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最終章
山下大五郎
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午後一時前、4限目の授業が終わりそうになる。そろそろ生徒が時計を気にし始め、腹を空かせている者も出始めた所だろうか。山下大五郎は木曜日の4限目の授業は空いており、いつものようにコーヒーの入った紙コップに口をつけようとする。静かに昇る湯気には、微かに香りが漂う。まだ熱いと思い、口につけずテーブルに置いた。手持ち無沙汰になり、何となくマドラーでコーヒーを混ぜる。いつもと気分を変えて今日はブラックコーヒーではない、スティックシュガー2本とミルクパウダー2杯を入れたため、普通の人からすれば随分と甘い仕上がりになっているだろう。砂糖はブラックコーヒーの中にみるみると溶けてゆく。ミルクパウダーがまるで立昇る蒸気のように、吹き出すように黒色と混ざり合う。
2階の窓から見える景色は、黄色と橙色の葉が交錯する紅葉の木が見える。先週よりも葉が少なくなっている。そこに一枚の葉が見えた。黄と橙を合わせたような色合いで、飄々と風に仰がれる姿はまるで、生まれたばかりの子鹿が初めて立つ時のように、幼く、心許ない。
いつの間にか昼休みの時間に入っていたようで、窓の外からはグラウンドへ駆け出す生徒が見えた。
「山下先生こんにちは」その声に気付いたのは、コーヒーが飲めるほどの温もりに変わっていた時だった。
「ああ、元気か」私は窓際の席から見える屋上から彼へと視線を移して、機械的にそう言った。
「もう秋も終わりですね」
「季節の移り変わりは早いものだからな」
「一つ、質問してもいいですか」私は、彼の握られた拳に目を落とし、一つ息をついた。
「先生は以前、正義には善も悪もないと仰いました。ならばその正義が対立した時にはどうすればいいと思いますか」
私は彼への返答を思い倦ねていた。彼の言わんとすることは彼の瞳を見てわかったのだ。
「人と人とが同じ考えを持つということが実現し得ないように、掲げる正義がどのようなものであれ、いずれは対立し合うことなのだと思います」彼は握り拳に蓋をするように左手でそっと包んだ。
「自分の答えを用意せずして生徒に問うだなんて、教師失格だな」
「そんなことは」
「だがな、正解というものは誰かに聞くものじゃないんだ。正解というものは、それを考える者がいれば、考える者の数だけ、思想の数だけ生まれるものなんだ。どれが正しいものなのか、それは自らで判断するしかないんだ」
「そうですね」椎名悟は少し俯き、納得のいかない顔をしている。
「しかし、他の意見を聞き、共感し、反発し、尊重し、自らの思想を成長させることもまた、必要なんだ。最終的には自分が判断するべきであれどな。正解というものはある種、この世にたくさんあるイデオロギーから生まれた一つの結論でしかないんだ。人というのは弱い生き物で、弱いからこそ統合する、集団を作る、そうして多くのイデオロギーを一つにまとめるんだ。そうすることで争い事が減少する。考えが違うからといって同種の血を見るのは誰だって嫌なものだ」
「それなら、統合し得ない意見はどうなるんですか。破棄されるんですか」
「どこにだって少数派はいる。ただ、その全てが不正解とは限らない。もちろん、正解ともわからない。何故だかわかるかい」
「どちらの意見も、あるイデオロギーから出た結論だからというわけですか?」
「そう、そのイデオロギーが大きいか小さいかの差であって、その差が正解か不正解かの差ではないんだ。多くのものに認められない、或いは未だ認められていないというだけのことが少数派と呼ばれるものなんだ」
「その少数派が、例えば国の法律によって取り締まられるものだったらどうでしょう」
