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『やわらかな、平和』
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大粒で密度の濃い雨がざあざあとふっていた。
運動靴で踏みしめるコンクリートには薄い水の膜がはり、視界一面には無数の波紋が。
平和はふと、自分が傘をさしていないのに濡れる気配がないことに気がついた。不思議に思いあたりをみまわして、彼を見つける。
すぐ隣に。
制服姿でやさしい笑みを浮かべた綾野が立ち、傘をさしかけてくれていた。
「へーわ」
耳でひろった声が、心を撫でる。
どんな豪雨でもこの声を聞き洩らしたりしない。
こんなにもやわらかく平和の名を呼ぶ人は綾野だけだった。
誰もが知っている単語に読める名前。
綾野に出会うまで、つきまとう記憶は痛々しいものだけだった。
とくに忘れられないのが小学4年生の時の出来事だ。
あの日も雨が降っていた。
平和は、母がときおり気まぐれで買ってくる真新しいTシャツを着て学校に行った。
小学生っておろかだ。
新しい服を着るだけで昨日まで意地悪だったクラスメイトが優しく話しかけてくれるかもしれないなんて期待を、何度だっていだいてしまうから。
ボロボロのランドセルの肩ベルト部分を握りしめ、ドキドキしながら教室に入った瞬間、平和を異質なものとして扱っている男子グループの全員と目があった。
あの時の、空気。
自分が呼吸をする生物だと忘れてしまったかのように息ができなかった。
彼らは数秒のあいだ無言で平和を見つめ、一斉にわっと爆笑した。
「ねえ守山、まじ、ピースって」と大声ではっきり言いながらゲラゲラ笑う。
その子たちは平和のまわりにわらわらと集まり、教えてくれた。
「『PEACE』って『平和』って意味だし。自分の名前のTシャツ着てくるとか、たまにおもろいじゃん。でもお前、そのTシャツも、よれよれになるまで着るっしょ? つうか守山の家庭カンキョー、ピースとは遠すぎなんだけど」
ぎゃはぎゃはと笑いながら言われた。
平和は、胸のなかにあったおろかな期待がぼろぼろに崩れていく感覚をはっきりと知った。
良いことを期待して、何も起こらないどころか、悪いことが起こる。
自分ってこんな経験ばかりだなって思い、そうしたら、ものすごく悲しくて悔しくて何に対してかわからないけれど怒れてきて、外国人講師が個別指導をしてくれる英会話教室に通っていることが自慢話のひとつであるその男子生徒のことを、思いきり殴ってしまいたい衝動にかられた。
でも、暴力をふるう勇気はなくて。
やり返されるのだって怖くて。
あふれた感情の発散は、来ていたTシャツを脱ぎ、ビリビリに破くという行動になった。
教室にいたみんなが目をまんまるにして静まりかえった。
小学生の頃の平和は普段どれだけからかわれても泣きそうになって黙りこむか、逃げるか、へらへらと笑っていた。
あいつには何を言ってもどういう行動をしてもその場の雰囲気が大きく乱れることはない。
だからチクチクと、時にはグサリと刺してやろう。
どうせ何もやり返してこないんだから。
小学1年生の時、女子に「守山くんのお家って、ちょっと、かわってるの?」と聞かれて泣いてしまった時からずっとそういうジャッジをされていた平和が、破壊的な行動をしたのでみんな衝撃だったのだろう。
斜視矯正の分厚い丸眼鏡をかけていた女子生徒が職員室に担任教師を呼びに行き、平和はその日、体操服で過ごした。
活発なグループの男子生徒たちは職員室で叱られ、先生は関わった全員の母親に電話をすると言っていたけれど、平和の母がそのことについて何か言うことはなかった。
今はもう、正確にその時自分がいだいた感情をわかっている。
悲しくて悔しいのは、母が、自分にまったく興味がないからだ。
どうして生んだのだと怒っていた。
興味がないということは、血の通った世話をする気がないということだ。
母の衛生観念は常識から逸脱していた。ゆえに平和は子供の社会に出た瞬間から不潔な子供だった。「におう」「きもい」と、活発な男子グループに言われたこともある。
母に殴られたり、食事を与えられなかったりしたことはない。
ただ、母の平和への態度は最低限の飼育という感じだった。
父からの金銭的援助の要が平和の存在だったからだろう。
そういう環境だった。
