785 / 867
第015部 繋がる糸たちへ/繋がらない糸たちへ
問題発症解決編039幕 立派な屋敷×第054話 切れない糸たち:まじない篇 お茶の時間/第54話 異界 《アヴィラタン》編 第19幕 広がる
しおりを挟む
問題発症解決編039幕 立派な屋敷
《ノルデン》の領主屋敷は立派な物だった、それだけ領民から税を撒き上げ築いた資産なのだろう、ぐるりと囲む高い柵の中の2階建ての屋敷、鉱石を使った窓は惜しげもなく取り付けられていた部屋数も多い。
「この屋敷…色々な商売に手を付けたようですね、立派な物です」
「さっさと中入っておこうぜ、どうせ金目のもんは没収されて……」
「どうかしたのかい?カイム君」
「っち!カリュシュ!」
「はい、皆さんはここにいて下さい」
カリュシュが柵越に周囲を見渡しカイムがつまらなげに眺めて舌打ちをしカリュシュを連れて転移石で中へ入る、大河と崇幸は言われたまま待機をする事にした。
「賊か…」
「いえ…おそらく排除でしょう、皇帝からの…」
「あーあ、どうする?これ見せるか?」
「……皇帝直属の兵だと思います、わざと片付けて行かなかったのは…おそらく」
「見せしめか」
中は暗くじめりとした陰鬱な気配、応接間に向かえば侍従やメイド達が事切れ辺りは血の海だった、血は赤黒く時間が経っている事を現している、全員首を掻き切られ絶命している、カリュシュは冷静に部屋の外から検分しカイムも周囲を見渡す。
侍従達の側にはこの屋敷の調度品や宝飾品類が散らばり、彼らの手にも貴金属が握られていた。
「あーあ、下手な欲なんかかかなきゃ死なねーのに」
「彼らもこうなるとは思わず少し拝借するつもりだったんでしょう…ありのままを見せますか」
「んや、どうせこいつらの身元は皇帝が処理してんだろ。死体は収納袋に入れて浄化魔法掛けておきゃいいか。死体は後で皇帝に返そうぜ」
「……上手く処理して下さるでしょうね、見せしめも済んでいるようですしね」
「だな」
カイムが収納袋に風魔法で死体を運び入れ、浄化魔法札を使い応接間の血を消して行く、彼らは知らないだろう浄化魔法にこんな効果もあるとは、知る必要もないかとカイムは思い綺麗になった応接間に満足しカリュシュは周囲を探り特に他に異変は無さそうだと崇幸達を電話で呼ぶ事にした。
「賊を取り逃がしたー」
「はい、申し訳ありません」
「いいよいいよ、2人に怪我がなくて良かった」
「何か盗られた…としても分からないな」
カイムとカリュシュが口裏合わせて賊が侵入した体にし、詠斗や崇幸は2人が無事だった事に安堵し大河は周囲を見ている。
「………この屋敷には私達以外誰もいない…」
「そっか、それなら良かった。ここを解放して皆を連れてここの人達を集めて顔合わせをしたらいいかな」
「ああ、食料や支援と引き換えにここに裏街の人々も暮らして貰う。娼館や裏街に仕事がある者達もいるからな、中継器を置いて繋げるか」
「よし、手伝ってくれる人達を裏街や少数民族の皆から募ろう」
千眼が屋敷の中を蝶を飛ばし賊が残っていないか…一応確認し、外に中継器を置いて裏街と繋げる事にし崇幸も準備に取り掛かった。
第054話 切れない糸たち:まじない篇 お茶の時間
「ごふ…」
「千歳さん大丈夫?」
「千歳、タオルをどうぞ」
「ごほ…ありがとう、懐記君達とスマートフォンが繋がったと思ったら…タマちゃん8号が《アヴィラタン》の神になったって」
《アタラクシア号》の食堂でコーヒーを飲んでいればラインでメッセージが入り、ジラやギーギスからは子供が神様になったなと…流石の千歳もそれは咽る。
晴海が驚きラジカが収納からタオルを出して渡し、受け取って口元を拭っていればコーカスが戻りコーヒーをゴーレム達に頼む。
「どうです、《ザッタス国》は?」
「万華鏡…華鏡と後はおまじないの布を貰ったよ」
「ああ、華鏡は数が造れないですが名産ですよ。おまじないはいつからかあの国に浸透した物ですね、友、家族、恋人等と一緒にいられるように…願いと商売に結び付けた物ですね、おや、晴海さんと空さんの布は変わった刺繍が施されていますね」
「孤児院の女の子に貰ったんだよ」
「これは何を現しているんでしょうね、刺す刺繍や織り方でまじないの意味を現わしていますが」
《ザッタス国》に馴染みの商会があるというコーカスが晴海の腕と空のベビーカーに付けたアンから貰った布をコーカスが見つめ首を傾げている、ラジカも知らないらしい。
「でも、きれいだしいいんだ。明日聞いてみる、そうだコーカスさん明日孤児院の子が結婚するってお祝いをあげたいけど何がいいかな、率さんとエツィアは髪飾りをプレゼントするって」
「婚姻の儀ですか、孤児院でやるならおやつやお茶や果物はどうです?珍しい物なら喜ぶでしょう」
