俺が、恋人だから

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『踏切り ──side 嵐──』

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嵐の兄──凪(なぎ)──の車で無理やりに平和を連れてきた大学病院の救急診療。受付を済ませ、看護師による軽い聞き取り診察のようなものがあり、それからさらに20分ほど待ったすえにやっと診察室へ呼ばれた。
若い研修医(と、凪が言っていた)がくだした診断結果は「栄養が足りてないですね」とのこと。
入院するほどではないが点滴処置があるらしく、平和はべつの個室へと案内された。
嵐は「兄弟なんです。複雑ですけど」と押しきって付きそい、今、掛け布団のない真っ白なベッドにあおむけで横たわり腕から点滴をうける平和を見つめている。

(びーふりーどゆえき……)

無言の空間で、平和に投与されるものの名をなんとなく確認した。手持ち無沙汰だ。凪は「仕事の電話があるから車で待ってる」と出ていってしまった。
つまり現在、この部屋には嵐と平和のふたりきり。
平和は診察の間はギリギリのところで意識を保っていたようだったが(おそらく大事にしたくないという意思で)、点滴が決まり、ベッドに横たわったのとほぼ同時に気絶してしまった。うろたえる嵐を二十代後半くらいの男性看護師が「眠っただけなので、大丈夫ですよ」と安心させてくれた。少しだけ椿に雰囲気が似ていなくもない彼はてきぱきと点滴の処置をして部屋から出ていった。

(守山くん……)

嵐はあらためて点滴をうける平和の顔をじっと眺める。
クラスメイトの、
親友の元恋人の、
弱りきった蒼白い寝顔。
椿をとおして語られる彼のことはいくらか知っていたが、自分の目をとおして手に入れた平和の情報はほとんどなかった。
片手で数えられるほどの表情しか見たことがない。その程度の関係性だ。
点滴の粒が、と、と、と、と落ちて管をつたい平和の体内に入っていく。

(こんなふうになるまで……)

食事を、していなかったのだろうか。
嵐は昔から、どんなにショックなことがあってもお腹が空くタイプだ。食べようと思えば食べられる環境で、食べないでいられることが信じられなかった。そもそも伊藤家では子供が食事をとらないことは一大事なので、嵐がひとたび「いらない」なんていえば母も父も、そして今は家を出て別居している兄も大騒ぎするだろう。
けれど、平和は一人暮らしで。
そういう家族の存在はない。
だからって、食べないでいられるものなのだろうか。

「……ん……」

ふいに平和が声をもらした。
眉間にしわがよっている。でも、目は閉じたままだ。
怖い夢でもみているのだろうか。

「……っ……」

苦しそうな吐息までこぼれる。
まるで溺れているみたいな──

「……おかあさん……うう……」
「──!」

掠れた声で平和の寝言が、嵐の胸をざっくりと貫いた。
点滴の管につながれ、母親を呼んだ。
平和は、誰かの子供なのだ。
唐突に、あたりまえの事実が嵐の呼吸を浅くさせる。
「許せない」と、「最低」だと、「欲求不満だったら最悪だ」と糾弾した守山平和という少年は、自分と同じ、椿と同じ、子供だ。
嵐は自分が親友である椿に心を寄せるあまり、平和を、何かべつの生物のように思っていたことに気が付き愕然とする。
いや、いきものだと認識していただろうか。攻撃してもよい、感情なんて想像しなくてよい無機物のような感覚ではなかっただろうか。
思い返してみると、平和は、一度たりとも浮気を認めていない。けれど嵐も椿も彼の無言を肯定だと受け取って責め、背を向けた。
でも、平和がはっきり言葉にしたことはふたつだけなのだ。

