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第7章 弟子と神器回収
奇怪ナ薬
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最深部の入り口には洞窟らしからぬ鉄で出来た分厚い扉があった。
「念入りだな」
(守りながら戦うよりも、あいつらが勝てないやつを俺が倒した方が早いからな)
そう考えていた咲良は拳を握りしめ、鉄の扉を殴りつける。
ドガァァーーーン
洞窟内に凄まじい音が響き渡る。
肝心の鉄の扉は原型を留めておらず、奥まで吹っ飛んでいた。
「…何者だ?」
「ここまで来るの早いなー」
「すごいパンチですねぇ。扉がペシャンコですよ」
「ボスゥー。こいつどうするぅ?」
扉の奥には4人の男がいた。
一番奥にいるスキンヘッドがお頭だ。だが顔半分に龍のような刺繍が施されており、前回あった時も少し雰囲気が違う。
そのボスと目が合うと、
「やはり貴様だったか…」
どうやら咲良のことを覚えていたらしい。
「俺が来ると分かってたらしいな」
「勘だがな」
「ボスゥ。話してるとこ悪いんだけどぉ。やっちゃっていいぃ?」
「やめておけ。誰も勝てん」
ボスは咲良の力量をある程度知っているので他の仲間を止めるが言うことを聞くタイプには見えない。
「ほんとにぃ?強そうに見えないんだけどぉ」
「確かに腕力は凄そうですが当たればの話ですからね」
「僕が確かめるよー」
常にニコニコしている咲良と同い年くらいの青年が腰に下げてある短剣を抜きながら前に出て来る。
「俺は止めたぞ」
ボスは忠告を無視した青年に声をかける。
「大丈夫ですよー。僕は負けませんから…ねっ!!」
喋りながら咲良との距離を一気に詰めて、短剣を首の脈目掛けて刺してくる。
咲良は避ける動作を取らずに刃を受け入れる。
ギンッ!
青年の短剣は咲良の首に命中したが、金属と交差したかのような音がなり、短剣の刃先が折れた。
「…へっ?」
咲良が動かないのは自分の動きが見えないからだと思っていた青年は驚愕する。
実は咲良は自身のステータスを下げる抑制の首飾りを既に外していた。元々は首飾りを着けなければステータスが高すぎて普通に生活するのも困難で、コップやフォークを持とうとしてもすぐに壊れてしまう。長い年月を掛けてステータスを上げていった場合はコントロールも自然に身につくが咲良は短時間でステータスを上げてしまったために起きた弊害だ。
だが毎日の鍛錬の成果で首飾りがなくとも力を制御することが出来るようになった。
しかし耐久は制御しようがないので生半可な攻撃は通用しないし、武器の方が壊れてしまう。
ステータスを制御、つまり加減が出来るか出来ないかでは大きな差がある。自身の力をしっかりと理解している方が動きにより無駄がなくなる。
だが今回は、力の差を分からせるためにあえてワザと攻撃を受けた。
その効果は絶大だったようで、盗賊たちはボスも含めて全員が目を見開いていた。
「そこのボスの言う通りにしとけ。お前らじゃ俺には勝てない」
「ふざけるなぁ!!」
青年は現実を受け入れられないのか、新たな短剣を持ち出すと咲良に突っ込む。
「おせーよ」
青年の真横に移動した咲良は足を伸ばす。
「うわっ!!」
咲良が伸ばした足に引っかかり、前のめりにバランスを崩す。
咲良はそのまま青年の頭を掴んで、倒れる勢いを利用しながら地面に叩きつけた。
ボゴッ!!
