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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第017話 酒場にて 1

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「崇幸、皆…」
「お、ホスィソどうした?疲れているよなあ」
「そればそうだ、2日後に《ブリキノ国》の玉座に就く事になった」
「そうか、手は貸すからな」
「ああ、肉ダンジョンの事も感謝する」
「いや、良かったよ中継器も置いたし移動が楽になるだろう」
「収納袋まで沢山貰って」
「気にしないでくれ、《ガルディア》と繋がったらもっと国が豊かになる」
「ああ…」
「ホスィソ、王様だって好きな事出来るぞ。今夜は酒場で飲もう」
「そうだな、お前たちの国に行くのを楽しみ国王やってみるよ」
「気負うな、皆が腹いっぱい食えて笑っている国を目指せば少なくとも今よりは良い国になる」
「見ててくれ」
「もちろん」
会議が終わりホスィソが《ブリキノ国》の玉座に就く日が決まる、一応は国王だが《ガーデン王国》の属国…領地であり領主として混乱が起きない様にしていくという意味合いが強い方にしてくれとホスィソが王に嘆願した結果叶った訳である。
ホスィソは自身がない、本の数年でも国、民の運命を抱えている訳で崇幸になんとなく最後に背中を押して貰って覚悟を決めた。

「っし、じゃ酒場行こうぜ」
色々な事を決め2日後には細やかだが新しい《ブリキノ国》の王城でパーティを行い、出発する事を決めればもう夜は深い、肉ダンジョンを30階層で切り上げたイザラ達と子供達は綴ともう寝たいチグリス、酒が好きではないチェカとウズラにラウラス、まだ全快ではない傭兵集団達を残し酒場へ向かう。
「たまには、街の酒場もいいよな」
「ん、いんじゃない」
「食材無くなって酒も無くなったら追加するし」
「よーし飲むぞ」
向かった先の酒場はこの国で一番大きい酒場だが、貧しい国の為に木で打ち付け石で補強したような店だ。
今回の飲み会は国に金を落とす事も目的としているので、事前に酒場の亭主には大人数で料理と酒は任せる、市場から食材を買い込んでくれと頼んでいる。
ジラは久しぶりの街の酒場に楽し気に笑い、懐記や詠斗もギーギスも早速扉を開けた。

面子は崇幸(胸に千眼が止まっている)懐記、外神、肉ダンジョンに行ったマユラ達、《栄光の剣と盾》達、色々声を掛けたので後で増えるだろうと中に入って適当にテーブルに座れば早速、木の小さいタルに取っ手を付けた物が店主や従業員達から渡された。
「ようこそ!気前の良いお客さん達!沢山食べ取っておくれ、こんなに沢山のお客さんいつぶりだろうね」
「どもーおねーさん」
「あら!良い男!」
ふくよかな中年女性がにこやかに歓迎してくれ、ジラが礼を言えば頬を赤らめている、普段は閑散としていて宿屋と畑と屋台を家族で行っていると、パワフルな女将が厨房に向かって行った。
土地は貧しいがなんとか生活しているという事をホスィソ達から聞いていたが、笑顔をもあり店も掃除は行き届いていた。
「じゃ、みんなお疲れ。細かい事はなしカンパーイ!」
『カンパーイ』
「めでたい時や宴会でこうしてコップをかち合わせるんだ、《ブリキノ国》でもしよう」
「そうか、よし、カンパイ」
崇幸の音頭で皆がコップを鳴らすのをホスィソ達が首を傾げて見ていればギーギスが教え、ホスィソ達もコップをかち合わせて…ぬるい酒を煽った。
「久しぶりだな、こういう酒」
「お客さん達、運が良いわよ!今日《イグン王国》からキャラバンが来たのよ、食材やお酒沢山仕入れたからね!街は今すごい活気があるわよ、お城で食事や薬や他の国がお金出してくれたって喜んでいたわ」
「根回しの良い王だな」
「流石はお宅のお子さん」
女将の言葉にイシュターやマユラジラ、シュリが飲んている卓の上で酒と料理を楽しむ、オベリスカの両親が自慢げに胸を張る。
『良き民を思う我が子』
『気遣いも、思慮も深い』
「喜ばれていますね!」
「良かったな!」
「うう…よがった」
「酔うには早いな」
「いや、分かる旨い酒だ…」
同じテーブルで酒を飲むホスィソ、女将の話を聞いてはしゃぐトハトネとダージと酒を飲みながら無くマーフに静かに酒を煽るツゥムストスに本当に旨い酒だと笑うホスィソ、湯気立つ料理が次々運ばれ酒も次から次へと追加が来る、知人たちに声を掛けて従業員も多い、厨房からは匂いが流れ食欲をそそられた。
「肉……」
「フォンーこっちの酒も美味いぞ温いけど」
「ひやせば良いだろう」
「こういうのは出されたまま飲むんだよ、昔は草とか食ってたしー」
「ふん」
フォン、フェシェスタ、懐記、外神の卓でフォンが不満げに肉を食べているのをフェシェスタが絡む、最近美味い物を食べているせいか…物足りなさはある。
「このコップいいわ、明日かお、外神っちは明日は?」
「…………特には…僕も行ってもいいですか?」
「ん、いいけど」
木のコップの手触りと香りを懐記きは気に入り明日市場へ買いに行こうかと言えば、外神も行くと伝える、こういうコップなら木魔法がある外神ならば幾らでも作れるが金を使い経済を回していくならば買った方が良いだろう、無ければ外神が作るつもりだ。
その会話を聞いていたフェシェスタの手が止まる、少し驚くがそれを億尾にも出さず料理を口に入れていく、あの外神が自分から行くとは明日は不吉な事でも起こるのか、後でマユラやギーギスに占って貰うかと頭の片隅に留めておく、基本外神は「はい」「分かりました」で済ませる、商会でも最初は外神に確認してから事を進めていたがそれしか返って来ないので、現在は決定した事を伝える位しかしていない、そんな外神が行くとは……まあ、暫くは様子見としておくことに決めた。

次々運ばれる料理は炒めた物や煮た物が多いが、女将たちが頑張っているらしく美味しい、肉串は事前に運んだ肉ダンジョンの肉を惜しみなく使って貰っている。
「お客さんたち、良い喰いっぷりですね!」
「ああ、美味いからな」
「酒の追加も頼む」
「この肉の焼いた物も」
「は、はい」
女将の息子がジラの卓に料理を運べば、酒と料理の追加が入りすぐコップや皿を片付けていく。
「懐記…」
「ん?何?フォンちゃん」
「お前料理して来いあと酒も、玉子焼き食べたい出汁入りのやつ、腸詰の辛いのとポテトサラダ、魚は我慢するから」
「えーんー」
「俺達の卓の分で良いから」
「フォン、わがまま言わないのー」
どうやらここの料理が物足りないフォンに懐記が頼まれ、厨房を見ればどうやら忙しいく他の客も入り始めている、フェシェスタが窘めるがフォンは口をへの字にしている。
「おけ、行ってくるわ」
「僕もお手伝いします」
「ん」
「おー頼むわ」
「全くフォンはー……」
フェシェスタが外神と懐記の背を見送る、短くもない外神との付き合いの中積極的に動く外神を仕事や任務以外で見た事がない、面白いと思いつつ温い酒を飲みほした。



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