『俺は、……ちゃんと綾野のこと、好きだ』
『嵐くんがいれば、綾野は大丈夫だと思う』

どちらにも共通していること。
椿のことを想い発した言葉だ。
けれど。
だったらどうして。
あの動画はいったいなんなのだろう。
あんな、椿以外の男と──……。
くらくらと眩暈がするような感覚。実際には眩暈なんてしていないのだけれど、嵐には世界が不安定にぐらついているように思えた。弱り切った平和を前に、あまりにもわからないことが多すぎる。わからないのに、平和が悪だと決めつけて容赦ない軽蔑の気持ちをわざわざぶつけた自分への怒りまで湧いている。
揺らぐ嵐の世界に映る平和の目尻には、涙がにじんでいて。
嵐はどうすることもできず、点滴が終わるまでただそれを見つめていた。



点滴が終わり、平和も目を覚ましたので帰宅することになった。名古屋市は18歳の年度末まで子供医療費が無料なので、支払いはなかった。
凪の車に乗る時、平和は来る時と同じく小さな声で「すみません」とつぶやいた。凪は「謝らないで大丈夫。寝てていいから」と優しい声で返事をした。
大学病院から平和の家までは30分ほど。その間、彼はもう眠ることなく、けれど眠そうな目で車窓を流れる景色をぼんやり眺めていた。会話はなかった。嵐は自己嫌悪にさいなまれていたし、平和はそもそも話すわけがない。凪も空気が読める人間なので余計なことは言わなかった。
やがて雨が降り出した頃、平和のアパートの前に到着した。凪が「これ使いな」と車に積んでいたらしい傘を嵐へと渡す。当然、平和を部屋まで送るつもりなので受けとった。栄養不足の身体が濡れないよう傘をさしかけ、階段では支え、布団のなかに入るまで見届けたかった。けれど平和の意思は違ったようで。

「もう、大丈夫だから。すぐだから、傘も大丈夫。ありがとうございました。ほんとうにご迷惑をおかけしました」

後半は凪へ向けて一気にいうと、平和はドアを開けようとした。もちろん嵐は許可できない。

「待って待って。階段、足踏み外したら危ないだろ」
「大丈夫。……病院まで行ったから、もう元気」
「無理。部屋までは送る。オレが先に降りて傘さすから、待ってて」
「……ごめん」

力ない声での謝罪で押し問答は終わる。平和の表情に納得はなく、ただ嵐と会話をする気力が尽きたという感じがあった。それでもいい。多少強引でも。雨のなか足元がふらついて階段から転げ落ちる平和を車の中から眺めているだけなんて絶対にごめんだ。
嵐はさっさと車を降り、反対側へとまわりこんで傘をさしかけた。ドアを開ける。平和は不安そうに見上げてきた。また謝ると思ったのでその前に言葉を並べる。

「どうぞ。濡れて風邪ひいたら点滴の意味なくなる。ちゃんと傘に入って」
「……うん。ごめん」

けっきょく謝った平和を傘で雨から護りつつ、アパートの階段下までたどりつく。嵐は水しぶきに気を付けながら傘を閉じ、平和の腕を掴んだ。湿気で独特のにおいを放つコンクリートの階段をふたりでゆっくりとのぼっていく。掴んだ平和の腕の細さにあらためて困惑しながら力加減に神経を使っているうちに守山家の前に到着した。
平和はジーンズのポケットからカードタイプの鍵をだす。
ロックを解除する前に、そろりと嵐を振りむいた。

「迷惑をかけて、ごめん。あの、今、現金がなくて」
「は……?」
「お兄さんの車のガソリン代とか、運転代、とか。今度、学校で払うから」
「いや、いらないし」
「うううん。払う」

