あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
596 / 867
第013部 序列第13位と生きた山脈×まだまだ続くよ空の旅

第10話 奴隷落ち冒険者パーティー

しおりを挟む
まさか…こんな目に逢うとは…いつもの護衛運搬依頼だった、C級の冒険者パーティー《鋼の足》のメンバー4名は2名を片足片腕を損失し残った2名も満身創痍、依頼主の商人も瀕死の重症、従者2人を死なせてしまった。
「現在お前らを襲った盗賊共の行方は知れずだ、手際が良い。契約上商人の護衛失敗に関しての処罰は無いがお前達が負った傷の治療の金だが」
「払えるわけねぇな」
「奴隷落ちで金を貯めて買い戻す、仲間の治療を頼む」
「腕や足を元に戻せる程の物は冒険者ギルドでも商業ギルドでも用意出来ん、出来ても依頼主が優先される」
冒険者ギルドの小汚ない椅子に座ったギルドマスターが腕を組み渋い顔をしている、依頼主の商人とて荷を奪われた挙げ句自身も瀕死だ、下手をすれば《鋼の足》よりも莫大な借金を背負う。
「……ああ、勿論だ。護りきれなかった」
「……すまなねぇ事をしちまった」
《鋼の足》のリーダーともう1名も傷が完全に癒えた訳でもない、たった4人の冒険者パーティーに数十名の盗賊……命からがら逃げるのに必死で無我夢中でなんとか荷を捨て商人を抱えて此処まで戻って来たのだ。
「お前らはこの《エンビ》の看板パーティーの1つだ、なるべく金が嵩まないように…」
「ワゥンダ、失礼するよ」
「なんだ、スカンド、今大事な用が…」
「その件ですごい話しを持ってきたよ」
冒険者ギルドの一応の応接室に入って来たのは馴染みの商業ギルドのマスター小太りのスカンド、その後ろには数名の青年達が立っていた…。

「まず、話しは皆さんの怪我の治療が終わってからにしますね」
「すぐ治るから」
綴と詠斗がワゥンダ達に案内されて転移でやって来た治療院で、横たわり苦しむ《鋼の足》のメンバーと息も微かに巻かれた包帯から血が滲み出ている商人のケガをレグの回復魔法が入った魔石を使い、手足と怪我の再生と治療を行いゆっくりと3名の意識がはっきりと戻った。
「俺の足…」
「腕が…リーダー!腕が!」
「ああ、俺達も治して貰った」
「うう!おまえら!よがっだよぉ」
《鋼の足》のメンバーが泣き笑い仲間同士喜び合う、商人も目を覚まし命が助かった事にほっとするが失った物の大きさに複雑な表情を浮かべていた。
「お前らの傷を治したのはあっちだ、今使った魔法は……俺やこの治療院の薬師達も忘れる。奴隷の手続きがあるからな」
「勿論だ、仲間や依頼主のケガと腕と足…一生掛けて払える物ではないだろうが尽くさせて貰う、俺は《鋼の足》リーダーヤスガだ」
「あ、ありがどぉな。俺はトチハだぞ」
「足と怪我ありがとうございます、俺はチャタパです」
「腕をありがとう、恩は一生掛けて返す。俺はオフタフだ」
「私は1人でやっている商人のチヒクグと申します、怪我の治療をありがとうございます…」
「元気になられて良かったです、僕達は《アウトランダーズ商会》の者です。詳しい話しをしたいので、僕達の食事をしながらでどうですか?」
「い、いやそんなこちらはこれから貴方に買われる奴隷の身だ」
「気にしないでよ、チヒクグさんも」
「俺も良いか?丁度飯時だし、アコミアとキッフもいるしなーお前ら此処から離れるんだろ?別れの飯だ!」
「おい、ワゥンダ…」
「良いですよ、スカンドさんも一緒に」
「い、いやあ、いいんですか?」
「ギルマス、酒はないよ。また来るし店やるし」
「そうだな、アンタ酒癖悪いし」
「固いこと言うなよー」
「じゃ、行くよ」
「おお!転移かすげえよな!どこ行くんだ?」
「空」
『え?』 
アコミアとキッフがワゥンダの乗っかりに呆れ、詠斗に転移で何処に向かうか尋ね、返って来た答えに声を揃えた…。