「あ、それいいね!俺、厨房行ってくる」
晴海が果実水と率が持ってきたチーズクッキーを食べて厨房へ向かう、コーカスは笑って見送り華鏡と空のベビーカーの布を見る。
「何か気になるんですか?」
「いえ、特には。私も少し前に手慰みに華鏡を持っていました、譲りましたが。また買うのも悪くはないですね」
「明日孤児院に注文しようか、子供達が喜ぶだろうね」
「そうですね、聞いてみましょう」
「うえぇぇん」
「お父さんの側に行きたいのかな、空君」
空が泣くので千歳が立ち上がり空のベビーカーを晴海の元へと押していく、晴海がパンケーキやクッキーを作るというので千歳も手伝う事にした。
第54話 異界 《アヴィラタン》編 第19幕 広がる大地
『うにょんにょん』
「タマご機嫌」
「あっという間に畑と果樹園とかが出来ているな」
「タマはすごいな、千歳もすごいな」
タマちゃん8号が張り切っている、子タマちゃん達もせっせと土魔法や緑魔法で恐ろしい勢いで大地を緑豊かにしていく、ノイズとシュリとマユラもその速さに舌を巻く。
「お、湖も魚や貝とか…色々いるな」
「綺麗だなーすごく澄んでる」
『みていて飽きないな』
ぎゅーが造り上げていく湖も深さは分からないが、魚が泳ぎ貝が水中で浮かび水草や花が咲く、チェカとナチェとウズラがまじまじ観賞していた。
ゴーレム達も子タマちゃん達と土を耕し、魔物達は苗や種を植えて土だらけになっているが笑っている。
「花も育てましょう、食べられます」
「なんでもいいー」
「うえたい」
「たのしー」
『たのしー』
『ねー』
魔物に交じって魔人の子ども達のゴーレムも手伝いをしている、クスクスと笑って楽しそうに外神と花の種を植えていた。
懐記は他の魔物や子タマちゃん達と食事作り、今日も色々な物を作っていく、おにぎりやカレーやうどんに唐揚げ、ハンバーグにフライ、大量のゆで卵に、ポップコーンも作り魔物達はひたすら懐記とジラやイシュターの手元を見ている、フォンとフェシェスタが収穫した物を次々置いて行きまだまだ作る、時間停止収納袋も《アタラクシア》から送られ、収穫出来て今食べない物は収納していった。
「レシピを書いたのでこれで、他の者も作れます」
「料理おもしろいー」
「すきーすきー」
「ん、沢山おぼえて」
『はーい』
魔物達はわちゃわちゃしている、魔法で料理の補佐をする方法や畑を耕す収穫する事を覚えた。
共食いをする為に使われていた魔法を今度は食事を摂る為に使う、意味合いは同じかもしれないが彼らは自分達が食われる心配をしなくて済む、笑顔ではしゃぐ姿は小さな子供のようだった…。
あなたは異世界に行ったら何をしますAnotherSid×EXTRA MYROAD~男は独り異界で飯を食う~
「よ、よろくおねがいしゃます!」
「ん、よろしくね」
昼より前に食堂に向かうと既に賑わっている、厨房で店主が小さな痩せた子供を紹介し緊張していた少年は深く頭を下げた。
「コイツに教えてやってくれ」
「分かった、じゃ、さっそく作っていこう」
「は、はい!」
小さな子供だ台がないと台にも届かない、これがこの世界では当たり前の光景だった。
「まずはシンプルなパンだな、後は干した肉のパンかな」
「は、はい!」
「分量は小麦粉はこれ位で、塩はこの位、水はこの量で。結構分量って大事だから。後はこれを練っていく」
「はい」
椀を使って分量を教える、この店の最近の人気のパンの肝とも言えるのは分量としっかり生地にする事だった。
「で、これになったら今度は千切る、そうだね君の手なら2つ分で1つかな」
「……わかりました!」
それで丁度佳月の千切ったパンと同じ大きさになり子供は自分の両手を交互に見て頷く、焼くのは店主か佳月がやるのでとにかく子供は生地作りや片づけをするらしい。
「今度は干した肉のパンだな、さっきと生地は同じで干し肉は細かく刻んで生地に練り込む、他にも色々な物と合うから試してみて」
「分かりました!」
子供は熱心に聞き身体を動かす、佳月は笑って焼き立ての最初のパンの1つを割って冷まして子供に渡した。
「え…」
「ほら、味見、作ったやつが味が分からないのはダメだろ?」
「おう、食ってみろ!焼き立てが1番だ」
本当に良いのかと子供は佳月を見上げ、店主がニィと笑って許可を出せばパンを佳月から受け取り小さな口で齧りつくと温かくてふかふかして美味しい…子供は夢中になって半分を食べ佳月もその食べっぷりに自分の分を渡した。
その後は生地を子供が作り佳月は仕事の合間で焼いていく、今日もパンの売れ行きは良いらしい、パンだけ買いにくる人もいると店主と従業員は汗をかいていた。
「パンは何で大抵の物は合うから」
「さかな!さかなは?おれさかな好き!