お前なんかに借りを作りたくない。
そう聞こえた。
お金の話からは一旦離れたほうがよさそうだ。

「……というか守山くんの家、食べるものあるの? 飲みものとかも」
「うん」

即答には感情がこもっていない。
嘘だなと確信した。
嵐が何か言い返す前に平和の視界から追い出され、カードキー解除の電子音がひびく。

「じゃあ。……お金は払う。本当に、迷惑かけてごめん」

ドアを開け、真っ暗な室内に入っていく背中。一切振り返ることなくドアがふたりを隔てる。
ここまで強引についてきたけれど、平和がほんとうにしんどそうだったので布団に入るまで見届けるという意思はくじけていた。
体調が悪いという意味でのしんどいもあるが、嵐の存在が傍にあることに限界を感じているのが伝わってきた。
嵐は、他人にそこまであからさまな拒絶をされたことがない。
ずきずきと胸が痛む。
うつむきながら階段をおり、傘を差し、平和の家の窓が灯りの色であることを確認し、兄が待つ車の助手席に乗り込む。

「大丈夫だったの、あの子」
シートベルトを装着しながら、フロントガラス越しにもう一度平和の家の窓を見つめる。

「大丈夫……じゃ、ないと思う」

強い拒絶は、話し合いや謝罪の隙を与えてくれなかった。
──それでも。

「兄ちゃん、スーパー寄ってほしい。あと母さんに連絡して、おかゆとかなんかそういうの作ってもらえるように頼んでよ。で、それ持ってもう一回ここ戻ってきて」
「いいけど。……あの子って友達?」
「なんで訊くの」
「あんまり嵐のこと好きじゃなさそうだったから」

凪は少し楽しげなようすで車を発進させた。

「嵐のこと嫌いな人なんて、レアでおもろい。また会いたいわー」
「性格やばいよ」
「あ。昨日それ真夏(まなつ)にも言われた。人間が生まれながらに持つはずの善性が、全部嵐にいっちゃってる兄弟だって」

真夏とは兄の恋人の名だった。もう長い付き合いなので嵐も仲が良い。
気さくで優しく、のんびりと話すハスキーボイスがなんとも癒しを与えてくれる綺麗な人だ。仕事は美容師。社会人3年目の凪より1年早く社会に出ている。
ふたりのは中学2年生から社会人になった今日まで別れたりくっついたりをしながら続いている。当然、結婚するだろう。母の口癖だって「早く真夏ちゃんにプロポーズしなさいよ。あんなにもアンタに合ってる子いないでしょ」だ。嵐もそう思う。
嵐の兄は、性格に癖がある。
昔から嵐と椿を積極的に可愛がり、甘やかしつつも、ふたりにふりかかる日常の小さな不幸をおもしろがる傾向があった。嵐は兄のそういう悪趣味なところを直してほしいのだが、椿にいわせると『嫌なことを笑い飛ばしてくれるような人が兄弟で羨ましい』のだそうだ。笑い飛ばすというか、ニヤニヤしながら手のひらの上に置いてねちねちといじくりまわす感じだと嵐は思う。
今だって、そう。
嵐のことを迷惑がっていた平和の態度を、あきらかにおもしろがっている。それどころじゃないこともわかっているのに、だ。
嵐がキッとにらみつければ凪は目元だけで微かに笑い、ウインカーをだしてハンドルを左にきる。
スーパーマーケットの駐車場だ。
入口に近いところが空いている。

「お。ラッキー。嵐いるとこういうプチラッキー多いね」

凪がご機嫌につぶやく。
答えを求める会話ではないので、嵐は無言のまま頭のなかで平和に買っていくものを思い浮かべた。
栄養補給ゼリー。フルーツが入ったゼリーもいいかもしれない。フルーツそのものでも。電子レンジでチンすればできあがるインスタント食品や、アイスクリームもいくらか買っていこう。他には──…兄のスマホがピロンッ♪と鳴った。

「あ。母さんから。おかゆとかその他いろいろ、もうタッパーに詰めたって」
「え……?」

母への料理依頼を凪に伝えたのはついさっきだ。その後はずっと運転していたはずで、母に連絡するところは見ていない。
嵐の疑問に、凪は長い指でフリック入力をしながらさらっと答える。