命をかけて自分をこの世界に生み落とした存在に、興味をもたれてない。
大切にされていない個体を見分ける子供たちのセンサーは残酷で正確だ。
平和は食学校卒業まで友達がいなかった。
洗濯を覚え、自分の面倒をそれなりにみることができるようになった中学生の頃もそう変わらない。
守山平和は、クラスにいてもいなくてもどうでもいい存在だった。
それでよかった。
平和自身、なんで自分が毎日を生きるのかわかった瞬間なんかなかったから。
でも。
高校生になって。
綾野に出会って。
「へーわ」
特別な、彼だけがそう呼ぶ名で呼ばれるたびに切に願ってきた。
平和な環境で生きている人間になりたいと。
平和な環境で生きてきた人間になりたいと。
神さまなんて絶対いないのに、神さまに願った。
どうか、神さま。俺を綾野にふさわしい守山平和にしてください──と。
綾野のなにげない、ごくあたりまえの、ふつうの振る舞いが平和を何度だって無価値な自分への虚無感から救いあげてくれた。
そんなに長く付き合っているわけでもなければ何か劇的なドラマがあるわけでもなく、ふたりでの密な思い出はほとんどがセックスだ。
冷静に考えると自分の綾野への気持ちはただただみっともない、持たざる者の憧憬や執着なのかもしれないと思う。
それでも。
綾野が好きで、ただそれだけの感情から涙がでる時があって。
誰かを好きで泣いてしまうような恋が正しいのかどうか、平和にはわからない。
でも特別なものはなにも持ってこなかった頼りない腕で、必死にかかえていたい恋なのだ。
「へーわ、」
今日は妙に名前を呼んでくれるんだな。
そう思っていると、綾野のごつごつとした大きな手が伸びてきて、平和の前髪をながすようにふれた。
「ふ──、髪までぬれちゃってる」
ああ。
セックスのときにたまにいう言葉だ。
そこでこの綾野は夢なのだとわかった。
あたりまえだ。
平和はもう、綾野の恋人じゃない。
ふられた。
二度とあのやさしい声で名を呼んでもらえることはないのだ。
「…──ん、……っ、痛……」
夢からさめるのと同時に、何よりも早く身体の痛さに声がこぼれた。
無人のベッドが目に入り、自分が床に転がっている状態だと思い出す。
暑かったのか、タオルケットが足元でぐちゃぐちゃに丸まっていた。
下半身はむきだしで、腰と尻に不快な鈍痛がある。
昨日は──…怒涛の記憶が鮮明によみがえった。
綾野にふられ、逃げるように学校を早退したのが3日前。そこからまともに食べていなくて(1日目の夜にシーチキンの缶詰だけそのまま食べた)、嵐がやってきて、病院に連れていかれて、帰宅したら唯司が押しかけてきて、犯されて、嵐と、嵐の兄がまたやってきて……。
(病院なんか行きたくなかった。……今日、目がさめなくても、よかった)
人間はいろんな意味でしぶとい。
もしくは自分が、恵まれているのだろう。
まあ、日本に生まれて、経済的に不自由なしで私立高校へ行き一人暮らしをしている時点で地球規模でみたらかなり恵まれているのだ。平和自身、よくわかっている。
前になんとなく見たテレビの深夜番組で、東アフリカのゴミ山で生活する人たちのドキュメンタリーをみた。学校へは当然行けず、親もおらず、毎日有害な汚染大気にさらされなからゴミ山の中から売れそうなものを発掘して日銭を稼ぐ生活。
日本のレポーターが質問した。
『将来の夢はある?』
彼はゴミ山をバックに数秒間視線を泳がせて、レポーターの目を見ずに答えた。
『ここを抜け出すことかな。方法は、わからないけれど』
彼からしたら平和なんて、清潔に管理されたプールで安全に溺れているように思えるだろう。
そんなことを考えながら平和は床に肘をついた。痛む箇所をなるべく刺激しないよう意識しながら気怠い身体を起こす。
身動ぎをすると、自分が放つ不潔なにおいに気がついた。
そうだ。綾野にふられた3日前から、風呂に入っていない。汚い。……昨日、嵐は不快だっただろう。車に乗せてくれた嵐の兄にも申し訳なく思う。
──いや、本当は。
そんなに申し訳なくなんて思わない。
臭いと思われていたら恥ずかしい。みじめだ。そう感じるだけ。
そもそも平和としては嵐になんか世話になりたくなかったのだ。
床に転がったスマホが目に入り、胃のあたりがきゅーっと絞られるような感覚になった。
無視はできず、手をのばす。
タッチしても画面はつかない。
前回充電したのがいつだったか覚えていなかった。
平和は少し考えたのち、仕方なくスマホを充電器につなげた。何分か経ち、やっと起動する。
