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VSクリミナ王国
第三十九話 クリミナ王国の宣戦布告
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「――暴風よな――」
「違うぞ。あれは竜巻だ。それも台風サイズのな」
暴風は一回吹けば終わりだが竜巻はそれが吹き続ける。そして足元は何も残らない。それがビックサイズなだけだ。全くオリギナ皇帝は母を分かっていない。
「ま、いいや。えっと、じゃあ皇帝、こいつはぼこぼこにしていいんだな?」
俺はゼロミスと言われた男を指さす。ビクッと震えたような気がするがもっとみじめにのたうち回ってもらおう。母が居ないのだ。あの威圧感がなければいつも通りにする。
ゼロミスが覚悟を決めた表情を俺に向ける。どこから叩こうかなぁ。やっぱり尻かな? 頭と体はやめておいてやろう。すぐに死なれてもすっきりしないし。絶叫してもらうぞ。
俺が獰猛に笑って踏み出した時だ。突如として謁見の間の扉が乱暴に開け放たれた。
「こ、皇帝陛下――! 火急の要件にて、ご無礼をお許しください! クリミナ王国より宣戦布告がなされました!」
「――そうか、だろうな――全近衛師団長、集結のこと――」
「は、ははっ!」
入ってきた兵士が来た時の勢いそのまま飛び出していった。俺はぽかんとその姿を見送る。ふ~ん、戦争するのかな? つまり戦うのか? 大暴れしていいフィールドがあるなら首を突っ込みたいのが本音だ。それがクリミナ王国なんて言う気兼ねなしに暴力が震える相手ならなおさら。
ゼロミスなんて一人より、一万人ぐらいの尻を引っぱたいて阿鼻叫喚の地獄絵図を作った方が面白いだろう。
「カテイナ様、そうすると、この国は戦場になります。魔界に戻られた方がいいです」
「え~? なんかやだな。ジブリルは?」
「私はシヲウル様から帰還命令が出るまではここに残ります」
「じゃあ、俺も残る。まずくなったら気絶させてでも連れ帰ってやるからさ」
「気絶はちょっと……、ですが、ありがとうございます。それでは退席しましょう。
皇帝陛下、それではジブリルとカテイナの両名は退席いたします。ゼロミスさんはあとで大使館にきてください。
……?」
「――退席は認めぬ、残るがいい――」
「お言葉ですが、軍事会議は国家機密では? 我々二人は部外者になります」
「――カテイナ、聞かぬと約束できるか――」
「ん、なんだ、わかるのか? 覗こうと思ってた」
俺の魔力量ならテレヴィで会議を覗くことなんて朝飯前だ。こいつらの魔力量では俺の覗きを防ぐことはできない。そして大暴れしていいフィールドがあるならそこに飛び込む。好き勝手に魔法を試しうちして、遊び終わったら帰ればいい。
「カテイナ様!」
「いいじゃないか、俺は少し暴れたいんだ。それにクリミナ王国が相手だろう? 悪い奴なんだろう? オリギナ帝国より、俺より、ずっとずっと。そんな奴らがどうなったところで関係ない」
「そういう考えがあるのは知っています。ですが、触らずに伏せてやり過ごすやり方もあるのですよ?」
「お前はな、それでいいぞ。だが俺は違う。俺は力も好きなんだよ。正しさは強さがあればついてくる。強さを示す事もいいことだと思うぞ」
「――然り――」
ジブリルが驚いて皇帝を見る。
そして気が付けば周りには近衛師団の全師団長が集結している。
老人が、片手を上げる。
謁見の間はあっという間に軍議の場になった。
テーブルが運び込まれ地図と駒が並べられる。
「――現況を報告せよ――」
「クリミナ王国の宣戦布告と共に、クリミナ王国の侵略が開始されています。最前線はニアフロント領になりますが、こちらからは動向は確認できていません。
現時点における敵兵力は二万程度と推定されます。しかし、時間がたてば相手本国よりさらに増援が到着します。
近衛師団全軍二万五千、すでにニアフロントの救援に向けて皇都をたちました。皇都守備隊には補給と後詰としての対応を受けていただいております」
地図上ではクラウディアの家の位置に白い駒が置かれ、四つの黒い駒が進められる。ちょっと離れた都市には大きなバツが一個、恐らく占拠されたのだろう。
強い不安に駆られる。クラウディアの家の兵士には碌な奴がいなかった。もしかしてもう全滅してるんじゃないか? せめて近衛の師団長クラスがいればこんな不安は無かったのだが。
「ジブリル、悪い。俺はもう行くぞ」
「で、では私も」
「お前はシチューでも作っていろ。クラウディアの家を見てくるだけだ」
言うだけ言って、ゲート魔法を展開する。まず最初に向かったのは寮のクラウディアの部屋だ。
しかし、部屋にはクラウディアの気配がない。もう出発したのかと思ったら、タイミングを見計らったかのようにシュンカのテレヴォイスが来た。
クラウディアはすでに実家に向かったと言うので、クラウディアの通る道を聞き取りし、その道をめがけて部屋を飛び出す。俺のスピードをもってすればすぐに追いつける。
空を飛翔する。ジブリルとは違う。魔力が使えるのだ。ジブリルが全力で飛んで四時間だったが、俺なら三十分だ。
皇都からだいぶ離れた……クラウディアの家の方が近い距離でようやくクラウディアを見つける。途中で近衛師団とかいう集団をぶっちぎってきたがクラウディアはそれより速いらしい。
単騎で馬を駆って移動中のようだ。さらに言えば補助魔法を馬にかけているように見える。近衛師団の徒歩よりは速いわけだ。全く、見ていて興味が尽きないなぁ。
「おい、クラウディア!」
