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VSクリミナ王国
第四十二話 クラウディアの家から引き揚げて
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オリギナに戻って一日たった。
クラウディアは避難民扱いされて母と一緒に皇都に戻された。父親はそのまま残ってニアフロント領の戦いに参加するようだ。
避難民は泊まる場所がないと言うので、ジブリルが大使館を解放して避難民を受け入れている。それでも全員は収容できないので、皇帝が近衛師団の兵舎や広場を解放している。
「あ~あ、つまんないなぁ。もっとこう強敵がいると思った。近衛師団ぐらいのがごろごろいると思った」
「カテイナ様は強いですね。私は戦いが怖くてそういうのは苦手です」
「だから、おまえはそれでいいって言っただろ? 俺はもっとこう勝負に熱くなれるんだと思ってたのにさ。碌な奴がいなかった」
「カテイナちゃんは寝てたもんね」
「あんなのバリア張ってれば何の問題もないのにさ、おまえが背負って走るから、気持ち悪いのなんのって、吐くかと思ったぞ」
「……こいつ、人が心配して連れてきてあげたのに……」
「俺は面白いと思ったから首を突っ込んだんだ。こんな程度って知っていたらいかなかったぞ」
「カテイナ様、それは最初からいかなければよかったのでは?」
「今度からはそうする。クラウディアも次は自力で何とかしろよな」
クラウディアがなんとも言えない表情をしている。
俺だって最初はクラウディアが死んだかもという不安があったし、そのあとは相手に強い奴がいると期待してワクワクしていた。
だがいざ戦ってみたらがっかりした。なんだあいつら、数を頼りの烏合の衆。どれが強いとか品定めもできないほど一律で弱かった。
だんだんとわかってきたが、この国で一番強いのが近衛師団だ。クラウディアの家は地方貴族でその手下は近衛師団より五段は劣る。そしてクリミナ兵はさらに二段は下だ。あんなのじゃ、玩具にすらならない。
「そうだ、皇帝にお願いしにいかないと」
「……すごく不安なのですが、カテイナ様は何をお願いに行くのですか?」
「もしかして……私のこと?」
「あ~、それもある。だが、それより遊び場だ。俺が思いっきり魔法を撃てて、暴れまわって好き勝手出来る所、近衛師団の奴が皇帝に要望を出しておくって言ってたし、もう用意してくれているかもしれないしな」
「昨日の今日じゃ絶対無理――」
クラウディアの意見なんてどうでもいい。楽しいことがあるならすぐにでもそこに行きたいのが性分と言うものだ。
俺はゲート魔法を展開して、謁見の間につなげる。
そしたら肩を二人に掴まれた。
「か、カテイナ様お待ちを!」
「カテイナちゃん、流石にアポなしはダメだよ!」
「アポなし? アポなしってなんだ知らないぞ?」
ゲートを閉じてクラウディアに“アポなし”の内容を聞けば“これから行くけど、時間ある?”と聞いて相手の了解を得ることのようだ。……めんどくさいなぁ。
「直接行って聞いた方が早いぞ?」
「カテイナ様、お言葉ですがお母さまに同じことができますか?」
「絶対、俺からは会わないからな! 絶対にしないぞ!」
「拒絶反応がすごい」
ジブリルが懇切丁寧に説明してくれるが、皇帝に会うにはすさまじい手順が必要のようだ。会うのに一週間待ちなら特急で早い方だと!? 何もかも皇帝のスケジュールが分単位でみっちり埋まっているのが原因だが、ますます直接行った方が早い。
「ジブリル、それメンドクサイ」
「でも、それはみんなが守っているルールですので、カテイナ様にもぜひ守ってほしいです。一緒に謁見の許可を取りに行きましょう」
俺はしぶしぶジブリルに従う。
これからの手順を思うと気が遠くなる。まずジオール城の正門監督者に会って、そこから内部に入る許可をもらい、城内部のメイドなり使用人なりを捕まえて、城内部の大臣次官もしくはそいつの補佐官に会う。補佐官から大臣に話を通して、そこからさらに大臣が皇帝と話せるタイミングを探してもらい。大臣が皇帝に会う。皇帝の予定のどこが空いてるか確認してもらい。時間を把握したら逆の手順でジブリルまで伝えてもらう。その時間の調整を俺たちがして、了解の意思を同じ手順で伝える。そこで皇帝の認可を受けてからようやく謁見の日取りが実現するのだ。
……謁見の許可をとるのにざらに一週間かかり、実現した日取りが半年後なんてこともある。絶対に今割り込んで話を済ませた方が早い。
ジブリルには悪いが、城内部の入場許可を取ったところで直接皇帝に会いに行く。流石にこれは待てないし、ジブリルとクラウディアは“カウントシープ”で眠っててもらおう。
クラウディアは避難民扱いされて母と一緒に皇都に戻された。父親はそのまま残ってニアフロント領の戦いに参加するようだ。
