俺が、恋人だから

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『たからもの』

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唯司(ゆいじ)が小学1年生の時、国語の授業で作文の宿題が出た。
テーマは『ぼく、わたしのたからもの』。
下校の地下鉄のなかで考え続けても、唯司には自分の宝物がわからなかった。最寄り駅で待っていた母の車に乗り、考え続けたけれどなかなか答えはでない。家に帰り着き、私立校の堅苦しい制服から母が選んだ窮屈な私服へと着替え、塾の前のおやつに家政婦手作りのシフォンケーキを食べながらまだまだ考えたけれど、宝物なんて思い浮かばない。そして幼い唯司は知った。
自分は、宝物を持っていないのだと。
それはどうしようもなく寂しい答えだと。
なんだか泣きそうになって、向かいの席で持ち帰ったプリント類を確認している母親にも、一応聞いてみることにした。

「ねえ、おかあさん。ぼくのたからものって、何かなぁ」
「ええ? たくさんあるでしょう」

母はきょとんとした顔をみせた。唯司は宝物ばかり持っているでしょうとご機嫌に羅列を始める。
母の独断で決定する毎年の誕生日プレゼントだとか、
祖父母が特別に贈ってくれたものだとか、
父が出張先の海外で買った土産だとか、
兄から譲られた貴重な玩具だとか。
母が言葉で並べたすべてが高級品で、稀少で、価値があり、けれど小学1年生の唯司にとっては最初から興味すらないか、物珍しさにいじくりまわしてすぐに飽きてしまうものばかりだった。
けれど母も、他の大人たちも、「あなたが成長するほどに価値を理解できるものを選んでいるの」という。
唯司はこの時、シフォンケーキの味がわからなくなるほどに強い焦燥感をいだいた。
自分だけの“たからもの”を手に入れなければ、と。
それは幼い唯司のなかに芽生えた確固たる本能的な渇望だった。
心の底から欲しいと切に願い、手に入れた瞬間から永遠に唯司だけが所有できる何かが欲しかった。
とはいえまずは、400文字の原稿用紙をどう埋めるかが目下の課題だ。
唯司は母だけが好きな渋みのある紅茶をひとくち飲んで、不安を口にする。

「どれも、“たからもの”じゃないなぁ。作文にウソを書くと、読んだ人にはぜったいにバレるって、先生が言ってたよ」

幼く未熟な反抗心を持て余す唯司を正確に見抜いたのか、母はうっすらと笑みを浮かべ狡猾な提案をした。

「『物』で思い浮かばないのなら、人はどう? 唯司にとって大切な人も、宝物なんだよ。お母さん、お父さん、お兄ちゃん、おじいちゃまとおばあちゃま。それから今、お母さんのお腹の中にいる弟だって、唯司の宝物でしょう?」

絶対に違う。
両親も、祖父母も、兄も、もうすぐ産まれる弟も、唯司が欲しいと望んだものではなかったし、唯司だけのものではない。
奥歯をぐっと噛みしめたけれど、母は強制と支配を滲ませた笑顔でさらに言葉を重ねる。

「唯司の宝物は、『家族』がいいってお母さんは思うな。きっと先生もすっごく褒めてくれる作文ができあがるよ。ね。『家族』にしよう?」

嫌だ。
でもそう言えば母の機嫌は確実に悪くなる。
兄のようにおやつなしで学校から塾に直行なんて待遇はごめんだった。
唯司はほっぺに力をこめて目を細め、母に向けてにっこりと笑ってみせる。「母に似ている」とよく大人たちが盛り上がる笑顔だ。

「おかあさん、相談にのってくれてありがとう。ぼくのたからものは、『家族』ってことにするね。塾が終わったら、書くよ」
「ふふ。塾が終わったらまず、夕ごはんでしょう」
「あっ、忘れてたあ」

