あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第013部 序列第13位と生きた山脈×まだまだ続くよ空の旅

第7幕 第8話 捜索 ×Stage.7-8 燈火とタナトス

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Stage.7-8 燈火とタナトス
「さ、食べるといい」
「たくさん食べてね」
「これも美味しいよ」
「ミルクも飲んでね」
「慌てなくても沢山あるよ」
貧民街の子ども達を招き燈火が収納からパンや果物、干した肉を出してミルクを渡せば無我夢中で3名の獣人の子ども達が食べていく、燈火が鑑定すれば栄養失調、親は不明と結果が出る、遺跡の石像の件もこの子達の件も千歳や大河に報告してなんとかならないかと思案する。
「貧民街には君達みたいな子供が他にもいる?」
「…………」
燈火が尋ねれば食べる手は止まるが返事はしない、燈火は答えなくていいから食べるように促す。
「答えないですよ、彼らの元締めみたいな存在に物乞いでもなんでもして金を運んでくるように言われているんでしょう。ああ、間違えました喋れない様にされているんです」
タナトスの言葉に獣人の子ども達の耳と尻尾が震える、幼い子供は涙を浮かべていた。
「え……」
「燈火…子供たちの首に…」
「首輪ですね、逃げられないし喋れない」
「っ…ひどい…」
タナトスが燈火を煽るように言い、ウォルゾガやニスムが首元を指せば首輪が嵌められていた。
「可愛そうですね、罪もないのに只貧民街に生まれ落ちたという理由で奴隷以下の扱いを受け、今日の食事は貰えた、明日の事は誰も保証等してくれない。何も貰えず戻れば彼らの上が彼らに酷い虐待をするでしょう、その姿も哀れですがもっともっと同情を誘う様にと目や足を潰されるかもしれませんね」
タナトスが薄ら笑いを浮べ燈火の不安を掻き立てる、燈火は息を呑む、きっと大河や千歳が…魔王だって魔人だっているのだなんとかしてくれると、だから大丈夫だと燈火は高を括っていた。
「大河君や千歳君が手を貸してくれます、この子達は貧民街に返しません」
「自分でなんとかしようとは思わないんですか?他者に頼み自分は彼らを助けたと優越感を味わうんですか?」
「僕にそんな力はありません、でも彼らを渡さない事は出来ます」
「いいえ、無理ですよ?此処は皇国、皇帝が支配する国。魔王だろうが神だろうが皇帝の意に背けば罪人です。なぜこの皇国の皇城の側に貧民街などがあるのか分かりますか?」
「いいえ」
「見せしめですよ、燈火。皇帝の意に反し罪を犯せば2度と出られない牢獄がそこにあると…彼らを賓客の前で見過ごした事が皇帝の耳に入れば今いる近衛、騎士達は罪人としてあの場へ放り込まれる。この国に処刑はない、必要ないからですよ地獄はすぐ傍にいる、その地獄から罪人が出ればその場で処理される、それが《ナイジアナ皇国》」
燈火は今自分がやろうとしている事は、この国で誇りを持って仕え、自分達を護ろうとしている者達を罪人にしようとしている……獣人の子ども達を返せば只では済まない、もしくはこの場で処理される……。
「………」
「どうですか、燈火。私と取引をしませんか?」
「取引?」
「はい、私を逃がしてはくれませんか?そうすればこの子達を救ってみせます」
穏やかなタナトスの声、燈火もタナトスの目的が最初からこれだと分かり……躊躇う、いや考えればタナトスの手を借りずともこの子達を助け、兵達が罰を受けずに済む方法はある筈だ。
「この子達を助けた後、私を逃がしてくれればいいんですよ?難しい話では無い筈」
「貴方はグーローリー君の大事な人を取り戻すための少ない手がかりだと教えて貰いました、そんな事出来ません」
「貴方が私を逃がしても誰からも責められないでしょう、貴方は愛くるしいですから一言謝れば皆許してくれますよ」
「だとしても、僕には出来ません。貴方を頼らなくてもこの子達も皆さんも罰せられない方法を考えます!」
「どうやって?」
「それは……」
「タナトス、もうよせ。燈火を責めるな、千歳と大河を呼ぶ」
「どうぞ、呼んでどうにか出来るのならばお好きに」
「お前は出来るんだよな?」
「ええ、私は出来ない事を出来るとは言いません」
「そうか…分かった。燈火、子ども達は貧民街に渡さない」
「ウォルゾガさん…」
それまで黙ってやり取りをみていたウォルゾガが懐からスマートフォンを出して、千歳に連絡を取る。
「タナトスちゃん…」
「……」
タナトスは口を開かない、本気で逃がして貰おうと思ったのかカーテスも心配そうにタナトスと燈火を見ていた…。

第7幕 第8話 捜索
「そ、そういうわけで今その周辺を歩いて捜索中…」
『そうか、こっちは車で走っているが…魔物や動物ばかりで…頂上に向かっているつもりなんだが…頂上に近づけば近づくほど遠ざかっていく感覚だ』
「あーそれ分る、そっちも気を付けて」
『懐記君達もな、あまりこの山に長居しない方がいいだろう』
「ん、そうね」
懐記が崇幸との通話を切り、食事を終えてバスを外神の収納に入れて捜索を開始する面々、特にノイズは山の植物の変化に改めて驚いていた。
「もう元の山の見る影もない…子供でも登れて薬草やキノコや…果物も沢山実っていて…」
「ノイズ、感傷に浸るのは親友を見つけてからだ」
「あーダメだな。視界も匂いもぐちゃぐちゃだ」
ギーギスとフォンもノイズの側で周囲を探る、人の気配は感じられない。
更に奥へと進む、茂る草花に外神が足を止めてまじまじと見つめる。
「外神っちどうしたん?」
「この植物…この大陸にない物です…魔王がこの辺りにいたようですね、今は気配がありません」
「そ、んー今一番激しく形が変わっている所って何処?」
『懐記様、こちらが最新のこの山の形状です。遅くなりました、すぐに変わりますが…』
「さんきゅ。風早っち、崇幸っちにも送って」
『先ほど送りました』
「これは…魔王の移動経路ですか?」
「ま、たぶんね。ゆっくりだけど動いている。どこに向かっているわけ?」
「懐記さんはすごいですね、こんな短時間で足取りを掴んで…」
「そう?魔王の足取りよりかはジュナイっち達の足取りの方が早く知りたいけど」
外神と懐記の目の前に浮かぶ画面には山の図面に形状を変えて行くまるで脈の様に波打つラインが敷かれ、それが魔王の足取りなのだろうかと懐記は仮定し、崇幸達に追って貰う事にした。
「間も無く夜ですね、灯りを灯します…」
「ん」
魔法具のランタンに灯りを灯し宙に浮べ、捜索は夜通し続いた…。

「今が昼か夜かも分からない…誰も起きない息はしている…なんで俺だけ起きているんだろう…」
洞窟の中にいるジュナイ、仲間達は未だ横たわり眠っている…息も安らかで…だが置いて此処を離れられない。
ここ数日キノコや木の実ばかり…いい加減肉が食べたい…と思う程度には気力が出て来た、弟も心配だ…。
「ノイズ…俺は此処にいる…ミュナイはどうしている?」
蹲りそればかりを口にする、あの町の住民でもない彼を引き留めたのは自分だ、身勝手に酷い事を言って自分の弟を頼み…会えたら謝りたい…。
「また雪…」
洞窟の外では雪が降る、寒さは無い…ジュナイは目を閉じた…。


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