あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
548 / 867
第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第028話 杜撰な悪事の代償

しおりを挟む
『以上が現在《ノセバ国》で起きた顛末です』
「そうか…」
「風早さんもナビさんもお疲れ様、外神君も…」
【マスターは大丈夫ですよ】
《空船》の会議室大河達は夕食後コーヒーを飲みながら風早とナビから、《ガンネ国》で起きた事の顛末の報告を受けていた。
「8位の魔王に魔王の子供ですか」
「ジラとトゥナーの友人だったんだろう、悔しいだろうな」
「取り戻さななければならない物が増えたね、まさか蒐刻魔王の伴侶がアシュア君だとはね…ラージュさんに報告しておこうか」
「そうですね、後は彼次第でしょう」
「それでこの後崇幸さん達はどうするんだ?」
『《ガンネ国》に赴き《ノセバ国》が滅んだ事を告げと魔人の少年の保護、戦争の終戦を正式に公表、幾つかの国と和平を結び周辺国との争いを終わらせるとの事です』
「分かった、今回《ガンネ国》は何の利益も無かった分、補償は《アウトランダーズ商会》が行う。後で崇幸さんに連絡をしようか」
「そうだな、魔人の子供を渡さないと言われれば困るしな」
【了解です】
「再会は少し先に延びてしまいましたね」
「そうだね、寂しいけれど声や顔は見れるから。また明日晴海君達の様子も聞くよ、グローリー君も無茶したようだし」
「努力して勝ち取った物だからな」
グローリーの無茶に驚きつつ無事にとは言い難い結果だが、一先ず決着は着いたと明日舵達にも伝えてよう…。

「嫌な予感ばかり当たるな…」
グローリー宅の《奴隷ギルド》で椅子に座り額に手を当て、グローリーに渡したナイフ越しに見たナギは正しくタナトスの知るナギであり、此方の眼に気付いた蒐刻魔王からの伝言も受け取った。
見なければ良かったのかもしれない、ナギが戦場で死んだ…いや、肉体を消失したと聞いた時正直それで良かったと思える程度にはあの真っ直ぐで優しい彼にあの場所は不釣り合いだった。
「…ナギ様…」
最も魔王に近い肉体故に不完全で産まれ、少年の姿のまま生きるナギ、かつてタナトスに優しくしてくれた数少い人物。
「入るぞ、タナトス。夕食持って来たぞ」
「そうですか、置いといて下さい」
ウォルゾガが来る気配がしたので手元の書類に目を通す振りをする、タナトスの目の前に湯気立つチーズドリアと野菜たっぷりのポトフ、キノコソテーにサラダと冷えたお茶が乗ったトレイが置かれた。
「何かあったのか?」
「…いえ」
「そうか、グローリーは無事イザラ達に会えたと連絡が来た」
「そうですか」
タナトスは無表情にドリアを口に運ぶ熱くソースとライスが絡みうまい、機械的に咀嚼していればウォルゾガがワンズの席に着きこちらを見ている、このまま黙って完食しても構わないがさっぱりとしたお茶を飲んで口を開いた。
「聞きたい事があるならどうぞ」
「……何を思ってグリに手を貸した?あいつもそうだが」
「彼方は確認したい事があるから手を貸したそうです、私も同じような物です」
「そうか、確認出来たのか?」
「ええ」
「そうか…お前の事はよくは知らない、名前と好物と仕事が出来る奴って事位で…いつかお前はいなくなるのか?」
「それはそうでしょう」
「いて欲しいと思ってもか?」
「貴方の考え等知りませんし、どうでもいい」
「そうか、いつかタナトスが自分で此処にいても良いと思える理由が出来ればいいと俺は思っているよ」
「……」
ウォルゾガの何処までも優しい声、いつもタナトスを家族という男のその声に苛立ちながら完食しウォルゾガがトレイを下げる。
「早めに休めよ、おやすみ」
「おやすみ」
互いに挨拶を交わし、タナトスはまた独りグローリー達の様様子を視ていた。

「ぐっ、何故だ!どんな魔法で火傷も家ももと通りになったんだ!?」
男は1人部屋でイライラと頭を掻き回す、焦りも募り室内をウロウロと動き回る。
昼に商談が成立しなかった事もあり猶更怒りが募る、あの一家も一家もだと折角此方が仕事をくれてやろうとしたにも関わらずそんな額では受けれないと断ったあの一家。
「私の商会はもっと規模が大きくなる、《ガーネ商会》など目ではない、それをあの家族は!私の仕事を断りおって!だから…」
「火を放ったと?」
「だ、だれだ!」
「こんばんは」
誰もいない室内の筈、人払いもし屋敷には護衛もいるが目の前に突如現れた男に驚き後ずさる。
「依頼を貰ったので片付けに来ました。さっさと片付けて戻らないと…今夜は激しそうなので」
「な、なんだ貴様!」
「依頼をこなしに来ただけです」
「い、依頼だと!?誰から受けた!金か!金ならあるぞ!」
「金なんてつまらないもいりません。貴方、大分恨みを買っていますね。初めて受けましたよ?虫から復讐して欲しいと、面白かったので受けてみました」
「は、はぁ!?虫だと!?」
口を歪め大きく嗤う目の前の不気味な存在、異様な程整った容姿に見たことも無い装いの男に身体全身が震え鳥肌が立つ。
「貴方達が殺して来た虫達、何百という虫達の恨み、貴方の仲間はほらここです」
不気味な男は嗤い続け、空間からゴトリゴトリと人が転がり濁った目と目が合う。
「ひひ。ひぃぃぃい!誰か!!!だれかぁ!!!!!」
「来ません、誰にも何処にも貴方の声は届きません」
「ゆ、ゆるしてくれ!!!!たのむ!!なんでも!なんでもする!」
目があったのは男が一家の家を燃やすように命令し、虫達の調教や処分をさせていた手下達、濁った目は見開かれ、最期に見たであろう物は余ほどおぞましい物だったのだろう口は大きく叫び声を上げている最中に絶命したと分かる、腰を抜かし地べたを這いつくばり不気味な男に縋り哀願した。
「貴方の命乞いよりも虫達の憎悪の方が私には心地良い、そろそろ戻らないと機嫌が益々悪くなり更に激しくなりそうなのでこの辺で」
「ひ、ひいい!イヤだぁあ!!!」
不気味な男の手が伸びる、黒い手袋をした指先から蔦が伸び男の口の中に入り込む。
「むぐ、うううう」
「さあ、復讐が完了ですが…虫達がまだいますね……」
「それはこちらで対応しましょう」
「ああ、ではお願いします」
「私としても手間が省けたのでありがとうございます」
「あが…ぐ…」
口に入った蔦を切り落とし男が絶命する、不気味な男…チリン…蒐集家は息絶えた男の死体を見下ろしまだこの屋敷にいる虫達を回収でもしようかとしていれば、部屋の陰から声がし振り向きもせず後を頼み《島船》の自室へと転移で戻って行った…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒の創造召喚師

幾威空
ファンタジー
※2021/04/12 お気に入り登録数5,000を達成しました!ありがとうございます! ※2021/02/28 続編の連載を開始しました。 ■あらすじ■ 佐伯継那(さえき つぐな)16歳。彼は偶然とも奇跡的ともいえる確率と原因により死亡してしまう。しかも、神様の「手違い」によって。 そんな継那は神様から転生の権利を得、地球とは異なる異世界で第二の人生を歩む。神様からの「お詫び」にもらった(というよりぶんどった)「創造召喚魔法」というオリジナルでユニーク過ぎる魔法を引っ提げて。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...