神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第10章 異世界人と隠された秘密

半四角錐

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(これは本当に遺跡なのか?見た目は古いが一切風化していない)

咲良が建物の壁に触れながら調査するが分かった事は何もなかった。


今咲良達は各自分かれて行動している。
当初は安全面から纏まって行動しようとの意見が多かったが、魔物の気配は一切感じない事と調査する範囲が広すぎる事を考慮して分かれる事にした。

(古代文字らしきものは其処ら中にあるが読める筈も無い。異世界人の称号があれば読めるかと思ったんだがそう上手くは行かないか…)

調査を開始してすぐに文字らしき模様を発見した。というより壁の彼方此方に刻まれているので分かれた全員が発見している事だろう。
異世界人の称号には翻訳機能があるのでもしかしてと思ったが現実は甘くなかった。

その後もしばらく歩き回ったが何も見つからなかったので、咲良は予め決めておいた集合場所に足を運んだ。
集合場所は中央に聳え立つピラミッドの頂上にある祭壇だ。その表面には頂上まで直通の階段があるので集合場所としては最適だ。

「あ、咲良。何か見つかった?」

頂上に着くと全員が既に集まっており、ソフィが咲良に声を掛けた。

「目ぼしい物は何も。そっちはどうだった?」
「マリアさんがお墓らしき物を見つけたって」
「そうなのか?」
「えぇ…本当にお墓かどうかは定かではありませんが墓石らしき物を幾つも見つけました」
「そうか。それが墓だとするなら嘗ては人が住んでいたのかもしれないな」
「こんな危険な場所にか?」

ハロルドには魔法が使えない危険地帯に人が住んでいた等想像しがたい事だった。

「だが建造物があるんだ。文明が栄えていたとしか言えないだろう。それに…」
「それになんだ?」
「それに……昔もここが危険地帯だったとは限らない」
「ま、そりゃそうか」

ハロルドは納得した様だが咲良の言葉には妙な間があった。

(クロノスによると昔は今よりも強い者が多かった。それはその時代が酷い戦乱の世だったからだ。そう考えるとこの危険地帯でも文明を繁栄させる事は出来ただろう…ま、そんな事言ったって皆を混乱させるだけだ)

そう考えた咲良は咄嗟に違う言葉に変えた。
それは良く言えば混乱を避ける為、悪く言えば秘密主義とも言えるだろうが咲良にとっては些細な事だ。

「で…これからどうするんだ坊主」
「あそこにいく。まだ誰も調査していないだろう」

咲良はとある方向を指差した。
そこは一番奥に聳える半分だけの巨大なピラミッドだ。

「ま、それしかないか」

一番奥のピラミッドに行くにはかなり距離がある。各自で分かれた際もそこまで足を運んだ者はいない。







「やっと着いたがこれを上るのかよ。キツそうだな」

ピラミッドの前に到着すると同時にハロルドが愚痴を零す。
ここまで辿り着くのに相当な距離を歩いたが、最後に待ち構えているのは途轍もなく長い階段だ。

「確かに堪えそうですね。しかしこれを上り切れば何かが見つかる可能性は高いですよ」

サイモンは肯定的な意見を述べるが、咲良には自分自身を鼓舞している様に聞こえた。

「さっさと行くぞ」

咲良が一足先に階段を昇り始めると他の者も慌ててその後を追った。



「はぁ…はぁ…疲れた…咲良、少し休まない?」
「まだ半分だぞ。もう限界か?ソフィ」
「だって…はぁ…はぁ…何か体が重い」

階段を上り始めて約二時間、遂にソフィが立ち止まってしまった。

(とは言ったものの…ソフィが疲れるのも無理はないか。さっきからこの階段を上るほど体が重くなってくる。まるで重力が少しずつ重くなっているかの…いや、実際に重くなっているんだろうな)

咲良の見解は当たっていた。
実はこのピラミッドでは上に行けば行くほど重力が掛かる仕組みになっていた。
いくら長い階段と言えど咲良達ならそう時間は掛からないはずが、2時間経ってもまだ半分を超えたばかりな所を見ると重力がかなりの枷になっている。
さらに厄介なのが少しずつ違和感なく重力が掛かってくるため、単に体力を消耗しただけだと勘違いしてしまう。咲良が気付けたのは幸運としか言えないだろう。

ソフィ程ではないが他の面々も疲れた表情を隠すことなく曝け出している。

(これは思った以上に厄介だ。精神的な疲労も溜まるだろうし、何より休息を取っても体はずっと重いからあまり意味を成さない。仕方ないか…)

咲良はクロ以外の全員に氣を送って疲労を軽くさせた。

「ん?…体が…坊主か、ありがとよ」

咲良の仕業だと気付いたハロルドが礼を告げると彼方此方から感謝の言葉が咲良に掛けられた。

「気付いていないかもしれないがこの階段は上るほどに体が重くなる様だ」
「た、確かに言われてみれば…いつもより体が重いような…」
「だから休息は取らない」
「え?なんで?」

休めると思っていたソフィが悲痛な表情で咲良に問い詰める。その額からは塩分が豊富に含まれていそうな汗がドロドロと流れている。

「休んでもこの体の重さは無くならないからだ。それじゃ休息を取るのは時間の無駄だ」
「そんな…」
「限界なら背負ってやる」
「えっと……ううん…頑張る!」

ソフィは嘗て咲良に背負ってもらった時の快適さを思い出し、その言葉に甘えようとしたがブンブンと首を振っておんぶという誘惑を払い除けた。ここで甘えてしまっては自分の為にならないと分かったからだ。

「そうか…」

咲良は階段の上へと視線を戻すが、その口元には笑みが零れていた。
本気で背負うつもりだったが、何か決意を固めた表情で断られた事に驚きつつも精神的に強くなったソフィを見ると自然と口角がクイッと上がってしまった。
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