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第014部 君分かれる事なかれ/君離れる事なかれ
第088話 前日/第88話 親友
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第088話 前日
龍皇国の祭典が前日に迫った夜の皇城のニジェルガの執務室、最終確認も済み明日朝から時計塔のお披露目から祭が始まる、ニジェルガは珍しく眠れぬ夜を過ごしていた。
傍らのスマートフォンの待ち受けはラージュと子ども達、それに笑みを零し準備が終わった広場に目を向ける、龍皇国皇帝の任期は約700年~千年…次代の龍皇帝は現れない。
「………」
「失礼しますよ、陛下」
そう考えていればノックがされニジェルガの産みの父親が柔和な笑みを浮かべ茶器を手に執務室へ入る、ニジェルガもよく似た笑みを浮かべソファに父親を座らせ茶を用意する。
「父上、どうかしたのか?」
「どうもしてないよ、理由もなく息子に会いに来ただけさ」
「そうか」
ニジェルガが皇帝候補に上がった際に敬語を止めるように言った父は何処までも子ども達、特にライガルを溺愛する温厚な父親は果物の香りのする茶を飲む。
「君の伴侶が現れたと聞いたよ」
「ええ、向こうも王という立場だ」
「そう、難しいかな」
「私は気が長いので」
「私に似てライガルも気が長いからね」
互いにクスリと笑い合う本来なら酒でもいう所だが明日は大事な祭典だ、少し話しをし父親は出て行く、ニジェルガは気持ちが落ち着き少しして眠りに就いた。
「魔人の子どもを此処で育てるのか?」
「ま、いんじゃね」
「馬鹿者、幼子とは言え魔人じゃヒスンスがいれば心配はないがの、良いのかこの貧乏な貧しい国に大事な御子を預けて」
《ウワムス王国》の図書館で魔人の子ども達3名とグローリー達に、グステナ達とオジカトも合流しオジカトがグローリーに尋ねる。
「この子達が選んだから…お願いします」
「俺も手伝う」
「俺もな」
「俺も此処から《ガルディア》に通うさ」
エスティアとアコミアとキッフが手伝いを買って出る、ヒスンスもずっと図書館にいるから構わないとの事なので、グステナとオジカトも大切な子ども達を預かる事に決めた。
「私もここにいますよ、トラング殿達の家は……コホン…なので此処で」
メンルェトも咳払いをしつつ懐記から貰った家に住むというので、図書館の庭での共同生活が始まる。
「ま、好きにしろよ。明日は祭だからとっとと休もうぜ」
「あなたは城に戻った方が良いのでは?」
「あ、良いだろ。城でもここでも俺の国だ」
「そうじゃな、ワシも休む」
「部屋増やす…」
グステナにオジカトも家に入ろうとするのでそれぞれ子ども達を抱えてグローリーが部屋を拡張する為と中の案内にと入って行く、アコミア達も後に続いて入っていく、明日は祭だ余計な事は言うまいとメンルェトも続いた。
第88話 親友
祭りの前日の夜、まだまだ商品や不用品が運び込まれていく、祭りの最中も追加の商品や不用品は幾らでも追加していこうという話しになり賑やかだった。
屋台も酒も売られ肉が焼ける匂い、スープを買ったノイズとナチェは地面に座り一休みしていた。
「もう祭が始まってる気分だな」
「うん、賑やか。もう少ししたら明日の為に帰ろうって…」
「どうかした?」
「ううんなんでもない」
ふとノイズが少し先の場所に目を留めナチェが首を傾げる、何でもないと首を振りスープに付いていた固めのスライスしたパンを浸して食べながら人の流れを眺めた。
「気づかれた…勘の良い」
「彼らならば良いだろう」
そう言うのは燕碑とファーツコクスの2名、彼らがいるのはオフィスビルの上の会議室、ノイズはそれに気づいた様だった。
「微妙に不便な能力だな、貴方の術は」
「…仕方ない、これが私の限界だ」
会議室から見える外には燕碑と侍従達が天界からの不要の品々を運び支持を出している姿が見える、燕碑の能力によって分身が外で動いている。
「それで?話は?」
「ジュカを勝たせるつもりか?」
「さあ?それはジュカの実力による」
燕碑の眼差しにファーツコクスはお道化る様に笑う、お気に入りのコーヒーを飲む姿は優雅だ。
「ラグージェが勝てば強羅城にラグージェを招く」
「それはそうだろう?彼の親の片割れはあそこで眠っている」
「ジュカが勝てばどうなる?」
「何も変わらないだろう、親に会いたいとラグージェの様に言わなければ」
「……」
「心配しなくても良い、彼の親は私だ」
「そうだ、だからファーツコクス……親友である君に託した。私の私達の大切なものを」
「そう、真っ直ぐに育っているだろう?」
「そうだ、感謝している。君には返せない程の恩がある」
「構わないさ、独りでいるのも2人でいるのも変わらない」
燕碑は寂びそうに頷く、この手で手放した物、託した物はファーツコクス…悪魔の手で真っ直ぐに育っている。
「ラグージェには現実を見る時が来ただけ、ジュカには本気が出せる時がきただけ、私と君には何が訪れる?」
「願わくば真実を語る時が訪れない事を願う」
今のままで良い今のままで良かったのだ、ラグージェが1位、ジュカが13位の《ホローリングレース》、悪魔達の慰み、天使達の暇つぶし、耀帝の退屈しのぎ今この均衡は終わり、《ストマーズ》は新しい時代は異界人達の手によって幕が上げられた…。