忘れるわけがない。でも、こう言えば次の会話がどうなるのか小学1年生の唯司にはすでにわかっていた。

「唯司はほんとうにお勉強が好きだね。偉い。でも、ごはんも大事。唯司が忘れないように、唯司の大好きなものにしよっか。何がいい?」
「じゃあ、ハンバーグ!」
「よし。今日のごはんはハンバーグだ。塾、がんばろうね」
「うん、がんばる!」

小学3年生くらいまでは、母がみせる何種類かの笑顔に対して嬉しい気持ちもあったと思う。成長するほどに自分が生まれた一族が裕福さと見栄とプライドで塗り固められた歪な絆で繋がっていることに気付くがまだ先の話だ。
作文には母と父が喜びそうな、母と父がいつも口にするようなことばかりを書いたらコンクールで銀賞をとって全校集会で表彰された。

たからものは、かぞく。
かぞくがわらってくれていると、うれしい。
ぼくも、えがおになる。
うまれてくるあたらしい、いのち。たいせつなおとうと。
「きみは、ぼくのたからものだよ」と、いちばんにこえをかけてあげたい。
そうして、おとうとにとってもぼくが、たからものになれたらいい。
ぼくは、かぞくというたからものがあってとってもしあわせだから、せかいじゅうのひとが、たからものをみつけられたらいい。

張りぼての文章で手に入れた賞状と小さなトロフィーは母によって大層な額縁におさめられ、今でも実家の棚に飾られている。
それを見るたびにひどく焦る。
怒りすら湧いてくる。
一刻も早くたからものを手に入れなければ。
見悶えるほどの渇望の日々は終わらない。

◆ ◆ ◆

制服がぶかぶかだな。
それが守山平和(もりやまひらかず)の第一印象だった。
全体的に肉の足りない薄っぺらい躰、けれど身長はなかなか高く、唯司より少しだけ目線が下なので175センチほどはあるだろうか。平凡な黒髪に、薄茶色の瞳はアンバランスだった。生気の薄さを思わせる青白い肌はところどころかさついているのが見ただけでわかり、指先には切りすぎた不揃いな長さの爪がくっついている。
初顔合わせの瞬間はバックヤードの狭い空間でふたりきりだった。
唯司は自分がもっとも労力をかけずに動かせる顔の筋肉だけを使った愛想笑いを平和に向けた。

「はじめましてだよね。俺、芦屋(あしや)唯司です。よろしくね」
「あ、守山平和です。……芦屋さん、よろしくお願いします」

平和は1秒ほど唯司の顔をみただけで、すぐに目線を斜め下に逃がした。普段の唯司であれば初対面の、年下の、アルバイトは初めてであろう高校一年生が多少人見知りな反応をしたところで頓着しなかっただろう。
けれどその日、唯司は虫の居所が悪かった。
ひどく苛ついていた。
交際中の相手から「ちょっと、芦屋くんの束縛が強すぎて、私たちは合わないかもしれない。考えさせてほしいな」とメッセージがきていたのだ。「会って話そう」と送った返信を14時間ほど無視されていた。
恋人はインカレで知り合った名古屋の私立大に通う同学年の女子。見た目も頭の中もふわふわしており、最初は唯司の外見をあからさまに褒め、『芦屋家の次男』だと知ったら目の色を変えて必死で接近してきたわかりやすくて可愛い人間だ。
唯司の恋人を選ぶ基準は『相手をすべて自分が所有できるか』なので、彼女は合格だと判断して3か月の間惜しみなく愛を注いできた。べつの環境で生まれ育った他人である彼女をありとあらゆる面で所有すればするほど愛情が深まっていった。
それなのに、束縛が、強すぎるだなんて。
メッセージを受けとるまでは可愛いと思えていた彼女の愚かさは唯司の中ですべて反転してしまった。
唯司が親から贈られる車を絶対に自分も一緒に選びたいとはしゃいだり、
唯司の兄のコネクションでのクラブの顔パスにしたり顔をみせたり、
一度タクシーを呼んでアプリで電子決済をしてあげてから当然のように私用でも唯司の支払いでタクシーばかり使うようになったり、
会う度にサプライズのプレゼントへの期待を隠さなかったり、
SNSにあげる写真がすべて本人はさりげないつもりだけれど下品極まりない似非セレブ自慢になったり、
下の名前で呼んでと言っても、かたくなに「芦屋くん」と呼びたがったり。
それらはすべて唯司の所有物である証だというアピールになるから愛しかったのに、束縛を厭う人間だと主張するならただの卑しい馬鹿女でしかない。
残念だ。
見た目も、空っぽの頭も心もそれなりに好みだったのに。
彼女が「芦屋くん」と呼ぶ媚びた声を二度と思い出したくなかった。