「それは正しいものとは言えない、多数派からしたらだがな。法律ってのは多数派の意見を尊重して、多くの者が安全な暮らしができるようにする為に作られた決まり事だ。例えば殺人が合法的ならそれは大変な事だろう」
「そうですね、怖くて外もで歩けません」
「そうだな。さっき少数派が正しいともそうでないとも言ったが、多数派の意見は規範ともなるんだ。人間が人間らしく生きる為、人間という種族が生き残る為、その為に少数派が破棄される事だってあるだろう。結局は多数派が正しいと結論付けられてしまうんだ。人間は弱い生き物だから、少数派、つまり自分の考えが異なる者が怖いんだよ。恐怖というのは大抵、無知から来るものだ」
「その少数派は、ときには排斥すべきというわけですか」
「結果としてそういう結末になる事もある。知っている中で顕著なものは異端審問だろうか」
「その少数派が自分に近しい者だったとしたらどうすればいいのでしょうか」目の前の彼は、結論を出したがっているように見えた。しかしその目には迷いもある。
「少数派の意見を正しいか、或いはそうでないのか、処罰すべきか、そうでないのか。いつだって多数派のイデオロギーから結論付けられる。だから、本当の意味で正しいのかは誰にもわかりはしない。だから、自分の意思が必要なんだ。正しさの判断を誤らないように常に自分の行動を考えるんだ」
私には到底、彼のこれからの判断を決めることはできなかった。彼に委ねてしまった。それしか出来なかった。私は自分の言葉とは裏腹に、自分の意思を持つ事が出来なかった。今になってはその権利は到底ないと結論付けて、逃げているだけの弱い人間なのかもしれない。
「わかりました。自分の行動を信じる事が必要なんですね」彼は何かを決めたような顔をしていた。一つ息をついた、深く、何か覚悟を決めたようだった。
「これくらいしか、私に言えることはない。本当にすまないな」
「いえ、ありがとうございます」
彼はしばらく、黙って立ち尽くしていた。彼の拳はもう握られていない。
「あの日、11月○日の木曜日、私は誠一の変わり果てた姿を見て、見上げると、人影が見えました。そして屋上に向かいました。でもそれは誠一が転落した後。犯人は居ませんでした。少し遅かった。何かの拍子でもっと早く気付く事が出来ていれば、もしかしたら彼を助ける事が出来たのかもしれない」
「そうだな」
「先生は、私が屋上についた後、すぐに駆けつけて来ましたね。その理由は普段空いていることのない、屋上へのドアが開いているからだと、話し声が聞こえたからだと言いましたが、それは本当は違うんですよね」
「ああ」
「最初は、先生のことを疑っていました。もしかしたら彼を突き落とした犯人ではないのかと。しかし真実は違う。そうですよね」
「ああ」
「先生はあのとき、誠一が死んだとき。見ていたんですよね。その場所、この図書室の中で一番見晴らしのいい窓際のその席で誠一が死ぬところを。そして話し声は聞いたのではない。話しているところを見た」
「ああ」私は息を吐き捨てるように返事をした。彼は知っていたようだ。私は、反射的にここから見える学校の屋上に目を移した。
「木曜日は先生が習慣的にこの場所に来て、4限目から昼休みまでの時間ここに居た。だから屋上にいる誠一と犯人の姿を見ることができた。そして彼が落とされたところを見て、すぐに駆けつけた」
目の前の彼には真実を言うべきか迷っていた。しかし、それもいずれはわかることだと確信していた。おそらく、彼はもうその真実の手前まで来ているはずだ。
「先生は全て知っていたんですよね。誠一のその最後も、彼を突き落とした犯人も」
「黙っていて悪かった」
「先生が、私に本当の事を言わなかった事を咎めようだなんて思っていません。きっと、何かしらの意味があるのだと思います。僕を想って黙っていたのだと思います」
最早、私の口から言うべきことはなかった。何も、彼にしてあげられることはなかった。
「私はもう、迷いません」彼は踵を返して図書室を出ようとする。
