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第9章 派生流派と天乱四柱
流派衝突
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「せめてもの情けだ。先手は譲ってやる」
2人は道場の中庭で睨み合うと同じタイミングで刀を抜いた。
「そうか。なら遠慮なく行くぞ…暁流弐ノ型 飛翔!」
琴音に向かって飛ぶ斬撃が放たれる。
「な!これは!」
琴音は難なく飛翔を躱すがとても驚いている様に見える。
「今の型を見ても俺が偽物だと言うのか?」
「こ…こんな事が…あり得ない…本物だと言うのか…」
「俺からすればお前ら暁月流こそ偽物なんだがな」
「俺は…まだ認めちゃいねーぞ!」
琴音は刀を構えると刀身を咲良に向ける。
「暁月流弐ノ型 伸月!」
伸びた刀身が咲良を襲う。その伸びる速度は椿の比ではない。
咲良は瞬時に目の前に高密度に圧縮した魔力を壁として展開することで躱す事もなく防いだ。咲良はその隙に琴音が生み出した刀身をしっかりと観察する。
「やっぱり魔力で出来ていたか」
「今ので見抜いたか。その観察力は褒めてやる」
琴音はそう言いながらも次の技を繰り出すために構えを取る。
(暁月流は氣を使えないと見るべきか。つまり暁月流は魔力と氣を混ぜ合わせる事が出来なかったかつての暁流門下生が作った流派という事だろうな)
咲良は次々と繰り出される琴音の技を魔力の壁で全て防ぎながら思案に耽る。
「考え事か?余裕だな」
「少し気になる事があってな」
「そうか。ならその余裕を…無くしてやる!」
琴音は咲良から距離を取ると咲良と同じように魔力で壁を作る。
(ほぅ…出来るとは思っていたが想像以上に様になってるな。そういえば魔力を扱うやつには会うのは初めてか。良い訓練になりそうだな)
体外で魔力を操る者と戦うのはクロノス以来なので咲良の顔には自然と笑みが浮かぶ。
そして肝心の琴音は魔力の壁の中で集中し、次第に体に魔力が帯びていく。
(魔力だけの魔装か…だが大した奴だな。完成度はかなり高い)
琴音が発動したのはかつて咲良が邪神魔狼討伐の際に陸に施した擬似魔装だった。しかもその性能は咲良と同じかそれ以上だ。本来の魔装なら負ける事は無いが、擬似魔装同士なら危ういかもしれない。
「これが暁月流奥義の一つ、魔装だ…行くぞ!」
その瞬間琴音は咲良の背後まで移動して切りかかる。咲良は何とか村正を背にして防御するが力負けしたのか数m吹き飛んだ。
「良く反応したな。だが次は無いぞ」
「確かに…見えなかったな」
琴音の速さは咲良が想像していた以上に速かったため、防御するので精一杯だった。ただし今の状態での話ではあるが…
「お返しだ」
「なにっ!くっ!」
咲良が言葉を発した瞬間、次は琴音が背中を取られた。
いきなり後ろから声がした事に驚いた琴音は防御が間に合わず脇腹を蹴られて吹き飛んだ。
「くそっ!急に速くなりやがった!」
琴音は直ぐに態勢を整えると咲良を睨みつける。そこには咲良が仁王立ちしており追撃する様子はない。
「ま…まさか…」
「俺が魔装を出来る事が不思議か?だがこれで信じる気になっただろう」
「お前は…本当に……暁流なのか…」
「最初からそう言っているだろう。まぁいい…今は続きと行こうか」
咲良が魔装を発動している光景に心底驚いた琴音だったが咲良の一言で戦闘は再開した事からどちらも戦闘狂の一面を持っているのかもしれない。
「魔装同士の対決…面白い!」
琴音は咲良の前に移動すると刀を振り下ろす。咲良はその一刀を村正で防ぐと力を込めて押し返した。
「やるじゃねぇか!」
「お前もな」
その後、道場中に刀が交差する音が何度も響き渡った。しかし門下生やソフィには二人の姿を捉えることは出来なかった。
