魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第十七話 体術訓練 VS魔法学校2年A組

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「つまりませんか?」

 シュンカだ。この場面で驚いたり、物怖じしないのはさすがだな。

「ああ、つまらない。クラウディアの技術には興味あるんだが、肝心のクラウディアがあの程度だとな」
「ふむ……、では授業内容を変えましょう。貴方も楽しく運動できるようにね」

 疑問の顔でシュンカを見る。シュンカはシュンカで手を叩いて注目を集め授業内容を変更するように教師に指示を出している。

「では折角ですのでカテイナ君にも参加してもらって、鬼ごっこをしましょう」

 クラス中でどよめきが広がり俺も驚いた。シュンカは俺が鬼とか言っている。

「鬼ごっこでも体を作ると言う授業の目的からは外れませんよ。カテイナ君、こちらに来て下さい。生徒をとらえた証拠にはこの口紅で印をつけてもらいます」

 そう言ってシュンカが薄紅色の口紅を出している。生徒の間ではどよめきよりも悲鳴に近い声が上がっている。

「ふふ、私と間接キスをしたくなければ捕まらなければいいだけです。ルールは単純、運動場の中を十五分の間逃げ回ればいいだけです。互いに攻撃は無しにしましょう。カテイナ君もそれでいいですね?」

 頭を掻きながらクラウディアのクラスメイトを一望する。全員が引きつった顔をしている。

「少しハンデをやろう、十分間は魔力無しでやってやる」
「ふふ、良い考えです。それではスタート」
「えっ、シュンカ校長、まだ――」
「実戦は待ってくれませんよ」

 その通りだと思う。ざっと見た生徒は、まだ頭の整理がついていない奴が大半だ。それでも強化魔法を使って集団から飛び出した奴が五人はいる。その中にはクラウディアもいる。口の端で笑う。この五人は優秀な奴だ。あとに回してやろう。
 声を上げる。雄叫びだ。突然の大声にびっくりしている連中に向かって突進する。対象の集団を駆け抜けた後には八人が腰を抜かして倒れる。
 倒れた全員の体に口紅の痕が残っている。

「ふは、シュンカ。これいいぞ。面白い。さあ残りの連中、さっさと逃げろよ。この俺は次期魔界王。レベルが違うぞ」

 俺の言葉を受けて慌てて強化を施し逃げ出した奴が七人、棒立ちが一人。棒立ちは論外だ。俺は飛び出したうちの一人を追う。
 即座に追いついて背中に肩から腰にかけて一直線に薄紅を引く。
 次は背骨に沿って一直線。その後も立て続けに線を引き続ける。
 五分後には残りの生徒は六名。女が二人、男が四人、最初に飛び出した奴らと棒立ちが一人だ。クラウディアはしっかり残っている。棒立ちの男に関しては俺に物を投げつけた奴だ。だから最後の仕上げにする。な~に魔力使用可能になった後、思いっきり脅してやるだけだ。

「クラウディア、おまえは後に回してやるぞ」

 この言葉を信じずに俺から思いっきり距離を取って構えている。ふむ、小刻みに体を揺らして油断せずに待ち構えているな。
 棒立ちを除きほかの奴も同様だ。ふん、この連中は一筋縄ではいかないな。一人ひとり全速力で追いすがる必要がある。
 一つ大きく息を吸い込んで吐く、軽く息を吸って止めてから瞬発力を爆発させる。

「げぇ!? はやっ! はぇぇえぇ!!」

 言っている本人も驚いている割には反応している。口の端で笑う。こうでなくては面白みがない。
 全力の折り返し三回で追いつく。

「褒美だ」

 この一言で真正面から服ではなく首に真横に一文字を引く。
 これなら首を洗えばすぐに色が落とせる。

「次」

 同じように深呼吸と力溜めからのロケットスタートで仕留める。
 男子生徒の顔に線を引いてやった。
 砂時計を見る。まだ十分には二分ほど時間がある。
 少し待ってやるのもいいか。
 笑って準備運動をし直す。魔力発動の予告のために体に魔力を循環させる。
 残りの連中の顔が壮絶に引きつった。
 神経の反応速度の上昇、筋力の強化、体の強度アップ……フフン、クラウディアだけは俺のことを知っているからな。これでも対処をしようとしている。そしてその様子を見て真似を始めた奴が一人、唇を青くして戦意喪失している奴が一人だ。

「ふは、悪いなそこの女、次はお前だ」

 女子生徒は予告されて緊張で体が硬直している。俺は歩いて距離を詰める。

「手を出せ。それとも顔がいいか?」

 女は震えながら手を出している。その上に印をつける。
 ちょうどよく時間がつぶせた。
 これにて十分間が過ぎる。笑いながら魔法を発動する。
 まずは残っている優秀な男子生徒、こいつを仕留める。
 先ほどの五倍程度の速さで迫る。
 こいつは確かに優秀だ。目だけでも俺をとらえている。
 だがしかし、この速度の中、俺の動きについてこられない。

「鼻先だけで勘弁してやる」

 チョンと口紅を鼻先につけて終わりにする。
 残りはクラウディアだ。
 
「さてと、クラウディア楽しませてくれよ」
「そんな気はないよ!」

 クラウディアが魔法陣を発動している。
 ほほう、中々に大きい。動き回りながら魔法陣を書いていたのか……、効果を発揮する時間があればいいよなぁ!?
 突進姿勢を作る。優秀なのは知っている。技量があることも知っている。だから油断も手加減もしない。
 これが魔力使用時のマックススピードだ。
 笑いながら魔法陣に突っ込む、真正面からだ。
 クラウディアを見れば目に魔力が集中しているのがわかる。
 さっき男子生徒がやっていた奴だ。体全体に魔力を回すのではなく、目という一か所に集中して視るという行為を強化する。
 魔法陣の中に入った瞬間に体が浮く! 浮遊魔法を魔法陣で書いていたのか! 地面を蹴れなければ高速の方向転換ができない! 
 そのままクラウディアを飛び越してしまう。
 着地点で即座に方向転換しようとしたら、地面がぬかるんでいる。思いっきり滑った。
 顔を上げればクラウディアが別の魔法陣を発動させていたらしい。
 やたら逃げ回っていると思っていたがこの調子だと運動場のそこら中に魔法陣が書いてありそうだ。

「ふっ、はははははははは! やる! やっぱりすごいな!」

 俺にはどこに魔法陣が書いてあるかわからない。上書きする方法なんて知らない。だけど壊す方法なら知っている。だから魔力を右手に集めて地面にたたきこんだ。

「ちょ……カテイナちゃん!?」
「インパクトシェイカー!!!」

 運動場に衝撃が走る。別段攻撃のつもりは無い。魔法陣ってのは案外もろいものだ。衝撃でゆがんでしまえば自然消滅する。
 生徒は全員転倒し、教師陣は全員が地面を走る衝撃を飛んで避けた。

「ふはははは、どうだクラウディア!」

 俺は堂々と胸を張る。俺はすごいと見せつける。お前がすごいのは知っていた。だから俺のすごさを教えてやるのだ!
 つかつかと歩いてクラウディアとの距離を詰める。

「さあ、まだ、できるか? 降伏するなら……」
「カテイナ君失格」

 見当違いの方向からシュンカの声が聞こえる。
 驚いて振り返った。
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