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第7章 弟子と神器回収
神器端緒
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咲良、秀樹、穂花の3人はコーチンに向けて出発し、今は野営をしている。
「咲良くんすごいね。ずっと歩いてるけど全然疲れてないね」
旅を初めて数日が経過し、この頃には穂花は亮太を咲良と違和感なく呼べるようになった。
「だな。旅慣れしてるのか?」
「いや。慣れてはいない。王都以外の街には殆ど行った事ないしな」
世界樹の森から王都アムルへの道と、王都から邪神魔像と遭遇したマラ荒野への道もかなり距離があるがその時は黒竜化によって旅をする必要はなかった。
従って、本格的な旅は今回が初めてとなる。
「マジか。今まで何してたんだ?咲良を探すために色んな所へ行ったが情報すらなかったからな」
「そうだね。陸くん以外はみんな諦めてたもんね」
秀樹と穂花もどうやら咲良が死んだもの、若しくはアスガルドに来ていないと思っていたようだ。
「そりゃそうだろ。俺が飛ばされた場所はアスガルドでもかなり特殊な場所みたいだからな」
「そりゃどこだ?」
「さぁな…名前は知らん」
世界樹の森は「強者の墓場」と呼ばれ、アスガルドでも有名な危険地帯だ。さすがに黒竜の住処であるという事を知っている人は殆どいないだろうが、世界樹の森にいたと話せば面倒な事になりかねない。隠し通すつもりはないが、今は話すべきでは無いと思い、2人には明かさなかった。
「危険な場所だったのか?」
「それなりにな。何度も死にかけたからな。あの頃は生き抜くことしか頭に無かった。よく生きて帰れたと思ってるよ」
「そうか。なんとなく咲良があの考えを持ってる理由がわかった気がする」
「そうだね…生きるのに必死だったんだね」
「そういうことだな」
2人は咲良の人だろうが魔物だろうが生きるために殺すという考えの根本に少し触れた様な気がした。
「でも本当に再会出来て良かったよ!みんなびっくりするね!」
「だな!……そういえば…」
秀樹が何かを思い出して咲良に尋ねる。
「咲良って鍛治師なんだよな?」
「あぁ。それがどうした?」
「なら武器にも詳しいのか?」
「まぁそれなりにな」
「神器って知ってるか?」
「………なぜ知ってる?」
咲良は秀樹に向かって鋭い視線を浴びせる。
その視線に殺気はこもっていないが、秀樹は蛇に睨まれた蛙のような気分になった。
現存している神器の殆ど(全てと言っても過言ではないだろうが)はクロノスが作ったもので、そのクロノス本人から、集めて相応しい者に託せと頼まれた。
現在、神器というものは忘れ去られ、高性能の魔武器とされており、神器開放の能力も知っている者はいないだろう。王都アムルの図書館にも神器について記されている書物はなかった。
神器は中途半端にその力を引き出せば暴走しかねない。暴走すればどうなるかはクロノスですらわからない。だからこそ咲良に頼んだのだ。
秀樹が神器を持っている、もしくはありかを知っている可能性があり、なにより神器という言葉を知っている事から少し感情的になってしまった。
「お、おい咲良、どうしたんだよ…」
「なにか気に障ったの?」
「なぜ神器を知っている?」
「あ、いや、香織さんがもってるんだよ」
「そうか…」
咲良が視線を逸らすことで秀樹が感じていた妙な気分はスッと無くなった。
「今のは気迫か?流石B級だな。にしてもなんでそんなに反応するんだ?」
「まずはその神器について詳しく話してくれ」
「確か…咲良くんと同じ刀だったよね、香織さんの神器」
どうやら香織は咲良と同じ刀使いらしい。侍の職業だったりするのだろうか。
「なんかすげー能力だったよな」