「暁月流ノ型 飛燕!」
琴音が叫ぶと同時に咲良に向かって斬撃が飛ぶ。
「暁流壱ノ型 魔断」
咲良は飛ぶ斬撃を魔力を断ち切る一刀で切り裂いた。
「なにっ!俺の斬撃を…切りやがった…」
「お前はどう防ぐ?暁流弐ノ型 飛翔」
今度は咲良が飛ぶ斬撃を放つ。琴音は咲良を真似て魔力を帯びた刀で切り裂こうとするが…
「ぐわっ!」
勢いを少し抑えただけで切るには至らず、その身に斬撃を受けた。
「くそっ!俺にも出来ると思ったんだがな」
「今のお前には無理だ」
魔断は魔力と氣を混ぜ合わせなければ発動しない。魔力だけでも再現は可能だが技の完成度は著しく低下するので、序列3位の特級冒険者であろうと一度見ただけで真似出来る代物ではない。
「これならどうだ!」
琴音が刀を地面に突き刺した瞬間、咲良は生存本能が危険だと警笛を鳴らすので瞬時にその場を離れた。
ザクッザクッザクッ
咲良が離れると同時に元居た場所から魔力の刃が地面から生えてきた。
「よく避けたな。これが暁月流参ノ型 斬波だ」
「面白い。暁流には無い技だ」
「だったら腹一杯喰らいな!」
琴音はまたも地面に刀を突き刺すと咲良の足元から斬波が襲い掛かる。しかも今回の斬波は何度避けても襲い掛かってくる。まるで地面のあちこちに地雷が埋まっているかの様な猛攻だ。
「ちっ!」
あまりの手数に流石の咲良も避けるのが難しくなってきたので、魔力で足場を作って空中へと退避する。
「逃がすかよ!」
琴音が叫ぶと地面から突き出ていた斬波が空中にいる咲良めがけて伸びてきた。
「俺の鬼哭みたいで厄介だな…」
咲良は空中で伸びてくる斬波をギリギリで躱す。
「まだまだ行くぜぇ!」
伸びてくる斬波の数が何倍にも増えて咲良に襲い掛かる。
「終わったか…」
「そうでもないぞ」
斬波の嵐に切り裂かれたと思われた咲良は掠り傷を負う事無く琴音の背後に移動していた。もしかすると咲良は人の背中を取るのが好きなのかもしれない。
「てめぇ…どうやって…」
「魔装を発動した」
「魔装なら既に発動してたじゃねぇか」
「魔力だけのな…俺が今発動したのは本来の魔装だ」
咲良は今まで魔力だけの擬似魔装で琴音と戦っていたのだ。その事実に琴音は驚愕するが咲良に本気を出させた事は賞賛に値する。
「お前の魔装は未完成だ。俺が本物を見せてやる」
咲良は小さく呟くと琴音の周りを高速で移動しながら弐ノ型 飛翔を無数に放つ。
「くそがっ!」
琴音は魔力の壁を生み出して防ごうとするが本気を出した咲良の斬撃は防ぐことが出来ず、魔力の壁を突き破って襲い掛かる。
「これならどうだ!暁月流奥義 鳴雀!」
突然琴音の刀がキィーンと甲高い音を発し始めると、次々と飛翔を切り裂き始めた。
「まさか……飛翔を消滅させるとはな」
魔力だけでは飛翔を切ることは出来ても消滅させることは出来ない。しかし琴音は魔力だけでそれをやってのけた。
(あの音、魔力を超高速で回転させているんだろうが………ここまで高速回転させるとこんな現象が起こるとは……魔力はまだまだ奥が深いという事か)
咲良はこんな所で新しい技術を学べた事に嬉しくなりつつも飛翔を放ち続ける。
「オラオラオラオラ!もっと来い!」
琴音は楽しそうに笑いながら鳴雀で飛翔を消滅させていく。
「楽しませてもらった。だが…ここまでだ」
「なんだと!」
「暁流抜刀術 破常」
飛翔を捌き続けていた琴音に無慈悲の一撃が浴びせられる。
「ぐ…ぐふっ…」
琴音は破常をまともに受けて、屋敷の外まで吹き飛んで行った。
「し、ししょう!」
2人の戦いを黙って見守っていた椿や門下生たちが慌ただしくなる。
「直ぐに治療してやれ。切った訳じゃないから心配するな」
咲良は心配そうにする一同に声を掛ける。
