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第6章 新天地と冒険者
王都探索
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「待たせたな」
ギルドの外で待っていたカゼルに声をかけた。
「おう。じゃぁ早速俺の店に…と言いたいところだが…咲良は初めてだからな。少し案内してやるよ」
「悪いな。少し興味があったんだ」
「そりゃよかった。ならまずは腹ごしらえだな」
カゼルは肉が焼けた香ばしい匂いがする店に向かう。
「ひとつくれ!」
「あいよ!銅貨一枚だ」
「はいよ!」
カゼルが肉の刺さった串を持って来た。
「これはグリンラビットの肉だ。安いが美味いぞ」
「おっ、確かにこれはいけるな」
「だろ!…さっ次だ」
その後も何軒か回って腹を満たした。
ちなみにアスガルドのお金は、大陸ごとに異なり、アズール大陸ではアズール硬貨と呼ばれ、銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨、金板と価値が上がり、銅貨10枚で銅板1枚、銀貨10枚で銀板1枚というように各10枚毎に価値がひとつ上がる。
「次はここだ」
カゼルが連れてきたのは鍛冶屋だった。
外から見ても繁盛していると分かるほど客が大勢いる。
「ほう…」
「鍛治師としての血が騒ぐって感じか?」
「そうだな。王都の鍛治師の実力は知りたかったからな」
中に入ると様々な武具が置いてあり、そばにあった剣を手にとってみる。
(あんま出来が良くないな…これは鉄鉱石を主体に作ってるんだろうけど…不純物が多すぎる)
他にも手にとってみるがどれも出来はイマイチだった。
武具としては使えることは使えるが、素材の加工方法がどれも雑過ぎると感じた。
ふと、壁にかかってある槍に目が行く。
(これは…ミスリルか。だが…素材に頼っただけで技術はダメだな…もったいない)
「良いものに目をつけたね、お兄さん!」
店の奥から女が声をかけて来た。
見た所、咲良と同じか少し下の年頃だろうか。
「それは私が作ったのよ!中々いい出来でしょ?今なら金貨4枚でいいわよ?」
どうやらこの女は自分の作品に自信があるらしく咲良に売りつけたいようだ。
「いや…これを買う気はないな」
「……お金が足りないのかしら?」
「確かに今待ち合わせはないが…あったとしてもこの槍を買う気はない」
「槍は苦手?」
「いや…苦手じゃない」
「…ならどうして?」
他にも客は多くいるはずだが、しつこく聞いてくるので正直に答える。
「この槍の素材はミスリルだが技術が追いついていない。不純物も取り除けていないしな。それに…魔力伝導率を高めるために翡翠晶を使ってるようだが、この加工の仕方だと逆に効果が弱くなってる」
「!!……し、しし素人が…何偉そうに語ってんのよ!これは私が作った最高傑作なのよ!」
「気に障ったか。だがこれに金貨4枚の価値はないと思う。俺も鍛治師だからな。それくらいは分かる」
「だからってあんたに言われる筋合いはない!」
声を荒げた所為で周りの客は何事だと目を向ける。
「そりゃそうだ…悪かったな」
「おいおい…何揉めてるんだよ?」
咲良と女が口論しているのに気がついたカゼルが間に割って入った。
「おっさんこいつの知り合い!?」
「お…おっさん!?」
おっさん呼ばわりされてカゼルは落胆するが見た目がおっさんなのは間違いない。
「で?…どうなのよ?」
「あ…あぁ知り合いだ。どうしたんだ?」
「どうもこうもないわよ!いきなり人の作品にいちゃもんつけてくれちゃってさ!」
「そうなのか?」
咲良がいちゃもんをつけるような性格ではないと思っていたカゼルは意外そうな表情を浮かべ咲良を見る。
「あぁ…これが金貨4枚と言われたからな。さすがに高いと思ってついな」
「へぇ…これが金貨4枚ねぇ…」
「なによ!!なんか文句でもあるっていうの!?」
「もしこれが金貨4枚だとすれば咲良が作った刀は金板6枚はするだろうなぁ」