「できれば、下の名前で呼んでほしいな。苗字、嫌いなんだ」

そう言った唯司を、平和は瞳を微かに揺らしながら見た。
眼差しに滲むのは戸惑いと、不安。それからもうひとつ。

「あ、……俺も、自分の苗字、嫌いです。……唯司くん」

まともに呼吸ができてないみたいな声だと思った。
まるで今この瞬間、溺れているみたいな。
唯司は嗅覚を研ぎ澄ませて目の前の少年の心を繊細に敏感に嗅いだ。
自分を水中から救いあげてほしいと渇望しつつも期待なんて無駄だと諦めている平和のジレンマを想像して、指先がぴりりと痺れた。
本人は無意識な、危うい依存の気配。
初対面の人間にそういう類の隙をみせる人はほとんどが人生の基盤から生じた寂しさを抱えている。心にぽっかりと空いたスペースがあるのだ。そんな人を見つけると唯司は、彼らの内面に、自分がどこまで深く入りこめるか試したくなってしまう。

(この子の心の中に、上手に手を突っ込んだら、ずぶずぶと深くまで受け入れてくれるかもしれない)

苛立ちを制御できずに吐いた何気ない言葉が淡い光を見つけた。
けれど唯司は自らにストップをかける。
これまでも興味をひかれる同性の存在がいなかったわけではない。
だが男はどれだけ気に入っても『たからもの』候補からは除外してきた。
日本では、男と男では相手の人生のすべてを一生所有することはできない。
指輪を贈り、鎹を孕ませ、家族になり、ありとあらゆる外堀を埋めて様々な保険をかけ墓場まで人生を共にすることが難しい。婚姻の代替案では決して満足できないのだ。
だから平和に対しても、自分を律するという選択をした。
バイトのシフトも週1以上には増やさなかったし、いちいち平和と同じ出勤日にすることもしなかった。かといって避けるのは逆に意識してしまうことになると思い、バッティングする確率は自然に任せた。
偶然勤務日が同じになったら適切な距離感で接すればよい。アルバイトの時だけ会う、近くも遠くもない先輩と後輩。暇な時間にはたまにたわいない雑談をかわす。
会うほどに平和が自分に懐くのを感じられる瞬間があり、「唯司くん」だった呼び方がたわいない言い間違いから「唯くん」に短縮され、会っていない時に平和のことを思い出す瞬間が増えていっても、決して『たからもの』候補としては見なかった。
距離をとっていれば相手を知るには限界があり、徹底的に何もかもを所有し、独占したい唯司にとって、平和が合格点に達することはないある意味では安定な日々が続いた。
初対面で頭の片隅に平和の居場所を作ってしまったけれど、他に『たからもの』候補は見つけられる。
唯司は生まれながらにほとんどのことを選べる立場だ。
当然平和に、連絡先も聞かなかった。
平和からも聞かれないことは正直不満だった。
基本的に不愛想な後輩は唯司のパーソナルスペースに絶対踏み込んでこない。そのくせおすすめの映画を教えると必ず観てきて、彼なりに誠実な感想を控えめな語彙力で話してくれた。

