上 下
550 / 807
第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

終戦のナギep.9

しおりを挟む
「外神君!大丈夫か?血が…」
「大丈夫ですよ、傷は治っています」
「大丈夫じゃないしっしょ、脳にダメージいったんだから。崇幸すごい船じゃん、外神っちと千ちゃん達は船に、俺とグリっちとその子と行きたいって感じのメンバーは俺と《ガンネ》にいこ」
「俺も行こう」
「うん、行く」
「なら、俺と崇幸っちグリにその子で行くわ」
「俺も行こう」
「お前も、ナギに頼まれたからな」
「ギーギスっち頼むわ、後は船で先に移動よろ」
《黒鳶》を上空で待機させ崇幸と、マユラ、シュリが降り立ち崇幸が外神の血だらけの姿にぎょっとし駆け寄った。
ジラの腕の中で眠るトゥナーをシュリに渡し、終わらせる為に向かう事にした。
「千歳っち達には先に連絡したし、みんなゆっくり休んで」
懐記が割り振りを行い何かを言いたそうにしていた外神だが何も言わず、《黒鳶》へ転移を行う事にした。
「また、後で…ご飯用意する…」
「ああ、また後でな。親父、ご馳走用意しとく」
「うん、イザラ、イデア、この子達をお願い…」
「お前ら無茶すんなよ」
「そーそー危ない」
イザラとイデアが少年に声を掛け、グローリーがゴーレムと神獣達をイザラ達に託せば呆れたフォンとフェシェスタが指でつつけば気まずそうに3匹が申し訳なさそうに頭をぺこりと下げた。
「崇幸っち達、いこ」
「ああ」
懐記の転移で《ガンネ国》へと向かう、ジラは永きに渡り最前線だったこの場所が2度と戦場にならないよう決め向かう。

「そうか…ご苦労であった」
《ガンネ国》の謁見の間、魔人の少年のお陰ですんなりと通され、まだ若いとも言える国王の隣にはドレスに身を包んだ可憐な少女、この国の王女が無事に少年が戻った事にほっとしている様子だった。
「戦は終わりだ、俺たちの希望はつまんない小競り合いをしている各国に《ガンネ国》が《ノゼバ国》に勝った事、《ノゼバ国》が滅びこれから呪いの地に変わっていくのを知らせてくれ」
「了承しよう」
「この子は俺たちが連れて行く」
「…出来れば君には此処に残り娘と…我が国の王女アネイシャの夫となりこの国を導いて貰いたいと考えている」
「お父様!」
ジラの要望に国王が大仰に頷く、崇幸が少年を連れて行くと言えば少し考え夫にと望みアネイシャが淑女らしからぬ声を上げた。
「アネイシャ、もう二度と会えぬぞ。父親が来たのだ」
「あ…」
「我が国に尽力を尽くしてくれた事感謝する、何か褒美を授けたいのだが」
「いらない、剣も返す似合ってないと言われたからな」
「そうか、宝剣なのだがな。君には黒の方が似合う」
「んじゃ、こっからはビジネスの話しと今回《ガンネ国》への補償ね。崇幸っち」
「ああ、、まずは《ノゼバ国》が手に入らなかったとして千億ログ。負傷した兵士達の治療などの薬、薬草、回復薬。種や苗や植えればすぐ育つ食料植物を300個、鉱物と魔石を」
「ま、待て待て」
「足りないか?」
崇幸の収納から次々出て来る、金、木、鉱物と魔石がドサドサと絶え間なく出現し国王は困り、控えていた大臣達は唖然とし控えていた兵士達は開いた口が塞がらない。
「あれじゃん、崇幸っちこの国狭いから領土を広げたいんじゃん」
「そうか、ならあの最前線にしてた所まで《ガンネ国》の領土にすればいいか?」
「あそこ不便だぞ、なんもないし」
「なら、転移石置いて行ける様にして…そうだ収納バッグもいるな。時間停止と無限収納を……」
「王様、100とかでいける?」
「………」
「酒は好きかな?」
「…好きだが」
「あれだろ、娘がいるから妃もいるだろ、宝石とかもあればいんじゃないか」
「沢山あるぞ、酒はカウン酒を10樽とかでいいかな?カノリは20樽置くか」
また収納から宝石や酒、収納袋が出現し財宝の山が築き上げられた。
「……我が国の宝物庫よりも凄い光景なんだが…」
「こんなもんでどう?後はこの中継器を置いて今は使えないけどこの中継器を色々な国に置いて行くから」
「そうすれば《ガルディア》まですぐに来られる」
「《ガルディア》……馬車で30日以上掛かる国だが…」
『大体5分で行ける』
『………』
「んじゃ、中継器あそこに置いてくるわ」
「おー」
国王が引いている間にさくさく物事が進み、懐記が中継器を置きに最前線だった場所に転移する、その間崇幸が時間停止収納袋1つに出した物を全て納めて国王に献上した。
「ん、戻った置いてきたわ」
「ありがとう懐記君」
「それで行けるのか?あの場所へ」
「行ける、行く?」
「私を連れて行って欲しい」
「ん、いこ」
「陛下!我々も!共に」
「お父様!」
「下がれ、私だけで良いすぐに戻る」
「ここに魔力を注げば良いぞ、行き先は元最前線だ」
周囲の声に国王は手で制し、崇幸の指示で魔力を注ぎ元最前線、先ほどの場所へ向かった…。