それでも馬は止まらない、騎手が少し頭を上げた程度だ。仕方ないので飛翔魔法で真横に移動する。
「違うぞ。あれは竜巻だ。それも台風サイズのな」
暴風は一回吹けば終わりだが竜巻はそれが吹き続ける。そして足元は何も残らない。それがビックサイズなだけだ。全くオリギナ皇帝は母を分かっていない。
「ま、いいや。えっと、じゃあ皇帝、こいつはぼこぼこにしていいんだな?」
俺はゼロミスと言われた男を指さす。ビクッと震えたような気がするがもっとみじめにのたうち回ってもらおう。母が居ないのだ。あの威圧感がなければいつも通りにする。
ゼロミスが覚悟を決めた表情を俺に向ける。どこから叩こうかなぁ。やっぱり尻かな? 頭と体はやめておいてやろう。すぐに死なれてもすっきりしないし。絶叫してもらうぞ。
俺が獰猛に笑って踏み出した時だ。突如として謁見の間の扉が乱暴に開け放たれた。
「こ、皇帝陛下――! 火急の要件にて、ご無礼をお許しください! クリミナ王国より宣戦布告がなされました!」
「――そうか、だろうな――全近衛師団長、集結のこと――」
「は、ははっ!」
入ってきた兵士が来た時の勢いそのまま飛び出していった。俺はぽかんとその姿を見送る。ふ~ん、戦争するのかな? つまり戦うのか? 大暴れしていいフィールドがあるなら首を突っ込みたいのが本音だ。それがクリミナ王国なんて言う気兼ねなしに暴力が震える相手ならなおさら。
ゼロミスなんて一人より、一万人ぐらいの尻を引っぱたいて阿鼻叫喚の地獄絵図を作った方が面白いだろう。
「カテイナ様、そうすると、この国は戦場になります。魔界に戻られた方がいいです」
「え~? なんかやだな。ジブリルは?」
「私はシヲウル様から帰還命令が出るまではここに残ります」
「じゃあ、俺も残る。まずくなったら気絶させてでも連れ帰ってやるからさ」
「気絶はちょっと……、ですが、ありがとうございます。それでは退席しましょう。
皇帝陛下、それではジブリルとカテイナの両名は退席いたします。ゼロミスさんはあとで大使館にきてください。
……?」
「――退席は認めぬ、残るがいい――」
「お言葉ですが、軍事会議は国家機密では? 我々二人は部外者になります」
「――カテイナ、聞かぬと約束できるか――」
「ん、なんだ、わかるのか? 覗こうと思ってた」
俺の魔力量ならテレヴィで会議を覗くことなんて朝飯前だ。こいつらの魔力量では俺の覗きを防ぐことはできない。そして大暴れしていいフィールドがあるならそこに飛び込む。好き勝手に魔法を試しうちして、遊び終わったら帰ればいい。
「カテイナ様!」
「いいじゃないか、俺は少し暴れたいんだ。それにクリミナ王国が相手だろう? 悪い奴なんだろう? オリギナ帝国より、俺より、ずっとずっと。そんな奴らがどうなったところで関係ない」
「そういう考えがあるのは知っています。ですが、触らずに伏せてやり過ごすやり方もあるのですよ?」
「お前はな、それでいいぞ。だが俺は違う。俺は力も好きなんだよ。正しさは強さがあればついてくる。強さを示す事もいいことだと思うぞ」
「――然り――」
ジブリルが驚いて皇帝を見る。
そして気が付けば周りには近衛師団の全師団長が集結している。
老人が、片手を上げる。
謁見の間はあっという間に軍議の場になった。
テーブルが運び込まれ地図と駒が並べられる。
「――現況を報告せよ――」
「クリミナ王国の宣戦布告と共に、クリミナ王国の侵略が開始されています。最前線はニアフロント領になりますが、こちらからは動向は確認できていません。
現時点における敵兵力は二万程度と推定されます。しかし、時間がたてば相手本国よりさらに増援が到着します。
近衛師団全軍二万五千、すでにニアフロントの救援に向けて皇都をたちました。皇都守備隊には補給と後詰としての対応を受けていただいております」
地図上ではクラウディアの家の位置に白い駒が置かれ、四つの黒い駒が進められる。ちょっと離れた都市には大きなバツが一個、恐らく占拠されたのだろう。
強い不安に駆られる。クラウディアの家の兵士には碌な奴がいなかった。もしかしてもう全滅してるんじゃないか? せめて近衛の師団長クラスがいればこんな不安は無かったのだが。
「ジブリル、悪い。俺はもう行くぞ」
「で、では私も」
「お前はシチューでも作っていろ。クラウディアの家を見てくるだけだ」
言うだけ言って、ゲート魔法を展開する。まず最初に向かったのは寮のクラウディアの部屋だ。
しかし、部屋にはクラウディアの気配がない。もう出発したのかと思ったら、タイミングを見計らったかのようにシュンカのテレヴォイスが来た。
クラウディアはすでに実家に向かったと言うので、クラウディアの通る道を聞き取りし、その道をめがけて部屋を飛び出す。俺のスピードをもってすればすぐに追いつける。
空を飛翔する。ジブリルとは違う。魔力が使えるのだ。ジブリルが全力で飛んで四時間だったが、俺なら三十分だ。
皇都からだいぶ離れた……クラウディアの家の方が近い距離でようやくクラウディアを見つける。途中で近衛師団とかいう集団をぶっちぎってきたがクラウディアはそれより速いらしい。
単騎で馬を駆って移動中のようだ。さらに言えば補助魔法を馬にかけているように見える。近衛師団の徒歩よりは速いわけだ。全く、見ていて興味が尽きないなぁ。
「おい、クラウディア!」
それでも馬は止まらない、騎手が少し頭を上げた程度だ。仕方ないので飛翔魔法で真横に移動する。
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