「自分のアンテナだとこれを観ようと思わなかったから、唯くんに勧めてもらえて、よかったです」

嬉しそうにはにかむ平和を見て、同性の後輩ってこんなにもかわいいんだなと何度も思った。思ってしまった。自分と性質が非常に似ている弟のことは一瞬もかわいいと感じたことがないので新鮮だった。
それに。
平和と接すれば接するほど、初対面の時に感じとった彼の空虚さは唯司の中で確信に変わっていった。
飢餓にも近いほどの空腹のとき、施錠のあまいドアの向こう側からご馳走の香りがしたら人は正気でいられない。
それでも唯司は、なんとか我慢していた。
“少し個人的な話もするアルバイト仲間”という平和との距離感はなかなか悪くないとも感じていたし、「今日車だから送っていくよ」という言葉だって何度も飲みこんだ。
平和との間に、独断で引いた境界線。
一度でも自分から踏み越えれば間違いなく歯止めが効かなくなるとわかっていた。
その反動か、同時進行で数人の女を巧妙に恋人にし、じわじわと束縛し、一生の所有物として相応しいか試す日々を淡々と続けた。
状況が大きく変わったのは冬の終わりごろ。
18歳以上だけが参加できるアルバイト先の飲み会で、酔った同僚から非常に不快な密告があった。

「五味(ごみ)くんが、守山くんに唯司くんの悪口ふきこんでたよ。五味くんて、唯司くんの通ってる大学2浪してるんでしょ。男同士の嫉妬も怖いよねー。守山くん、懐いてる唯司くんの悪口聞かされて困った反応してて気の毒だったなぁ」

その場では「そうなんだ。教えてくれてありがとう」と柔らかな笑顔で対応した。長卓の端でレモンサワーをちびちび飲んでいる五味を視界に入れつつ、何も気にしていない、何のダメージも受けていないようにふるまった。
けれど内心では腸が煮えくり返る思いだった。
ひとり暮らしの家に帰宅してすぐ、兄よりも気が合う5歳上の従兄弟に電話をして興信所を紹介してもらった。
依頼したのは五味と平和の身辺調査。
桜が咲く頃に分厚い茶封筒を2つ受けとった。
もちろん平和のほうから確認した。

《調査報告書》
『対象者指名:守山平和。
生年月日:8月15日(16歳)
愛知県名古屋市××区××××在住。一人暮らし。
母親である守山莉子はシングルマザーで中学卒業まで平和を養育したが、現在は大阪府××市にて建築業の男と同棲。職業はカラオケスナックの従業員。平和とは中学の卒業式の日を最後に没交渉。
実父は日野山恭二(ひのやまきょうじ)。
認知なし。
莉子は妊娠当時、複数いる日野山の愛人のうちのひとりという立場であった。
日野山は名古屋市の歓楽街にて飲食店と風俗店を12店舗経営。
平和が生まれてから今日まで生活費、学費など生計費用のすべてを不足なく毎月提供しており、莉子が家を出てからも平和への援助は継続。
3か月に1回、日野山が出資する焼き肉店にて父と子の会食。日野山周辺に反社会的勢力の存在が多数あるため、会話の詳細は調査断念。
2歳年下の腹違いの弟が同じく名古屋市に住んでおり、時折平和に接触あり。
他に親類との交流はなし。
学校生活でも特別仲の良い友人はなし』

他にも行きつけの近所の店や、調査期間に出かけた映画館などの情報、平和の何気ない様子をおさめた何枚かの写真が印刷同封されていた。
それらすべてを一言でまとめるとこうだ。

『守山平和は唯司が初対面で感じとったとおり、寂しい』

調査結果を読み進めるほどに唯司はもう勃起がおさまらず、数年ぶりに自慰にふけった。
隅から隅まで何度も熟読して、自分に許可する。笑みがこぼれる。

(平和くんを、『たからもの』候補にしよう)