「何もないな…久しぶりだ…私も王太子時代に此処で指揮を執った」
「もう、戦場にはならない」
「…私もそれを願うばかりだ《傭兵王》殿」
何もない大地に乾いた風が吹く、あの頃は指揮を執り馬を駆り死に物狂いで剣を振るい、幾度も停戦し開戦し他国も介入しては多くの血を流し続けた場所、国王は目を閉じ黙祷を捧げた。
「感謝する……此処からは周辺各国との話し合いを行い……戦争は終わりにして民の為に動くとしよう。ありがとう手を貸してくれて…行ってしまう前に娘に声を掛けてやってくれ、あの子は本当に君を好いているが、受け入れてやれないのであれば終わらせてやってくれ」
「……分かった」
「中継器が稼働すれば、商業エリアや他の国が近くなるさ。もう2度と会えないって事もない、そうだ今木を植えてみようか、花の種もから、あるさっきの収納袋を貸してくれ」
国王は父親の顔で少年にそう告げる、少年は少し考え了承し崇幸は収納袋を借り苗と、花の種を風魔法で地面に植えて魔力を注げば瞬く間に木が育ち花が咲く。
「これは見事だ」
「もう此処で戦う気にはならないだろ」
「そうだな、ここはもう戦場にはならない」
ジラと国王が笑う、少しの時間その光景を眺めその場を後にした…。

「その中継器は意思があるから何かあったら話し掛けてみてくれ、いくつか置いておくから同盟が組めた国に渡すと良い」
「承知した、感謝する」
「じゃ、行くわ。中継器が稼働したらまた来るし」
「あ…」
《ガンネ国》の王城に戻り別れの挨拶を交わす、王女アネイシャは少年に何か声を掛けようとし声が詰まる、少年は真っ直ぐな視線を彼女に向けゆっくりと口を開いた。
「ありがとう」
「はい………また…」
「…私は魔人だ、生きる時間も違う君の気持には応えられない」
「っ………はい……」
アネイシャは少年の言葉に息を呑み涙を零し顔を覆う、言い方は冷たい物だが彼女は王女だ王族に産まれた故に責任がある、叶わぬ恋に未練を残し続ける事は赦されない。
「行こう…」
「はい、父上」
少年の肩にグローリーが手を置きそして《黒鳶》に転移し、跡形もなく消え去った。
「各国と同盟に向け話し合う、書状を用意し各国へ」
『はっ』
周囲も呆然としていたが国王の声で皆我に返りバタバタと動き出す、アネイシャは侍女たちに連れられ自室へと戻る、国王はその背を見送り自分の代で戦に1つの結末を生み出せた事に安堵していた…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...