カゼルのは目線を村正に向ける。
カゼルは精到鑑定を使ってミスリルで作られた槍を鑑定するが価値は値段ほど高くないと分かったようだ。
実際の村正の価値は金板6枚どころか、高価すぎて値段は付けれない。なにせ技神である咲良が作り、その素材は最高純度のアダマンタイトとオリハルコンを使用した神器なのだから。
だが生憎カゼルの精到鑑定の練度では、ここまでの価値があるとはまだ見抜けない。
「これのことか?」
咲良は腰に下げてある村正に触れる。
「おぅ…その外套もだがな」
「な…なんですって!こいつの作ったこれの方が高いっての!?」
「あぁ間違いなくな」
「…貸してみなさい!」
女が村正を取ろうとした瞬間…
「…触るな…」
咲良から女に向けて殺気が漏れる。
「ひっ!…」
女の顔色はどんどん悪くなり、汗も滝のように垂れる。
「お…おい!嬢ちゃんどうした!?」
「な…なに………これ…」
女はなにが起こっているのかわかっていない。
武の道に携わる者でなければこれが殺気だとは分からない。
「おい!…咲良がやったのか!?そうならすぐやめろ!」
「ちっ!」
咲良は軽く舌打ちし、殺気を収める。
「う……うぅ…」
咲良から放たれる殺気が消えると女は地面にへたり込んだ。
「やっぱ咲良だったか…」
「済まなかったな。だが…この刀は俺の相棒だ。そうやすやすと触れていいもんじゃない」
「ま…咲良もやり過ぎだが…今のは嬢ちゃんが悪いぜ。人の得物に勝手に触るのはいけねぇな」
「そ…それは…謝るわ…ごめんなさい…」
息を整えながら、でも、と女は続ける。
「私の技術を批判したのは許せない……だから…あんたの技術を私に見せて。鍛治師なんでしょう?」
「それぐらいなら構わないが」
「お…咲良が打つところは俺も見てーな」
「工房はこっちよ」
咲良とカゼルは女に着いて奥の工房へと入る。
「言い忘れてたわ…私はサラ…あんたたちは?」
「俺はカゼル…で、こっちが咲良だ」
妙な事になったとは思いつつも、咲良にも責任はある。
いくら勝手に触ろうとしたとはいえ、殺気を当てるほどの事ではない。
まだまだ、自分は未熟者だと少し反省した。
ギルドの外で待っていたカゼルに声をかけた。
「おう。じゃぁ早速俺の店に…と言いたいところだが…咲良は初めてだからな。少し案内してやるよ」
「悪いな。少し興味があったんだ」
「そりゃよかった。ならまずは腹ごしらえだな」
カゼルは肉が焼けた香ばしい匂いがする店に向かう。
「ひとつくれ!」
「あいよ!銅貨一枚だ」
「はいよ!」
カゼルが肉の刺さった串を持って来た。
「これはグリンラビットの肉だ。安いが美味いぞ」
「おっ、確かにこれはいけるな」
「だろ!…さっ次だ」
その後も何軒か回って腹を満たした。
ちなみにアスガルドのお金は、大陸ごとに異なり、アズール大陸ではアズール硬貨と呼ばれ、銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨、金板と価値が上がり、銅貨10枚で銅板1枚、銀貨10枚で銀板1枚というように各10枚毎に価値がひとつ上がる。
「次はここだ」
カゼルが連れてきたのは鍛冶屋だった。
外から見ても繁盛していると分かるほど客が大勢いる。
「ほう…」
「鍛治師としての血が騒ぐって感じか?」
「そうだな。王都の鍛治師の実力は知りたかったからな」
中に入ると様々な武具が置いてあり、そばにあった剣を手にとってみる。
(あんま出来が良くないな…これは鉄鉱石を主体に作ってるんだろうけど…不純物が多すぎる)
他にも手にとってみるがどれも出来はイマイチだった。
武具としては使えることは使えるが、素材の加工方法がどれも雑過ぎると感じた。
ふと、壁にかかってある槍に目が行く。
(これは…ミスリルか。だが…素材に頼っただけで技術はダメだな…もったいない)
「良いものに目をつけたね、お兄さん!」
店の奥から女が声をかけて来た。
見た所、咲良と同じか少し下の年頃だろうか。
「それは私が作ったのよ!中々いい出来でしょ?今なら金貨4枚でいいわよ?」