「診察待ってる間に連絡しといたんだよ。嵐はどうせ言い出すだろうなって、予想できたし。嫌われてる相手でも体調不良だったらありがた迷惑とか気にせずごり押しでおせっかいするだろうなって。診察終わってからいろいろ作ってって頼むんじゃ遅くなるでしょ」

……ありがたい。
ありがたいけれど、もやもやする。
嵐は返事をせず、素早くシートベルトを外して車から降りるのだった。


スーパーであれこれと買い込み(財布は兄)、自宅に寄って母の作り置き料理を受けとって、ふたたび平和のアパートに戻ってきた。
なかなかの大荷物だったが凪は「嫌いなやつの兄貴まで玄関に押しかけてきたら体調悪化でしょ」と窓を開け、のんきに電子煙草を吸い始めた。

「じゃあ兄ちゃんドア閉めてよ!」

右手に母の手料理が入った巨大な手提げ袋、左手には2リットルのペットボトルやらフルーツが入ったスーパーのビニール袋3個を持って平和の部屋へと向かう。階段をのぼる前に確認した西側角部屋の窓には灯りがともっていた。
よかった。平和はまだ起きているようだ。
まあ、寝ていたとしても食料は必須だろうから申し訳ないけれどインターホンで起こすつもりだった。
ドアの前に到着する。右手の手提げ袋だけ一旦地面に置く。インターホンに人差し指を当て──…ようとしたところで、内側からドアに何かがぶつかった。
ガンッ!
と、なかなかの音がして驚いた嵐は動きを止める。

「……だッ、……いやだ!!」

平和の声だ。
近代的なカードキー形式の、それなりにきちんと造られていそうなドア越しでも聞こえてくるほどの声量で、「嫌だ」と言った。

「守山くん……?」

状況がわからないので小さな声で、呼んだ。返事はない。でも、ふたたびドアに何かがぶつかる。
嵐はドアノブを掴み、まわす。まわった。ドアが開く。暗い玄関と廊下を駆け抜け灯りがついている部屋につくと、そこには。

「あ……!?」

嵐を見て目を瞠る平和。床にあおむけで横たわり、髪も、服もぐちゃぐちゃだ。
そんな平和の腹部をまたいで座る、男。ゆるいウェーブの茶髪。くどさのない整った顔はどこかぼんやりとした雰囲気の笑みをたたえている。男の手は平和のTシャツをぐちゃっと握っていた。襟元がおおきくよれて、破れている。病院から帰った時は破れたりしていなかった黒いTシャツ。
嵐は平和の「いやだ」という叫び声の意味を理解して、部屋のなかに踏み込む。男の肩に掴みかかった。

「お前、守山くんに何やってるんだ!」

容赦ない力で掴んだ男の肩を横に押しやり平和の上からどかす。だてに毎日朝から晩までバスケットボールに励んでいない。抵抗のない男ひとりくらいなら片手で動かすことができた。──そう、男は抵抗しなかった。まったく。
肩から床へと思いきり倒れ込んだ男は「ふはっ」と笑い声をこぼす。「ははは」と続ける。気味の悪い男から目を逸らさず、かなり警戒しながら嵐は平和の傍にしゃがみこんだ。
男がゆらゆらと頭を揺らしながら上半身を起こす。かと思えば嵐の顔を3秒ほど見つめ、にっこり笑った。あははっとまた笑い声。気持ち悪い。何もおかしい状況じゃないだろう。

「お前、なに?」

警戒する嵐に向かって男は。

「きみは、知ってる子だ」
「は……?」

嵐のほうはこんな男のことは知らない。
嫌悪を隠さず反論しようとしたら片腕をぐっと引っ張られる。
いつの間にか起き上がっていた平和だった。必死の形相だ。

「っ……、帰って」

もう一度、「は?」と声がこぼれる。
男が耳障りな声で笑う。
平和はかたくなに男のほうを見ないままふたたび口を開く。

「帰って、お願い」
「……え、もしかしてオレに帰れって言ってる?」

男のほうではなく、助けにきてあげたオレに?
否定を求めていたのに、平和は真っ青な顔を縦に動かす。嵐は信じられない気持ちで自分の腕をすがるみたいに掴んでいる平和の手を掴み返した。