「君にとって、正義とはなんだと思う」私は思わず、そう問いかけていた。いつかの自分が、自分のクラスメイトにした問いかけであった。今では私が彼に教えてもらっているようだ。
「私にとって正義とは、意思です。貫き通す意思そのものが、私にとっての正義です」
「そうか」左手に軽く握られていた、コーヒーの入った紙コップはもう熱を帯びていなかった。
あの紅葉の木からは、私が見ていた一枚の葉は既にそこにはなかった。風に吹かれて何処かへ消えて行ったのだろう。冷たい冬風に晒されて、外はとても寒いだろう。
2階の窓から見える景色は、黄色と橙色の葉が交錯する紅葉の木が見える。先週よりも葉が少なくなっている。そこに一枚の葉が見えた。黄と橙を合わせたような色合いで、飄々と風に仰がれる姿はまるで、生まれたばかりの子鹿が初めて立つ時のように、幼く、心許ない。
いつの間にか昼休みの時間に入っていたようで、窓の外からはグラウンドへ駆け出す生徒が見えた。
「山下先生こんにちは」その声に気付いたのは、コーヒーが飲めるほどの温もりに変わっていた時だった。
「ああ、元気か」私は窓際の席から見える屋上から彼へと視線を移して、機械的にそう言った。
「もう秋も終わりですね」
「季節の移り変わりは早いものだからな」
「一つ、質問してもいいですか」私は、彼の握られた拳に目を落とし、一つ息をついた。
「先生は以前、正義には善も悪もないと仰いました。ならばその正義が対立した時にはどうすればいいと思いますか」
私は彼への返答を思い倦ねていた。彼の言わんとすることは彼の瞳を見てわかったのだ。
「人と人とが同じ考えを持つということが実現し得ないように、掲げる正義がどのようなものであれ、いずれは対立し合うことなのだと思います」彼は握り拳に蓋をするように左手でそっと包んだ。
「自分の答えを用意せずして生徒に問うだなんて、教師失格だな」
「そんなことは」
「だがな、正解というものは誰かに聞くものじゃないんだ。正解というものは、それを考える者がいれば、考える者の数だけ、思想の数だけ生まれるものなんだ。どれが正しいものなのか、それは自らで判断するしかないんだ」
「そうですね」椎名悟は少し俯き、納得のいかない顔をしている。
「しかし、他の意見を聞き、共感し、反発し、尊重し、自らの思想を成長させることもまた、必要なんだ。最終的には自分が判断するべきであれどな。正解というものはある種、この世にたくさんあるイデオロギーから生まれた一つの結論でしかないんだ。人というのは弱い生き物で、弱いからこそ統合する、集団を作る、そうして多くのイデオロギーを一つにまとめるんだ。そうすることで争い事が減少する。考えが違うからといって同種の血を見るのは誰だって嫌なものだ」
「それなら、統合し得ない意見はどうなるんですか。破棄されるんですか」
「どこにだって少数派はいる。ただ、その全てが不正解とは限らない。もちろん、正解ともわからない。何故だかわかるかい」
「どちらの意見も、あるイデオロギーから出た結論だからというわけですか?」
「そう、そのイデオロギーが大きいか小さいかの差であって、その差が正解か不正解かの差ではないんだ。多くのものに認められない、或いは未だ認められていないというだけのことが少数派と呼ばれるものなんだ」
「その少数派が、例えば国の法律によって取り締まられるものだったらどうでしょう」
「それは正しいものとは言えない、多数派からしたらだがな。法律ってのは多数派の意見を尊重して、多くの者が安全な暮らしができるようにする為に作られた決まり事だ。例えば殺人が合法的ならそれは大変な事だろう」
「そうですね、怖くて外もで歩けません」
「そうだな。さっき少数派が正しいともそうでないとも言ったが、多数派の意見は規範ともなるんだ。人間が人間らしく生きる為、人間という種族が生き残る為、その為に少数派が破棄される事だってあるだろう。結局は多数派が正しいと結論付けられてしまうんだ。人間は弱い生き物だから、少数派、つまり自分の考えが異なる者が怖いんだよ。恐怖というのは大抵、無知から来るものだ」