避難民は泊まる場所がないと言うので、ジブリルが大使館を解放して避難民を受け入れている。それでも全員は収容できないので、皇帝が近衛師団の兵舎や広場を解放している。
「あ~あ、つまんないなぁ。もっとこう強敵がいると思った。近衛師団ぐらいのがごろごろいると思った」
「カテイナ様は強いですね。私は戦いが怖くてそういうのは苦手です」
「だから、おまえはそれでいいって言っただろ? 俺はもっとこう勝負に熱くなれるんだと思ってたのにさ。碌な奴がいなかった」
「カテイナちゃんは寝てたもんね」
「あんなのバリア張ってれば何の問題もないのにさ、おまえが背負って走るから、気持ち悪いのなんのって、吐くかと思ったぞ」
「……こいつ、人が心配して連れてきてあげたのに……」
「俺は面白いと思ったから首を突っ込んだんだ。こんな程度って知っていたらいかなかったぞ」
「カテイナ様、それは最初からいかなければよかったのでは?」
「今度からはそうする。クラウディアも次は自力で何とかしろよな」
クラウディアがなんとも言えない表情をしている。
俺だって最初はクラウディアが死んだかもという不安があったし、そのあとは相手に強い奴がいると期待してワクワクしていた。
だがいざ戦ってみたらがっかりした。なんだあいつら、数を頼りの烏合の衆。どれが強いとか品定めもできないほど一律で弱かった。
だんだんとわかってきたが、この国で一番強いのが近衛師団だ。クラウディアの家は地方貴族でその手下は近衛師団より五段は劣る。そしてクリミナ兵はさらに二段は下だ。あんなのじゃ、玩具にすらならない。
「そうだ、皇帝にお願いしにいかないと」
「……すごく不安なのですが、カテイナ様は何をお願いに行くのですか?」
「もしかして……私のこと?」
「あ~、それもある。だが、それより遊び場だ。俺が思いっきり魔法を撃てて、暴れまわって好き勝手出来る所、近衛師団の奴が皇帝に要望を出しておくって言ってたし、もう用意してくれているかもしれないしな」
「昨日の今日じゃ絶対無理――」
クラウディアの意見なんてどうでもいい。楽しいことがあるならすぐにでもそこに行きたいのが性分と言うものだ。
俺はゲート魔法を展開して、謁見の間につなげる。
そしたら肩を二人に掴まれた。
「か、カテイナ様お待ちを!」
「カテイナちゃん、流石にアポなしはダメだよ!」
「アポなし? アポなしってなんだ知らないぞ?」
ゲートを閉じてクラウディアに“アポなし”の内容を聞けば“これから行くけど、時間ある?”と聞いて相手の了解を得ることのようだ。……めんどくさいなぁ。
「直接行って聞いた方が早いぞ?」
「カテイナ様、お言葉ですがお母さまに同じことができますか?」
「絶対、俺からは会わないからな! 絶対にしないぞ!」
「拒絶反応がすごい」
ジブリルが懇切丁寧に説明してくれるが、皇帝に会うにはすさまじい手順が必要のようだ。会うのに一週間待ちなら特急で早い方だと!? 何もかも皇帝のスケジュールが分単位でみっちり埋まっているのが原因だが、ますます直接行った方が早い。
「ジブリル、それメンドクサイ」
「でも、それはみんなが守っているルールですので、カテイナ様にもぜひ守ってほしいです。一緒に謁見の許可を取りに行きましょう」
俺はしぶしぶジブリルに従う。
これからの手順を思うと気が遠くなる。まずジオール城の正門監督者に会って、そこから内部に入る許可をもらい、城内部のメイドなり使用人なりを捕まえて、城内部の大臣次官もしくはそいつの補佐官に会う。補佐官から大臣に話を通して、そこからさらに大臣が皇帝と話せるタイミングを探してもらい。大臣が皇帝に会う。皇帝の予定のどこが空いてるか確認してもらい。時間を把握したら逆の手順でジブリルまで伝えてもらう。その時間の調整を俺たちがして、了解の意思を同じ手順で伝える。そこで皇帝の認可を受けてからようやく謁見の日取りが実現するのだ。
……謁見の許可をとるのにざらに一週間かかり、実現した日取りが半年後なんてこともある。絶対に今割り込んで話を済ませた方が早い。
ジブリルには悪いが、城内部の入場許可を取ったところで直接皇帝に会いに行く。流石にこれは待てないし、ジブリルとクラウディアは“カウントシープ”で眠っててもらおう。
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─────
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◇テンプレ [妹贔屓母]
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◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
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