欠けた林檎のマーク。
息を詰めながら確認したメッセージアプリのアイコンには、バッジがついていない。
よかった。唯司からの連絡はきていない。
とはいえ安堵してばかりもいられない。
昨日、あの後、何がどうなったのだろう。
平和は嵐の兄の名前すら知らないのに……。
もうひとつ、ショートメッセージのやりとりができるアプリアイコンにはバッジが「①」とついていた。こちらに連絡してくるのは父親か、学校のメールだ。ごくごくまれに、母親のときもある。
タップすると、父からだった。
どう表現していいのかわからない父の笑顔が脳裏をよぎる。
中学生になった時から、3か月に一度ほどのペースで食事をしていた。
まったく楽しい時間ではないのに平和はきちんと父に会いにいく。
どうしてかわかっている。
自分のなかには、まだ大人への期待があるのだ。
叶えられることのない、期待が。
ものすごく寂しい気持ちになるからあまり考えないようにしていた。
父への返信はあとでしようと決め、ふらふらと立ち上がる。
キッチンスペースに向かい、冷蔵庫をあけた──刹那。「え」と声がもれた。
いくつものタッパーがぎゅうぎゅうに詰まっている。
すべてに青い鳥のイラストが描かれた付箋が貼り付けてあり、『鮭きのこ豆乳スープ:電子レンジ500wで3分』『しょうが粥:電子レンジ500wで2分』等と細かな記載があった。
……そういえば。
昨日、嵐が帰り際に「冷蔵庫や冷凍庫に母親がつくったものや買ってきたものを入れていく」と話していた気がする。
とても返事ができる状態ではなく無視してしまったけれど。
付箋の文字は嵐の母親のものなのだろう。
丸っこくてかわいいのにちゃんとした大人だと伝わるバランスの美しい文字だ。
平和は学校のプリントに書かれた自分の母親の字がとても歪だったことを思い出す。
(人のお母さんの料理……、食べたことあったっけ)
せっかく作ってくれたものだ。けれど食欲はわかず、ペットボトルのミネラル飲料水だけを手にして冷蔵庫を閉めた。
ひとくち飲んだ瞬間に自分はものすごく喉が渇いていたことに気付き、一気に半分ほどを減らす。
はぁ、と深い息をつきながらリビングの惨状をあらためて見つめた。
ぐしゃぐしゃのタオルケットに、散らばったティッシュ。床に落ちたリモコン。唯司が置いていったコンドーム。
雑然とした光景のなかで唯一きちんと並び揃えて置かれた、2つの缶箱。
昨日、唯司がぶん投げたものだ。
平和は空になったペットボトルをシンクに置いた。
手の甲で雑に口元をぬぐいながら缶に近付き、しゃがみこむ。
これまで、何度も中身をとりだして、思い出にひたった。
大切なものだけが入っている箱。
そっとふたをあける。
投げられて中身は飛び散ったと思っていたけれど、間違いなくすべてが収まっていた。
アイスクリームの空き袋も、消しゴムも、プリントも、その他のものたちも。
(嵐くん……)
綾野の思い出は、平和が自分で収納するよりきれいにきちんとしまわれていた。
胸が、ぎゅっと収斂する。
ふたを閉じた平和は立ち上がり、床に落ちていたショートパンツを履いてからカーテンと窓を開けた。
むわっとした空気が顔面にかかる。植物の、青くさいにおいを胸の深くまで吸いこんだ。
網戸越しの空は灰色だった。
でも、雨はふっていない。
平和はそのまま家中の窓をあけた。
室内に風がとおる。
2つの缶箱は棚の上へ。
コンドームはゴミ箱へ。
タオルケットや落ちていた下着は洗濯機に投入。操作して洗濯を開始する。
独特の稼働音がひびくなか冷蔵庫の扉を開けた。
とりだすタッパーは『鮭きのこ豆乳スープ』だ。
電子レンジに入れて、600wで3分。
すぐにいい匂いがしてくる。
ここまでの動作でやや息切れをしていたので椅子に座った。
ぼーっと窓の外を見ているうちにあたため終了の電子メロディが。
熱かったけれど我慢して素手で取りだした。
タッパーのふたを開けた瞬間、ほんわり煙がたちのぼり鮭のいい香りにお腹がきゅるっと鳴る。
きのこと、鮭のかけらと、すきとおった玉ねぎをスプーンですくって口にいれた。
おいしい。
豆乳を買ったことがなく、こんな味のものがつくれると知らなかった。
ふたくちめは少し大きめの鮭の塊だけを食べる。
口のなかで、鮭からじんわりスープがしみだして熱い。ほくほくだ。
