魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第六話 親に直談判

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「で? この私にたってのお願いってのは何だ?」
「お、俺……ぼ、僕をオリギナ魔法学校に推薦して下さい。お母様」

 この俺が緊張で震えながら母の前に立っている。母の名前はシヲウル。文字通りの”死を売る”大魔王だ。機嫌を損ねただけで尻叩き百発は軽い。しかしそれでも学校に入ってみたかったのだ。
 魔界に戻った後、すぐさま母の部屋に直行した。部屋で椅子に座ったままの母に向かって直立不動で直談判しているのだ。

「何でだ?」
「ぼ、僕は学校に入学して――」
「お前の入学目的じゃ無い。私がお前を推薦する理由だ。なぜ私がお前の入学を推薦しなくてはならない?」
「お、お母様は、昔ジブリルを推薦したって聞いたことがあって、そ、それで僕を推薦してくれたらと思って」

 母が片眉を上げる。それだけで背中に滝のような汗を掻く。だがこの緊張と引き替えても入学してみたい。

「ジブリルは優秀だった。この魔界で最高レベルの部類に入る。お前の乳母を務めたぐらいだからな。対してお前は? 自分で自分の面倒をみきれない様な、極低レベルを推薦するのか? 私が推薦しなくてはならないのか? よく考えてからおねだりしろ」
「お、俺はジブリルより! 僕はジブリルより才能があると思う」

 最後の方は消え入りそうな声になってしまった。母がこっちをにらみつけてくるからだ。視線すら外してしまった。

「お前の言っている才能は攻撃だけだろう? ジブリルは特別製だ。純粋培養の天使だからな。闘争本能がほぼ皆無、攻撃能力を行使することが出来ない。問題は起こされても、ジブリル自身が起こさない保証があったんだ。お前にそれは無い」
「や、約束します。絶対に問題は起こしません」

 母がため息をついた。なにやら考えているようだ。これを邪魔してはならない。お願いの連呼も感情の爆発もやってはならない。
 深呼吸して、いくらでも待ってやる。
 まっすぐ見た母の顔と視線が重なった。こいつ悩む素振りをして俺の態度を見ていたのか! 相手の態度で一気にざわつく気持ちを深く息を吐いて落ち着かせる。
 ……どうだ! 俺は挑発にだって耐えられるんだぞ!
 俺が待つ態度を変えないことを悟った母が言葉を切り出す。

「……お前は手加減を覚えたな?」
「はい、もちろんです!」
「……他のおねだりは無いか?」
「ありません!」
「……いいだろう。推薦してやる。但し、お前が問題を起こした場合は即、連れ戻す。殴り飛ばしてでもな。いいな?」
「わかっております!」

 俺は自分で顔が笑みくずれるのを止められない。見ていろシュンカ、一撃必殺、魔王の推薦状を見せてやる!
 俺は大魔王の作ったゲートをくぐっていく。ふ、ふはははは、笑いが止まらない。これで俺は晴れてオリギナ魔法学校の生徒になるのだ!
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