「魚ねぇ、やってみようか」
「はい」
「店主、ちょっと試していい?」
「おお、いいぞー」
大抵な物に魚はどうかと少年は言う、佳月はやってみようと店主に声を掛けて始めた。
「うん、フライパンと身を解したのがあうかな」
「おいし!」
「おお、こりゃうまいな」
佳月が試しに作ってみたのはフライにした魚をパンに挟んだ物、焼いて味付けし解した身を香辛料で味付けし生地の中に入れて焼いた物…こういうのにはマヨネーズが良いんだけど…と内心思いつつ、店主や従業員や子供のガツガツ食べる様を眺めた。
「これ、店の商品にしてもいいか!?」
「おねがいしましゅ」
「いいよ」
店主と子供が喜ぶ、明日は早めに来てパンを焼いてくれと8,000ロハと試作で作ったさかなパンを渡せれ店を後にする、この店そのうちパン屋にもなりそうだなと佳月は笑って夜道を歩く、今夜はパンを肴にとろりとした酒を飲もうと安宿に向かった。
今夜明るめな夜空で、白い月と青い星が瞬いていた…
本日の食事:フライにした魚を挟んだパン 酒 …古橋 佳月でした…。
《ノルデン》の領主屋敷は立派な物だった、それだけ領民から税を撒き上げ築いた資産なのだろう、ぐるりと囲む高い柵の中の2階建ての屋敷、鉱石を使った窓は惜しげもなく取り付けられていた部屋数も多い。
「この屋敷…色々な商売に手を付けたようですね、立派な物です」
「さっさと中入っておこうぜ、どうせ金目のもんは没収されて……」
「どうかしたのかい?カイム君」
「っち!カリュシュ!」
「はい、皆さんはここにいて下さい」
カリュシュが柵越に周囲を見渡しカイムがつまらなげに眺めて舌打ちをしカリュシュを連れて転移石で中へ入る、大河と崇幸は言われたまま待機をする事にした。
「賊か…」
「いえ…おそらく排除でしょう、皇帝からの…」
「あーあ、どうする?これ見せるか?」
「……皇帝直属の兵だと思います、わざと片付けて行かなかったのは…おそらく」
「見せしめか」
中は暗くじめりとした陰鬱な気配、応接間に向かえば侍従やメイド達が事切れ辺りは血の海だった、血は赤黒く時間が経っている事を現している、全員首を掻き切られ絶命している、カリュシュは冷静に部屋の外から検分しカイムも周囲を見渡す。
侍従達の側にはこの屋敷の調度品や宝飾品類が散らばり、彼らの手にも貴金属が握られていた。
「あーあ、下手な欲なんかかかなきゃ死なねーのに」
「彼らもこうなるとは思わず少し拝借するつもりだったんでしょう…ありのままを見せますか」
「んや、どうせこいつらの身元は皇帝が処理してんだろ。死体は収納袋に入れて浄化魔法掛けておきゃいいか。死体は後で皇帝に返そうぜ」
「……上手く処理して下さるでしょうね、見せしめも済んでいるようですしね」
「だな」
カイムが収納袋に風魔法で死体を運び入れ、浄化魔法札を使い応接間の血を消して行く、彼らは知らないだろう浄化魔法にこんな効果もあるとは、知る必要もないかとカイムは思い綺麗になった応接間に満足しカリュシュは周囲を探り特に他に異変は無さそうだと崇幸達を電話で呼ぶ事にした。
「賊を取り逃がしたー」
「はい、申し訳ありません」
「いいよいいよ、2人に怪我がなくて良かった」
「何か盗られた…としても分からないな」
カイムとカリュシュが口裏合わせて賊が侵入した体にし、詠斗や崇幸は2人が無事だった事に安堵し大河は周囲を見ている。
「………この屋敷には私達以外誰もいない…」
「そっか、それなら良かった。ここを解放して皆を連れてここの人達を集めて顔合わせをしたらいいかな」
「ああ、食料や支援と引き換えにここに裏街の人々も暮らして貰う。娼館や裏街に仕事がある者達もいるからな、中継器を置いて繋げるか」
「よし、手伝ってくれる人達を裏街や少数民族の皆から募ろう」
千眼が屋敷の中を蝶を飛ばし賊が残っていないか…一応確認し、外に中継器を置いて裏街と繋げる事にし崇幸も準備に取り掛かった。
第054話 切れない糸たち:まじない篇 お茶の時間
「ごふ…」