スプーンを置いた平和は立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルの麦茶をとりだした。キャップをあけて、よく冷えたそれをごくごくと飲む。おいしい。
またスープを食べる。
鮭はほくほく。
きのこは独特のぎゅむっとした食感。
たまねぎはとろとろだ。
夢中で食事をしていると、半分ほどで少し吐き気がこみあげてきた。
ここ数日まともに食べていないのに一気に食べすぎたと反省しつつ、タッパーのふたをとじる。
まだこのスープを食べられることが嬉しかった。
大切に冷蔵庫にしまう。
麦茶も。
吐き気がおさまったタイミングで平和は風呂場に向かった。
泡状の薬剤を浴槽に発射し、掃除用のスポンジで磨いていく。
ぜえはあと息を荒げながら清掃を終え、湯張りボタンを押した。
10分ほどで完了のメロディーが家中にひびく。
全裸になって、湯につかった。
ものすごく熱い。
でも、すぐに慣れた。
はーっと深呼吸。
きもちがいい。
顎先まで沈めて、水音しかない狭い空間で目をゆっくりと瞬いた。
……やっぱりどうにも尻が痛い。
腰の痛みとは違って外側の、傷の痛みだ。湯がしみる。
他にも身体のいたるところに小さな傷や打撲痕があり、それはすべて、昨日の唯司の凶行だった。
「もっと、ちゃんと俺のものだって顔で媚びてくれないと」と、何度か言われたが平和が眼差しににじむ嫌悪感をどうにもできなかったので殴られて、犯された。
唯司は綾野についてどうしてか詳しく知っているから怖い。それがいちばん、怖い。
家を物色されて、缶箱は笑いながら投げられた。
……思い出したくない。
息を吸い、吐かずにとめて湯のなかにもぐる。
ぶくぶくぶくっという音が頭の中にひびく。
(次も殴られたりしながら、唯くんの言いなりになるしかないのかな)
無理だ。
昨日はっきりした。
もうこれ以上、唯司の言うとおりにすることは、多分、できない。
できないといっても自分が唯司に対してどういう反発ができるのか見当もつかないけれど、とにかくできないという気持ちが強い。
ただ、唯司は綾野と平和の関係まで知っている。
嵐が酷い目にあうのもやっぱり困る。
頭のてっぺんまで湯に浸かった状態で平和はぶくぶくぶくっと泡をはく。
(唯くんを────……殺す?)
ぷはぁっと湯から顔をだした。
ぜえ、はあ、と呼吸を整える。
ごく自然に浮上した考えを嘲笑した。
殺すなんてできるわけない。
殺したくもない。
唯司みたいな人間のせいで犯罪者になるなんて、絶対に嫌だ。
(でも、今度唯くんが来たら、また……)
いっそ、唯司が自分を殺してくれたらいい。
たちまち刑務所行きだ。
綾野のことも、嵐のことも害せなくなる。
それがいちばんいい気がした。
目元がぼんやりかすんで、頭がくらくらしてくる。
それでも平和は湯に浸かったまま、次に唯司が来た時のことを考えた。
どういう態度をとれば殺されるほどの激情を引き出せるだろうか。
証拠を残しておく必要もある。
唯司が隠蔽をはかっても、平和の死=唯司の犯行だと断定できるような証拠を。
物騒なことをつらつらと考えているうちに、平和は三流推理小説みたいな思考を見失った。
静かな目覚めだった。
夢をみていなかったからだろうか。
きちんとベッドに眠っている状況を、不思議に思う。
眠る前の記憶があいまいだ。
たしか、風呂に入っていたはずなのだけれど…──あれも夢だったのだろうか。
全身がだるくて、天井をぼんやり見つめていると「あ」という声がした。
一気に覚醒する。
強い拍動を感じながら声のほうへ顔を向けると──
「ごめん、びっくりさせた……?」
嵐だった。
隣には、綾野の姿もある。
綾野だ。
夢じゃなくて本物の。
平和は制服姿のふたりを映した目を何度か瞬いて、渇いた喉から声をしぼりだす。
「な、んで……?」
どうしてふたりがここにいるのか。
「鍵、開いてたから勝手に入っちゃった。でもよかったよ。守山くん、お風呂で寝てるんだもん。……びっくりした」
「へーわ、何か飲める? 顔赤いから、熱もはかって」
綾野の手がのびてきて、額にふれた。
ぬるいひとはだ。
それは確かに綾野のぬくもりで平和はひゅっと息を呑む。
「っ……ゆめ?」
思わず訊いてしまうと、綾野はどこかが痛むように目をすがめた。
「へーわ、ごめんね」
「え……?」
「嵐から、聞いた。なんでへーわが、…………あんな動画撮られたのか」
理解が追いつかない。
平和は多分どんな感情も正しく伝えられない中途半端な表情で、嵐をみた。
