あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第028話 杜撰な悪事の代償

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『以上が現在《ノセバ国》で起きた顛末です』
「そうか…」
「風早さんもナビさんもお疲れ様、外神君も…」
【マスターは大丈夫ですよ】
《空船》の会議室大河達は夕食後コーヒーを飲みながら風早とナビから、《ガンネ国》で起きた事の顛末の報告を受けていた。
「8位の魔王に魔王の子供ですか」
「ジラとトゥナーの友人だったんだろう、悔しいだろうな」
「取り戻さななければならない物が増えたね、まさか蒐刻魔王の伴侶がアシュア君だとはね…ラージュさんに報告しておこうか」
「そうですね、後は彼次第でしょう」
「それでこの後崇幸さん達はどうするんだ?」
『《ガンネ国》に赴き《ノセバ国》が滅んだ事を告げと魔人の少年の保護、戦争の終戦を正式に公表、幾つかの国と和平を結び周辺国との争いを終わらせるとの事です』
「分かった、今回《ガンネ国》は何の利益も無かった分、補償は《アウトランダーズ商会》が行う。後で崇幸さんに連絡をしようか」
「そうだな、魔人の子供を渡さないと言われれば困るしな」
【了解です】
「再会は少し先に延びてしまいましたね」
「そうだね、寂しいけれど声や顔は見れるから。また明日晴海君達の様子も聞くよ、グローリー君も無茶したようだし」
「努力して勝ち取った物だからな」
グローリーの無茶に驚きつつ無事にとは言い難い結果だが、一先ず決着は着いたと明日舵達にも伝えてよう…。

「嫌な予感ばかり当たるな…」
グローリー宅の《奴隷ギルド》で椅子に座り額に手を当て、グローリーに渡したナイフ越しに見たナギは正しくタナトスの知るナギであり、此方の眼に気付いた蒐刻魔王からの伝言も受け取った。
見なければ良かったのかもしれない、ナギが戦場で死んだ…いや、肉体を消失したと聞いた時正直それで良かったと思える程度にはあの真っ直ぐで優しい彼にあの場所は不釣り合いだった。
「…ナギ様…」
最も魔王に近い肉体故に不完全で産まれ、少年の姿のまま生きるナギ、かつてタナトスに優しくしてくれた数少い人物。
「入るぞ、タナトス。夕食持って来たぞ」
「そうですか、置いといて下さい」
ウォルゾガが来る気配がしたので手元の書類に目を通す振りをする、タナトスの目の前に湯気立つチーズドリアと野菜たっぷりのポトフ、キノコソテーにサラダと冷えたお茶が乗ったトレイが置かれた。
「何かあったのか?」
「…いえ」
「そうか、グローリーは無事イザラ達に会えたと連絡が来た」
「そうですか」
タナトスは無表情にドリアを口に運ぶ熱くソースとライスが絡みうまい、機械的に咀嚼していればウォルゾガがワンズの席に着きこちらを見ている、このまま黙って完食しても構わないがさっぱりとしたお茶を飲んで口を開いた。
「聞きたい事があるならどうぞ」
「……何を思ってグリに手を貸した?あいつもそうだが」
「彼方は確認したい事があるから手を貸したそうです、私も同じような物です」
「そうか、確認出来たのか?」
「ええ」
「そうか…お前の事はよくは知らない、名前と好物と仕事が出来る奴って事位で…いつかお前はいなくなるのか?」
「それはそうでしょう」
「いて欲しいと思ってもか?」
「貴方の考え等知りませんし、どうでもいい」
「そうか、いつかタナトスが自分で此処にいても良いと思える理由が出来ればいいと俺は思っているよ」
「……」
ウォルゾガの何処までも優しい声、いつもタナトスを家族という男のその声に苛立ちながら完食しウォルゾガがトレイを下げる。
「早めに休めよ、おやすみ」
「おやすみ」
互いに挨拶を交わし、タナトスはまた独りグローリー達の様様子を視ていた。

「ぐっ、何故だ!どんな魔法で火傷も家ももと通りになったんだ!?」
男は1人部屋でイライラと頭を掻き回す、焦りも募り室内をウロウロと動き回る。
昼に商談が成立しなかった事もあり猶更怒りが募る、あの一家も一家もだと折角此方が仕事をくれてやろうとしたにも関わらずそんな額では受けれないと断ったあの一家。
「私の商会はもっと規模が大きくなる、《ガーネ商会》など目ではない、それをあの家族は!私の仕事を断りおって!だから…」
「火を放ったと?」
「だ、だれだ!」
「こんばんは」
誰もいない室内の筈、人払いもし屋敷には護衛もいるが目の前に突如現れた男に驚き後ずさる。
「依頼を貰ったので片付けに来ました。さっさと片付けて戻らないと…今夜は激しそうなので」
「な、なんだ貴様!」
「依頼をこなしに来ただけです」
「い、依頼だと!?誰から受けた!金か!金ならあるぞ!」
「金なんてつまらないもいりません。貴方、大分恨みを買っていますね。初めて受けましたよ?虫から復讐して欲しいと、面白かったので受けてみました」
「は、はぁ!?虫だと!?」
口を歪め大きく嗤う目の前の不気味な存在、異様な程整った容姿に見たことも無い装いの男に身体全身が震え鳥肌が立つ。
「貴方達が殺して来た虫達、何百という虫達の恨み、貴方の仲間はほらここです」
不気味な男は嗤い続け、空間からゴトリゴトリと人が転がり濁った目と目が合う。
「ひひ。ひぃぃぃい!誰か!!!だれかぁ!!!!!」
「来ません、誰にも何処にも貴方の声は届きません」
「ゆ、ゆるしてくれ!!!!たのむ!!なんでも!なんでもする!」
目があったのは男が一家の家を燃やすように命令し、虫達の調教や処分をさせていた手下達、濁った目は見開かれ、最期に見たであろう物は余ほどおぞましい物だったのだろう口は大きく叫び声を上げている最中に絶命したと分かる、腰を抜かし地べたを這いつくばり不気味な男に縋り哀願した。
「貴方の命乞いよりも虫達の憎悪の方が私には心地良い、そろそろ戻らないと機嫌が益々悪くなり更に激しくなりそうなのでこの辺で」
「ひ、ひいい!イヤだぁあ!!!」
不気味な男の手が伸びる、黒い手袋をした指先から蔦が伸び男の口の中に入り込む。
「むぐ、うううう」
「さあ、復讐が完了ですが…虫達がまだいますね……」
「それはこちらで対応しましょう」
「ああ、ではお願いします」
「私としても手間が省けたのでありがとうございます」
「あが…ぐ…」
口に入った蔦を切り落とし男が絶命する、不気味な男…チリン…蒐集家は息絶えた男の死体を見下ろしまだこの屋敷にいる虫達を回収でもしようかとしていれば、部屋の陰から声がし振り向きもせず後を頼み《島船》の自室へと転移で戻って行った…。

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