あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第013部 序列第13位と生きた山脈×まだまだ続くよ空の旅

Stage.7-26 命が軽い場所 1 何処が牢獄か?

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荷車に乗せられ此処に運ばれた内残念ながら2名は息を引き取った、骨と皮の老いた者達…蒐集家は重い病だったと言い、大河と千歳は次の転生は幸せな生を祈りを込めて丁重に荼毘に付した。
ラジカが持っていた壺に骨を入れて収納にしまい隣の千歳の様子を伺う、人の半身を吹き飛ばし2人を救えなかった千歳の顔色は悪い、大河は後を引き受けると千歳を休ませるようにラジカに伝え拒む千歳を連れてラジカは《空船》へと戻った。
「千歳さん、決闘会が本番だ。それまでは休んでくれ」
「大河君…」
「気にする必要はありませんから、千歳。あの魔人はわざと貴方の攻撃を受けた、あの魔人程の実力なら貴方程度の未熟な魔王のスキルも魔法も防ぎ切る。貴方の反応を見たいが為に受けたんですよ、それだけです。死んだ者も病と寿命です」
「タナトスさん…」
「一応励ましてくれているようですよ、千歳。戻りましょう」
「ラジカ…分かった…大河君…お願いするよ」
「はい」
大河が憔悴する千歳に休む様に言いタナトスが後押ししてくれる、ラジカが千歳の肩に手を乗せ転移で連れて戻った。
「タナトスありがとう」
「真実を言っただけですよ」
「ああ、それで良い」
「そうですか、私は行きます」
「ああ」
大河は真摯にタナトスに礼を言い、タナトスは無表情にまた何処かへ行ってしまった。
大河も蒐集家と共に治療を施す為に店に向かう、牢獄…いや命と死が軽い場所のように大河には思えた。

牢獄の様な場所…ヴリトゥユはそう思い、皇城の長い豪奢な廊下を自室へ騎士を2名伴い歩いている。
何をするにしても、何処に向かうにしても、常に騎士という見張りが付き従い、1日の全てが事前に決められそれが狂うという事はほぼ無かった。
自由という物は皇帝に無い、全てが事前に決められ渡された予定に従い行動をとる、そして皇国を皇帝という職務を務めるだけだった。
歴代の皇帝達は皇妃と後宮にいる側室達と会う日も時間も、営みさえも決められそれを予定に沿って行っていた、歴代の皇帝達はそうして消費されて来た。
ヴリトゥユもそれに意義はない幼少の頃からそう教育を受けて来ている、現在この国に皇妃や側室がいないのは次代の皇帝が既にいるからだった。
余計な血の争いは無用と皇太后…つまりヴリトゥユの母の意思、ヴリトゥユにも異論はないと思っていれば自室に着き鎧に身を包んだ監視…基騎士が扉を開き自室へと足を踏み込めば侍従達が恭しい手つきで服を替えていく、皇族として服など1人で替えた事もない、着るのも脱ぐのも面倒な服、室内着すらも豪奢な刺繍を施され、夜食にと毒見が済んだ酒と果物の焼いた肉と堅めのパンが数切れ、木の実の蜂蜜漬け、どれも最高級品がテーブルに置かれていた。
支度が済めば侍従達が下がり、湯あみの時間迄の僅かなこの刻が1人になれる、窓の外の景色…近いようで遠い牢獄の位置を眺めた。
「…………」
ヴリトゥユは無言で暫しの間、虚無を抱えた眼をしていた。

「ふんふ~んふんふん」
「ご機嫌ですね」
「はい~2日後の決闘会が楽しみですぅ」
「お、俺も楽しみです」
『あーい』
「ふふ~」
白い鉱物で出来た部屋の中、フゥは大層ご機嫌で鼻歌交じりにくるくると回りサニートと支配者はクスクスと笑い、子ども達は不思議な物を見ているような目できょとんとしていた。
「貴方がそう言うのであれば私も楽しみです」
「はい~」
「俺も頑張ります…」
「無理はしないでくださぁい良いんですよぉ楽しんでくださぁい」
「は、はい」
サニートがもじもじとしながら頷く、支配者も淡い笑みを浮かべ花の香りのする茶を楽しむ。
「俺…剣の訓練します」
「どうぞぉさすがですぅ」
『がんば~』
サニートがうずうずし部屋を出て訓練へと向かう、フゥも支配者もニコニコと見送り、子ども達も応援している、寝る時間だと従者達が子ども達を連れて行き、フゥと支配者だけになった。
「フゥ」
「はぁい」
「サニートが敗けると思いますか」
「思いますぅ」
「私も剣の準備を…」
「支配者様は敗けませんよぉ」
「そうですか」
「はい~お茶とお菓子をどうぞ~」
嬉々としてフゥがお茶をポットから注ぐ、香りの良いお茶…常に支配者には良質な物が供され外界の情報など然程耳に入らない、最期に此処から出たのは何時だろうか…そうだ前に自分を勇者と名乗る男との決闘以来だ、自分を勇者だと語った男は勇者等では無かったがどうして鑑定で分るような嘘を言うのか支配者は首を傾げたがあの時以来…あれから幾年月が経ったのか…。
ずっとずっと此処に辿り着いた時から傍にいるフゥ、彼は自分の事は何の取り柄もない下位の魔人だと言いふらふらと何処かへ行っては戻りを繰り返す、不思議な存在だった。
そしてこの牢獄の支配者は知らない、何も…フゥが不必要だと思う全てを排除され、此処で無為な刻を過ごす。
物心ついた時からこの牢獄の部屋にいる支配者、誰も支配者の名を呼ばず知る者もいない、フゥだってそうだ本当に彼がフゥという名前なのかも本当に魔人なのかも目に映る鑑定だそう指しているからそうだと支配者は思っている。
飢えも寒さも寂しさも無いから貴方は幸福だとフゥに教えられ生きている、それが虚しい事だと支配者は分らない…。
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