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33 鬼人族

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「私の弟子であるシュリが剣鬼になる為の最終試練がこの未踏の薬草ダンジョンの攻略と、先代ラセン殿の病を治す為に挑むのだが…守るという事をシュリは学びたりていない」
「……………」
よく分からない…再びシュリに傘を差して貰っているマユラの顔を見て首を傾げる、シュリもマユラの意見に同意する様に頷く。
「そこで丁度良く来たのが君…名は?」
「外神です…」
「そうか、外神が来てくれたのはやはり縁だな。取引をしよう」
「取引ですか?」
「そう、君は何も何もしなくても良い。このシュリに君を守らせたい」
「え…?」
「よろしく頼む外神殿」
「え…」
「ああ、ドロップ品の心配か?こちらが欲しいのは最終階層のボスのドロップ品だけだそれ以外はやろう」
「ええ…」
「鬼人族は基本怪我や病に強いからな、先代は……別だが…」
「そうですか…」
本当にそれで良いのだろうか…『鬼人族からの頼み:達成で2000pt』悩んでいれば目の前には表示画面…これが決定打か…何もせず付いて行くだけならば、簡単な話だ…。
「決まって何より」
「よろしくお願いします…」
マユラが満足げな笑みを浮かべでは中へと入っていく、大分後に気付く事になるのだがこの時は1人で入った方が余程楽だったと振り返る事になる…。

「暗いですね…」
「外神殿夜目は効かないのか?」
「ならばこれを使うとするか」
中は暗い…それもその筈だ人の手が入っていない未踏のダンジョン、鑑定が無ければ気づかない洞窟にしか見えないダンジョンだ、シュリが気遣いマユラが青い炎を出して周囲を照らしてくれた。
「ありがとうございます…」
「足元は歩き辛い気を付けると良い」
「はい…」
「来ます」
「ああ…私は外神の後ろにいよう、シュリ分かっているな」
「はい」
億から気配を感じたマユラとシュリ、シュリが剣を構え前に出れば枯れ葉の蛾の群れが向かってくる……虫…嫌いで無くて良かった…嫌いだったら逃げている。
シュリが剣に蒼い炎を纏わせ焼き払っていく、綺麗な蒼い火の粉が散り蛾がドロップ品に変わっていく。
「すごいですね…綺麗」
「………」
その様を見て綺麗だと零すが隣のマユラは無言でシュリを見ている、その顔からは感情が読めないだが風魔法でドロップ品を集めて渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ああ…私もダンジョンは久しぶりだからな間隔を取り戻すのに良い、収納はあるのだろう?」
「はい」
風魔法で集めたドロップ品をそのまま収納空間に納めていく、葉が多い後で確認しよう。
「終わりました」
「……何が言いたいか分かるか?」
「……外神殿の安否の確認を怠りました」
「ああそうだな、守るという事は先に進むだけではない」
「はい」
そう言われているシュリの顔はなんだか怒られた子供じみている、魔力量の高い種族は老化が遅い若しくは無いと本に書かれていたせいかこの世界の人々の年齢は把握し辛い。
「ならば進もう」
「はい」
「はい…」
マユラが促す先に進めば薄暗い広場に辿り着く、1階層目のボス部屋のようだ。
「では行きます」
ちらりと此方を見て正面に顔を向けるシュリ、マユラはそれを無言で眺めた。

第1階層のボスは巨大な枯れ葉の蛾が旋回している、流石に気持ち悪い…。
「ふっ……」
鱗粉を撒き散らしてくる蛾を蒼い炎で焼き散らし剣を一振りで真っ二つにし、宝箱がドロップしてこの階層は終了となる。
「すごい…」
「弱すぎて試練にもならないな、下の階層に手応えがある獲物がいればいいのだが」
「………」
試練だから手ごわい敵がいれば良いと言うが此方は無難に帰りたい、確かに戦わずに済むのでらくだから良いが…。
「外神殿どうぞ」
「本当に良いんですか?」
「はい」
「えと貰います」
シュリに呼ばれ木で来たシンプルなRPGで出て来る宝箱だ、開けさせて貰うと薬草の詰め合わせだ収納に仕舞うと次の階層への階段が地面に出現し3人、シュリとマユラに挟まれ降りていった。

『キチキチ…』
今度は枯れ葉色の1匹1匹が大きな、鋸の様な角を持った虫が襲い来る。
動きは遅いが硬い、シュリは今度は此方の側を離れず鋸虫を剣で払い蹴り飛ばせば壁に吹っ飛びそのままドロップしていく…此方の背後にも鋸虫が迫るがすぐに気づいたシュリが目の前の虫を斬り捨て此方を鋸虫を裂いてくれ、マユラが風魔法でドロップ品を集めてくれ進んでいく。
慣れてしまえば単調なのでそのままボス部屋へと向かい、巨大な鋸虫をシュリが一閃で真っ二つにして宝箱に変わり終了となる。
「……手ごたえがないな、何階層あるのかは不明だが私たちの国のダンジョンの方が手応えがあるか…」
「はい、物足りませんね。国のダンジョンに挑みたくなりますね。外神殿どうぞ」
「ありがとうございます」
先程と変わらない宝箱を開ければまた薬草の詰め合わせで先程とは種類が違うようだ、それを収納に仕舞うと、また下層への階段が出現し降りていく…虫ばかりのダンジョンか…と思うとまた来ようと気は起きない、一緒に連れて来て貰えて良かったと思う。
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