「千歳さん大丈夫?」
「千歳、タオルをどうぞ」
「ごほ…ありがとう、懐記君達とスマートフォンが繋がったと思ったら…タマちゃん8号が《アヴィラタン》の神になったって」
《アタラクシア号》の食堂でコーヒーを飲んでいればラインでメッセージが入り、ジラやギーギスからは子供が神様になったなと…流石の千歳もそれは咽る。
晴海が驚きラジカが収納からタオルを出して渡し、受け取って口元を拭っていればコーカスが戻りコーヒーをゴーレム達に頼む。
「どうです、《ザッタス国》は?」
「万華鏡…華鏡と後はおまじないの布を貰ったよ」
「ああ、華鏡は数が造れないですが名産ですよ。おまじないはいつからかあの国に浸透した物ですね、友、家族、恋人等と一緒にいられるように…願いと商売に結び付けた物ですね、おや、晴海さんと空さんの布は変わった刺繍が施されていますね」
「孤児院の女の子に貰ったんだよ」
「これは何を現しているんでしょうね、刺す刺繍や織り方でまじないの意味を現わしていますが」
《ザッタス国》に馴染みの商会があるというコーカスが晴海の腕と空のベビーカーに付けたアンから貰った布をコーカスが見つめ首を傾げている、ラジカも知らないらしい。
「でも、きれいだしいいんだ。明日聞いてみる、そうだコーカスさん明日孤児院の子が結婚するってお祝いをあげたいけど何がいいかな、率さんとエツィアは髪飾りをプレゼントするって」
「婚姻の儀ですか、孤児院でやるならおやつやお茶や果物はどうです?珍しい物なら喜ぶでしょう」
「あ、それいいね!俺、厨房行ってくる」
晴海が果実水と率が持ってきたチーズクッキーを食べて厨房へ向かう、コーカスは笑って見送り華鏡と空のベビーカーの布を見る。
「何か気になるんですか?」
「いえ、特には。私も少し前に手慰みに華鏡を持っていました、譲りましたが。また買うのも悪くはないですね」
「明日孤児院に注文しようか、子供達が喜ぶだろうね」
「そうですね、聞いてみましょう」
「うえぇぇん」
「お父さんの側に行きたいのかな、空君」
空が泣くので千歳が立ち上がり空のベビーカーを晴海の元へと押していく、晴海がパンケーキやクッキーを作るというので千歳も手伝う事にした。
第54話 異界 《アヴィラタン》編 第19幕 広がる大地
『うにょんにょん』
「タマご機嫌」
「あっという間に畑と果樹園とかが出来ているな」
「タマはすごいな、千歳もすごいな」
タマちゃん8号が張り切っている、子タマちゃん達もせっせと土魔法や緑魔法で恐ろしい勢いで大地を緑豊かにしていく、ノイズとシュリとマユラもその速さに舌を巻く。
「お、湖も魚や貝とか…色々いるな」
「綺麗だなーすごく澄んでる」
『みていて飽きないな』
ぎゅーが造り上げていく湖も深さは分からないが、魚が泳ぎ貝が水中で浮かび水草や花が咲く、チェカとナチェとウズラがまじまじ観賞していた。
ゴーレム達も子タマちゃん達と土を耕し、魔物達は苗や種を植えて土だらけになっているが笑っている。
「花も育てましょう、食べられます」
「なんでもいいー」
「うえたい」
「たのしー」
『たのしー』
『ねー』
魔物に交じって魔人の子ども達のゴーレムも手伝いをしている、クスクスと笑って楽しそうに外神と花の種を植えていた。
懐記は他の魔物や子タマちゃん達と食事作り、今日も色々な物を作っていく、おにぎりやカレーやうどんに唐揚げ、ハンバーグにフライ、大量のゆで卵に、ポップコーンも作り魔物達はひたすら懐記とジラやイシュターの手元を見ている、フォンとフェシェスタが収穫した物を次々置いて行きまだまだ作る、時間停止収納袋も《アタラクシア》から送られ、収穫出来て今食べない物は収納していった。
「レシピを書いたのでこれで、他の者も作れます」
「料理おもしろいー」
「すきーすきー」
「ん、沢山おぼえて」
『はーい』
魔物達はわちゃわちゃしている、魔法で料理の補佐をする方法や畑を耕す収穫する事を覚えた。