「ごめん、守山くん。オレのこと護ってくれてたんだよな。ごめん……っ。ごめん、ほんとうに」
運動靴で踏みしめるコンクリートには薄い水の膜がはり、視界一面には無数の波紋が。
平和はふと、自分が傘をさしていないのに濡れる気配がないことに気がついた。不思議に思いあたりをみまわして、彼を見つける。
すぐ隣に。
制服姿でやさしい笑みを浮かべた綾野が立ち、傘をさしかけてくれていた。
「へーわ」
耳でひろった声が、心を撫でる。
どんな豪雨でもこの声を聞き洩らしたりしない。
こんなにもやわらかく平和の名を呼ぶ人は綾野だけだった。
誰もが知っている単語に読める名前。
綾野に出会うまで、つきまとう記憶は痛々しいものだけだった。
とくに忘れられないのが小学4年生の時の出来事だ。
あの日も雨が降っていた。
平和は、母がときおり気まぐれで買ってくる真新しいTシャツを着て学校に行った。
小学生っておろかだ。
新しい服を着るだけで昨日まで意地悪だったクラスメイトが優しく話しかけてくれるかもしれないなんて期待を、何度だっていだいてしまうから。
ボロボロのランドセルの肩ベルト部分を握りしめ、ドキドキしながら教室に入った瞬間、平和を異質なものとして扱っている男子グループの全員と目があった。
あの時の、空気。
自分が呼吸をする生物だと忘れてしまったかのように息ができなかった。
彼らは数秒のあいだ無言で平和を見つめ、一斉にわっと爆笑した。
「ねえ守山、まじ、ピースって」と大声ではっきり言いながらゲラゲラ笑う。
その子たちは平和のまわりにわらわらと集まり、教えてくれた。
「『PEACE』って『平和』って意味だし。自分の名前のTシャツ着てくるとか、たまにおもろいじゃん。でもお前、そのTシャツも、よれよれになるまで着るっしょ? つうか守山の家庭カンキョー、ピースとは遠すぎなんだけど」
ぎゃはぎゃはと笑いながら言われた。
平和は、胸のなかにあったおろかな期待がぼろぼろに崩れていく感覚をはっきりと知った。
良いことを期待して、何も起こらないどころか、悪いことが起こる。
自分ってこんな経験ばかりだなって思い、そうしたら、ものすごく悲しくて悔しくて何に対してかわからないけれど怒れてきて、外国人講師が個別指導をしてくれる英会話教室に通っていることが自慢話のひとつであるその男子生徒のことを、思いきり殴ってしまいたい衝動にかられた。
でも、暴力をふるう勇気はなくて。
やり返されるのだって怖くて。
あふれた感情の発散は、来ていたTシャツを脱ぎ、ビリビリに破くという行動になった。
教室にいたみんなが目をまんまるにして静まりかえった。
小学生の頃の平和は普段どれだけからかわれても泣きそうになって黙りこむか、逃げるか、へらへらと笑っていた。
あいつには何を言ってもどういう行動をしてもその場の雰囲気が大きく乱れることはない。
だからチクチクと、時にはグサリと刺してやろう。
どうせ何もやり返してこないんだから。
小学1年生の時、女子に「守山くんのお家って、ちょっと、かわってるの?」と聞かれて泣いてしまった時からずっとそういうジャッジをされていた平和が、破壊的な行動をしたのでみんな衝撃だったのだろう。
斜視矯正の分厚い丸眼鏡をかけていた女子生徒が職員室に担任教師を呼びに行き、平和はその日、体操服で過ごした。
活発なグループの男子生徒たちは職員室で叱られ、先生は関わった全員の母親に電話をすると言っていたけれど、平和の母がそのことについて何か言うことはなかった。
今はもう、正確にその時自分がいだいた感情をわかっている。
悲しくて悔しいのは、母が、自分にまったく興味がないからだ。
どうして生んだのだと怒っていた。
興味がないということは、血の通った世話をする気がないということだ。
母の衛生観念は常識から逸脱していた。ゆえに平和は子供の社会に出た瞬間から不潔な子供だった。「におう」「きもい」と、活発な男子グループに言われたこともある。
母に殴られたり、食事を与えられなかったりしたことはない。
ただ、母の平和への態度は最低限の飼育という感じだった。
父からの金銭的援助の要が平和の存在だったからだろう。
そういう環境だった。
命をかけて自分をこの世界に生み落とした存在に、興味をもたれてない。
大切にされていない個体を見分ける子供たちのセンサーは残酷で正確だ。
平和は食学校卒業まで友達がいなかった。
洗濯を覚え、自分の面倒をそれなりにみることができるようになった中学生の頃もそう変わらない。
