲れでしょう? 部屋を用意しているので、そちらでお休みになられてください!」
オトギの行動には不可解な点があったが、これ以上この話を続けると本気で両国間に溝が出来そうなので、アメリーはリィの口を両手で塞いで早口で捲し立てるように言った。オトギは一瞬きょとんとしたが、すぐに口角を上げる。
「ええ、ありがとうございます。それではお言葉に甘えて…。センカ、良いですね?」
「……はい」
カリバン王国の王子の言葉に安堵したアメリーはイムに部屋案内をする従者を呼ぶように頼んだ。面倒くさそうにしながらも、イムはすぐに従者を連れて来た。グルト王国の従者の案内で、オトギとセンカは護衛を従えてこの場を去って行った。アリソンがマイクルとイムに、もう持ち場へ戻って良いと伝えると、二人は一度礼をしていなくなる。
二人の背中が見えなくなってから、アリソンは顔を赤くし、怒りの形相で地団太を踏んだ。
「何なんだよ、あいつ! アメリーに殺意を向けたって本当か!?」
「間違いない。あの殺意はアメに向けられていた」
アメリーも勿論、自分に殺意を向けられた事は分かっていた。凍るような視線、真一文字に結ばれた薄い唇。見た事の無いオトギの姿はとても恐ろしかった。今思い出すだけでも身震いしてしまう。向けられていた手が自分に触れたら、一体どうなっていたのだろうか。オトギがいる前では気丈に振舞っていたが、今更恐怖心で身体が震える。そんな中――リィが突然アメリーの頬を両手で包んだ。
突然の出来事に、アメリーは目を見開く。頬から感じるリィの体温が心地よくて、恐怖心が少しだけ和らぐ。目の前のリィはいつも通り眠そうだが、真っ直ぐとアメリーを見つめている。
「アメ、大丈夫だ。俺がいる限り、お前を危険な目に遭わせない」
その言葉に、体温に、アメリーは安堵した。感じていた恐怖心は消え去り、リィの優しさが身に染みる。先程もアメリーの身の危険を感じ、颯爽と現れてくれた。彼ならきっと、自分を助けてくれる。そう確信したアメリーは大きく頷いた。
そんな二人を見ていたアリソンは顔が赤いままだったが、怒りは落ち着いたようで、一つ咳払いをしてから口を開いた。
「でも、一体何があったの? アメリー」
アリソンの言葉と同時にリィはアメリーから手を離した。リィの体温に名残惜しさを感じながらも、アメリーは弟の問い掛けに答える。
「センカと二人きりで話していたの。元気が無さそうだったから、どうかしたのかって。そうしたら途中でオトギに見つかって……」
――アメリー…! な、ナツメ兄様が――
必死の表情で何かを伝えようとしていたセンカ。カリバン王国で異変があった事は明らかだ。――そして、第一王子ナツメの身に何かがあった事も。その事をアリソンに伝えると、彼は難しそうな表情で自分の顎に手を添えた。
「……他国の事であまり首を突っ込むのは良くないかもしれないけれど…センカの態度は気になるね。もし、ナツメ第一王子に何かがあったというのなら、ただ事では済まないはずだ。…オトギ王子とセンカはここへ三日程滞在する事になっている。僕がそれとなく探ってみるよ」
「あ、じゃあ私も――」
「アメリーはオトギ王子に会いたくないでしょ? ここは僕に任せて、リィさんと一緒にいてくれる? リィさんが一緒なら僕も安心だし」
「う、うん…」
別に大丈夫だ、とアメリーは言いたかったが、アリソンの姉を庇う気持ちが痛いくらいに伝わって来たので、弟に任せようと頷く。本当はセンカに直接聞きたい事があるが、オトギの目が光っている内は難しそうだ。
アメリーは手中のある物をキュッと握り締める。先程――センカがアメリーの手を掴んだ時、悲しげな表情を浮かべる彼女はそっとある物を渡していた。そっと手の平を開けて見てみると、五センチくらいの丸い塊が白い紙で乱雑に包まれている。オトギに隠れて手渡したこの塊に、何かがあるのだろうか。
「アリ―、あのさ…」
「あ、次の仕事が控えているから、僕はそろそろ戻るよ。アメリー、今日は部屋で大人しくしていてね」
「あ、うん…」
この謎の物体の事を伝えようとしたが、アリソンは忙しそうに走って行ってしまった。アメリーとリィだけがその場に留まっている。アメリーがチラリとリィを見れば、彼は紙に包まれた塊が気になっているようで凝視している。一人で抱え込んでいるのが嫌だったので、リィに話してみる事にする。
「あ、これセンカに貰ったの。何なんだろう」
そう言いながら、塊を包んでいる紙を開いてみる。本の頁を破いたもののようで、人の手で裂いた跡があり、文字が並んでいる。しかし、アメリーは見た事の無い文字だ。マカニシア大陸の言語は共通しているので、別の大陸のものだろうか。そしてそれに包まれていた塊は、漆黒の色の石だった。一瞬ただの石のように見えるが、微かに魔力を感じる。
「黒い石? 魔石のようだけど…何か嫌な感じ…。これ、何だろうね?」
「分からない」
リィは首を振った。魔石はその者の持つ魔力によって色を変える。雷だったら金色、氷だったら透明、水だったら青色。――黒色の魔石など聞いた事が無い。
(カリバン王国の加護石的な存在の何か? …それにしてはドス黒いけど)
魔石は国それぞれが保管しており、グルト王国では王が魔力を込めた石を加護石と呼び、国民達の防御壁として効力を発揮する。アメリーのように魔力の足りない者の力を補う事も出来るのだが、加護石がグルト王国にとって本来の使い方だ。
カリバン王国にも恐らく王族が魔力を込めた魔石が存在している。それは回復に特化した魔石だと思っていたが、手中にある漆黒のそれは明らかに人の傷を癒す物ではない。
(…皆忙しそうだし、私で調べてみようかな)
調べ物が得意ではないアメリーだが、友達のセンカの異変を知る手掛かりになるかもしれない。そう思うと、不思議とやる気が湧いて来た。決心して黒い石を握り締めたアメリーを見て、リィは不思議そうに首を傾げたのだった。
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