共食いをする為に使われていた魔法を今度は食事を摂る為に使う、意味合いは同じかもしれないが彼らは自分達が食われる心配をしなくて済む、笑顔ではしゃぐ姿は小さな子供のようだった…。
あなたは異世界に行ったら何をしますAnotherSid×EXTRA MYROAD~男は独り異界で飯を食う~
「よ、よろくおねがいしゃます!」
「ん、よろしくね」
昼より前に食堂に向かうと既に賑わっている、厨房で店主が小さな痩せた子供を紹介し緊張していた少年は深く頭を下げた。
「コイツに教えてやってくれ」
「分かった、じゃ、さっそく作っていこう」
「は、はい!」
小さな子供だ台がないと台にも届かない、これがこの世界では当たり前の光景だった。
「まずはシンプルなパンだな、後は干した肉のパンかな」
「は、はい!」
「分量は小麦粉はこれ位で、塩はこの位、水はこの量で。結構分量って大事だから。後はこれを練っていく」
「はい」
椀を使って分量を教える、この店の最近の人気のパンの肝とも言えるのは分量としっかり生地にする事だった。
「で、これになったら今度は千切る、そうだね君の手なら2つ分で1つかな」
「……わかりました!」
それで丁度佳月の千切ったパンと同じ大きさになり子供は自分の両手を交互に見て頷く、焼くのは店主か佳月がやるのでとにかく子供は生地作りや片づけをするらしい。
「今度は干した肉のパンだな、さっきと生地は同じで干し肉は細かく刻んで生地に練り込む、他にも色々な物と合うから試してみて」
「分かりました!」
子供は熱心に聞き身体を動かす、佳月は笑って焼き立ての最初のパンの1つを割って冷まして子供に渡した。
「え…」
「ほら、味見、作ったやつが味が分からないのはダメだろ?」
「おう、食ってみろ!焼き立てが1番だ」
本当に良いのかと子供は佳月を見上げ、店主がニィと笑って許可を出せばパンを佳月から受け取り小さな口で齧りつくと温かくてふかふかして美味しい…子供は夢中になって半分を食べ佳月もその食べっぷりに自分の分を渡した。
その後は生地を子供が作り佳月は仕事の合間で焼いていく、今日もパンの売れ行きは良いらしい、パンだけ買いにくる人もいると店主と従業員は汗をかいていた。
「パンは何で大抵の物は合うから」
「さかな!さかなは?おれさかな好き!
「魚ねぇ、やってみようか」
「はい」
「店主、ちょっと試していい?」
「おお、いいぞー」
大抵な物に魚はどうかと少年は言う、佳月はやってみようと店主に声を掛けて始めた。
「うん、フライパンと身を解したのがあうかな」
「おいし!」
「おお、こりゃうまいな」
佳月が試しに作ってみたのはフライにした魚をパンに挟んだ物、焼いて味付けし解した身を香辛料で味付けし生地の中に入れて焼いた物…こういうのにはマヨネーズが良いんだけど…と内心思いつつ、店主や従業員や子供のガツガツ食べる様を眺めた。
「これ、店の商品にしてもいいか!?」
「おねがいしましゅ」
「いいよ」
店主と子供が喜ぶ、明日は早めに来てパンを焼いてくれと8,000ロハと試作で作ったさかなパンを渡せれ店を後にする、この店そのうちパン屋にもなりそうだなと佳月は笑って夜道を歩く、今夜はパンを肴にとろりとした酒を飲もうと安宿に向かった。
今夜明るめな夜空で、白い月と青い星が瞬いていた…
本日の食事:フライにした魚を挟んだパン 酒 …古橋 佳月でした…。
0
お気に入りに追加
355
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~
裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】
宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。
異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。
元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる