上 下
576 / 807
第013部 序列第13位と生きた山脈×まだまだ続くよ空の旅

第7幕 第18話 序列第13位の魔王 ×Stage.7-18 不可解な魔人 

しおりを挟む
 第7幕 第18話 序列第13位の魔王
「人型じゃないんだな、可愛いな」
「弱っているじゃん」
「何食べるのー?」
『もちゃぁ』
懐記達と合流した崇幸達、バスの中でノイズは再会出来たジュナイ達の事を外神と懐記と共に診ていた。
崇幸の腕に抱かれた青い毛色の魔王は弱っている、懐記達にすがって来た動物や魔物達も保護しバスの奥の空間にいる、そろそろ《黒鳶》に戻ろうかという話しも出ているが山をどうするかも決めかねていた。
「一先ず休憩だな、詠斗とイシュター達に連絡しておく」
「飲み物とお菓子と干し肉とかー木の実とかーマシュマローがいいなー」
「俺、ドーナツとミルク」
「俺は干し肉を貰う」
ジラがスマートフォンで連絡しフェシェスタが収納袋からおやつを出して並べ、フォンやシュリが椅子に座って食べ始めた。
「ノイズっち達も食べてジュナイっちも、食べて山の件決まったら《黒鳶》に戻ろ。で、そっちの子は何食べる?千ちゃんは神様ズと話してるし」
「ああ、ありがとう。他の皆も目が覚めなくて…」
「その原因は神々に聞いてみます」
「……神って本当なんだな…魔王も…嘘みたいな話しだ…物語みたい」
温かいミルクとクッキーやドーナツをトレイに載せた物を懐記からノイズが受け取りぽつりと呟く、友人と再会出来てほっとしたのか気が抜けてしまっている。
「ほんとほんと、現実」
「うん…」
「ノイズそれ食わせたらジュナイを風呂に入れてやろう、他は身体を拭くから」
「手伝うよ」
「俺も」
ギーギスが声を掛け崇幸とチェカが一緒に奥へ向かう、千眼は神々に13位の魔王の衰弱や山の事、目覚めないジュナイの仲間達について尋ねていた。

『衰弱…魔力の制御が不安定ですね、13位のスキル活性化が常時展開されています』
『いまから魔王を隔離するなのです、それで活性化の展開が収まるなのです』
『今眠っている彼らは…魔王の活性化で転じた生き物を食べて消化が出来ていない、ソードブレイカーの友人は消化出来たのか食べていないのでしょう。人から少し離れてしまいましたが《傭兵王》よりは人寄りです』
『力も弱いですね、数外個体魔王と同じ括りで今は問題ないでしょう』
「……頼む…それでどやって取り出す…」
『外神か貴方が取り出す他無いでしょう』
「分かった…13位を隔離する」
神々との通話を終わらせソファに横たわらせた13位の魔王の周辺に淡い光沢の膜が覆われる、目の周辺も毛で覆われ良く見えないがぐったりしていた。
「これで活性化は落ち着く…彼らが食し体内に残った者を取り除く…」
「分かりました視てみます」
外神と千眼が眠り続ける彼らの元へ行く、ジラはこれで此処やるべき事はしたと《黒鳶》に戻りイシュターと酒でも飲むかと思い干し肉を摘まんだ。

Stage.7-18 不可解な魔人
「あらあらら~大河さんもー千歳さんも~意地悪ですぅ最上位様を連れてくるなんて」
「メシュレラだ」
「ヴィッセです」
やや焦った声を上げるフゥ、千歳と大河とラジカの他にメシュレラとカトゥーシュカ、フィズにやや不機嫌なタナトスがフゥの家に収まらず外で挨拶を交わした。
「フゥと申します~ここの代理者していますぅ」
「そのようだな、支配者の事を聞いても答える気はないか?」
「そちらにも都合があると思いますが何か少しでも教えて下さい」
大河と千歳の話し合いで案内にヴィッセとメシュレラを呼ぶ事にしたのは、この目の前の食えない魔人の隙を突く為だ、少々強引な手だと思うが流石に少し慌てるフゥだが口は見た目よりも固かった。
「それは教えません~決闘会に勝利したら分かりますよ~」
「私は頼んでいる訳ではない、力づくで訊き出す事も出来る。お前にも地位と立場があるようだが些かこの場所は歪だ」
「ひぇー歪ですし歪んでいますよぉ~だって牢獄ですもん~脅さないでください」
「貴方は罪を犯したのですか?此処から出られるように取り計らいますよ」
「あはあは~アタシは好きで此処にいるんですーお気遣いどうもです~アタシから情報を聞き出したければお願いじゃない方法で訊き出して下さいよぉーその方が此処らしくて良いですよね~」
メシュレラとヴィッセの顔が僅かに曇る、目の前の魔人は明らかに違う、けらけらと笑い情報は出さないと確固たる意志を感じる中タナトスが退屈そうに一歩前へ出る。
「勝てば良いだけの事、決闘会を行う場所に案内して下さい」
「は~い挑戦者様ごあんなーい」
「私は戻る、ヴィッセ来い」
「分かりました、皆さん失礼します」
メシュレラはヴィッセを従え転移を行う、ヴィッセは後ろ髪引かれつつも戻って行った。