「どんな能力だ?」
「えぇーっと、光を操る様な感じだったかな。私たちと合流した時にはもう持ってたよね」
「だな。ありゃ反則だ、勝てる気がしねぇ」
穂花の光を操るという言葉から、咲良の頭には1つの神器が浮かび上がる。
「名前はなんと呼んでる?」
「名前?そんなのあったか?」
「私は聞いたことあるよ。白峯だったかな」
その瞬間、咲良は確信した。
白峯という事は白い刀という事になる。クロノスが作った神器の特徴や能力は全て教えてもらっているので、その中で白い刀はたった1つ。その名は日輪。白峯という名は武器の真名を知らないものが後から名付けたのだろう。
さらに言えば、日輪は光を操る能力では無い。真名も知らずに無理やり能力を引き出しているせいで光を操るという本来とは少し違う能力となっている可能性があり、暴走の危険性が出てくる。
「そうか……」
咲良は思考を巡らせながら素っ気なく返事を返す。
「で、それがどうしたんだ?」
「訳あって神器に詳しいんだよ」
「詳しいって、香織さんは神器について色々調べ回ってたみたいだけど得れた情報はなかったはずなんだけど…」
「私もそう聞いてるよ。ある人に神器を譲って貰ったって言ってたけど、神器が何なのかは全く分からなかったって」
香織は神器については何も分からなかったのに神器という単語は知っている。恐らく香織に日輪を譲ったある人から聞いたのだろうが、そいつは何故神器という単語を知っているのだろうか。今考えても答えは出ない。
「悪いが神器について今は話す気はない」
「咲良くんは私達のこと信頼してないの?」
穂花が少し複雑な顔をしている。
「そういうわけでは無いが…悪いな」
隠し事が多いのは咲良も不本意ではあるが、無闇に情報を広めるわけにはいかない。
「良いじゃねぇか穂花…これから信頼を得ればさ」
「うん!そうだね!」
「ふっ、気楽な奴らだな。…もう寝ろ。見張りは俺がしておくから」
次の日から咲良にやたらと話しかけて来た穂花だったが、気付かれない程度に適当に受け流していた。
「咲良くんすごいね。ずっと歩いてるけど全然疲れてないね」
旅を初めて数日が経過し、この頃には穂花は亮太を咲良と違和感なく呼べるようになった。
「だな。旅慣れしてるのか?」
「いや。慣れてはいない。王都以外の街には殆ど行った事ないしな」
世界樹の森から王都アムルへの道と、王都から邪神魔像と遭遇したマラ荒野への道もかなり距離があるがその時は黒竜化によって旅をする必要はなかった。
従って、本格的な旅は今回が初めてとなる。
「マジか。今まで何してたんだ?咲良を探すために色んな所へ行ったが情報すらなかったからな」
「そうだね。陸くん以外はみんな諦めてたもんね」
秀樹と穂花もどうやら咲良が死んだもの、若しくはアスガルドに来ていないと思っていたようだ。
「そりゃそうだろ。俺が飛ばされた場所はアスガルドでもかなり特殊な場所みたいだからな」
「そりゃどこだ?」
「さぁな…名前は知らん」
世界樹の森は「強者の墓場」と呼ばれ、アスガルドでも有名な危険地帯だ。さすがに黒竜の住処であるという事を知っている人は殆どいないだろうが、世界樹の森にいたと話せば面倒な事になりかねない。隠し通すつもりはないが、今は話すべきでは無いと思い、2人には明かさなかった。
「危険な場所だったのか?」
「それなりにな。何度も死にかけたからな。あの頃は生き抜くことしか頭に無かった。よく生きて帰れたと思ってるよ」
「そうか。なんとなく咲良があの考えを持ってる理由がわかった気がする」
「そうだね…生きるのに必死だったんだね」
「そういうことだな」
2人は咲良の人だろうが魔物だろうが生きるために殺すという考えの根本に少し触れた様な気がした。
「でも本当に再会出来て良かったよ!みんなびっくりするね!」
「だな!……そういえば…」
