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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第6幕 第9話深き夜

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「美味ですね」
「うちの自慢の焼き肉屋とホテルの食事ですから」
かちゃちゃ小さなカトラリーが使われる音、ゴーレムの焼き肉屋で焼いて貰ったステーキ肉、果物ベースのソースと塩を用意し、ロックスとテュフが最近外神から貰った食べられる花を丁寧に盛り付けたサラダ、ドレッシングはレモンモドキと塩に香辛料を混ぜ合わせた物、スープはギョロリの出汁で取った物、米かパンかを選びデザートはモギのミルクのアイス、飲み物はカウン酒、食後はコーヒーのコース料理をカトゥーシュカが運び、アンスローポモフィク達が給仕していた。
「米という物は腹に溜まり持ちが良いですね、パンも香ばしく柔らかい」
「トラング、いつもこんな美味しい物を食べているのかい?羨ましい限りだ」
「おしえなーい」
「千歳さん、花とこの米の種を譲って頂きたいのですが。私が支店を置く国で飢饉が起こっていまして」
「それは、お困りでしょう、お譲りしますよ。苗と種がありますから」
「助かります、礼は…そうですね…。この書物は如何でしょうか、私は読めませんがいつかの魔人が書いた物です」
「魔人ですか?」
「興味があるな」
千歳と大河がコーカスの収納空間から出た1冊の古い本に興味を惹かれ大河が所有する事にする、字は大河と千歳も読めない象形文字のような物で後でグローリー達に聞く事にする、その後はカイム達の連絡が来るまで静かな晩餐が続いた…。

「あー千歳達は今頃ご馳走と気まずい会話かー」
「ご苦労な事だ」
「ステーキ丼美味かったなー」
「そうだな、夜食は何がくえるか…来たな」
夜も深く静かな街の家の屋根の上、ヤハネとカイムは離れた場所で薬売りを待つハインとワグナーが動いたのを確認し2名も動き出した。

「薬、薬…」
「ドウゾ…ドウゾ」
「こっちにも」
「くれ、くれ」
「ドウゾ…ドウゾ…」
フードを目深に被った男か女かも分からない人物が暗い狭い路地で薬を求める物達に薬包みを渡していく、求められるまみ応じるまま、客達の中には身成の良い裕福そうな者達もいる。ハインとワグナーもその様子を離れた場所で伺いタイミングを伺いハインがその群れの中に混ざる、今夜の目的は売り捌く者の裏に組織があるのか、製造場所等の情報を掴む事だ。
コーカスがもたらした情報と今夜得た情報を精査し、一気に叩くつもりだ。
「く、くすり」
「くれ、くれ」
「………」
涎を垂らし手を伸ばし求める者達、ハインは動物だなと思い手を伸ばせば相手の手が止まる、手袋をした手からは何の情報も得られない。
「チガウ…チガウ」
売り捌く者が身を翻し跳躍した後をハインも追い、ワグナーも物陰から続いた。

「行くぞ」
「逃げられたな、ヤハネ何か分かったか?」
「読めない…生き物じゃないかもな」
「あーアンスローポモフィクか?」
「…それなら分かるんだけど」
「追えばわかる、行くぞ」
「そうだな…」
カイムとヤハネが屋根を跳躍していく、瞬く間にハイン達に追い付き売り捌く者の行く手を阻み4名で囲った。
「よお、お前面白いもん売ってるよな?この街の領主様はお怒りだ」
「アンタ、何?」
「同行願います、街…国を混乱に陥れた裁きは受けるべきです」
「話しはゆっくり聞きます」
計画は変更になったが、目の前の人物だけでも確保していきたい、各自タイミングを図ろうとした所、薬を捌く者の足元に空間が広がり転移が行われた。
「へえ、やるな。ヤハネ追えるな」
「ああ、そんな離れた場所じゃない。こっちも転移だ」
「ちょうどいい、アジトごと暴いてやる」
「千歳さん達から深追いは駄目だと」
「深追い?後でついうっかりとか言っとけ」
「カイム、悪い事教えるなよ。来なくても良いよ」
「いえ、ここで逃せば恐らくここで捕らえられません、行きます」
「ワグナー…」
「ほら、行くぞ」
深追いするカイムとヤハネを止めようとするハイン、ワグナーはカイム達に同意しハインもまたカイム達に付いて行く事にしカイムが薄く笑う、魔的なそれは夜に映える美しい笑みだった…。

「カトゥーシュカ殿、どうですこの大陸は?」
「北海の覇王の一族、ここは暖かいでしょう」
「…はい、暴走した未熟なこの身を受け入れて頂き皇国の懐の深さには感謝致します」
食後のコーヒーを楽しんでいた所でアガニータとコーカスがカトゥーシュカに言葉を掛ける、濃い目の茶を飲み静かにしていたが北の海の支配者の王族、目立ちたくなくとも話しは来るだろう、トラングはコーヒーに砂糖を追加しデュスノアはブラックで飲んでいる、困れば千歳か大河が助け船を出してくれる事に期待し会話を続ける。
「そうですか、それはそれは。ニジェルガ陛下はお優しいですからね。私もかつて北海に行った事があります」
「覚えています、貴方はあの頃と変わりなく…先代は今も昔も貴方に恋狂っています」
「貴方の美しさは最早罪ですよね」
「褒めているのか?コーカス」
「もちろん」
かつて幼い頃に遠目から故郷の北の海で見たアガニータ、先代…カトゥーシュカの祖父はアガニータに惚れ込み求めたが叶わなかった。
「へえ、初めて聞いた。アンタどんだけ人の感情ぐちゃぐちゃにしたらいいわけ?」
「トラング、私生きているだけだ」
「はっ」
「失礼、カイム君からの連絡です。出ます」
「どうぞ」
トラングがアガニータを睨む、アガニータは涼しけな顔でコーヒーを飲み終わり、千歳がスマホからのカイムの連絡に応じた。

「あー千歳か。色々予定が狂った。薬をバラ撒いた奴には逃げられた、そいつの隠れ家は見つけたが」
「入れば爆破魔法が発動するぞ」
「そんな訳、どうする?」
『それは…少し困ったね』
通話越しの千歳の声は少しも困った様子は無く、カイムとヤハネも目の前の洞窟を見て考えあぐね、ハインとワグナーはなんとして潜入しようと模索した…。
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