境界線を踏み越えると決めてからの行動は早かった。
夜桜見物のドライブに誘うと平和は少しだけ動揺しながらも断ることなく唯司に従った。
きょろきょろしながら助手席に乗る姿はかわいくて胸が疼いた。
けれどその日は、少し急ぎすぎてしまった。一年間の抑制のすえに境界線を踏み越えると決めた昂揚感がよくなかったのだろうし、大麻を吸ったのは間違いだったと反省している。
断らせないやりとりを経てあがりこんだ平和の家で、違法薬物の効果でゆったりとした気分になった唯司は本気で思ったのだ。
平和は当然、自分を受け入れるだろうと。
しかし結果は散々だった。
夜桜ドライブのあとから平和と一度もシフトが被らなくなった。
店長にさりげなく「平和くん、元気ですか」と聞いたら髭面をくしゃっと歪めた笑顔で「お。そういえば最近シフト被ってないよね。まあ唯司くん週一だから」と言われた。
平和に避けられていることは明白だったけれどチャンスはまたあると焦っていなかった。
完全に失敗したわけじゃない。
ただ、距離を詰めるスピードが速かっただけだ。
平和のような自己肯定感がまともに育っていない人種は自分を傷つけた人間に対して無意識に患部の治療を求めるはずだから、少しだけ距離を置いている間に何度も何度もあの日のことを思い返し、やがて唯司のことで頭がいっぱいになるだろう。
そして会いたくなる。
自分ができない感情の整理整頓を傷つけた相手に求めるのだ。
それをきっかけにして巧妙に再接近しよう。
今度こそ焦らず、確実に、あの寂しい少年を手に入れよう。
──そう思っていたのに。

《調査報告書》
『調査日:5月28日。
午後22時30分。
アルバイト後、同級生の綾野椿(あやのつばき)と××町の踏切で合流。守山平和宅に揃って帰宅。
調査員、自宅アパート前で待機。
カーテンの隙間から守山平和、綾野椿の性行為を確認(資料添付)』

「……はあ?」

桜が散り、育った葉が這いずる毛虫に食われ穴だらけになった頃に平和の心も唯司の存在が蝕んでいるはずだったのにどういうことだ。
同級生の男とセックス?
哂える。
調査報告書を力いっぱいぐしゃぐしゃにした。
シガレットケースからジョイント──大麻を喫煙用に紙で巻いたもの──を取り出して火をつける。
深く吸って、吐きだした薄汚い煙をぼんやりと眺めた。
スマホを手にして興信所の電話番号を呼びだす。
不機嫌が抑えられない声音で『綾野椿』とかいう泥棒男の身辺調査の依頼をした。
1週間後に受け取った茶封筒には笑ってしまうような情報がつらつらと記載されていた。
綾野椿も、彼の人生の登場人物たちも、あまりにも平和とはかけ離れた幸福の中にいた。
だからこそつけ込む隙は見つけやすかった。
光の道を行く者は時に理不尽にさらされるものだし、唯司が普段からなるべく笑顔で、表立って敵をつくらないように気を配っているのはこういう時の捨て駒を手元に置いておくためだ。

「この話って、平和くん次第なんだよ。今から平和くんが、俺のしたいことをさせてくれたら、馬鹿男が嵐くんに何もできないようにしてあげられるよ?」

そう言った途端、思惑どおり平和はわかりやすく動揺し、やがて悲壮な決意の表情を見せてくれたのでどうしようもなく愛しさがあふれた。
綾野椿の親友である伊藤嵐を、自分を犠牲にすることで護ろうとしている。その健気な選択がどういう結果を招くか知らずに。

「車、そこに停めてあるから。自転車は置いていこっか」
「…………………………は、い」

まるで溺れているみたいな息苦しそうな返事が大好きだよ。
ああよかった。
初対面の時の平和に戻ってくれたね。
君はまっとうな高校生たちが出演する青春映画には混ざれないんだよってちゃんとわからせてあげなくちゃ。
でも大丈夫。
ひとりじゃない。
これからは唯司がいる。
唯司が居場所をつくってあげられる。
今日まで大海原でひとり溺れさせてごめんね。
大切に世話をされる水槽の中の魚になれば幸せになれるのだと、教えてあげるからね。

平和は自転車からぎこちない動作で降りて、大人しく唯司の車に乗った。
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