実は最後の破常はかなり威力を落とすと同時に、斬撃ではなく打撃になるように調整していたのだった。
2人は道場の中庭で睨み合うと同じタイミングで刀を抜いた。
「そうか。なら遠慮なく行くぞ…暁流弐ノ型 飛翔!」
琴音に向かって飛ぶ斬撃が放たれる。
「な!これは!」
琴音は難なく飛翔を躱すがとても驚いている様に見える。
「今の型を見ても俺が偽物だと言うのか?」
「こ…こんな事が…あり得ない…本物だと言うのか…」
「俺からすればお前ら暁月流こそ偽物なんだがな」
「俺は…まだ認めちゃいねーぞ!」
琴音は刀を構えると刀身を咲良に向ける。
「暁月流弐ノ型 伸月!」
伸びた刀身が咲良を襲う。その伸びる速度は椿の比ではない。
咲良は瞬時に目の前に高密度に圧縮した魔力を壁として展開することで躱す事もなく防いだ。咲良はその隙に琴音が生み出した刀身をしっかりと観察する。
「やっぱり魔力で出来ていたか」
「今ので見抜いたか。その観察力は褒めてやる」
琴音はそう言いながらも次の技を繰り出すために構えを取る。
(暁月流は氣を使えないと見るべきか。つまり暁月流は魔力と氣を混ぜ合わせる事が出来なかったかつての暁流門下生が作った流派という事だろうな)
咲良は次々と繰り出される琴音の技を魔力の壁で全て防ぎながら思案に耽る。
「考え事か?余裕だな」
「少し気になる事があってな」
「そうか。ならその余裕を…無くしてやる!」
琴音は咲良から距離を取ると咲良と同じように魔力で壁を作る。
(ほぅ…出来るとは思っていたが想像以上に様になってるな。そういえば魔力を扱うやつには会うのは初めてか。良い訓練になりそうだな)
体外で魔力を操る者と戦うのはクロノス以来なので咲良の顔には自然と笑みが浮かぶ。
そして肝心の琴音は魔力の壁の中で集中し、次第に体に魔力が帯びていく。
(魔力だけの魔装か…だが大した奴だな。完成度はかなり高い)
琴音が発動したのはかつて咲良が邪神魔狼討伐の際に陸に施した擬似魔装だった。しかもその性能は咲良と同じかそれ以上だ。本来の魔装なら負ける事は無いが、擬似魔装同士なら危ういかもしれない。
「これが暁月流奥義の一つ、魔装だ…行くぞ!」
その瞬間琴音は咲良の背後まで移動して切りかかる。咲良は何とか村正を背にして防御するが力負けしたのか数m吹き飛んだ。
「良く反応したな。だが次は無いぞ」
「確かに…見えなかったな」
琴音の速さは咲良が想像していた以上に速かったため、防御するので精一杯だった。ただし今の状態での話ではあるが…
「お返しだ」
「なにっ!くっ!」
咲良が言葉を発した瞬間、次は琴音が背中を取られた。
いきなり後ろから声がした事に驚いた琴音は防御が間に合わず脇腹を蹴られて吹き飛んだ。
「くそっ!急に速くなりやがった!」
琴音は直ぐに態勢を整えると咲良を睨みつける。そこには咲良が仁王立ちしており追撃する様子はない。
「ま…まさか…」
「俺が魔装を出来る事が不思議か?だがこれで信じる気になっただろう」
「お前は…本当に……暁流なのか…」
「最初からそう言っているだろう。まぁいい…今は続きと行こうか」
咲良が魔装を発動している光景に心底驚いた琴音だったが咲良の一言で戦闘は再開した事からどちらも戦闘狂の一面を持っているのかもしれない。
「魔装同士の対決…面白い!」
琴音は咲良の前に移動すると刀を振り下ろす。咲良はその一刀を村正で防ぐと力を込めて押し返した。
「やるじゃねぇか!」
「お前もな」
その後、道場中に刀が交差する音が何度も響き渡った。しかし門下生やソフィには二人の姿を捉えることは出来なかった。
「暁月流ノ型 飛燕!」
琴音が叫ぶと同時に咲良に向かって斬撃が飛ぶ。
「暁流壱ノ型 魔断」
咲良は飛ぶ斬撃を魔力を断ち切る一刀で切り裂いた。