秀樹が何かを思い出して咲良に尋ねる。
「咲良って鍛治師なんだよな?」
「あぁ。それがどうした?」
「なら武器にも詳しいのか?」
「まぁそれなりにな」
「神器って知ってるか?」
「………なぜ知ってる?」
咲良は秀樹に向かって鋭い視線を浴びせる。
その視線に殺気はこもっていないが、秀樹は蛇に睨まれた蛙のような気分になった。
現存している神器の殆ど(全てと言っても過言ではないだろうが)はクロノスが作ったもので、そのクロノス本人から、集めて相応しい者に託せと頼まれた。
現在、神器というものは忘れ去られ、高性能の魔武器とされており、神器開放の能力も知っている者はいないだろう。王都アムルの図書館にも神器について記されている書物はなかった。
神器は中途半端にその力を引き出せば暴走しかねない。暴走すればどうなるかはクロノスですらわからない。だからこそ咲良に頼んだのだ。
秀樹が神器を持っている、もしくはありかを知っている可能性があり、なにより神器という言葉を知っている事から少し感情的になってしまった。
「お、おい咲良、どうしたんだよ…」
「なにか気に障ったの?」
「なぜ神器を知っている?」
「あ、いや、香織さんがもってるんだよ」
「そうか…」
咲良が視線を逸らすことで秀樹が感じていた妙な気分はスッと無くなった。
「今のは気迫か?流石B級だな。にしてもなんでそんなに反応するんだ?」
「まずはその神器について詳しく話してくれ」
「確か…咲良くんと同じ刀だったよね、香織さんの神器」
どうやら香織は咲良と同じ刀使いらしい。侍の職業だったりするのだろうか。
「なんかすげー能力だったよな」
「どんな能力だ?」
「えぇーっと、光を操る様な感じだったかな。私たちと合流した時にはもう持ってたよね」
「だな。ありゃ反則だ、勝てる気がしねぇ」
穂花の光を操るという言葉から、咲良の頭には1つの神器が浮かび上がる。
「名前はなんと呼んでる?」
「名前?そんなのあったか?」
「私は聞いたことあるよ。白峯だったかな」
その瞬間、咲良は確信した。
白峯という事は白い刀という事になる。クロノスが作った神器の特徴や能力は全て教えてもらっているので、その中で白い刀はたった1つ。その名は日輪。白峯という名は武器の真名を知らないものが後から名付けたのだろう。
さらに言えば、日輪は光を操る能力では無い。真名も知らずに無理やり能力を引き出しているせいで光を操るという本来とは少し違う能力となっている可能性があり、暴走の危険性が出てくる。
「そうか……」
咲良は思考を巡らせながら素っ気なく返事を返す。
「で、それがどうしたんだ?」
「訳あって神器に詳しいんだよ」
「詳しいって、香織さんは神器について色々調べ回ってたみたいだけど得れた情報はなかったはずなんだけど…」
「私もそう聞いてるよ。ある人に神器を譲って貰ったって言ってたけど、神器が何なのかは全く分からなかったって」
香織は神器については何も分からなかったのに神器という単語は知っている。恐らく香織に日輪を譲ったある人から聞いたのだろうが、そいつは何故神器という単語を知っているのだろうか。今考えても答えは出ない。
「悪いが神器について今は話す気はない」
「咲良くんは私達のこと信頼してないの?」
穂花が少し複雑な顔をしている。
「そういうわけでは無いが…悪いな」
隠し事が多いのは咲良も不本意ではあるが、無闇に情報を広めるわけにはいかない。
「良いじゃねぇか穂花…これから信頼を得ればさ」
「うん!そうだね!」
「ふっ、気楽な奴らだな。…もう寝ろ。見張りは俺がしておくから」
次の日から咲良にやたらと話しかけて来た穂花だったが、気付かれない程度に適当に受け流していた。
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