あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第013部 序列第13位と生きた山脈×まだまだ続くよ空の旅

第01話 空の旅

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「父上、おいしい」
「沢山食べて…エティエ」
「これもおいしい…」
「これもやる!」
《黒鳶》の朝、起きた魔人のエティエと名付けられた少年が食堂に用意された朝食を平らげていく、イザラとイデアも好きなおかずを分けて皿に乗せる、おにぎりと味噌汁にだし巻き玉子、焼いた魚にサラダ、剥かれた果物をがつがつ夢中で食べた。
「まだまだあるから食べてよ」
厨房から懐記が声を掛ける、再び空の旅が始まりいつも通りの光景とはいかないが平穏な光景が広がる、厨房には懐記以外にも大勢の《ノゼバ国》の民が料理に勤しんでいた。
「………」
「ジラ…」
「ん、ほら座れよ」
「ああ、ミルク」
「サンキュ」
食堂の大きな窓の側に外を見続けるジラ、イシュターがコップに入ったミルクを渡し椅子に座る。
「………こういう場合なんと言えば分からない」
「ふ…気にするな。ナギなら必ずまた会える」
「そうか……………なんだあれは?」
「どうした?イシュター?」
ミルクを飲みながら景色を眺めジラが落ち込んでいない事にほっとしたイシュターが先の景色に異変を感じ立ち上がる。
「風早、魔王と外神を呼んでくれ」
『承知しました……………あれは…………生物?』
風早のらしくもない疑問と共に厨房にいた外神と懐記、チェカ達と中継器を造っていた千眼達も集まり景色の先の何かに異変を感じた…。

今日のカトゥーシュカはとてもご機嫌だった、顔は無表情だが昨夜のカジノも程好く客も従業員達も満足し、シャワーを浴びて《空船》の食堂で好物の焼き魚定食を平らげ、ラウンジで野菜ジュースを飲んだ後、カーク達が根城にしている肉ダンジョンに向かって、カジノが休みの今夜は皆で焼き肉をする事にしていた。
ゴーレムからカウンターで野菜ジュースを貰う、葉物野菜とよく冷えた果実と蜂蜜をミキサーで混ぜた物馴染みの物を受けとれば…朝から会って良いかは分からない存在と遭遇した。
「おはようございます、カトゥーシュカ殿。仕事終わりですか?」
「おはようございます、アガニータ殿。はい、仕事終わりです」
「そうですか、良ければ一緒にどうです?本日の朝食を共に食べる相手がおらず少し退屈だったので」
朝から目に毒だなとカトゥーシュカは顔には出さずに了承…する他無くアガニータはコーヒーと朝食を頼み、共に窓際の席に着く。
客はアガニータとカトゥーシュカのみ静かだ、コーカスとデュスノアは所用があるとアガニータが優雅な仕草でコーヒーを飲む、さて、カトゥーシュカは野菜ジュースを飲み干し早々に退散したい此処で2人でいるのがトラングに知られれば何を言われるか分からない。
「トラングはどうです?上手くやっているようですが」
「カジノの支配人として滞りなく」 
アガニータの朝食が運ばれ音を立てず綺麗な所作で食べていく、居心地は悪い半身が爛れていても毒の華は毒の華、艶かしい。
「そうですか、兄が聞けば喜びそうですね。カトゥーシュカ殿はこの後は?」
「……肉ダンジョンに」
なのでそろそろ席を立つつもりだという雰囲気を出す、その後の言葉に表情が乏しいカトゥーシュカも驚いた。
「では、私も連れて言って下さい。もう少し話がしたい」
「は?」
「少し待っていて下さい、食べ終わりますから」
「貴方がダンジョンに?」
「ええ」
「………………」
「やはり卵は美味ですね、パンとコーヒーが良く合う」
「…………何を考えている?」
「話しの続きはダンジョンで行いましょう、トラングを呼びますか?」
にこりと華やかな笑みを溢すアガニータにカトゥーシュカが警戒を顕にするが、アガニータは意に介さない、挑発的な笑みだ。
「承知した…トラングは寝ていますので我々で」
「ええ、さ、ダンジョンとはいつぶりでしょうか。最終階層迄行けばトラングにドロップ品を贈りましょうか」
「………ご自由に」
後でトラングに何を言われるか…カトゥーシュカは内心困りながら食事を終わらせたアガニータを伴い肉ダンジョンへ向かった…。

「俺達も中継器を街に置きに行こうか」
「うん、どこか良さそうな町あるかなー」
「風早、ナビさん良さそうな国はありますか?崇幸さん達との合流は少し先になりましたし。急がなくても良いと思いまさひ」
【後2時間程で《エンビ》という国の上空に到着しますよ、そこは…本と紙が名産です】
『本と紙!?』
「行こ!大河さん喜ぶよー」
「沢山買おう!」
「子ども達にも沢山買いましょう」
『ぴぎゃ』
「お供しますすよー」
《アタラクシア号》の朝、詠斗達が朝食のホットドッグと具沢山スープ、昨日の残りのミートボールとサラダを食べていればナビの声に詠斗と晴海と魚の干物を食べていたウズラも片手を挙げた。
晴海も空に野菜を柔らかくした野菜スープ飲ませ、詠斗も綴も同意し子ども達も気分転換に連れて向かう事にした…。

「あの先…山がありま…っぅ」
「外神っち?」
「外神?」
「おい、どうした?」
外神が遥か先を眼で視ていく先には違和感を持つ程の山脈、更に何があるか深く視てみようとすれば、右目に凄まじい熱さ、熱量を感じ右目を押さえ蹲った。
「ぁ……」
「外神っち?それなに?」
外神の右目からドロリとピンク色の眼から出て来るのは有り得ないだろう大きさの雛が外神の掌で震えていた。
「外神君!大丈夫か!?目は!?」
「平気です…時々視てはいけない物を視るとこれが出てきます……すぐ…息絶えて消滅します」
外神が掌の雛を握り潰してしまおうと手に力を込める、この眼は時々魔力過多の物を視れば産まれてしまうピンクの雛、すぐに息絶えて消えてしまうから握り潰してしまおう。
「ゆき…魔王がいる…」
「外神っち、その子は俺が貰うわ」
驚いた崇幸が外神を支え、千眼も先見つめ呟く、懐記はハンカチを掌に乗せ、外神から雛を奪うようにそっと包み込む。
「神様ズ、ポイント払うからこの子生かして」
『………500ポイントを貰います、それは魔法生物です…暫く後に神獣へと進化しなければ消滅します』
「ん、それでオッケ。サンキュ」
懐記がスマートフォンを出し神々に電話すれば、暫し考え伝えた。
「懐記さん、それは僕の眼から出た魔力の塊です。どうしてそんな風に出てくるかはまだ分かりません……それに命はないです」
「そ、でも殺す気だったっしょ?」
「いつもそうしてます、生物ではないですから」
「ふうん、殺すなら貰う、そんだけ」
「…………」
懐記が震える雛を撫でてやる、温かい、嘴が開いたり閉じたりと呼吸している、確かに生きている、懐記は籠に布を敷いてそっと雛を置いた。
「じゃ、あの山いこ」
「魔王がいるなら迎えに行かないとな」
「…………………」
懐記と崇幸の言葉に千眼は何も言わない、山を見据え考え込んでいた…。
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