「なんで? この男に嫌なことされそうになってたんだよな?」

今度は平和の首が横に揺れた。男がまた笑う。いつの間にか男の手には煙草があった。奇妙な笑みに歪んだ口元からは煙があふれだす。くさい。でも、嵐が知るたばこのにおいとは違う気がした。独特の甘さがある。どちらにしろ不快だ。男の存在自体が。
この男の視線が届かないところへ平和を連れ出さなければと強く感じた。

「守山くん、Tシャツ破れてる。嫌だって声も絶対に聞いた。無理やり酷いことされそうになってたんだろ」

言葉の途中で嵐はハッとなる。

「もしかして、あの動画もこいつに無理やり……?」
「っ……ち、違うから!」
「違うように見えない」

強い語気で否定を否定した。
目を逸らされる。
代わりみたいに嵐の腕を掴む平和の手にはぎゅうっと力が入る。

「…………った、だけ」

絞り出したような声はよく聞き取れない。でも、平和の言葉をちゃんと知りたい。

「なに?」
「嫌って、言葉でいっただけだって。……盛り上がるから」
「…………は?」

「くくっ」と喉の奥で笑った男が煙草を吸い、天井に向けてふーっと煙を吐きだした。無防備にさらされた喉元に目がいく。そこには赤黒い鬱血のあと。キスマークだ。小学生のとき、椿と一緒に自分の二の腕の内側に吸いついて遊んだことがあるからわかる。
平和がつけたのだろうか。
キスマークを。
だとしたら、ふたりはそういう行為をしていたということだ。
同意のうえで?
困惑して固まっていると、煙を吐ききった男の舐めるような眼差しが嵐をとらえた。

「きみも、混ざる?」

カッと全身が熱くなる。
怒りで。
嫌悪感で。
誰に?
──ふたりともに!

「……あっそ。邪魔したんならごめん」

男ではなく、平和に言った。自分でも驚くほど冷たい声がでた。
嵐の腕を掴んでいた平和の手がビクッと跳ね、離れていく。せいせいする。
嵐は静かに立ち上がり、ふたりに軽蔑の視線を向けて玄関へと向かう。
甘ったるいにおいが追いかけてきて、まとわりつく。
気持ち悪い。
この家は気持ちが悪い。
この家の主も。
あの男も。

(やっぱり守山くんは、そういう人間なんだ。椿にはふさわしくない)

弱った姿にまんまとほだされ、彼の認識を間違った方向にあらためてしまうところだった。嵐は玄関に投げ置いた食料品を大股でまたぎ、ドアを開ける。湿った空気がもわっと顔面にあたる。

「…──あっ、」

背後からは湿った声が。
気持ち悪すぎる。
玄関には何か他にも散らばっていたので怒りのままに踏んずけてからドアを強く閉めた。
3段飛ばしで階段を駆け下り、兄の車の後部座席に乗り込む。

「何かあった?」

真剣な顔で聞かれてうんざりする。兄弟って面倒だ。いや、察しのよい凪が面倒なのか。はたまたわかりやすい自分自身か。
嵐は平和のアパートが視界に入らないよう反対側の車窓を見ながら言う。

「いいから出して」

兄はやっぱり心得ていて、それ以上のやりとりはなく車はゆるやかに発進した。
暗い住宅街を危なげなく進む。
すぐに踏切が見えてくる。
警報音が鳴り、遮断機の手前で停車した。
カンカンカンカンカンカン……。
音が頭の中にまで響いてくるようで。
息を詰めた嵐は。
運転席と助手席の間に身を乗り出して、叫ぶ。

「やっぱり戻って!」



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