青年の頭は地面に埋まり、身体は力なく横たわっている。
死んだわけではないが、仮に加減なしで叩きつければ頭は粉々になっていただろう。
「だから言ったのだ。やめておけと」
やれやれと咲良に叩きのめされた青年を冷めた目で見下す。
「化け物ですね」
「じゃぁどうするのぉ?」
「それはお前らが決めろ。大人しく捕まるか、こいつみたいになりたいかのどちらかだ」
咲良は気を失った青年を指差しながら言うと、
「どちらも遠慮させてもらう」
「ならどうするつもりだ?」
「おいお前ら、あれを飲め」
ボスはそう言うと緑色の液体が入った小さな瓶を取り出す。
他の2人も同じ瓶を取り出す。
「これぇまずいんだぁ」
「確かにまずいですねぇ、しかし効果は絶大ですよぉ」
(さて、どうする?見た目から判断して、恐らく飲むものなんだろうが…良い予感はしねぇな)
咲良の予想では、あの瓶の液体は身体能力や魔力量を向上させるもの、もしくはそれに近しい効果だ。
咲良の速さなら飲むのを阻止するのは簡単だが、どの様な効果なのか確かめておくのも悪くないと思っていた。
(効果を見ておくか)
「飲むならさっさと飲め」
咲良は今後の為に効果を見ることにしたようだ。あの薬からは妙な気配を感じる。ずっと生存本能に引っかかっていたのはあれだ。
「この薬を知っているのか?」
飲む事を促してきた咲良に疑問に思ったのかボスが問う。
「いや、知らん」
「そうか…」
咲良があっけらかんとしているのを少し不審に思いながらも盗賊たちはゴクゴクと緑の液体を飲み干した。
(さぁどうなる?予想通りか…それとも…)
しばらく観察しているとある変化があった。
3人の魔力量がどんどん増え、さらに見た目にも変化が出てきた。筋肉が増加しているのか、身体が少しずつ大きくなっていき、身体に青い刺青が刻まれていく。
(予想通りか)
咲良の予想通り、あの液体は身体能力と魔力量を向上させるものだったようだ。あの刺青は副作用なのだろうか。
(変化が止まった。なるほど、身体能力も魔力量も倍以上だな)
盗賊達の元の強さは3人とも恐らくB級以上。それが倍以上ということは少なくとも今はA級はあるということになる。お頭に至ってはS級はありそうだ。
咲良は少し険しい表情を浮かべながらも、多くの薬を扱う魔法医師としては未知の薬に興味が湧いた。
「念入りだな」
(守りながら戦うよりも、あいつらが勝てないやつを俺が倒した方が早いからな)
そう考えていた咲良は拳を握りしめ、鉄の扉を殴りつける。
ドガァァーーーン
洞窟内に凄まじい音が響き渡る。
肝心の鉄の扉は原型を留めておらず、奥まで吹っ飛んでいた。
「…何者だ?」
「ここまで来るの早いなー」
「すごいパンチですねぇ。扉がペシャンコですよ」
「ボスゥー。こいつどうするぅ?」
扉の奥には4人の男がいた。
一番奥にいるスキンヘッドがお頭だ。だが顔半分に龍のような刺繍が施されており、前回あった時も少し雰囲気が違う。
そのボスと目が合うと、
「やはり貴様だったか…」
どうやら咲良のことを覚えていたらしい。
「俺が来ると分かってたらしいな」
「勘だがな」
「ボスゥ。話してるとこ悪いんだけどぉ。やっちゃっていいぃ?」
「やめておけ。誰も勝てん」
ボスは咲良の力量をある程度知っているので他の仲間を止めるが言うことを聞くタイプには見えない。
「ほんとにぃ?強そうに見えないんだけどぉ」
「確かに腕力は凄そうですが当たればの話ですからね」
「僕が確かめるよー」
常にニコニコしている咲良と同い年くらいの青年が腰に下げてある短剣を抜きながら前に出て来る。
「俺は止めたぞ」
ボスは忠告を無視した青年に声をかける。
「大丈夫ですよー。僕は負けませんから…ねっ!!」
喋りながら咲良との距離を一気に詰めて、短剣を首の脈目掛けて刺してくる。
咲良は避ける動作を取らずに刃を受け入れる。
ギンッ!
