あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第014部 君分かれる事なかれ/君離れる事なかれ

第098話 最終日開幕/第98話 最終日開幕

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第098話 最終日開幕
「絶好の勝負日和だな!」
「楽しみー」
「今日で祭りも終わりかー」
朝皇国の広場に集まった崇幸、晴海と詠斗、晴海の背中で空がおもちゃを握って遊んでいる、平和な日だ。
皇城のコックおじさんと大工おじさんのバルーンに囲まれた中央に巨大なモニターが映し出され、操者達の様子が映し出された。
《ホローリングレース》の開催が決定した時から、《アストマーズ》の《ホローリングレース》の概要や操者達の様子が流れ《アタラクシア》でもファンを獲得していた。
速さも両立もそうだが好きな操者達に賭けようと朝からカジノの会員や《アウトランダーズ商会》の関係者達が並んで賑わいを見せていた。
開催は午前の終わりから始まる、飲食店や店も活気づいていた。

「水あめちょうだい」
「はーいどうぞ~」
ラダカの水あめ屋も忙しい、今後も皇国か《ガルディア》のニアの店で水あめ屋をやっていくつもりだ。
「ラダカさん、交代します。チケットを買ってくると良いですよ。彼も僕がみていますから、皆さんと行って来てください」
「ニア。ありがとなのよ~」
「はい、行ってらっしゃい」
ニアが屋台を訪れ小さい荷車に乗せられ木の子もニアが見ているからと、他にチケットを買い行く面子に抱っこして貰い窓口へ向かう、ニアは慣れた手さばきで来る客を捌いて行く、ニアもチケットを買ってみた、ラグージェとジュカのレースカード…少し前に話す事が出来てトウモロコシの栽培を《アストマーズ》でもやり始め今度そのトウモロコシでポップコーンを売る事になっている、それも楽しみだし仲良くなった2人が良い勝負をする事を願って買ってみたのだ。
「フルーツ飴2つください」
「いらっしゃいませ、好きなの選んでください」
お客は次から次へとやってくる、忙しいが楽しい。

「はーいスープとパンお待たせしました」
「トゥナー追加のパン焼きあがったすよ」
「はーい、スープも補充しますね」
ラウラスとトゥナーの屋台も列が出来、世話なく2名で捌いていく、パンもスープも引っ切り無しに作っていく。
最終日なので材料や料理が無くなった店から店仕舞いの支度を始めている、皆嬉しそうに片づけをしている、《ホローリングレース》を観に行くという声がちらほら聞こえて来た。
「私もチェニエさんとホセサライさんのレースカード買いました」
「俺はビヒメゴとラグージェすよー楽しみすねー」
「スープ2人前ちょうだい」
「こっちは3人前ね」
『はーい、ただいまー用意します』
客の注文にラウラスとトゥナーが声を揃える、もう間もなくスタートだ。

第98話 最終日開幕
《ホローリングレース》の最期……空は青い…が雨が降り始めた、あの時のレースも雨だったなと思いつつ振り出した雨を見上げる、こういう時の雨は空が泣いていると言われているが、空の向こうは天上界だ、天気に天使も天人も悪魔も関係ない、地面で行うレースでもないからと雨は然程関係ない、異界《アタラクシア》でのチケットの売り上げも好調なようだ、ジュカは深く深呼吸して息を整える、普段軽く口を叩く他の面子もレース前はいつも精神を安定させ呼吸を整えていた。
それぞれの相棒の馬達、ジュカは最初から最後まで同じ相棒で此処まで来た、ラグージェや他の面々は都度馬を造りだしているが、ジュカは最期までマゥとレースに挑む。
「今日も頑張ろうな、終わったらおいしい野菜沢山食べさせるからな」
ジュカは笑みを浮かべ優しくマゥの顔を撫でて人参を食べさせる、他の操者達も相棒とコミュニケーションを取りながらその時を待った。

「ジュカ…」
天界強羅城、地上界を視る為の鏡の前で燕碑は《ホローリングレース》に挑む操者達…ジュカに視点を固定させ様子を見ていた。
「燕碑様…」
「……」
そっと隣に立つのは耀帝の第三妃もジュカを燕碑の隣で見守る、1度手を離してしまった物は遠い。
「私にもっと権力があれば…力があればジュカを手放さなくてすんだのか?」
「それは私も同じこと…あの子はもう私達の事が必要ありません、ファーツコクス様は私達の願いを叶えてくれました」
「そうだな…友は私達の願いを叶え我が子を立派に育ててくれた…身勝手な親だ…」
「……ジュカ…頑張りなさい…貴方のやりたいように…」
燕碑の悲痛な声、第三妃は祈りを捧げる、この後レースが始まれば地上界で用意された席で《ホローリングレース》を観る事が出来る、それはあくまで耀帝の妃として弟君としてだ。
ジュカに声を掛ける事は出来ない、精々レース後に労うしか出来ない、燕碑は第三妃に手を差し出しそれに手を乗せた。

「いよいよだな、ジュカ達真剣な顔してんじゃん」
「カッコイイよねー」
「始まるね、みんな良い顔している」
「みんな頑張れ」
観覧席にいるフォンやフェシェスタ、ノイズとチェカが飲み物とパンやクッキー片手に観戦を楽しむ。
『私はラグージェに賭けさせて貰った、ここは定石通り手堅く賭けるのが良いだろう』
「俺は全員にな、友達だし」
「そうだな」
ウズラとジラ、イシュターは賭けているようで友人としてではなく客として観ていた。
「私はラグージェとジュカに賭けた、きっと良い物を魅せてくれるだろう」
「私はビヒメゴとチェニエにきっといい勝負をする」
「俺は応援するよ」
「俺も」
「僕もです」
ギーギスと懐記と外神が誰にも賭けず応援をする、周囲の客達も熱気と活気で賑やかだった。
周囲には《ホローリングレース》はこれで終わりと告知されているが、誰からも抗議の声は上がらなかった、惜しむ声は聞こえたが日々の安定した生活がある、異界との交易もこれから本格的に始まる、それを飾るに相応しいレースを皆が待っていた。
『それでは操者の皆様はスタート地点に並んで下さい』
風早の声、そして並ぶ操者達間も無くスタートの合図が上がろうとしていた…。

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