守山平和は、クラスにいてもいなくてもどうでもいい存在だった。
それでよかった。
平和自身、なんで自分が毎日を生きるのかわかった瞬間なんかなかったから。
でも。
高校生になって。
綾野に出会って。
「へーわ」
特別な、彼だけがそう呼ぶ名で呼ばれるたびに切に願ってきた。
平和な環境で生きている人間になりたいと。
平和な環境で生きてきた人間になりたいと。
神さまなんて絶対いないのに、神さまに願った。
どうか、神さま。俺を綾野にふさわしい守山平和にしてください──と。
綾野のなにげない、ごくあたりまえの、ふつうの振る舞いが平和を何度だって無価値な自分への虚無感から救いあげてくれた。
そんなに長く付き合っているわけでもなければ何か劇的なドラマがあるわけでもなく、ふたりでの密な思い出はほとんどがセックスだ。
冷静に考えると自分の綾野への気持ちはただただみっともない、持たざる者の憧憬や執着なのかもしれないと思う。
それでも。
綾野が好きで、ただそれだけの感情から涙がでる時があって。
誰かを好きで泣いてしまうような恋が正しいのかどうか、平和にはわからない。
でも特別なものはなにも持ってこなかった頼りない腕で、必死にかかえていたい恋なのだ。
「へーわ、」
今日は妙に名前を呼んでくれるんだな。
そう思っていると、綾野のごつごつとした大きな手が伸びてきて、平和の前髪をながすようにふれた。
「ふ──、髪までぬれちゃってる」
ああ。
セックスのときにたまにいう言葉だ。
そこでこの綾野は夢なのだとわかった。
あたりまえだ。
平和はもう、綾野の恋人じゃない。
ふられた。
二度とあのやさしい声で名を呼んでもらえることはないのだ。
「…──ん、……っ、痛……」
夢からさめるのと同時に、何よりも早く身体の痛さに声がこぼれた。
無人のベッドが目に入り、自分が床に転がっている状態だと思い出す。
暑かったのか、タオルケットが足元でぐちゃぐちゃに丸まっていた。
下半身はむきだしで、腰と尻に不快な鈍痛がある。
昨日は──…怒涛の記憶が鮮明によみがえった。
綾野にふられ、逃げるように学校を早退したのが3日前。そこからまともに食べていなくて(1日目の夜にシーチキンの缶詰だけそのまま食べた)、嵐がやってきて、病院に連れていかれて、帰宅したら唯司が押しかけてきて、犯されて、嵐と、嵐の兄がまたやってきて……。
(病院なんか行きたくなかった。……今日、目がさめなくても、よかった)
人間はいろんな意味でしぶとい。
もしくは自分が、恵まれているのだろう。
まあ、日本に生まれて、経済的に不自由なしで私立高校へ行き一人暮らしをしている時点で地球規模でみたらかなり恵まれているのだ。平和自身、よくわかっている。
前になんとなく見たテレビの深夜番組で、東アフリカのゴミ山で生活する人たちのドキュメンタリーをみた。学校へは当然行けず、親もおらず、毎日有害な汚染大気にさらされなからゴミ山の中から売れそうなものを発掘して日銭を稼ぐ生活。
日本のレポーターが質問した。
『将来の夢はある?』
彼はゴミ山をバックに数秒間視線を泳がせて、レポーターの目を見ずに答えた。
『ここを抜け出すことかな。方法は、わからないけれど』
彼からしたら平和なんて、清潔に管理されたプールで安全に溺れているように思えるだろう。
そんなことを考えながら平和は床に肘をついた。痛む箇所をなるべく刺激しないよう意識しながら気怠い身体を起こす。
身動ぎをすると、自分が放つ不潔なにおいに気がついた。
そうだ。綾野にふられた3日前から、風呂に入っていない。汚い。……昨日、嵐は不快だっただろう。車に乗せてくれた嵐の兄にも申し訳なく思う。
──いや、本当は。
そんなに申し訳なくなんて思わない。
臭いと思われていたら恥ずかしい。みじめだ。そう感じるだけ。
そもそも平和としては嵐になんか世話になりたくなかったのだ。
床に転がったスマホが目に入り、胃のあたりがきゅーっと絞られるような感覚になった。
無視はできず、手をのばす。
タッチしても画面はつかない。
前回充電したのがいつだったか覚えていなかった。
平和は少し考えたのち、仕方なくスマホを充電器につなげた。何分か経ち、やっと起動する。
欠けた林檎のマーク。
息を詰めながら確認したメッセージアプリのアイコンには、バッジがついていない。
よかった。唯司からの連絡はきていない。
とはいえ安堵してばかりもいられない。