青年の短剣は咲良の首に命中したが、金属と交差したかのような音がなり、短剣の刃先が折れた。
「…へっ?」
咲良が動かないのは自分の動きが見えないからだと思っていた青年は驚愕する。
実は咲良は自身のステータスを下げる抑制の首飾りを既に外していた。元々は首飾りを着けなければステータスが高すぎて普通に生活するのも困難で、コップやフォークを持とうとしてもすぐに壊れてしまう。長い年月を掛けてステータスを上げていった場合はコントロールも自然に身につくが咲良は短時間でステータスを上げてしまったために起きた弊害だ。
だが毎日の鍛錬の成果で首飾りがなくとも力を制御することが出来るようになった。
しかし耐久は制御しようがないので生半可な攻撃は通用しないし、武器の方が壊れてしまう。
ステータスを制御、つまり加減が出来るか出来ないかでは大きな差がある。自身の力をしっかりと理解している方が動きにより無駄がなくなる。
だが今回は、力の差を分からせるためにあえてワザと攻撃を受けた。
その効果は絶大だったようで、盗賊たちはボスも含めて全員が目を見開いていた。
「そこのボスの言う通りにしとけ。お前らじゃ俺には勝てない」
「ふざけるなぁ!!」
青年は現実を受け入れられないのか、新たな短剣を持ち出すと咲良に突っ込む。
「おせーよ」
青年の真横に移動した咲良は足を伸ばす。
「うわっ!!」
咲良が伸ばした足に引っかかり、前のめりにバランスを崩す。
咲良はそのまま青年の頭を掴んで、倒れる勢いを利用しながら地面に叩きつけた。
ボゴッ!!
青年の頭は地面に埋まり、身体は力なく横たわっている。
死んだわけではないが、仮に加減なしで叩きつければ頭は粉々になっていただろう。
「だから言ったのだ。やめておけと」
やれやれと咲良に叩きのめされた青年を冷めた目で見下す。
「化け物ですね」
「じゃぁどうするのぉ?」
「それはお前らが決めろ。大人しく捕まるか、こいつみたいになりたいかのどちらかだ」
咲良は気を失った青年を指差しながら言うと、
「どちらも遠慮させてもらう」
「ならどうするつもりだ?」
「おいお前ら、あれを飲め」
ボスはそう言うと緑色の液体が入った小さな瓶を取り出す。
他の2人も同じ瓶を取り出す。
「これぇまずいんだぁ」
「確かにまずいですねぇ、しかし効果は絶大ですよぉ」
(さて、どうする?見た目から判断して、恐らく飲むものなんだろうが…良い予感はしねぇな)
咲良の予想では、あの瓶の液体は身体能力や魔力量を向上させるもの、もしくはそれに近しい効果だ。
咲良の速さなら飲むのを阻止するのは簡単だが、どの様な効果なのか確かめておくのも悪くないと思っていた。
(効果を見ておくか)
「飲むならさっさと飲め」
咲良は今後の為に効果を見ることにしたようだ。あの薬からは妙な気配を感じる。ずっと生存本能に引っかかっていたのはあれだ。
「この薬を知っているのか?」
飲む事を促してきた咲良に疑問に思ったのかボスが問う。
「いや、知らん」
「そうか…」
咲良があっけらかんとしているのを少し不審に思いながらも盗賊たちはゴクゴクと緑の液体を飲み干した。
(さぁどうなる?予想通りか…それとも…)
しばらく観察しているとある変化があった。
3人の魔力量がどんどん増え、さらに見た目にも変化が出てきた。筋肉が増加しているのか、身体が少しずつ大きくなっていき、身体に青い刺青が刻まれていく。
(予想通りか)
咲良の予想通り、あの液体は身体能力と魔力量を向上させるものだったようだ。あの刺青は副作用なのだろうか。
(変化が止まった。なるほど、身体能力も魔力量も倍以上だな)
盗賊達の元の強さは3人とも恐らくB級以上。それが倍以上ということは少なくとも今はA級はあるということになる。お頭に至ってはS級はありそうだ。
咲良は少し険しい表情を浮かべながらも、多くの薬を扱う魔法医師としては未知の薬に興味が湧いた。
応援ありがとうございます!
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