「なにっ!俺の斬撃を…切りやがった…」
「お前はどう防ぐ?暁流弐ノ型 飛翔」
今度は咲良が飛ぶ斬撃を放つ。琴音は咲良を真似て魔力を帯びた刀で切り裂こうとするが…
「ぐわっ!」
勢いを少し抑えただけで切るには至らず、その身に斬撃を受けた。
「くそっ!俺にも出来ると思ったんだがな」
「今のお前には無理だ」
魔断は魔力と氣を混ぜ合わせなければ発動しない。魔力だけでも再現は可能だが技の完成度は著しく低下するので、序列3位の特級冒険者であろうと一度見ただけで真似出来る代物ではない。
「これならどうだ!」
琴音が刀を地面に突き刺した瞬間、咲良は生存本能が危険だと警笛を鳴らすので瞬時にその場を離れた。
ザクッザクッザクッ
咲良が離れると同時に元居た場所から魔力の刃が地面から生えてきた。
「よく避けたな。これが暁月流参ノ型 斬波だ」
「面白い。暁流には無い技だ」
「だったら腹一杯喰らいな!」
琴音はまたも地面に刀を突き刺すと咲良の足元から斬波が襲い掛かる。しかも今回の斬波は何度避けても襲い掛かってくる。まるで地面のあちこちに地雷が埋まっているかの様な猛攻だ。
「ちっ!」
あまりの手数に流石の咲良も避けるのが難しくなってきたので、魔力で足場を作って空中へと退避する。
「逃がすかよ!」
琴音が叫ぶと地面から突き出ていた斬波が空中にいる咲良めがけて伸びてきた。
「俺の鬼哭みたいで厄介だな…」
咲良は空中で伸びてくる斬波をギリギリで躱す。
「まだまだ行くぜぇ!」
伸びてくる斬波の数が何倍にも増えて咲良に襲い掛かる。
「終わったか…」
「そうでもないぞ」
斬波の嵐に切り裂かれたと思われた咲良は掠り傷を負う事無く琴音の背後に移動していた。もしかすると咲良は人の背中を取るのが好きなのかもしれない。
「てめぇ…どうやって…」
「魔装を発動した」
「魔装なら既に発動してたじゃねぇか」
「魔力だけのな…俺が今発動したのは本来の魔装だ」
咲良は今まで魔力だけの擬似魔装で琴音と戦っていたのだ。その事実に琴音は驚愕するが咲良に本気を出させた事は賞賛に値する。
「お前の魔装は未完成だ。俺が本物を見せてやる」
咲良は小さく呟くと琴音の周りを高速で移動しながら弐ノ型 飛翔を無数に放つ。
「くそがっ!」
琴音は魔力の壁を生み出して防ごうとするが本気を出した咲良の斬撃は防ぐことが出来ず、魔力の壁を突き破って襲い掛かる。
「これならどうだ!暁月流奥義 鳴雀!」
突然琴音の刀がキィーンと甲高い音を発し始めると、次々と飛翔を切り裂き始めた。
「まさか……飛翔を消滅させるとはな」
魔力だけでは飛翔を切ることは出来ても消滅させることは出来ない。しかし琴音は魔力だけでそれをやってのけた。
(あの音、魔力を超高速で回転させているんだろうが………ここまで高速回転させるとこんな現象が起こるとは……魔力はまだまだ奥が深いという事か)
咲良はこんな所で新しい技術を学べた事に嬉しくなりつつも飛翔を放ち続ける。
「オラオラオラオラ!もっと来い!」
琴音は楽しそうに笑いながら鳴雀で飛翔を消滅させていく。
「楽しませてもらった。だが…ここまでだ」
「なんだと!」
「暁流抜刀術 破常」
飛翔を捌き続けていた琴音に無慈悲の一撃が浴びせられる。
「ぐ…ぐふっ…」
琴音は破常をまともに受けて、屋敷の外まで吹き飛んで行った。
「し、ししょう!」
2人の戦いを黙って見守っていた椿や門下生たちが慌ただしくなる。
「直ぐに治療してやれ。切った訳じゃないから心配するな」
咲良は心配そうにする一同に声を掛ける。
実は最後の破常はかなり威力を落とすと同時に、斬撃ではなく打撃になるように調整していたのだった。
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