魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第十五話 一時間目の授業

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 クラウディアが床に落ちた教科書を拾い、定位置の座席に座る。だが、俺の席は無い。隣の座席は埋まっているのだ。
 ま、いい。俺は浮くぐらいなら余裕だ。
 ふわりと浮き上がる。
 そんな俺を見た教室中が“何? あの子”と騒ぎ始める。
 クラウディアだけが落ち着いて手招きしている。

「授業中は浮いちゃダメなの。というか許可があるまで魔法禁止……う~ん、仕方ないよねぇ」

 近づけば、クラウディアが俺を抱き上げて膝の上に座らせてくる。
 そうして、邪魔しないでねと念を押してくる。
 その言葉に頷く。同時に教室の戸が開いた。明らかに生徒と異なる風貌の男が入ってくる。きっとこの男が教師に違いない。
 しかし、期待を裏切るかのように立て続けに異なる格好の集団が入ってきた。
 しかもよく見ればその集団の中にシュンカがいる。
 クラウディアがあんぐり口を開けた。

「なんで学校中の教師が集まってるの?」
「あ~、そういえば昨日の連中か、何人か覚えがあるぞ」

「皆さん静粛に、一時限目が始まりますよ」

 これはシュンカの声だ。
 教室の最後尾にずらりと教師陣が並ぶ。俺に喧嘩を売っていた奴も慌てて座りなおしている。
 ぽかんとしている最中、目の前に立った教師が説明を始めた。

「んん、今日の授業は教員参観日になった。私の授業の査定が行われる。教師が集まったのはそういう理由だ。ま、みんな気にしないで、いつも通り授業をやるぞ」

 直後に始業のチャイムが鳴り響き、歴史の授業が始まる。
 これが普通なのか? びっしりと黒板に文字がかかれ、クラウディアは黙々とそれを書き写す。時折生徒が質問をして、教師が答える。
 今の一連を集中して聞き、必要なことを書き写す。それを一時間も続けるのか? 俺には到底無理だ。目の前のクラウディアのノートにびっしり記述がたまっていく。目が回りそうだ。
 俺の知らない単語、名前、年号全部覚えなきゃいけないのか? ほかの生徒の様に手を上げる。

「ほう! これは、カテイナ君! 何かあったかな?」
「お、俺には何を言っているかわからない。これは全部重要なのか?」
「それは大切な質問だね。この授業の重要性か~、うむ、人によると言っておこうかな。オリギナ人にとっては重要だと思っているよ。このオリギナ帝国がいかなる国であったか。どういう人たちが暮らしてきたか。我々は何を大切にしてきたか。知っておくことはとても大事だと思っている。自分の芯を強く知ることにつながるからね。
 但し、君への重要性か……難題だね。君がもし、この国のことを好きになってくれたら重要なのだけどね。それでもこれだけ細かいことはいらないかもしれないね」

 ならばと言葉をつなごうとする。俺にとって大事なところだけを説明しろと要求しようと思った。この俺を特別扱いしろと。だがそれは“特別”なのだ。俺は今回の授業で連中の“特別”を排したのだ。いまさら俺の“特別”を入れるのは紳士にあるまじきわがままだ。
 言いたいことを言わずに「良くわかった」と我慢する。
 教師はにっこり笑って頷いた。

「それでは続けよう」

 苦痛だ。
 わからないことを集中して聞く。そしてわからないことが積み上がっていく。そんな残酷な時間が一時間も続いたのだ。
 授業終了の鐘が鳴る。
 
「今日はここまで、次は数学を用意しておくように」

 俺は特別扱いされずに一時間を終えた。頭が茹で上がりそうだ。休憩時間にふらふらと席を降りる。クラウディアは屈伸と伸脚を繰り返している。足がしびれているようだ。
 それをほっぽって俺は急いで水飲み場に直行する。手で水をすくって飲むのを繰り返した。三回目でようやく頭が冷えてきた。
 くそっ、シャレにならないぞ。こんなもの繰り返されたら頭が壊れる。一息ついていると先ほどの教師が声をかけてきた。

「疲れたかね? どうだったかな、私の授業は?」
「あれが普通か? わからないことだらけで頭が茹で上がりそうだった」
「ふふっ、ちゃんと聞いてくれていたのは嬉しいね。一番後ろの子なんて寝ていたのにね」

 そんな奴がいたのか……、俺も寝ていたかったぞ。

「そういう顔はしない。君は頑張ったんだからいいんだよ。寝ていても私は起こさないけど、寝た結果で試験に落ちても自分の責任だからね」
「ちょっと待て、試験は入学だけじゃないのか?」
「ちゃんと学習できているか、確認するためのテストがあるよ。ちゃんと努力したのかを確認するためにね」

 ごくりとのどが鳴る。俺には無理だ。興味もない物を延々と説明されても覚えられる自信はない。

「まあ、今日は体験だからね。この学校でどんなことが行われているかよく見ておくといいよ。さて、次は数学かな。ほら、部屋に戻って」

 予鈴が鳴っている。俺はがっくりと肩を落としてトボトボと教室へと戻った。
 今度は違う男が教壇に立っていたが、結果は同じ、わけのわからないまま一時間を過ごしただけだ。
 休憩時間を迎えて、この学校に嫌気がさしてきた。
 次は体術訓練というので、頬を膨らせたままクラウディアにくっついていく。
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