「タナトスさん、ダンジョン攻略中にごめんね」
「…いえ余計なものが来たので丁度良かったですよ」
「はいは~いここが決闘会の会場ですよ~数多の挑戦者の血を吸った場所です」
案内されたのは街の奥のオンボロな木を組み合わせた粗末な入口、その周辺には無気力で目が虚ろな痩せた人々が座り込んでいる、千歳や大河は必ず彼らを救うと今は目を逸らしダンジョンで身体を慣らしていたタナトスとカジノが終わって一休みしていたカトゥーシュカ、ベルン達の店の手伝いが終わったフィズ達もまたこの牢獄の街の惨状に顔を曇らせていた。
「数少ない娯楽場所ですから観客が多く入れるようにしています~」
「只の空き地にしか見えないがな、ルールは?」
「相手を戦闘不能にするかー武器破壊かー一応引いている線を超えた方が敗けと後はー死んだらお終いです」
木で簡単に組んだ入り口を進んだ先、何もない広場よく見れば丸く線が描かれその周囲で観客が立ち見で観戦するというスタイルで、ルールはフゥが教えてくれた。
「貴方はでないんですか?」
「まっさか~アタシは無力な下位の魔人ですから~出ませんよー弱いんですぅ」
「そうですか」
『はいはーいみなさん、こんな粗末な場所でタナトスちゃんや素敵なお兄様達のカトゥーシュカお兄様とフィズお兄様が決闘なんてダメよ~ダメダメ』
タナトスがフゥに質問すれば首を振り、千歳のスマートフォンから識の声が聞こえてくる。
『建て替えを要求するわ!』
「だそうだ、代理者殿どうする?」
「あのぉ一応ここ牢獄なんですぅ資材も金も人手もありません~」
『だぁーいじょうぶ!ゴーレムちゃん達に任せてちょうだい!資材もこっちもちよ~』
「あーそれならいいですよぉどうぞどうぞ」
『じゃ可愛いゴーレムちゃん達~よろしくぅ』
フゥは識とフィズからの希望に特に考えもせず了承し、開いた空間からわらわらとゴーレム達が現れ工事が始まっていった。
「なら、工事が終わったら決闘会の開催かな。識さんどの位で完了するのかな?」
『そうねぇ~3日位かしら~』
「なら、4日後に決闘会を始めるか…フゥとタナトス達はそれでいいか?」
「構いません、では私は戻ります」
「私も問題ない」
「俺も構わない」
「承知しましたぁー」
決闘会の開催日が決まりタナトスはさっさと腕輪の転移石を使いダンジョンに戻って行く、この後はフゥと同程度の権力者に合わせて貰う為に観光込みで移動を行う。

「神々、あの魔人は何者だ」
『怪しい…おかしい…でも魔人…下位』
『そちらと同じだ、何も出ない』
「我々の指示よりも支配者の指示が優先」
「ま、そいつが最上位の可能性もあるな」
「それは、タナトス達が決闘会で勝たなきゃ出て来ないからなー魔人の気配もアイツのしか分からないし」
カイム達の拠点は現在《ネド》の民を避難させているテントの中、蒐集家も彼らの体調を診て薬を出していた。
メシュレラとヴィッセも合流し神々とスマートフォンで連絡を取り、不可解なフゥの事を尋ねるが答えで得られる物は無かった。
「勝ったら吐かせるぞ」
「石像の件もありますし、彼が何かを知っているかもしれません」
「神々四千年前の魔人と俺らって区別つくのか?」
『ふむ、つかん』
「つかえねぇな」
『そもそも魔人戦争の事も此方は把握していない、一切不明だ』
『勝てばあの魔人が嘘を言わなければ分る事だ』
『応援…手助け…する』
「神々感謝致します」
「おーおー役に立てよ」
「カイム!神々助かるよ、ありがとう」
ヴィッセが深々通話口の神々に謝辞を述べればカイムが偉そうに言いヤハネがあわわとカイムの口を抑え会話が終わる、黙って考えて込んでいたメシュレラだったが《ネド》の民の手伝いを行いに蒐集家の元へ向かう、人手が足りないと応援を頼む事にした…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...