どうやらこの女は自分の作品に自信があるらしく咲良に売りつけたいようだ。
「いや…これを買う気はないな」
「……お金が足りないのかしら?」
「確かに今待ち合わせはないが…あったとしてもこの槍を買う気はない」
「槍は苦手?」
「いや…苦手じゃない」
「…ならどうして?」
他にも客は多くいるはずだが、しつこく聞いてくるので正直に答える。
「この槍の素材はミスリルだが技術が追いついていない。不純物も取り除けていないしな。それに…魔力伝導率を高めるために翡翠晶を使ってるようだが、この加工の仕方だと逆に効果が弱くなってる」
「!!……し、しし素人が…何偉そうに語ってんのよ!これは私が作った最高傑作なのよ!」
「気に障ったか。だがこれに金貨4枚の価値はないと思う。俺も鍛治師だからな。それくらいは分かる」
「だからってあんたに言われる筋合いはない!」
声を荒げた所為で周りの客は何事だと目を向ける。
「そりゃそうだ…悪かったな」
「おいおい…何揉めてるんだよ?」
咲良と女が口論しているのに気がついたカゼルが間に割って入った。
「おっさんこいつの知り合い!?」
「お…おっさん!?」
おっさん呼ばわりされてカゼルは落胆するが見た目がおっさんなのは間違いない。
「で?…どうなのよ?」
「あ…あぁ知り合いだ。どうしたんだ?」
「どうもこうもないわよ!いきなり人の作品にいちゃもんつけてくれちゃってさ!」
「そうなのか?」
咲良がいちゃもんをつけるような性格ではないと思っていたカゼルは意外そうな表情を浮かべ咲良を見る。
「あぁ…これが金貨4枚と言われたからな。さすがに高いと思ってついな」
「へぇ…これが金貨4枚ねぇ…」
「なによ!!なんか文句でもあるっていうの!?」
「もしこれが金貨4枚だとすれば咲良が作った刀は金板6枚はするだろうなぁ」
カゼルのは目線を村正に向ける。
カゼルは精到鑑定を使ってミスリルで作られた槍を鑑定するが価値は値段ほど高くないと分かったようだ。
実際の村正の価値は金板6枚どころか、高価すぎて値段は付けれない。なにせ技神である咲良が作り、その素材は最高純度のアダマンタイトとオリハルコンを使用した神器なのだから。
だが生憎カゼルの精到鑑定の練度では、ここまでの価値があるとはまだ見抜けない。
「これのことか?」
咲良は腰に下げてある村正に触れる。
「おぅ…その外套もだがな」
「な…なんですって!こいつの作ったこれの方が高いっての!?」
「あぁ間違いなくな」
「…貸してみなさい!」
女が村正を取ろうとした瞬間…
「…触るな…」
咲良から女に向けて殺気が漏れる。
「ひっ!…」
女の顔色はどんどん悪くなり、汗も滝のように垂れる。
「お…おい!嬢ちゃんどうした!?」
「な…なに………これ…」
女はなにが起こっているのかわかっていない。
武の道に携わる者でなければこれが殺気だとは分からない。
「おい!…咲良がやったのか!?そうならすぐやめろ!」
「ちっ!」
咲良は軽く舌打ちし、殺気を収める。
「う……うぅ…」
咲良から放たれる殺気が消えると女は地面にへたり込んだ。
「やっぱ咲良だったか…」
「済まなかったな。だが…この刀は俺の相棒だ。そうやすやすと触れていいもんじゃない」
「ま…咲良もやり過ぎだが…今のは嬢ちゃんが悪いぜ。人の得物に勝手に触るのはいけねぇな」
「そ…それは…謝るわ…ごめんなさい…」
息を整えながら、でも、と女は続ける。
「私の技術を批判したのは許せない……だから…あんたの技術を私に見せて。鍛治師なんでしょう?」
「それぐらいなら構わないが」
「お…咲良が打つところは俺も見てーな」
「工房はこっちよ」
咲良とカゼルは女に着いて奥の工房へと入る。
「言い忘れてたわ…私はサラ…あんたたちは?」
「俺はカゼル…で、こっちが咲良だ」
妙な事になったとは思いつつも、咲良にも責任はある。
いくら勝手に触ろうとしたとはいえ、殺気を当てるほどの事ではない。
まだまだ、自分は未熟者だと少し反省した。
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