「その少数派は、ときには排斥すべきというわけですか」
「結果としてそういう結末になる事もある。知っている中で顕著なものは異端審問だろうか」
「その少数派が自分に近しい者だったとしたらどうすればいいのでしょうか」目の前の彼は、結論を出したがっているように見えた。しかしその目には迷いもある。
「少数派の意見を正しいか、或いはそうでないのか、処罰すべきか、そうでないのか。いつだって多数派のイデオロギーから結論付けられる。だから、本当の意味で正しいのかは誰にもわかりはしない。だから、自分の意思が必要なんだ。正しさの判断を誤らないように常に自分の行動を考えるんだ」
私には到底、彼のこれからの判断を決めることはできなかった。彼に委ねてしまった。それしか出来なかった。私は自分の言葉とは裏腹に、自分の意思を持つ事が出来なかった。今になってはその権利は到底ないと結論付けて、逃げているだけの弱い人間なのかもしれない。
「わかりました。自分の行動を信じる事が必要なんですね」彼は何かを決めたような顔をしていた。一つ息をついた、深く、何か覚悟を決めたようだった。
「これくらいしか、私に言えることはない。本当にすまないな」
「いえ、ありがとうございます」
彼はしばらく、黙って立ち尽くしていた。彼の拳はもう握られていない。
「あの日、11月○日の木曜日、私は誠一の変わり果てた姿を見て、見上げると、人影が見えました。そして屋上に向かいました。でもそれは誠一が転落した後。犯人は居ませんでした。少し遅かった。何かの拍子でもっと早く気付く事が出来ていれば、もしかしたら彼を助ける事が出来たのかもしれない」
「そうだな」
「先生は、私が屋上についた後、すぐに駆けつけて来ましたね。その理由は普段空いていることのない、屋上へのドアが開いているからだと、話し声が聞こえたからだと言いましたが、それは本当は違うんですよね」
「ああ」
「最初は、先生のことを疑っていました。もしかしたら彼を突き落とした犯人ではないのかと。しかし真実は違う。そうですよね」
「ああ」
「先生はあのとき、誠一が死んだとき。見ていたんですよね。その場所、この図書室の中で一番見晴らしのいい窓際のその席で誠一が死ぬところを。そして話し声は聞いたのではない。話しているところを見た」
「ああ」私は息を吐き捨てるように返事をした。彼は知っていたようだ。私は、反射的にここから見える学校の屋上に目を移した。
「木曜日は先生が習慣的にこの場所に来て、4限目から昼休みまでの時間ここに居た。だから屋上にいる誠一と犯人の姿を見ることができた。そして彼が落とされたところを見て、すぐに駆けつけた」
目の前の彼には真実を言うべきか迷っていた。しかし、それもいずれはわかることだと確信していた。おそらく、彼はもうその真実の手前まで来ているはずだ。
「先生は全て知っていたんですよね。誠一のその最後も、彼を突き落とした犯人も」
「黙っていて悪かった」
「先生が、私に本当の事を言わなかった事を咎めようだなんて思っていません。きっと、何かしらの意味があるのだと思います。僕を想って黙っていたのだと思います」
最早、私の口から言うべきことはなかった。何も、彼にしてあげられることはなかった。
「私はもう、迷いません」彼は踵を返して図書室を出ようとする。
「君にとって、正義とはなんだと思う」私は思わず、そう問いかけていた。いつかの自分が、自分のクラスメイトにした問いかけであった。今では私が彼に教えてもらっているようだ。
「私にとって正義とは、意思です。貫き通す意思そのものが、私にとっての正義です」
「そうか」左手に軽く握られていた、コーヒーの入った紙コップはもう熱を帯びていなかった。
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