昨日、あの後、何がどうなったのだろう。
平和は嵐の兄の名前すら知らないのに……。
もうひとつ、ショートメッセージのやりとりができるアプリアイコンにはバッジが「①」とついていた。こちらに連絡してくるのは父親か、学校のメールだ。ごくごくまれに、母親のときもある。
タップすると、父からだった。
どう表現していいのかわからない父の笑顔が脳裏をよぎる。
中学生になった時から、3か月に一度ほどのペースで食事をしていた。
まったく楽しい時間ではないのに平和はきちんと父に会いにいく。
どうしてかわかっている。
自分のなかには、まだ大人への期待があるのだ。
叶えられることのない、期待が。
ものすごく寂しい気持ちになるからあまり考えないようにしていた。
父への返信はあとでしようと決め、ふらふらと立ち上がる。
キッチンスペースに向かい、冷蔵庫をあけた──刹那。「え」と声がもれた。
いくつものタッパーがぎゅうぎゅうに詰まっている。
すべてに青い鳥のイラストが描かれた付箋が貼り付けてあり、『鮭きのこ豆乳スープ:電子レンジ500wで3分』『しょうが粥:電子レンジ500wで2分』等と細かな記載があった。
……そういえば。
昨日、嵐が帰り際に「冷蔵庫や冷凍庫に母親がつくったものや買ってきたものを入れていく」と話していた気がする。
とても返事ができる状態ではなく無視してしまったけれど。
付箋の文字は嵐の母親のものなのだろう。
丸っこくてかわいいのにちゃんとした大人だと伝わるバランスの美しい文字だ。
平和は学校のプリントに書かれた自分の母親の字がとても歪だったことを思い出す。
(人のお母さんの料理……、食べたことあったっけ)
せっかく作ってくれたものだ。けれど食欲はわかず、ペットボトルのミネラル飲料水だけを手にして冷蔵庫を閉めた。
ひとくち飲んだ瞬間に自分はものすごく喉が渇いていたことに気付き、一気に半分ほどを減らす。
はぁ、と深い息をつきながらリビングの惨状をあらためて見つめた。
ぐしゃぐしゃのタオルケットに、散らばったティッシュ。床に落ちたリモコン。唯司が置いていったコンドーム。
雑然とした光景のなかで唯一きちんと並び揃えて置かれた、2つの缶箱。
昨日、唯司がぶん投げたものだ。
平和は空になったペットボトルをシンクに置いた。
手の甲で雑に口元をぬぐいながら缶に近付き、しゃがみこむ。
これまで、何度も中身をとりだして、思い出にひたった。
大切なものだけが入っている箱。
そっとふたをあける。
投げられて中身は飛び散ったと思っていたけれど、間違いなくすべてが収まっていた。
アイスクリームの空き袋も、消しゴムも、プリントも、その他のものたちも。
(嵐くん……)
綾野の思い出は、平和が自分で収納するよりきれいにきちんとしまわれていた。
胸が、ぎゅっと収斂する。
ふたを閉じた平和は立ち上がり、床に落ちていたショートパンツを履いてからカーテンと窓を開けた。
むわっとした空気が顔面にかかる。植物の、青くさいにおいを胸の深くまで吸いこんだ。
網戸越しの空は灰色だった。
でも、雨はふっていない。
平和はそのまま家中の窓をあけた。
室内に風がとおる。
2つの缶箱は棚の上へ。
コンドームはゴミ箱へ。
タオルケットや落ちていた下着は洗濯機に投入。操作して洗濯を開始する。
独特の稼働音がひびくなか冷蔵庫の扉を開けた。
とりだすタッパーは『鮭きのこ豆乳スープ』だ。
電子レンジに入れて、600wで3分。
すぐにいい匂いがしてくる。
ここまでの動作でやや息切れをしていたので椅子に座った。
ぼーっと窓の外を見ているうちにあたため終了の電子メロディが。
熱かったけれど我慢して素手で取りだした。
タッパーのふたを開けた瞬間、ほんわり煙がたちのぼり鮭のいい香りにお腹がきゅるっと鳴る。
きのこと、鮭のかけらと、すきとおった玉ねぎをスプーンですくって口にいれた。
おいしい。
豆乳を買ったことがなく、こんな味のものがつくれると知らなかった。
ふたくちめは少し大きめの鮭の塊だけを食べる。
口のなかで、鮭からじんわりスープがしみだして熱い。ほくほくだ。
スプーンを置いた平和は立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルの麦茶をとりだした。キャップをあけて、よく冷えたそれをごくごくと飲む。おいしい。
またスープを食べる。
鮭はほくほく。
きのこは独特のぎゅむっとした食感。