「…まだ飲んでいるのか?」
授業が終わり子供たちや授業を受けていた者達と話や質問に答え、もう間も無く夕方になるであろう時間にイシュターが食堂へと戻れば、まだ飲み会は続き大勢の人々も加わりごちゃごちゃになっていた。
「あちゃ、ここで飯食えるか?」
「崇幸っち達ラウンジにいこ」
「カレーにしました」 
「お、それは嬉しいな行こう。イシュターさんは?」
「私はここで適当につまむ」
「おけ、食堂はまだまだ料理してるし適当に食べて」
「ああ…」
「お、イシュターなんか酒ない?」
「ある」
「お、飲ませてくれよ」 
「古代龍の酒かよ、いいじゃん」
「それは興味深い、是非」
「…」 
地べたて酒瓶や盃、ビールの缶やワイン等の飽き容器を転がし兎に角飲んで食べるジラ達、酒瓶を抱えて寝ている民達や具合が悪くても更に酒を飲む者達、ひっちゃかめっちゃかな状況にイシュターは静かに収納から酒の龜と杯を出し風魔法で注いで各自に渡した。
「ん?なんか色んな匂いがするな」
「んぁ、のめのめ」
「古代龍の酒ありがたく…」
「これは…」
『うっ、げぇ』
イシュターの酒を飲んだ者達が一斉に口を抑え呻く、1口飲んだだけで喉が焼ける、熱い、身体の全身の血が沸き立つ様な体内に入れたら良くない物を入れた…あ、変な汗出て来た。
「酔いは冷めたな」
「お、おい、イシュター!何だこの酒」
「…精霊王から献上された薬酒(やくしゅ)だ…普通は薄めて飲む」
「はぁ!?そのまま飲んだぞ!きっつ」
「いや、いける…」
喉を押さえ呻くジラ、シュリは口を両手で塞ぎフォンはもう顔が青白い中、マユラの目は据わり薬酒を飲んでいた。
「………風呂に行ったらどうだ?酔いは冷めただろう?薬酒だからな滋養強壮、回復、酔いも冷める…味は飲んだ通りだ」
「う…」
「風呂から戻ったら片付けをしよう、私も手伝う」
「ああ、ごめん。飲み過ぎたな。しっかし不味い酒だっ…マユラ?」
「マユラ様!」
「あ…もうダメ…」
「フォン!?」
イシュターの冷えた眼差し苦しむジラはイシュターの視線の先で、酒や食べた食器等を片付けてくれているゴーレムやヒヨコやおりがみの子達に、食器を運ぶ動物やお化野菜達…を見たジラが決まり悪そうにしてイシュターに謝ればマユラが倒れシュリが駆け寄り、フォンが口元を押さえ外に出ようとすれば酒瓶を抱えて気持ちよさそうに寝ているフェシェスタの足に躓いた。
「う~んフォン?なぁに~」
「うっ…ダメ…」
「え、え?な、何?え?……にゅぎゃあぁぁぁぁ!!!フォンが吐いたぁ!」
「お、おいフォン大丈夫か?」
「むり」
「うぇぇぇーフォンにはかれたぁ」
寝起きで酔った弟に吐かれ吐しゃ物まみれのフェシェスタ、半泣き状態で途方に暮れていると動物達が慰めてくれた。
「う、う、うぇ」
「ほら、フェス、風呂行こうぜ。フォンは運ぶから、シュリもマユラ担いでくれ」
「う、うん…」
「そうだな」
ふらふらしているフォンをジラが背負い、シュリがマユラを抱えてほぼ泣いているフェシェスタを慰めつつ風呂へと向かった。
『イシュター様、その薬酒を良ければ分けてくれませんか?《ナイジアナ皇国》の貧民街で栄養や滋養が必要な方々に…貴重な物かと思いますが…』
「構わない沢山ある…果物を擦った物や蜂蜜、ミルクで薄めて飲めば良い。作り方はこの本に載っている」
【ありがとうございます、すぐに神々に頼んで運びます】
「ああ…」
風早から頼まれ収納空間から樽をいくつも出せばすぐさま樽が消えていく、嘗て物好きな精霊王が作った不味い酒…酒が好きなドラゴンなら飲むだろうと押し付けられた物だった。
「役に立つなら良い…今度会ったら…味をどうにかしろと伝えて、また貰おうか…」
イシュターはそう言い、地面に転がった酒瓶を拾い始めた…。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒の創造召喚師

幾威空
ファンタジー
※2021/04/12 お気に入り登録数5,000を達成しました!ありがとうございます! ※2021/02/28 続編の連載を開始しました。 ■あらすじ■ 佐伯継那(さえき つぐな)16歳。彼は偶然とも奇跡的ともいえる確率と原因により死亡してしまう。しかも、神様の「手違い」によって。 そんな継那は神様から転生の権利を得、地球とは異なる異世界で第二の人生を歩む。神様からの「お詫び」にもらった(というよりぶんどった)「創造召喚魔法」というオリジナルでユニーク過ぎる魔法を引っ提げて。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...