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オリギナ魔法学校

第十二話 軽快な朝

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 朝の鐘の音が聞こえた。
 目をパチッと開く。フフン、なかなか快調な出だしだ。
 体を起こす。
 横にいるクラウディアの肩を揺すってやる。素晴らしい朝が来たのだ。
 クラウディアは眠そうな目をこすりながらも体を起こす。

「おはようだな!」
「……おはよう」

 クラウディアの顔に隈が見える。ふふん、昨日頑張りすぎるからこうなるのだ。適度に動いて適切に寝る。ははは、こんなことができない奴だったか。勝ったな。前は食事で負けたが、睡眠なら俺の勝ちだ。
 寝て起きて快勝。素晴らしい出だしだ。

「……ちょっとシャワー浴びてくる」

 この一言を鷹揚に頷いて許可する。
 寝癖を伸ばしながらクラウディアが共用水場に出かけていった。俺も軽めに入浴しよう。
 俺が向かったのは洗濯用の井戸だ。
 バケツ三杯分ぐらいの水を魔法でくみ上げて、空中でボール状に固定し指先をつけて突沸させる。なあに、俺の魔力なら朝飯前の簡単な魔法だ。そのあと、適当に冷まして服を脱いで水のボールに飛び込んだ。
 魔法でぐるぐる水を回転させる。時々潜って全身を丸洗いだ。五分あれば全身洗えるぞ。
 この後、ボールから抜け出して服を突っ込む。同じ様にぐるぐると水を掻きまわして、仕上げに水をすべて蒸発させて洗濯も終了だ。
 洗いたての服を着こんで準備を完了する。
 俺の行動が終わるのを待っていたかのように声がかかる。

「見事ですね」
「……シュンカか? 覗きは良くないぞ。いくら俺に魅力があってもだ」
「そうはおっしゃっても、……流石に女子寮の井戸前でやる事ではありませんが?」
「そうなのか? どこにも禁止なんて書いてなかったぞ。それに洗う物はこの井戸でと書いてあったぞ」
「……こちらの不注意でした。体は”洗う物”でしたね」
「だろう?」

 俺はシュンカを納得させて頷いている。そう、俺は常に正しいのだ。

「……常識か……あのクラウディアが苦労したわけです」

 小言と一緒にシュンカがため息ついて頭を抑えている。
 舌打ちしてシュンカをにらみつける。そしてシュンカに見せつけるようにあからさまに耳をいじる。

「おい、小言のつもりなら聞こえないようにいえよ。俺の耳はいいんだぞ? あと、言葉には注意しろ! お前は女だから許してやるが男なら張り倒してたぞ」
「ええ、失礼しました」

 鼻息荒くなるべく胸を張って偉さを醸し出す。
 シュンカを相手に、この学校の一番の権力者相手にふんぞり返る。
 とっ、ちょっと待て、そういえば、なんでこいつはここにいるんだ?

「そういえば何の用だ? お前には学校があるだろう?」
「ああ、そうですね。貴方の技術に見とれてしまったもので……用事としては昨日の魔力結晶のつくり方を教えていただけないかと思いましてね」

 頭を掻く。魔力結晶のつくり方ならあとでもいいんじゃないか?

「そんなことなら、後にし――」
「待てませんね。私は今すぐ知りたい。私は魔法に魅せられたのですよ。人生を狂わされたと言っていい。昨日は一時的な感情でチャンスを逃してしまったけれど。機会は自分の手で手繰り寄せるもの。逃がしませんよ」

 シュンカの目に狂気が見える。
 ふふふ、流石に魔法学校の校長だ。俺も少し緊張する。俺自身がこいつの狂気に脅威を感じているのがはっきりわかる。
 「作り方だけだからな」と念を押して両手を出せと命令する。

「いいか、つくり方は簡単だ。小さく強く一気にだ」

 シュンカの両手を俺の両手で包む。俺の魔力がシュンカの手を通過して手の平で作った空間に集積される。こうすればどのぐらいの魔力をどんな強さで流すのかがわかるはずだ。

「小さい火の玉をイメージしろ。火の魔法が成り立つギリギリぐらいの奴だ」
「火ですか? 純粋に魔力だけを取り出すのかと思っていました」
「別に電撃でもいい。小さく、強く、勢いよくだ。作ったな? これからは少し痛いぞ」

 警告してから一気に魔力を大量に流す。昨日の魔力風を手の平だけで出しているようなものだが、シュンカは動じない。こういうところは流石に魔法学校の校長だな。
 魔力は小さい火の玉に集中し燃え上がるより早く透明な結晶の様に固まる。最終的に親指ぐらいの水晶の塊みたいなのが出来上がった。
 これでシュンカの顔を見る。シュンカは驚いていたがすぐに恍惚の表情に変わった。

「わかったな?」
「わかりました。と、言いたいですが、私が作れるようになるまで教えてくれませんか?」
「そこまでは責任持てないぞ。大体、魔力の総量は個人差があるしな」

 俺は出来上がった魔力結晶を見る。まあ大体これで俺の魔力量の二十分の一ぐらいか、人間なら凡人数百人分ぐらいの魔力に相当する。如何に魔法の技量があろうとも絶対的な魔力量がなければ作れない代物だ。
 あらためてシュンカを見る。……人間なら規格外の才能だろう。

「まあ、おまえなら作れるんじゃないか? 指先ぐらいの大きさならお前でもできるだろ」
「練習しておきます」

 俺はそのままシュンカを置いてクラウディアの部屋に戻る。クラウディアはまだ戻っていない。
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