たまねぎはとろとろだ。
夢中で食事をしていると、半分ほどで少し吐き気がこみあげてきた。
ここ数日まともに食べていないのに一気に食べすぎたと反省しつつ、タッパーのふたをとじる。
まだこのスープを食べられることが嬉しかった。
大切に冷蔵庫にしまう。
麦茶も。
吐き気がおさまったタイミングで平和は風呂場に向かった。
泡状の薬剤を浴槽に発射し、掃除用のスポンジで磨いていく。
ぜえはあと息を荒げながら清掃を終え、湯張りボタンを押した。
10分ほどで完了のメロディーが家中にひびく。
全裸になって、湯につかった。
ものすごく熱い。
でも、すぐに慣れた。
はーっと深呼吸。
きもちがいい。
顎先まで沈めて、水音しかない狭い空間で目をゆっくりと瞬いた。
……やっぱりどうにも尻が痛い。
腰の痛みとは違って外側の、傷の痛みだ。湯がしみる。
他にも身体のいたるところに小さな傷や打撲痕があり、それはすべて、昨日の唯司の凶行だった。
「もっと、ちゃんと俺のものだって顔で媚びてくれないと」と、何度か言われたが平和が眼差しににじむ嫌悪感をどうにもできなかったので殴られて、犯された。
唯司は綾野についてどうしてか詳しく知っているから怖い。それがいちばん、怖い。
家を物色されて、缶箱は笑いながら投げられた。
……思い出したくない。
息を吸い、吐かずにとめて湯のなかにもぐる。
ぶくぶくぶくっという音が頭の中にひびく。
(次も殴られたりしながら、唯くんの言いなりになるしかないのかな)
無理だ。
昨日はっきりした。
もうこれ以上、唯司の言うとおりにすることは、多分、できない。
できないといっても自分が唯司に対してどういう反発ができるのか見当もつかないけれど、とにかくできないという気持ちが強い。
ただ、唯司は綾野と平和の関係まで知っている。
嵐が酷い目にあうのもやっぱり困る。
頭のてっぺんまで湯に浸かった状態で平和はぶくぶくぶくっと泡をはく。
(唯くんを────……殺す?)
ぷはぁっと湯から顔をだした。
ぜえ、はあ、と呼吸を整える。
ごく自然に浮上した考えを嘲笑した。
殺すなんてできるわけない。
殺したくもない。
唯司みたいな人間のせいで犯罪者になるなんて、絶対に嫌だ。
(でも、今度唯くんが来たら、また……)
いっそ、唯司が自分を殺してくれたらいい。
たちまち刑務所行きだ。
綾野のことも、嵐のことも害せなくなる。
それがいちばんいい気がした。
目元がぼんやりかすんで、頭がくらくらしてくる。
それでも平和は湯に浸かったまま、次に唯司が来た時のことを考えた。
どういう態度をとれば殺されるほどの激情を引き出せるだろうか。
証拠を残しておく必要もある。
唯司が隠蔽をはかっても、平和の死=唯司の犯行だと断定できるような証拠を。
物騒なことをつらつらと考えているうちに、平和は三流推理小説みたいな思考を見失った。
静かな目覚めだった。
夢をみていなかったからだろうか。
きちんとベッドに眠っている状況を、不思議に思う。
眠る前の記憶があいまいだ。
たしか、風呂に入っていたはずなのだけれど…──あれも夢だったのだろうか。
全身がだるくて、天井をぼんやり見つめていると「あ」という声がした。
一気に覚醒する。
強い拍動を感じながら声のほうへ顔を向けると──
「ごめん、びっくりさせた……?」
嵐だった。
隣には、綾野の姿もある。
綾野だ。
夢じゃなくて本物の。
平和は制服姿のふたりを映した目を何度か瞬いて、渇いた喉から声をしぼりだす。
「な、んで……?」
どうしてふたりがここにいるのか。
「鍵、開いてたから勝手に入っちゃった。でもよかったよ。守山くん、お風呂で寝てるんだもん。……びっくりした」
「へーわ、何か飲める? 顔赤いから、熱もはかって」
綾野の手がのびてきて、額にふれた。
ぬるいひとはだ。
それは確かに綾野のぬくもりで平和はひゅっと息を呑む。
「っ……ゆめ?」
思わず訊いてしまうと、綾野はどこかが痛むように目をすがめた。
「へーわ、ごめんね」
「え……?」
「嵐から、聞いた。なんでへーわが、…………あんな動画撮られたのか」
理解が追いつかない。
平和は多分どんな感情も正しく伝えられない中途半端な表情で、嵐をみた。
「ごめん、守山くん。オレのこと護ってくれてたんだよな。ごめん……っ。ごめん、ほんとうに」
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