龍皇国の祭典が前日に迫った夜の皇城のニジェルガの執務室、最終確認も済み明日朝から時計塔のお披露目から祭が始まる、ニジェルガは珍しく眠れぬ夜を過ごしていた。
傍らのスマートフォンの待ち受けはラージュと子ども達、それに笑みを零し準備が終わった広場に目を向ける、龍皇国皇帝の任期は約700年~千年…次代の龍皇帝は現れない。
「………」
「失礼しますよ、陛下」
そう考えていればノックがされニジェルガの産みの父親が柔和な笑みを浮かべ茶器を手に執務室へ入る、ニジェルガもよく似た笑みを浮かべソファに父親を座らせ茶を用意する。
「父上、どうかしたのか?」
「どうもしてないよ、理由もなく息子に会いに来ただけさ」
「そうか」
ニジェルガが皇帝候補に上がった際に敬語を止めるように言った父は何処までも子ども達、特にライガルを溺愛する温厚な父親は果物の香りのする茶を飲む。
「君の伴侶が現れたと聞いたよ」
「ええ、向こうも王という立場だ」
「そう、難しいかな」
「私は気が長いので」
「私に似てライガルも気が長いからね」
互いにクスリと笑い合う本来なら酒でもいう所だが明日は大事な祭典だ、少し話しをし父親は出て行く、ニジェルガは気持ちが落ち着き少しして眠りに就いた。
「魔人の子どもを此処で育てるのか?」
「ま、いんじゃね」
「馬鹿者、幼子とは言え魔人じゃヒスンスがいれば心配はないがの、良いのかこの貧乏な貧しい国に大事な御子を預けて」
《ウワムス王国》の図書館で魔人の子ども達3名とグローリー達に、グステナ達とオジカトも合流しオジカトがグローリーに尋ねる。
「この子達が選んだから…お願いします」
「俺も手伝う」
「俺もな」
「俺も此処から《ガルディア》に通うさ」
エスティアとアコミアとキッフが手伝いを買って出る、ヒスンスもずっと図書館にいるから構わないとの事なので、グステナとオジカトも大切な子ども達を預かる事に決めた。
「私もここにいますよ、トラング殿達の家は……コホン…なので此処で」
メンルェトも咳払いをしつつ懐記から貰った家に住むというので、図書館の庭での共同生活が始まる。
「ま、好きにしろよ。明日は祭だからとっとと休もうぜ」
「あなたは城に戻った方が良いのでは?」
「あ、良いだろ。城でもここでも俺の国だ」
「そうじゃな、ワシも休む」
「部屋増やす…」
グステナにオジカトも家に入ろうとするのでそれぞれ子ども達を抱えてグローリーが部屋を拡張する為と中の案内にと入って行く、アコミア達も後に続いて入っていく、明日は祭だ余計な事は言うまいとメンルェトも続いた。
第88話 親友
祭りの前日の夜、まだまだ商品や不用品が運び込まれていく、祭りの最中も追加の商品や不用品は幾らでも追加していこうという話しになり賑やかだった。
屋台も酒も売られ肉が焼ける匂い、スープを買ったノイズとナチェは地面に座り一休みしていた。
「もう祭が始まってる気分だな」
「うん、賑やか。もう少ししたら明日の為に帰ろうって…」
「どうかした?」
「ううんなんでもない」
ふとノイズが少し先の場所に目を留めナチェが首を傾げる、何でもないと首を振りスープに付いていた固めのスライスしたパンを浸して食べながら人の流れを眺めた。
「気づかれた…勘の良い」
「彼らならば良いだろう」
そう言うのは燕碑とファーツコクスの2名、彼らがいるのはオフィスビルの上の会議室、ノイズはそれに気づいた様だった。
「微妙に不便な能力だな、貴方の術は」
「…仕方ない、これが私の限界だ」
会議室から見える外には燕碑と侍従達が天界からの不要の品々を運び支持を出している姿が見える、燕碑の能力によって分身が外で動いている。
「それで?話は?」
「ジュカを勝たせるつもりか?」
「さあ?それはジュカの実力による」
燕碑の眼差しにファーツコクスはお道化る様に笑う、お気に入りのコーヒーを飲む姿は優雅だ。
「ラグージェが勝てば強羅城にラグージェを招く」
「それはそうだろう?彼の親の片割れはあそこで眠っている」
「ジュカが勝てばどうなる?」
「何も変わらないだろう、親に会いたいとラグージェの様に言わなければ」
「……」
「心配しなくても良い、彼の親は私だ」
「そうだ、だからファーツコクス……親友である君に託した。私の私達の大切なものを」
「そう、真っ直ぐに育っているだろう?」
「そうだ、感謝している。君には返せない程の恩がある」
「構わないさ、独りでいるのも2人でいるのも変わらない」
燕碑は寂びそうに頷く、この手で手放した物、託した物はファーツコクス…悪魔の手で真っ直ぐに育っている。
「ラグージェには現実を見る時が来ただけ、ジュカには本気が出せる時がきただけ、私と君には何が訪れる?」
「願わくば真実を語る時が訪れない事を願う」
今のままで良い今のままで良かったのだ、ラグージェが1位、ジュカが13位の《ホローリングレース》、悪魔達の慰み、天使達の暇つぶし、耀帝の退屈しのぎ今この均衡は終わり、《ストマーズ》は新しい時代は異界人達の手によって幕が上げられた…。
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